スピラ・スピカ(以下、スピスピ)の幹葉が、自身の憧れの人物に直接会いに行き、その人たちから様々な話を聞く対談形式の連載企画「幹葉の森 おしゃべりルーム」。

今年はソロ体制となり、初となる全国ツアーをスタート。
持ち前の太陽のような明るさで聴く人の心に寄り添い勇気づける楽曲への共感や、その楽しさとハッピーが溢れるライブが話題となった。そして、2022年12⽉のソロプロジェクトとして初のワンマンライブにて披露し、ツアーでも歌ってきた新曲「私の物語」が、スピスピのデビュー日である8月8日に配信リリースされる。

スピスピの新しい物語が始まるなか、第3回となる「幹葉の森 おしゃべりルーム」で幹葉が会いに行ったのは、レーベルメイトでもあり、先輩でもある斉藤壮馬。今回、幹葉の熱烈なオファーに快く応えてくれた斉藤へ、根掘り葉掘り、幹葉ならではの対話を繰り広げる!

INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
PHOTOGRAPHY BY 堀内彩香

「初対面のときから、カリスマ性を感じていました」
幹葉 今回は斉藤壮馬さんに会いに来ました!お忙しいなか、本当にありがとうございます。

斉藤壮馬 こちらこそ、今回はお声がけいただきありがとうございます。

幹葉 壮馬さんはSACRA MUSICの先輩で、実はプロデューサーが一緒なんですよね。

──本日はよろしくお願いします。まず、お二人が最初にお会いしたのはいつくらいなんでしょう?

幹葉 “SACRA MUSIC FES.2019 -NEW GENERATION-”ですね!当日、楽屋が隣でご挨拶させていただいたのがきっかけです。スピラ・スピカは大きな舞台にまだ慣れていなくて、自分たちの楽屋でソワソワ、ガヤガヤとしていたのでご迷惑をおかけしていたんじゃないかと思います。今日は数年越しの謝罪を……。

斉藤 いやいや(笑)。当時から舞台慣れしているのかなと思っていたので、今お話を聞いて驚いたくらいです。
そのときから、幹葉さんは一瞬で場の空気を明るく華やかにしてくれる人という印象があって。

幹葉 えっ、嬉しいです!

斉藤 あと、楽屋から全然帰らないなって(笑)。

一同 (笑)

幹葉 ついつい盛り上がってしまって……壮馬さんの楽屋に居座る人はなかなかいないかもしれませんね(苦笑)。

斉藤 いやぁ、あのときは盛り上がりましたね。自分も“SACRA MUSIC FES.”は初めてでそわそわしていたので、スピスピの皆さんが楽屋に来てくれたことで空気が明るくなって、ポジティブな気持ちでステージに臨むことができました。だから僕としては、すごくありがたかったんですよ。幹葉さんは緊張したりするんですか?

幹葉 めちゃくちゃ緊張します……!特に昨年の“SACRA MUSIC FES. 2022 -5th Anniversary-”は、3人からソロになったタイミングで。1人であれだけ大勢の人たちの前に立つのが初めてでしたし、間にMCをやらせていただくこともあって、心臓バクバクでしたね。

斉藤 そうだったんですね!僕はバンドで参加させていただきましたが、出番的にスピラ・スピカの次ということで、ステージ裏で一緒に阿波おどりをやらせてもらって。「あの人(幹葉)が一番ロックだな」って思っていました。

幹葉 それをライブ終わりに聞いて、嬉しくて泣いちゃったんですよ。

斉藤 でも、さっき阿波おどりに関する衝撃の事実が発覚してしまい……。


──取材前に盛り上がっていましたね(笑)。

斉藤 僕がイメージする阿波おどりで踊ってしまったんですけど、幹葉さんに話を伺ったところ、阿波おどりは男女でフォルムが違うそうで。

幹葉 阿波おどりは女性の場合は全員揃って腕を高く挙げて踊るんですけど、男性の場合は腰の位置がすごく低くて、なおかつ色々な方向に手を向けるんですよ。それが男らしくて、めちゃくちゃカッコいいんです。

