10月1日(日)、幕張メッセ 幕張イベントホールにて『TrySail Live Tour 2023 Special Edition“SuperBlooooom”』が開催された。最新アルバムを引っ提げた“SuperBloom”ツアーの追加公演にして千秋楽、“Special Edition”と銘打たれた本公演のレポートをお届けする。


PHOTOGRAPHY BY 江藤はんな(SHERPA+) 大庭元
TEXT BY 青木佑磨(学園祭学園)

長きに渡る制限を越え、TrySail(麻倉もも雨宮天夏川椎菜)にとって声出し解禁ツアーとなった今回。3人のこれまでの歴史すべてを振り返る「リスアニ!Vol.52 TrySail音楽大全」のインタビューにおいても自分たちの強みは「ライブの楽しさ」と語り、声出しのできない環境においても揺るがないパフォーマンスを彼女たちは作ってきたという。そして今回いよいよTrySailのライブが本来の姿を取り戻す。開演前の会場はその期待で満ちていた。

長い暗闇を抜け、TrySailのライブが帰ってきた
宝石箱を開くように、お伽話が始まるかの如くオーバーチュアとライティングが会場を包む。そして「SuperBlooooom!!!」の掛け声と共にツアーファイナルは始まった。「いくよ、せーの!」と呼びかけると一瞬で客席のボルテージは最高潮に。スパンコールが印象的なピンク、青、黄色の衣装に身を包んだ3人を、同じく3色のペンライトが迎え入れる。最新アルバムは「全曲主役級」と本人たちが語るほどに個性に溢れ、タイトル曲「SuperBloom」はそれらを牽引する、空間を圧倒的な楽しさで制圧するパワーを秘めていた。

麻倉ももが「私たちのライブが帰ってきました!」と叫び2曲目の「Re Bon Voyage」へ。4thアルバムのリード曲でこちらもTrySailのコンセプトである航海や旅をモチーフした楽曲。3人揃いのポーズや振りが多くありながらも、並んで目に留まると各々の個性が特に際立つ。
全身にキュートを行き渡らせ、指先のシルエットにまで気を配られた麻倉もも。客席のテンションに呼応するように、歓声を浴びれば浴びるほど大きくなる夏川の挙動。そして楽しいもシリアスも、かっこいいもかわいいも圧倒的な自我のフィルターを通して表現される雨宮。三者三様のパフォーマンスに圧倒されながら、4thアルバムにおいても並びの曲順だった「Favorite days」。雨宮の「今日はスペシャルエディション、スペシャルに遊んでいくよ!」の声に会場は更に盛り上がりを見せる。花道を駆け、センターステージでメンバーと客席がお揃いの振付。「Hey boys! girls!」の掛け声に合わせてのコール&レスポンスで益々一体感が高まる。続く1stアルバム『Sail Canvas』収録の「Baby My Step」では、次々に主役が入れ替わるようなトライアングルフォーメーションで観る者を楽しませてくれる。初々しくも止まらない4つ打ちのビート、さらにノンストップで「マイハートリバイバル」へと繋がって、スラップベースが唸るディスコファンクに合わせてメンバーも客席も全力で踊る。矢継ぎ早に続くラストスパートばりのラッシュに、最早「狂騒」と言って差し支えない空気が会場を包んでいた。

オープニングから一度たりとも立ち止まることなく、最初のセクションのラストを飾ったのは「adrenaline!!!」。彼女たちの初期の代表曲でありながらも、「だからこそ頼り過ぎたくない、この曲だけだと思われたくない」とセットリストから遠ざけたこともあるという。
しかしライブを続けるうちに、この曲で出会ってくれた人やその日にしかライブに参加できない人のことを想い、再び大切な曲として生まれ変わったと「TrySail音楽大全」で語ってくれた。そんな想いが結実した、久々に本来の姿で歌われる「adrenaline!!!」は、間違いなくかつてを超える楽曲強度を備えていた。

