次世代ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」発の“現実(リアル)”と“仮想(キャラクター)”が同期するバンド、MyGO!!!!!。彼女たちが結成されるまでの物語を描くこの夏話題のアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』を、音楽面から掘り下げるリスアニ!の連載特集の第5回は、楽曲提供および音源の演奏ミュージシャンとしてMyGO!!!!!の音楽を支えるSUPA LOVE所属のクリエイター、長谷川大介と木下龍平に加え、サウンドディレクターの札ノ辻泰紀(エースクルー・エンタテインメント)とMyGO!!!!!音楽プロデューサーを務める緒方航貴(ブシロードミュージック)を迎えた座談会を実施。
長谷川が手がけた「迷星叫」「焚音打」、木下が提供した「影色舞」「碧天伴走」の制作エピソードをはじめ、MyGO!!!!!楽曲の音作りのこだわりに迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

MyGO!!!!!の“始まり”と“成長”を表現した4曲が生まれるまで
――まずは長谷川さんと木下さんが作編曲した楽曲の制作エピソードをお聞かせください。MyGO!!!!!の最初のオリジナル楽曲「迷星叫(まよいうた)」は、長谷川さんが作られたわけですが、まだバンドとしての具体的な形がないなかで、どのように制作を進めたのでしょうか。

長谷川大介 正直、この楽曲を作り始めた当初は、MyGO!!!!!のことを意識していたわけではなかったのですが、バンドのコンセプトやメンバー像、楽器の構成などを知らされたときに、僕の中にあったこの楽曲のイメージや世界観とちょうどマッチすると感じたんです。それが“夜の星”や“流れ星”、それとサウンド的にはギターメインで女性ボーカルがメッセージを伝えるというもので。その時点ではどんな方が歌うかもわかっていなかったのですが、この曲にMyGO!!!!!のメッセージ性を当てはめたら、ハマりそうだと思ったんですね。
あとは僕がエモーショナルロック好きで、バンド時代もそういう楽曲ばかりやっていたので、多分そういうところも上手くマッチングしたんだと思います。僕も今MyGO!!!!!のアニメを観ているのですが、結構エモーショナルなシーンが多いので、「なるほど、こういうことなんだな」と後から答え合わせできているようなところがあって(笑)。

緒方航貴 MyGO!!!!!は企画当初から既存の「バンドリ!」シリーズとは少し違う方向性を目指していて、ジャンル的にはメロコアや青春パンク系を初期の頃から想定していたのですが、最初は我々も手探り状態だったなかで、この楽曲からは「MyGO!!!!!の音楽ってこういうものなんじゃないかな?」と感じたんです。一筋縄ではいかないもどかしさみたいなフィーリングがあったので、この楽曲で決めさせていただきました。

長谷川 その時点ではあくまでデモだったので、そこからメロディの修正などがあって今の形になったのですが、僕の中では歌詞が付いたときに、MyGO!!!!!がやろうとしていることが何となくわかったんですよ。普通はもっと「頑張ろう」とか「一生懸命夢に向かおう」みたいなコンセプトの楽曲が多いと思うのですが、そうではなくて、十代の頃の迷っている感じやもどかしさが前面に押し出されていたので、これは無責任に「頑張れ!」という曲ではないなと感じて。
だからそういう気持ちを単純にサウンドに乗せたほうがいいと思って、楽器演奏はシンプルにして歌詞を引き立たせるアレンジを心掛けました。

――MyGO!!!!!の場合、基本キャストの皆さんがライブで実演することが前提になると思うので、その意味で1曲目は楽器のアンサンブルをシンプルにしたのかと思っていたのですが。

長谷川 僕的には、その時点ではキャストさんがどの程度の演奏ができるかはわかっていなかったので、純粋に聴いて良いと思えるものを考えていました。それと僕が元々持っている音楽のポリシーとして、あまり難しいことはいらないと思っているんですよ。世のヒット曲は実は難しいことをやっていない曲が多いと思っていて。それはなぜかと言うと、その方が(より多くの人に)伝わるからだと思うんですね。
ただ、楽曲の世界観は大事にしたいので、例えば2Bのギターはクリーントーンにして、夜空の下で悩んでいる感じを演出しています。それとサビの入りは耳に残るものにしたかったので、音数が少なくてインパクトのあるメロディを狙いました。