斉藤 フリースタイルなんですね。話は戻りますが、あのステージで阿波おどりをして、みんなを踊らせてしまうというのがすごくカッコいいなと思って。僕が言うことではないんですけど、この方はカリスマ性があるんだなと思ったんですよ。惹きつけられてしまうものがある。最初にステージを見たときからそれは明らかでしたけど、改めてすごいなと思いましたね。

幹葉 そんな……!たくさん褒めていただいて、嬉しいです。

──それこそカリスマ性という部分を、幹葉さんは斉藤さんに感じられているのではないでしょうか。

幹葉 はい。
“SACRA MUSIC FES.”で、壮馬さんがステージに立たれて空気がガラりと変わったんですよね。私たちが騒いだあとに、まったく違う壮馬さんの色を出されていて。

斉藤 MCもせず、大きい音だけ出して帰るみたいな。

幹葉 そのギャップが最高で、それこそロックでカッコよかったです。

斉藤 でも、幹葉さんたちが会場をすごく盛り上げてくれたおかげでステージに出やすかったんですよ。自分たちのやりたい、ダークな音楽をやってもいいのかなと。助かりましたね。

──そうした出会いを経て、今回「幹葉の森」にお越しいただきましたが、実は今回は幹葉さん直々に御本人にオファーしていて。しかも、それが「手紙」という形だったというお話についても、ぜひ。

幹葉 一度ゆっくりお喋りしてみたいなと思っていたので、先ほど話に上がったプロデューサーを通じて、「この連載に出てほしい」と壮馬さんにお手紙を出させてもらったんです。日々色々な活動をされているので、対談するお時間なんてあるのかな?と思いつつも、対談じゃないとしっかり話せないかも、とも思って。手紙という形でオファーさせていただくのは初めてだったので、まさかきちんと御本人の元に届くなんて!

斉藤 面白かったですよ。
プロデューサーから「よくわからないけど、手紙をいただいています」と言われて(笑)。でも、そういう気持ちを直筆でくださるのはものすごく嬉しいことで、あれをいただいたら「ぜひ!」ってなりますよ。それに自分としても、ぜひお話してみたかったんです。繰り返しになりますけど、この人はすごい、というのが第一印象からあったので。

幹葉 いやいや……。

斉藤 すごく素敵な部分がたくさんあると思うんですよ。個人的には声が好きで。

幹葉 えええええ!?(と、叫びながらキャスター付きの椅子で後ずさり壁にぶつかる)

斉藤 結構ぶつかりましたけど、大丈夫!?(笑)……こういう人柄も含めて、ちょっとお話しただけでも心を掴まれてしまうんですよね。天性の才能といいますか。この人はもっと大きなステージに立つ人なんだろうな、と最初にお会いしたときから思っていました。周りから言われませんか?

幹葉 いやいや……!たくさんお褒めの言葉をいただいて嬉しいんですが、私自身も声に関して壮馬さんに伺いたいことがたくさんあって。質問してもいいですか?

斉藤 もちろんです。


幹葉 どういう流れで声優、アーティスト活動をされるようになったのか、改めて壮馬さん御本人から直接お話をお伺いしたくて。生まれたときから「良い声かも」って思ってました……?

斉藤 いやいや、違いますね(笑)。自分でそう思ったことはありません。

幹葉 そんなに素敵な声をお持ちなのに?

斉藤 原体験から言うと、僕は両親が教員なんです。母が国語の専門で、幼少期の頃から絵本の読み聞かせをしてくれていたんです。母は関西人ということもあってか、読み聞かせが上手だったんですよね。ただ、日々仕事で忙しいからすぐ寝てしまうことがあって……それで「自分で読んだほうが早いな」と本を読んでいるうちに、物語が好きになっていきました。授業で音読をするときにたまに褒めてもらうことはあったけれど、自分が良い声だとか、お芝居をしよう、とはまったく思ってなくて。