驚くべきことに、ここでようやく初のMC。彼女たちは「序盤から飛ばしたけど大丈夫?」「こっちはビショビショです」「この後も覚悟しとけよー」と笑い合うが、6曲連続でアッパーな楽曲をパフォーマンスした直後とは思えない余裕の表情に見える。「今回のツアーはとにかくみんな疲れるので、協力が大事!」と麻倉ももが語り、会場全体で円陣を組むことに。「もちょ、そら、ナンス、幕張、Sail Out!」と叫んで会場が1つとなった。

圧倒的なステージを見せつけた彼女たちだが、ここで「自己紹介を忘れていた」という可愛らしいハプニングも。それを受けて「初めましての人もいるかもしれないから」と1人1人が初対面に向けての挨拶を始める。

麻倉は「初めましての皆さんよろしくお願いします!麻倉ももです!今回のツアーはあっという間に終わります。本当に体感10分。最後まで全部を出し切って、明日の仕事なんかクソ食らえだー!」と本ツアーの楽しさを語る。雨宮は「初めましての人に向けて自己紹介しますと、私は暴れるお姉さんです。
私に負けないように楽しんでくださいね。でも古参の人は新参の人を思いやって、古参の人のことは……私が思いやってあげるから」とそのスタンスが伝わる挨拶。夏川は「今回のツアーは体という体、声という声を使うライブになります。皆さんの全力を見せてくださいね。天さんに準えて言うと、私は叫ぶお姉さんです!負けない声を返してください!」とTrySailの煽り担当らしく会場を盛り上げた。


甘酸っぱい恋も、悲恋も、ファンへの愛情も全部詰め込んだ宝石箱
そうしてメンバーと客席の結束が深まり始まったのは、キュートに振り切った5thアルバム曲「ちゅるちゅわ」。メインステージに戻り、続いてもウィスパーボイスのボーカルが際立つ「はなれない距離」と続く。ホールでのライブながら、耳元で囁かれるような近接感や、メンバー同士が目を合わせて行うコミュニケーション、寄り添いあって歌う仲睦まじいシーンの数々に客席が沸く。そしてデジタルリリースされた「flower」はTrySailとファンの関係性のようにも受け取れるラブソング。たくさんの「ありがとう」を伝えながら、1つ1つ大切そうに言葉を紡いでいった。

温かな空気が流れるなか、雨宮にスポットが当たり残る2人は退場。悩殺セットリストからシームレスにソロ楽曲パートに突入していく。
雨宮のソロ曲は「マリアに乾杯」、本人作詞作曲によるラテン歌謡ナンバーだ。曰く山本リンダを意識したヘアアレンジを施しているとのことで、ビジュアル面からも客席を引き込むパフォーマンスとなった。続いて登場したのは夏川。田淵智也による提供曲「ハレノバテイクオーバー」で観客と共に獣の咆哮の如く叫び、ほんの1曲でライブを自分色に染め上げた。ヒリついた高揚感のなか、ふんわりとピンク色のオーラを身に纏った麻倉ももがステージに降り立つ。思春期の甘酸っぱい悩みを歌う「ユメシンデレラ」が始まり、柔らかな空気の変化と合間に挟まる「ねぇ 付き合って」のセリフには感嘆の声が上がった。

麻倉がステージを去り、雨宮・夏川の歌い出しで最新アルバム曲「Mermaid」が始まる。その名の通り人魚の恋のような儚い想いを歌うダンスナンバー。歌い出しの一節を2人が歌い終える頃には麻倉が早替えを終えて帰還し、3人でのパフォーマンス。レーススカートがはためく銀色の衣装に着替えたTrySailが、悲恋を情熱的に歌い上げた。