緒方 1Bの歌詞に“何千回夜を越える”とありますが、この楽曲は1曲を通して夜を越えていく歌というイメージがあったので、その意味で言うと2Bは深夜の2時か3時くらいで、それを経て最後に夜が明ける感じをサウンドでも表現していただいていて。あとは伝えるために難しいことはいらないというのも、この楽曲はコード進行的にもシンプルで、特にサビは7thも使っていないようなパンクな感じなので、その意味でも「迷星叫」が1曲目で良かったと、今お話を聞いて改めて感じました。



――余談ですが、MyGO!!!!!のメッセージ性は、長谷川さんが以前にギタリストとして活動していたバンド、Aqua Timezにも通じる印象があります。

長谷川 そうなんですよね。
僕もMyGO!!!!!のアニメを観ているうちに、なんか自分の過去を観ているような気分になってしまって。僕らもバンドなのでやっぱり揉めることもあったし、売れない頃はすごく悩みもしていたので、そういう頃のことを思い出すし、不思議と泣いてしまうんですよね。「なんだろう?この感覚」と思って。それに(高松)燈ちゃんが言っているメッセージは、うちの元ボーカル(太志)と近いところがあるので、正直、他人事じゃない感じがありますよね(笑)。だから僕的にも感情移入しやすいですし、MyGO!!!!!に関しては、自分のまま弾けばハマる感じはあります。

――時系列順でいくと、次は3rd LIVEで初披露された「影色舞(シルエットダンス)」になりますが、制作はどのタイミングで行われたのでしょうか?

木下龍平 作っているときは他の楽曲の情報を知らなかったので、今の長谷川さんのお話と同じくらいの状態だったと思います。
元々いただいたオーダーは、いわゆる「4つ打ち系のテンポが速い楽曲」で「みんなで簡単な振りと一緒にノレるようなもの」ということだったのですが、ダンスナンバーとはいえはっちゃける感じにするのは違うなと思ったのが第一で。というのも、同じ「踊る」といっても夜のクラブで踊るのではなく、夜道や夜の公園で街灯のもと踊っているようなイメージ、ということだったんですね。なのでリズムはクラップを入れたりメロディの節回しを工夫して小気味良くしつつ、メロディやコード感で物悲しさを出すように試行錯誤しながら作りました。



緒方 「影色舞」に関しては、最初の1~2曲を作ったところで、踊れるナンバーも欲しいとなって、少し毛色の違う楽曲として発注させていただきました。結果としてライブで人気の楽曲になったので、すごく良いものを作ってくださって本当にありがたいです。

木下 作った当初は思っていなかったんですけど、MyGO!!!!!の楽曲がだいぶ増えた今、改めて聴き返すと、かなり特殊な楽曲ですよね。
この曲調とこの声質の組み合わせは今まで聴いたことがない気がしますし、自分も初めて完成版を聴いたときに「あ、こういうことだったんだ」と答え合わせができた感覚があって。結果としてMyGO!!!!!のレパートリーにはあまりない楽曲になったのが嬉しかったです。リアルバンドのライブでは演者の皆さんが踊りながら弾いていたりして、すごいなあと思いました。

札ノ辻泰紀 この楽曲、デモの初稿の段階では鍵盤やシンセの音が結構入っていたんですよ。ただ、MyGO!!!!!の楽曲に関しては、キャストの皆さんがライブで実演することを想定して、「バンド内にない楽器は極力鳴らさない」というのが共通のテーマとしてあるので、鍵盤系は極力なくして竿(ギターやベース)で全部持っていく感じにしていただいたんです。こういう曲調の場合、同期のシンセを重ねたくなると思うのですが、そうしなかったことも今までにない雰囲気の楽曲になった理由のような気がします。

木下 だから音が男前なんですよね(笑)。自分は普段、音数が多い楽曲をよく作るのですが、MyGO!!!!!の楽曲に関しては基本生演奏でオケを作るので、自分が楽器を始めた頃を思い出しながらアレンジしています。