幹葉 そうだったんですね。

斉藤 高校1年生のとき、色々あって学校に行きたくなくなってしまって。そのときにアニメや映画をたくさん見て、掛け値なしに救われたんです。自分もその世界に行ってみたい、という憧れの気持ちからスタートしましたね。
むしろ声優という仕事をする前に、中学時代から趣味でバンドをやっていて、ミュージシャンか作家になりたいと思っていました。

幹葉 ミュージシャンか作家!すごく興味深いお話です。

斉藤 でも不思議なもので、学校に行っていない間にお芝居に出会って、その道を地道に歩んできた結果、今音楽をやらせてもらったり、文章を書かせてもらっていて。自分としては音楽活動はご褒美のような気持ちです。

幹葉 先日のライブ(2023年5月“斉藤壮馬 5th Anniversary Live”)を拝見させていただきましたが、すごく楽しそうな姿が印象的でした。

斉藤 楽しかったですね。それこそ、ギターでバンマスのSakuさんとライブ後にお話ししたときに印象に残っていることがあって。Sakuさんが「俺はもうバンドはやらないと思ってた。そのバンドが色々あって上手くいかなくなって今はアレンジャーや作家として活動しているけれど、壮馬くんと出会って、斉藤壮馬バンドで色々な活動をしてきて、もう一度バンドって楽しいものなんだなと思えたんだよね」ってお話をしてくれたんです。で、そのあとにラジオにも来てくれたんですけど、ラジオではそれを喋らず(笑)。

幹葉 良いお話なのに(笑)。

斉藤 ビックリしたのが、僕もまったく同じことを思っていたことで。自分が音楽をやるときに「人とやるのは向いていないだろうな」と漠然と思っていたんです。でもSakuさんや黒田プロデューサーをはじめ、今のチームに出会って「バンドってやっぱり楽しいんだな」ってもう一度思うことができました。年々楽しくなってますね。

幹葉 サポートメンバーという形を飛び越えて、皆さんが楽しそうで、自分も見ていてすっごくテンションが上がりました。

斉藤 サポートメンバーという感覚は僕自身まったくなくて、斉藤壮馬という名義だけど、チームだし、バンドであるという考え方なんです。本当はもっとスタジオに入りたいくらい!この間幹葉さんに来ていただいたライブでは、ダブルアンコールの最後に「いさな」という曲をやったんですけど、イントロを伸ばして、みんなが1人ずつ集まってきて向かい合って演奏する、という場面があって。僕自身ジーンときて泣いちゃいそうだなぁってパッと横を見たら、Sakuさんが泣いていて「早めに泣いてる人がいるぞ!」と(笑)。あとでキーボードの重永(亮介)さんも「俺も泣きそうになったけど、Sakuちゃんがめちゃくちゃ泣いてたから、涙が引っ込んだわ」と言っていました。今回のライブはあれこれ考えすぎず、シンプルに楽しめましたね。


10代のときのお互いの音楽観は真逆?
幹葉 ライブのこだわりは中学生の頃からの経験に繋がっているんですか?

斉藤 どうなんですかね?中高でやっていたバンドは打ち込みも使ってたんですよ。

幹葉 中学の頃からですか!それはすごい。

斉藤 田舎あるあるかもしれないんですけど、ドラムがいないっていう。だからギターボーカル、ギター、ベースとサンプラーでやっていて。もうちょっと洋楽っぽい感じでやっていました。

幹葉 その頃からオリジナル曲をやっていたということですか?

斉藤 そう、それが好きだったんですよ。バンドが好きというより、何かを作るのが好きで。そのときはマイルールのような縛りがあって……例えばビブラートを使ったら負けとか。いわゆるメジャーシーンにいるようなバンドの音楽は絶対にやらないって思っていたんですね。メジャーシーンにいるような、っていうのは当時、勝手に思っていただけですけどね。

幹葉 尖ってる!

斉藤 中高生あるあるというか(笑)。当時と書いている曲の方向性はそこまで変わっていないんですが、スタンスというか、心の間口は広くなっているような気はします。今は単純にビブラートはできたほうが良いだろう、って思っていますし。

幹葉 ほかにもマイルールがあったんですか?