――アニメ第7話のライブシーンで演奏された挿入歌「碧天伴走(へきてんばんそう)」も木下さんの制作になります。

緒方 この楽曲は、物語の中盤で1つの盛り上がりになる楽曲、ということで制作したのですが、その時点ではまだ脚本が固まっていなくて、プロットの状態で制作をお願いしました。

木下 一応大まかなストーリーと歌詞の方向性はいただいていて、確か“「頑張ったね」という言葉と共に贈る歌”ということだったので、疾走感と解放感、ちょっと応援歌的な要素を意識して作りました。ただ、やはり底抜けに明るい感じや爽やかさは違うと思ったので、そこのバランスは試行錯誤しました。サビのメロディは明るめだけど、少し悲しい感じのコードを入れたりしていて。バンドの楽曲だけどアコギやピアノで弾き語りしても成り立つようなメロディとコードの世界観、Aメロ・Bメロ・サビの流れで1つのストーリーを描くような盛り上がりを意識しています。




緒方 1サビで言うと“必死なんだから”や“迷っても”のところでスケール外の音が使われていると思うのですが、そういう部分でも、バンドにまだ危うさが残っている感じを表現していただいているように感じました。

木下 この時点では、もうMyGO!!!!!の楽曲は何曲か出来上がっていて、自分もベース演奏で参加していたので、「影色舞」を作っていたときよりも、バンド自体の方向性をイメージしやすかったのが大きいと思います。それこそ自分も中学生の頃に楽器を始めたのですが、この曲はその当時好きだったHAWAIIAN6やハイスタ(Hi-STANDARD)辺りをイメージしながら作った覚えがあります(笑)。メロディがエモくて、ちょっと悲しいコードも入れつつ、爽やかすぎないけど前向きな感じっていう。

――確かに。それとこの楽曲のイントロ、勢いがあってかっこいいですよね。

木下 ありがとうございます。実はこの曲、最初はイントロがなくて歌始まりだったんですよ。ただ、アニメのストーリー上、イントロを失敗するシーンがあるので、そのバージョンも作ることになって、イントロなしとありの両パターンで制作を進めたのですが、結果、イントロを気に入ってしまったので、元からある形で進めることをご提案した覚えがあります。

――そして3rdシングルに収録された「焚音打(たねび)」は長谷川さんが制作。「迷星叫」はシンプルなアレンジを心掛けたとのことですが、こちらは一転してテクニカルかつ色んな要素の詰まった楽曲になりました。

長谷川 実は「焚音打」は元々、別のオーダーに合わせて作った楽曲だったんですよ。ただ、作っていくうちに、「この曲では俺の好きなことをやろう」っていう気持ちになってしまって(笑)、自分のルーツにあるエモーショナルなところを前面に押し出して作りました。このときにはMyGO!!!!!の形もある程度わかっていたので、「もう行き過ぎたところまでやっちゃってもいいかな?」というのが自分の中にもあって、結果、かなりアグレッシブな仕上がりになったんですね。そんなデモを提出したところ、印象に残っていただいたみたいで、想定外の形で採用していただくことになりました。



緒方 確かに、本来想定していたものとは違う内容で、少なくともそのときのMyGO!!!!!にはまだ早い印象があったのですが、逆に温めておきたいというのがありまして。でも、その分、挑戦的だし今までのMyGO!!!!!の色んな部分を踏まえた楽曲になっていて、ポエトリーもあるし、パンクロックな感じが詰まっていて、ある種、大団円的な雰囲気もあるので、5th LIVEの表題的な位置の楽曲として使わせていただきました。5th LIVEではこの楽曲に追いつけるだけのところまで行きたいというのもありましたし、逆にこの楽曲のパワーに引っ張ってもらったところもあると思います。歌詞にもありますけど、“このパンクロックの中で同じ熱になれるいまがすべて”というところがすべてで、まさにバンドにとっての“種火”になった楽曲だと思います。

長谷川 僕的にはものすごくチャレンジした曲でもあって。イントロから「このテンポでそれを弾くの?」っていう難しいフレーズになっているし、他にもBメロとかに割とややこしいフレーズを混ぜていて。僕的には、そこでバンドが少しずつ上手くなっていく感じを表現できたらと思って、あえて入れたところがあります。それとラップとは言わないまでも、リズムに乗せて音程のない歌をうたう部分も、チャレンジポイントになったと思います。

――連載第4回のインタビューで、サイドギター担当の立石 凛さんが、この楽曲のギターのカッティングが速すぎて、今までにない難関だったとおっしゃっていました。

長谷川 いや、多分、普通は弾けないんですよね。BPMもかなり速いですし、16分で刻んでいるフレーズがすごく多いので。この楽曲、左手の運指ではなくて、単純に右手を速く動かさなくてはいけないんですけど、それって結構難しいんですよ。だけど、そういう壁があったほうがバンドって燃えるじゃないですか(笑)。ギターにしても限界を自分で作ってしまうとそこで止まってしまうんですよね。僕も昔から自分の一歩先の何かを目指して練習をしていて。MyGO!!!!!というバンドも、そういう紆余曲折を経て成長していくことがわかっていたので、ここらでガツンと一歩成長させるフレーズを入れたら面白いかなと思って……立石さんには申し訳なかったです(苦笑)。

――ということは今後、またMyGO!!!!!に楽曲を書くとしたら、さらにすごい演奏力が必要な楽曲になるかもしれないということですよね。

木下 もうライトハンド入れましょうよ(笑)。方向性が違う気もしますけど。

長谷川 そうそう。そこはあくまでパンクロックやメロコアの枠をはみでないようにしようと思っていて。僕もその辺のジャンルのルーツにハイスタとかがいるんですけど、ハイスタもとにかく右手が速いんですよ。

木下 確かに(笑)。

長谷川 僕がMyGO!!!!!の楽曲を作る場合、「左手が速い」のは違うけど「右手が速い」のはアリと思っているんですよ。パンクロックって大体そういうものだと思うので(笑)。「左手が速い」はジャンルが変わってしまうんですよね。メタルとかハードロックとかになるので。

「迷星叫」がすべての基準となったMyGO!!!!!の特別な音作り
――ここからはMyGO!!!!!の音作りのこだわりに関して深堀りできればと思います。具体的な音源制作に関しては、札ノ辻さんが主導されているとのことですが、最初はどのように制作を進めたのでしょうか。

札ノ辻 2021年の暮れくらいにプロジェクトのお話をいただいて、そこから楽曲の選定やスタッフィングを進めていったのですが、MyGO!!!!!の楽曲に関しては制作プロセスとして、演奏するプレイヤーとトラックダウンするエンジニアは基本統一して、同じ座組みでやっていきたいというお話だったんです。そこでプレイヤーに関しては、緒方さんとも相談したうえで、ギターはこのプログラムのスタートになった「迷星叫」を作ってくださった長谷川さん、ベースは木下さん、ドラムは弊社の植木建象という座組みで統一することにしました。手探りでスタートしたので大変だったのですが、ミュージシャンも含めて基準になったのは「迷星叫」で、あの楽曲でMyGO!!!!!ができたと言っても過言ではないと思います。「迷星叫」は一番時間をかけて制作した楽曲で、実は羊宮(妃那)さんの歌も1度録り直したんです。

――えっ、そうだったんですか?

札ノ辻 最初の段階で燈ちゃんのキャラ設定や声の出し方の方向性を緒方さんにチェックしてもらったうえで、レコーディングを行ったのですが、やはりMyGO!!!!!は楽曲が強いので、それに負けないリードボーカルという意味では、ニュアンスが強すぎると、歌声としての乗りが弱くなるところもあったんですね。その後も制作が進行していくなかで、羊宮さんは並行してボイスレッスンに通われていて、2~3曲できたところで、燈ちゃんとしての歌い方を確立してきたんです。そこで「迷星叫」をもう一度録り直すことにして、歌っていただいたのが今の「迷星叫」になります。なので歌のレコーディングを固めるまでにもかなりのプロセスがありました。しかも「迷星叫」に関しては、トラックダウンも5~6回ぐらいやり直したんですよ。

――それはどんな音を目指したのでしょうか?