斉藤 結構色々あったな……。例えば、コード進行の縛りとか。今はそのコード進行もめっちゃ使ってますけどね(笑)。あと「ひとりじゃないよ」って曲よりも、「ひとりでもいいよ」っていう曲を作りたいな、と。僕自身、そういう曲に救われてきたんですよね。だから当時も今も、メッセージソングは書かないと決めています。自分の音楽はエンタメであり、フィクションだと思っているので、聴いた人それぞれが自分なりの意味を見つけてくれたらいいかなって。それで「背中を押された」「勇気が出た」と思ってもらっても、「深く沈んで寄り添ってくれる」と感じてもらってもいいし。あまり自分と地続きというより、どこかにそういう物語があるだけ……という。

幹葉 ライブで、ファンの皆さんが色々な受け取り方をされているんだなというのを感じました。盛り上がってる方も、聴き入ってる方もいて。それぞれが自分の中でこの曲の物語を作ってるのかなと、今お話を聞きながら思いました。

斉藤 そうなってくれていたら嬉しいですね。ライブの感想はどんな言葉でも嬉しいんですけど、「バンドパートのときはペンライトを振るよりも拳を振り上げたかった」といった感想を見かけて、なるほど、と。今、チームでも「ライブハウスツアーもやりたいよね」って話をしているんです。ライブって相互的なものというか、実際にその空間を共有しないと味わえないものってあるじゃないですか。僕らがもらえるものもかなり多いんですよね。

幹葉 うんうん。

斉藤 ただ、10代の自分はライブをやりたくなくて。

幹葉 じゃあ、その頃にライブでは作った曲は披露してなかったんですか?

斉藤 ほとんどやってなかったですね。「最高の音源を作りたい」という気持ちのほうが強かった。そういうのが好きだったんでしょうね。

幹葉 中高の時代にそう思えるってすごい。私はむしろ「ライブで完成させようぜ!」って感じでやっていました。

斉藤 学園祭などでバンドを組んでステージでやろうぜ、というノリがあるじゃないですか。そういう人たちと俺らは違うんだぜ、みたいなヤツでしたね(笑)。

幹葉 私は前者です(笑)。

斉藤 今考えると、そっちのほうが絶対に楽しいんですよ。それは声優の仕事を始めて、ご縁があって音楽活動もやらせてもらえるようになって……考え方がシンプルになっていったからこそ生まれた気持ちだなと思いますね。

幹葉 削ぎ落とされていくものですか。

斉藤 いや、増えていくことだと考えています。結果的には引き算かもしれないんですけど、好きだな、楽しいなってことがプラスで増えていって。昔は「ビブラートを使っちゃダメ」とか思っていましたけど、どこかで考え方が変わって「この人のビブラートが好きだな」と思うようになったんですよね。僕は宇多田ヒカルさんや、梅原裕一郎くんのビブラートが好きで。そう思えたほうが楽しいし、こういう気づきから考え方が変わっていきましたね。声優としてキャラクターソングをライブで歌わせてもらい、斉藤壮馬としてライブをする経験を重ねてきた経験も大きいかもしれません。

幹葉 これからライブでどんなことが行われるようになるのか、ますます楽しみになりますね。

斉藤 まだ次のライブの予定は決まっていないんですけど、何も決まっていないということは、音響的にも、映像演出的にも、ある程度なんでもできるということですから、楽しみですね。

幹葉 楽しみ!そういえば、壮馬さんのライブの1曲目に登場したカズー(膜鳴楽器の一種)をゲットしたんです。ゲットしたというか、壮馬さんのライブをみて欲しいー!と言っていたら重永さんが誕生日プレゼントとしてくださって。

斉藤 カズーはぜひ、スピスピでも使ってもらいたいですね。

幹葉 吹いてみて、ビックリしました。私も次のライブで使ってみたいなぁって。盗ませてもらいました(笑)。

斉藤 良かったです。SACRA MUSICでカズーを流行らせましょう(笑)。

斉藤壮馬のライブの作り方
幹葉 ほかにも勉強になることがたくさんあって。アーティスト・斉藤壮馬としてやりたいことと、ファンの皆さんの求めていることのバランスが絶妙だなって思ったんです。一人ひとり楽しむスタイルがあるなかで、壮馬さんたちは誰一人置いていかない。