札ノ辻 個人的に既存の「バンドリ!」との立ち位置の違いを明確にしたくて、TD(トラックダウン)エンジニアに関しても今までとは違うタイプの方にお願いしたんです。それがmillennium paradeのエンジニアを担当されている佐々木優さんという方で。MyGO!!!!!は楽器構成がシンプルな中にハイクオリティなスキルが入っていて、ベースやドラムも手数が多くてテクニカルなので、millennium paradeに通じるようなドープな鳴りというか音の太さがほしかったんです。ギターに関しても、長谷川さんに作り込んでいただいている音色からさらにリアンプして、アナログを通したりもしていて。1つのアーティストバンドというか、声優さんの枠を超えたアーティストとしてのバンド像というところを意識して作っていきました。

――MyGO!!!!!のサウンドにはすごくパンチがありますが、そこは佐々木さんのエンジニアリングの力やアナログ機材を通すことで実現していたんですね。

札ノ辻 そうですね。TDは池袋にあるDedeというスタジオで作業しているのですが、そこのオーナーの吉川(昭仁)さんという方が機材マニアで、ビンテージ機器だらけなんですよ。millennium paradeもそのスタジオでがっつりやっているんですけど、佐々木さんにはそのスタジオで作業していただいていて。もちろん最初の音色の選定や演奏ありきではあるのですが、そこに色んな手法やエッセンスを取り入れて、こだわった音作りをしています。

――長谷川さんと木下さんは、MyGO!!!!!の楽曲を演奏レコーディングする際、どんなことを意識していますか?

長谷川 ギターに関しては、本人が鳴らせる音を越えないことをテーマにしているので、キャスト本人が使っている機材情報を共有していただいて、同じメーカーの機材を使うようにしています。で、MyGO!!!!!の場合はリードギターとリズムギターが明確に分かれているので、そこも意識して、リードのほうはよりテクニカル、リズムはよりシンプルに、というのを意識しています。リードギターに関しては(要)楽奈ちゃんが使っているSUPROというメーカーのアンプを使っていて、リズムギターはLaneyのアンプでコード弾きをしっかり支える作り方にしていますね。

木下 ベースのフレージングに関しては、それこそ1曲目の「迷星叫」を録るときに、ベースがどれくらい動くかのバランスを、楽曲を書いた長谷川さんとも話しながら試行錯誤しました。キャストの方が弾くことが前提にあったので、最初はそこも意識していたのですが、だんだん「やっちゃっていいかな」と思うようになって(笑)。多少やりすぎたかな?と思っても、ライブを観ると小日向(美香)さんがちゃんと弾いているんですよね。特に「潜在表明」は楽曲を書いた鈴木(裕明)さんの好みもあってベースがだいぶ動いているのですが、ちゃんとフレーズを拾って弾いてくれていたのですごいなと思って。長谷川さんも話されていたように、難しいフレーズがあると燃えて弾きたくなると思うんですよ。音色に関しては、速い曲が多いので、アタックがしっかり見えるように意識しているのと、エンジニアさんの要望で低いサブベースみたいな音を作って重さも担保するようにしています。



長谷川 あと、楽曲で言うと「影色舞」は苦労したんですよ。というのも、元々のデモのアレンジはパンクスタイルじゃないギターだったんですね。でも僕はパンクスタイルの人間がやっているという線は崩してはいけないと思ったんです。確かにああいう曲調の場合、シングルコイルのギターでカッティングとかで演奏したほうがかっこいいのはわかるんですけど、それをそのままやってしまうとMyGO!!!!!ではなくなると思って。あくまでもパンクバンドがやっているテイストを残したくて……めっちゃくちゃ苦労しました(笑)。でも、ライブを観たときにちゃんとそのスタイルを継承してくれていて、こだわって良かったと思いましたね。

木下 しかもステップを踏みながらですしね(笑)。僕が作ったデモはもっとチャキチャキしたギターだったんですけど、長谷川さんが音色を変えてくださったんです。でも、聴いたら確かにこの太さがいいなあと思って。やってもらって大正解でした。



――ちなみに、皆さんの個人的なMyGO!!!!!の推し曲を聞いてみてもいいですか?

木下 僕は「無路矢(のろし)」の重たい感じが好きですね。この曲もベースを頑張ってしまったので、小日向さんには申し訳ないなと思いつつ(苦笑)、ツインボーカルもリズムも特殊だし、歌詞も交わる部分があって。ただ、曲名の読み方は4th LIVEのMCで初めて知りました(笑)。

長谷川 僕はアニメのOPテーマの「壱雫空(ひとしずく)」です。ギターのレコーディングをしたときは、アニメのOPテーマになることを知らなかったんですけど、弾くのが楽しい曲だなあと思って。サビの突き抜け感とかノリがいいので、バンドマン受けしそうですよね。




札ノ辻 僕はやっぱり「迷星叫」ですね。思い入れが強すぎて、デモのタイトルもずっと頭に残っているくらいで(笑)。羊宮さんの憑依するニュアンスやパッション、歌も含めて、声優さんってすごいなあと改めて思いましたし、長谷川さんのメロディもキャッチーで、本当にいい楽曲だと思います。

緒方 立場上、1曲を選ぶのは難しいですが、プロデューサー云々は抜きにして話すと、僕は「焚音打」がめっちゃ好きです。この1~2カ月、「焚音打」のことしか考えてなかったくらいなので(笑)。もちろん5th LIVEの表題だったこともあるのですが、難しいことは抜きにして、やっぱり“このパンクロックの中で同じ熱になれるいまがすべて”ですよね。

長谷川 自分で作っていうのもなんですけど、「焚音打」はすごく不思議なパワーを持った曲だと思います。僕もMVを観させていただいたときに、ぞわぞわっとしたんですよね。特に歌詞がすごく好きですね。迷って迷って迷ったんだけど、最後に何か吹っ切れた感があるというか。自分たちで“パンクロック”と言い切ったところも含めて、すごく意志を感じる曲だと思います。

札ノ辻 あの曲の歌は、ほぼファーストテイクだったんですよね。一応、もう一本だけ録らせてくださいっていうレベルで、1テイクめでもう出来上がっていました。

アニメのライブシーンを感動的に彩ったあの楽曲たちの制作秘話
――アニメの音楽制作についてもお伺いさせてください。劇中に登場する楽曲はどれもアニメとシンクロした内容になっていますが、アニメ制作サイドとはどのようなやり取りを行って制作したのでしょうか。

緒方 僕がアニメの本読み(脚本会議)に毎回参加して、そこで監督が伝えてくださるイメージに合わせて、こちらから音楽的にどう表現するかを提案させていただく形で進めました。例えば第10話の「詩超絆(うたことば)」は、1度はバラバラになったメンバーが、燈のもとに1人ずつ戻ってきて、どんどん音数が増えて最終的に楽曲になる、というイメージを実現するために、脚本のト書きに「ここでドラムがINする」といったような書き込みなんかを何往復もやり取りしながら調整して、フィルム合わせで楽曲の構成を計算して制作しました。あとはダビング(アニメの音響作業の最終工程)時にも直接立ち会って確認させていただき、監督とも相談のうえで楽器やコーラスのバランスを原曲とは変化をつける形で調整していきました。最終的に音楽と映像の高い次元での融合が実現できていれば良いなと思っています。



――「詩超絆」のライブシーンは、アニメーションと楽曲の展開が完全に一致していて本当に感動しました。

緒方 札ノ辻さんにもご相談して、プレイヤーの方にも尺に合わせて弾いていただいたり、色々な方とのコミュニケーションとご協力を経て完成しました。CD音源にはないアニメ用の素材も作っていただいて、「詩超絆」も原曲にないイントロが2種類存在しています。

札ノ辻 他のシーンも含めて、アニメでMyGO!!!!!のメンバーが演奏する音は全部、実際に音源で演奏しているプレイヤーの方々に録っていただいていて。例えば(千早)愛音がミステイクするシーンの演奏も、長谷川さんにわざとミスった演奏を弾いてもらっていますし、なおかつ手元の映像も同録して、それをサンジゲンさんに資料として渡してアニメーションに起こしていただいているんです。

長谷川 そうそう。ミスったように弾くのって結構難しくて(笑)。他にもアニメ用に違うバージョンのアルペジオも弾いたりしましたね。なのでアニメを観ていると色んな想いが入ってしまうんですよ。「あのとき俺が弾いたギターがアニメーションになってる!」って(笑)。