斉藤 そう見えていたら良かった、嬉しいですね。

幹葉 でも、それをわかりやすく言葉にするわけではないですよね。例えば「みんなで一緒に行くよ!」とか。私はそういうのをわかりやすく伝えがちなんです。そういう言葉を使わずして、空気感で全員をまとめて、でも「それぞれ楽しんで良いんだよ」という雰囲気もある。MCもちょうど良いんですよね。壮馬さんはそういうライブの作り方がお上手だなって思っています。

──その自然体のライブスタイルについても、ぜひお話伺いたいですよね。

幹葉 はい!

斉藤 大学時代の後輩が先日のライブに来てくれていたんですけど、彼が言うには「普段の壮馬さんっぽくって良かったです」と。演出っぽくないというか。いわゆるパブリックな場で求められている「斉藤壮馬」でいることも大事だと思っていたんですけど、最近は自然体でも良いかな、むしろそちらの方が良いかもしれないと考えるようになったんです。素直に喋るって、言葉で言うのは簡単だけど、意外と難しい。でも、素直に感じたことを伝えることも大切なんだなって。ファンの方からも「あなたが好きなことをやっていて楽しそうな姿が一番良いです」というお手紙をいただいて「そうだよな」と……だから、MCもノープランでした。

幹葉 気品に溢れていました。

斉藤 でもそれは声優の経験が活きているんだと思います。自分の言葉で作品の魅力を喋る機会が多いので。逆に幹葉さんはMCやるときって「こういうふうに話そう」というのはあるんですか?

幹葉 喋りすぎないをモットーにしています。

斉藤 (笑)

幹葉 私も、話す内容に関してはガッツリは決めていないんです。ラストの曲の前は「今回のライブはこういう流れで組んだんだよ」ってことを上手く言えたらとは思うんですけど、ついつい遠回りしがちで。

斉藤 でも、そのMCが好きという人が多いのでは?

幹葉 ありがたいことに「止まらないお喋りが良い」と言ってくれる方はいます(笑)。

斉藤 そこが難しいところですよね。結果的にそうなってることが良いと言われたら、「そういう自分でいたほうがいいのかな?」って僕の場合は思ってしまっていました。でも、一度シンプルなところに戻って、カッコつけないようにいたいなって思うようになったんです。もちろん演奏的にはカッコいいものをやりたいですけど、気取る必要はないのかなって。

幹葉 私、歌っていると感情が溢れてきてしまうんです。お客さんから「普段は会社や学校で我慢していることもあるけど、ライブにきたら爆発させることができる!」って言葉をいただいたことがあって。素直になるのは難しい、というのは私も感じることがあるんですけど、ライブやけんこそ、お互いに感情を出しやすいんじゃないかなって。

斉藤 たしかに。それは音源を作っているだけだと感じられなかったことだろうなと思います。

幹葉 それに今回のライブの場合は、皆さんの声を直に聞くことができて、今、最高の状況ですよね。

斉藤 ね!全然違いますよね。自分の音楽的にはコール・アンド・レスポンスがあるような曲は少なかったんですけど、逆にコロナ禍になって初めてコール・アンド・レスポンスをしたいなと思うようになったんです。いつか声が出し合えるライブがしたいな、と思うようになって、そういう曲を作って。

幹葉 私は逆なんです。逆に声が出せない状況だからこそ、しっかり聴かせられる曲を歌いたいなと思って、そこからバラードができるっていう。

──お二人の真逆の、でもどこか通ずる考え方が面白いですね。

斉藤 うん、面白い!

幹葉 お客さんの声を聴いて、やっぱりテンションは上がりましたか?