木下 僕も第7話のリハのシーンで(長崎そよが)サウンドチェックせずにチューニングがズレた状態で弾くバージョンの「碧天伴走」を録りましたね。確かあれは上の空の状態という設定だったのですが、チューニングってちょっと狂ったぐらいだと一般の方はわからないと思うので、結構めちゃくちゃにして録りました(笑)。

緒方 それと第12話のライブシーンの「迷星叫」に関しては、今回のアニメを通して既存曲が登場するのはここだけになるので、ファンの方がハッとなるポイントを作りたくて、ボーカルをアニメ用に録り直しました。先ほど「迷星叫」の音源は1度録り直したというお話もありましたが、そこからまた1年以上経っていましたし、その間で羊宮さんのボーカリストとしての変化や成長も感じていたので、それを一番良い形で発揮できればと思いまして。実際どんなイメージで録ったかは、どこかの機会で羊宮さんご本人から直接お話いただくのが良いのかなと思っています。



――ここまでMyGO!!!!!の音楽制作について興味深いお話たくさんしていただきましたが、そのようにMyGO!!!!!の音楽を築いてきた皆さんから見て、MyGO!!!!!の音楽の核になっているのは何だと思いますか?

木下 難しいですが、僕はやっぱり“歌”だと思います。羊宮さんのあの声で楽曲を聴いた瞬間に、「ああ、これがMyGO!!!!!なのか」と納得したので、自分は。燈ちゃんというキャラクターと、それを表現する羊宮さんの歌声。それが大きいと思います。

長谷川 僕は抽象的ですけど、“感情”という気がしていて。あの年頃の今しか出せない感情の揺れ動きみたいなものが、そのまま音楽に出ている感じがするし、バンド名の由来でもある「迷いながらでも進んでいく」という感情そのものが核だと思うんですね。僕も、ギターを弾くときや楽曲を作るときは、その感情をまず詰め込もうと思っていて。音に感情なんて入らないと思うかもしれないですけど、僕は意外と入ると思うんですよ。そういう感情がMyGO!!!!!というバンドで作られていて、聴いた人・観た人はそこに惹きつけられていくんだと思います。

緒方 僕は“言霊”ですね。言葉が持っている強さ、そこに積み重なって溜まっている色んな想いの強さというか。結構キャッチーな言葉遣いもありますが、歌詞の1つ1つに意味合いがあって、ファンの方も考察したくなるような深みや濃さがあると感じていて。僕も制作の段階で不思議と歌詞をほとんど覚えてしまうのですが、そういう言霊の強さが届いているからこそ、ファンの方にも他人事ではない何かとして受け入れられているんだと思います。

札ノ辻 そういう意味でも“アーティストバンド”という見え方になっている気がするんですよね。もちろんキャストの皆さんが自分たちで楽曲を作っているわけではないですが、リードボーカルの羊宮さんの歌を中心に、バンドのアンサンブルも含めて、1つのアーティストバンドとして成立している印象があります。

――最後に、今後のMyGO!!!!!の音楽活動の構想について、緒方さんにお話いただけますでしょうか。

緒方 ライブの話で言うと、1st LIVEから4th LIVEまででMyGO!!!!!の世界観が確立されたなかで、新たにアニメの文脈が加わってからの5th LIVEがあったことで、ライブの意味合いも少しずつ変わってきたように思うんです。5th LIVEはキャストも公開されアニメも放送真っ只中での開催ということで、改めて考えなければならないところも多かったのですが、最終的にはメンバーの皆さん1人1人がキャラクターと真剣に向き合ってくださったおかげで1つの形になりましたし、10人としてのMyGO!!!!!がまた1つステージを進めることができたのではないかと思っています。4th LIVEでキャストが公開されて新しいMyGO!!!!!が始まって、5th LIVEがその序章だったとすると、次の12th☆LIVEのDAY2で、そこからまた成長した姿を見せられると思いますし、ゆくゆくはお客さんとの距離が近いライブハウスでのライブもまたできればと考えています。キャスト公開後はイベントだったりお客さんとのコミュニケーションや対話の場が増えてきたので、そういう部分も意識して音楽を作っていければと考えていて。MyGO!!!!!はサウンドとしてはお客さんを引っ張っていくような激しめの楽曲も多いですが、歌詞やライブでのコミュニケーションに“押しつけ”がないところが特徴の1つだと思っているので、その意味でもお客さんとの距離感を大事に活動を続けていきたいです。最高の楽曲を生み出してくださるクリエイターの皆さん、最高のパフォーマンスを魅せてくれるメンバーの皆さん、そして最高に熱いファンの皆さん全員を巻き込んで、これからも迷いながら一緒に進んでいければと思っています。

●作品情報
アニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』
放送局(※放送時間は編成の都合により変更になる場合がございます)
・TOKYO MX
毎週木曜23:00~23:30

・テレビ愛知
毎週木曜25:30~26:00

・サンテレビ
毎週木曜24:30~25:00

・静岡放送
毎週木曜25:25~25:55

・BS日テレ
毎週木曜24:00~24:30

・AT-X
毎週金曜22:30~23:00
リピート放送:毎週火曜10:30~11:00、 毎週木曜16:30~17:00

・北海道テレビ
初回7月2日(土)#1:26:30~27:00
#2以降:毎週土曜日26:30~27:00

・新潟テレビ21
初回7月6日(木)#1~#3:26:15~27:45
#4以降:毎週木曜日26:15~26:45

・北陸朝日放送
初回7月8日(土)#1:26:30~27:00
#2以降:毎週土曜日26:30~27:00

30分先行配信
ABEMA
毎週木曜22:30~23:00

配信
ABEMA
dアニメストア
U-NEXT
アニメ放題
バンダイチャンネル
Hulu
ニコニコ
ビデオマーケット
music.jp
DMM TV
ふらっと動画
TELASA
J:COMオンデマンド
milplus
スマートパスプレミアム
Amazon Prime Video
FOD
カンテレドーガ

●リリース情報
MyGO!!!!! 1st Album
「迷跡波」
11月1日発売

【Blu-ray付生産限定盤】

価格:¥9,900(税込)
品番:BRMM-10716

【通常盤】

価格:¥3,850(税込)
品番:BRMM-10717

<CD>
1.迷星叫
2.壱雫空
3.碧天伴走
4.影色舞
5.タイトル未定
6.潜在表明
7.音一会
8.春日影(MyGO!!!!! ver.)
9.タイトル未定
10.タイトル未定
11.無路矢
12.名無声
13.栞

<Blu-ray>
・MyGO!!!!! 4th LIVE「前へ進む音の中で」

初回生産分限定封入特典
・2024年開催予定 MyGO!!!!!単独ライブイベント最速先行抽選申込券
・2024年開催予定 MyGO!!!!!出演ライブイベント最速先行抽選申込券
・オリジナルキャラクターカード1枚(10種+シークレット箔押しサイン入り10種)

商品詳細はこちら

●ライブ情報
MyGO!!!!! 6度目の単独ライブが開催決定

BanG Dream! 12th☆LIVE DAY2 : MyGO!!!!!「ちいさな一瞬」
2023年11月4日(土) 開場17:00/開演18:00(予定)
会場:東京ガーデンシアター
チケット:プレミアムシート:22,000円(税込) 一般指定席:9,900円(税込)

最速先行抽選
受付期間:2023年8月9日(水) 10:00 ~ 9月18日(月・祝) 23:59
受付URL:https://eplus.jp/mygo_hitoshizuku/
※本公演のチケット最速先行抽選には、8月9日(水)リリース MyGO!!!!! 3rd Single「壱雫空」初回生産分に封入の申込券でご応募いただけます。

詳しくはこちら

Roselia単独ライブ「Farbe」DAY1にMyGO!!!!!のオープニングアクト出演が決定!
Roselia「Farbe」
2023年9月16日(土)、17日(日) 開場17:00/開演18:00(予定)
オープニングアクト DAY1:MyGO!!!!!/DAY2:Ave Mujica
※MyGO!!!!!の出演は16日(土)のみとなります。

会場:有明アリーナ
チケット:プレミアムシート:22,000円(税込) 一般指定席:9,900円(税込)

チケット一般販売 受付中
受付URL:https://eplus.jp/roselia_2023/
※先着順・無くなり次第終了

詳しくはこちら

関連リンク
アニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』公式サイト
https://anime.bang-dream.com/mygo/