斉藤 めちゃくちゃ上がりました。思っていた以上のボリュームで声を出してくださって。イヤモニをしてるけど声が聴こえるっていう。それがすごく嬉しかったです。

幹葉 女性だけじゃなくて、男性の声も聞こえていましたもんね。

斉藤 そうなんですよ。自分のライブですが、音楽ってすごいなと感じました。

幹葉 ライブ会場で、『UniteUp!』の戸谷菊之介くんと山口諒太郎くんと会ったんです。2人とも顔がキラキラしていて「壮馬さん、めちゃくちゃカッコよかった!」って。

斉藤 先日、2人とちょうど会ったんですけど、たしかに、そのときも感想を伝えてくれました。嬉しかったなあ。


曲作りの話題からコラボレーション話に発展?
幹葉 今までお話を聞いているなかで、本のお話がありました。今でも本はたくさん読まれているんですか?

斉藤 そうですね。

幹葉 それは曲を作るときのインプットの1つだったり?

斉藤 曲を作るために何かをインプットしようとは思っていなくて。本以外にも、音楽、映画、小説、漫画と……色々好きなものがあるんですけど、自分がやっていることって翻訳作業に近いものがあると感じているんですね。例えば、秋の日にちょっと肌寒い時期に、紅葉している落ち葉のなかを歩いているときの感情を曲にしたとして……歩いているときに「あの小説のあの場面を思い出すなぁ」とか考えているんですよね。自分が好きなものを自分の中で変換してアウトプットしているような感覚があります。

幹葉 お洒落!

斉藤 だから言いたいことは別になくて。お天気雨ってあるじゃないですか?お天気雨の西洋風の庭の映像がパッと浮かんで、そのときはきっとこういう音が鳴ってるよな……とか、そういう感覚で作っています。

幹葉 じゃあ、歌詞はあとから付けるということですか?

斉藤 そうですね。

幹葉 この景色には、こんな音、こんなメロディーが合うのかな、って思い浮かべながら作っていくんですね。

斉藤 はい。ただ、音楽理論を体系的に学んでいないので、頭の中でなっている音を形にするのに時間がかかるんですよ。「絶対この音なんだけど、どうやって弾けばいいかわからない」っていう。歌詞も書けないときは書けないです。書くことは好きなんですけどね。幹葉さんは歌詞を書くのはどうですか?大変?

幹葉 大変(笑)!でも、私は景色から歌詞が思い浮かぶということはなくて。お寿司屋さんで曲が浮かんだことくらいしか……。

斉藤 良いじゃないですか(笑)。お寿司屋さんってアイデアが浮かぶ気がします。

幹葉 えっ、でも壮馬さんが行かれるのは回らないほうですよね?

斉藤 いやいや、そんなことはないですよ!(笑)

幹葉 高級なお寿司だったらどんな音が鳴るんだろう……高級なお寿司の歌を作ってほしい!

斉藤 コラボレーションで作ってみますか(笑)。先日、お子さんのいる友人の家に遊びに行った際に、たまたま村瀬 歩さんが出演されている「シナぷしゅ」という番組を見たんですけど、僕はあの音楽がすごく好きで。ああいうのをやってみたいと思って……あ、光景が浮かんできたかも……いつか一緒に何かやりますか。

幹葉 良いんですか!?やりたいです!というか、壮馬さんの頭の中を見てみたい。今どんな光景が思い浮かんでいるんだろうか。

斉藤 本当は歌詞とメロディが同時に思い浮かべることはできたらいいんですけどね。あまりそういうことはないけど。

幹葉 ライブではギターを弾かれているじゃないですか。ギターを弾きながらメロディーを作っていくんですか?

斉藤 僕はコードが先かもしれません、曲によってはキーボードから作ることもあるし。ギターだけで曲を作っていると、ギターの外側の発想にいけなくなってしまうんですよね。手癖で同じコードになってしまうので、狭めないようにはしたいなと思っています。

幹葉 Sakuさんと相談しながら作ることもあるんですか?

斉藤 ありますね。それこそSakuさんと黒田プロデューサーがうちに来てくれて、セッションをしたことがあったんです。そのときにSakuさんが「壮馬くんの曲は全部メジャーコード、みたいな曲はあまりないよね」と。で、1時間くらいで出来たのが「Paper Tigers」という曲。お二人にはアイデアをすごくもらっています。だから、まだ形にしていないデモは無限にあるんですよ。そのアイデアの断片を送って、2人の反応が良さそうだったら続きを作るかって感じでやっています。

幹葉のコンプレックスの地声、「それが魅力的」
──斉藤さんからたくさんのお褒めの言葉をいただいていますが、幹葉さんはどのようなお気持ちですか。

幹葉 声を褒めていただいてとっても嬉しいです。ただ、自分では喋り声があまり好きじゃないんですよ。

斉藤 えっ、そうなんですか。

幹葉 しゃがれていて、地声は低くて。仲の良い友人からは「酒焼けしてる?」と聞かれることもあるくらいで(苦笑)。でも歌ったら褒められることが多くて、ってことから歌が好きになったという経緯があります。私は通常の声はしゃがれているんですが、壮馬さんは喉のケアで気をつけられていることはありますか?

斉藤 そうですねえ……。やっていることとしたら、日頃からマスクをつけることと、寝るときにもマスクをつけていることかな。

幹葉 寝るときにマスクをつけるっていうのは毎日されているんですか?

斉藤 はい。15歳くらいからやってます。あとは部屋を乾燥させないようにするとか、皆さん実践しているであろうことをやっていますね。僕の場合は息の成分が多くて、喉もそこまで強くないから、調子が悪いときは音色がすぐ変わってしまうんです。だから丁寧にケアはするようにしていますが……でもそれくらいかな。

幹葉 ライブ前にすることってあるんですか?

斉藤 禁酒(笑)。全然違うんですよ。

幹葉 元の声が繊細で美しいからこそですね。

斉藤 というか、幹葉さんの喋り声、僕はとても素敵だと思っていますよ。

幹葉 本当ですか!……実はもっとしゃがれているんですよ。もうちょっと低いというか。今も意識してトーンを上げていますけど、ラジオに出るときは3トーンくらい上げています。

斉藤 結構上げてるんだ!

幹葉 そうですね、そうじゃないと人の声に埋もれてしまうんですよ。

斉藤 でも、それはそれで心地良い気もします。色々な音色を持っているじゃないですか。それがすごく素敵だなと。

幹葉 逆に私が今日一番伺いたかったことなんですけど、壮馬さんって色々な声色を持っているじゃないですか。私、最近落語をやっているんですが、喋り声になると登場人物の話し方が一緒になってしまうんです。それについて、もしよかったらアドバイスをいただきたくて……。

斉藤 僕は落語については素人なのであまり無責任なことは言えないんですが、以前落語を習ったときに「声を変えるな」と言われましたね。

幹葉 声を変えるな、ですか。

斉藤 これは声優のお仕事にも繋がるんですが、声優って声色を変えて色々なキャラクターを表現していると思われがちなんですけど、それって外側の部分の見え方で。例えば5歳の子どもを演じるとするじゃないですか。その声を表現するとき、小手先のテクニックで声色を変えるのではなくて、5歳の子どもが話すように喋ることが大事なんですよね。それは落語の場合も同じ。もちろん噺家さんによって指導法が違うとは思うんですが、自分の中でキャラクターの棲み分けができていれば、音が変わっていなくても聞き手はわかってくれるように感じています。だからあまり説明をしなくていいと思うんです。行動で示せれば、引き込まれてくれるんじゃないかなと。あまり音に囚われすぎないほうがいいんじゃないかな。幹葉さんなら絶対できると思いますよ。

幹葉 なるほど、音に囚われすぎず、行動でキャラクターの棲み分け……いけますかねえ。

斉藤 いけると思う。技に溺れる、じゃないですけど“綺麗だけどグッとこない”ってあるじゃないですか。そうなっちゃうのはもったいないな、と。多少歪でも、なぜか惹かれてしまうようなところから始められると良いのかもしれないなと思いますよ。

幹葉 それって落語だけに限らない話ですよね。胸に刻みます!

人を大切にすること
──この連載では毎回最後に、今回の対談の内容を踏まえて、幹葉さんに対してのアドバイスをゲストの方にいただいています。ただ、すでにたくさんいただいていて。

幹葉 うん、たくさんいただきました!ありがとうございます。だから無理なくで!

斉藤 ん~アドバイスかぁ……。僕なんかからは、大したことは言えないんですけど……。

幹葉 いやいや。壮馬さんはすごい方です。以前から思っていたのですが、壮馬さんに関わっている方は、みんな壮馬さんのことが大好きですよね。それもすごいなって。

斉藤 それはすごくありがたいことだなと思っています。少し話は逸れますが、もし自分に才能があるのであれば、それは「人に恵まれること」なのかなって。今ふと思い出しましたけど、アーティスト活動の途中から作詞・作曲をするようになって、そのときに黒田プロデューサーが「良いアレンジャーさんがいるから紹介するよ」と紹介してくれたんです。で、Sakuさんと出会って。Sakuさんと初めてお会いしたときに「もしかしたら人に恵まれるという才能があるのかも」って話をしたら、Sakuさんも「自分もまったく同じことを思っている」と言っていて。そんなSakuさんと一緒にバンドをやって、バンドを楽しいなと思えるようになって。これはもう、僕から言うことではないかもしれないんですけども……人を大事にするってすごく大切なことなんだろうなと思っています。言えるとしたら、それがアドバイスでしょうか。ただ、幹葉さんはすでに人を大切にされていると思いますよ。

幹葉 そうだといいなぁ……しているつもりではあるんですけど、周りのみんなにも伝わっていたらいいなぁと思います。

斉藤 きっと伝わっていますよ!幹葉さんは人を自然と笑顔にしてくれる方ですから。

●スピラ・スピカ 配信情報
スピラ・スピカ Digital Single
「私の物語」
2023年8月8日(火)より配信開始
作詞:幹葉 作曲・編曲:重永亮介

●スピラ・スピカ ライブ情報
スピラ・スピカ 5th Anniversary Event -88minutes Talk&Live-

チケット発売日: 2023/07/29
※チケット整理番号付き ※4歳以上チケット必要

<公演日時・会場>
2023/08/11(金)
大阪府:放送芸術学院専門学校 7F/ドリームホール
時間: 開場 15:00/開演 15:30
料金: 前売¥4,000(全自由・税込)
トークゲスト:小早川 秀樹 / 豊田 穂乃花
内容:トーク&ミニライブ

2023/08/17(木)
神奈川県:Yokohama mint hall
時間: 開場 18:30/開演 19:00
料金: 前売¥4,000(全自由・ドリンク代別・税込)
内容:トーク&ミニライブ

●斉藤壮馬/リリース情報
「Soma Saito Video Clips 2017-2022」
発売中

【通常盤(Blu-ray)】
品番:VVXL 160
価格:¥5,500(税込)
※初回プレス分には限定の三方背ケース付

【通常盤(DVD)】
品番:VVBL 196
価格:¥5,500(税込)
※初回プレス分には限定の三方背ケース付

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<Blu-ray/DVD>
1. Soma Saito’s Debut 5th Anniversary Online Live
・ラプソディ・インフェルノ
・ペトリコール
・レミニセンス
・carpool
・デート
・パレット
・デラシネ

2. Music Clips Collection
・フィッシュストーリー
・夜明けはまだ
・ヒカリ断ツ雨
・デート
・デラシネ
・結晶世界
・memento
・エピローグ -short ver.-
・ペトリコール
・Summerholic!
・パレット
・carpool
・幻日
・mirrors

3. Interview -5th Anniversary-

関連リンク
スピラ・スピカ
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https://spiraspica.com/

スピラ・スピカ
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スピラ・スピカ 作品一覧
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幹葉 公式Twitter
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斉藤壮馬
公式サイト
https://www.saitosoma.com/

公式Twitter
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https://www.youtube.com/@saitosomaSMEJ

斉藤壮馬 音楽作品試聴
https://somasaito.lnk.to/music
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