衣装チェンジを終え、再びMCの時間に。SNSで募集したトークテーマが、ライブのコンセプトに準えて「ジュエル」としてステージに隠されており、それを見つけてトークをするという趣向のコーナーだ。
まずは「ツアーで起きたハプニング」について。夏川は大阪公演のMCなのに福岡名物の「むっちゃん万十を食べたい!」と言ってしまった話。雨宮は本番直前に衣装の背中部分を破いてしまい、それを反省してダイエットに成功した話。麻倉は衣装のパーツが着ている服の中に入りこんでしまいスタッフに探させてしまったエピソードを披露。麻倉がパーツ探しを再現するため夏川の衣装に触れた際、「ももちゃんにスカートめくられると思った!」と夏川が慌てふためき崩れ落ちる場面も。雨宮はその状況を「あの子、自分で行くのはいいけど来られるのには弱いんですよ」と解説してくれた。

今回のツアー最後となるジュエル(トークテーマ)は、スタッフから「久しぶりの声出し可能なツアーを無事走り切ったということで、会場の皆さんとスタッフでTrySailにツアー完走おめでとうと言ってあげたい」というもの。それを受け、センターステージでTrySailを囲むように一斉に労いの言葉がかけられる。雨宮がパタパタと顔を仰ぎながら「絶対このあともライブ成功させなきゃね。まだ途中だから」と涙を抑える一幕も見られた。

TrySailは最後の一滴までエネルギーを搾り出す!
麻倉の「次の曲は皆さんぜひ座ってお楽しみください」という言葉から始まったのは「Lapis」。TrySailもステージに座り込みメンバー同士が向き合った姿勢で、緊迫感のある楽曲の世界観に没入してゆく。
曲の終盤には3人が折り重なり、「ただ君のため 落ちてみよう」の言葉と一時の静寂とともに衣装の一部を捨て去る演出。激しい振付ではなく声の力と世界観で聴かせる楽曲を、観客は息を飲み見守った。

静寂と緊迫を切り裂くように、重厚なデジタルビートが客席を揺らす。GARNiDELiAが手がけた「Truth.」で、4つ打ちのキックがシリアスなライブの空気を加速させつつ再度熱を与えていった。続く「誰がために愛は鳴る」で再び力強いコールに包まれる会場。メッセージをぶつけていくような歌唱でTrySailがそれに応える。そして代表曲の1つであり、「adrenaline!!!」同様に3人が一度は頼ることをやめたという「High Free Spirits」。メンバーが縦横無尽にメインステージや花道、センターステージを行き来し、自由に羽ばたくパフォーマンスを魅せた。夏川が「ファイナルー!」と叫ぶと麻倉は「まだまだ声出せるよね」と続き、雨宮は「それじゃラストスパート!」と本編終盤のセクションへと雪崩込んでいく。

「Good Luck Darling」では誇張なく両腕を千切れんばかりに大きく振り、手拍子を煽り続ける。ここに集まった人々と共に楽しむことに全力、「ライブが楽しいTrySail」と本人たちが自信を持って語ってくれたそのままの風景がそこにはあった。心地良い爽快感とともに曲が終わると、突如鳴り響くのはシタールの音色。最新アルバムより「Ah! La Vie En Rose!!! -ア!ラ・ビ・アン・ローズ-」の出番だ。オリエンタルなサウンドと「ウ!ハ!」のコール。楽しさもシリアスも、エキセントリックでさえも全力で表現するのが彼女たちのライブなのだと思い知らされる。そしてTrySailの航海の次なる行き先は「Sunsetカンフー」。恒例の間奏で行われる「修行タイム」でひたすらに繰り出される掌底、さらにはアウトロで新登場した「スーパー修行タイム」に、観客の肉体に蓄積された乳酸の量は限界値を迎える。そんななか、アウトロのBPMがみるみる上がりそのまま最後の楽曲「華麗ワンターン」へ。「幕張ファイナル!拳あげろー!」の煽りに、観客は最後の一滴までエネルギーを絞り出して応えた。全ての楽曲を歌い終え、その場にへたり込む3人。お互いがお互いの体を支え合いながら「帰るよ!」と叫びつつステージを離れるのだった。

ツアーファイナルを惜しみながら、交わされる再会の約束
アンコールの声に、合唱曲のような美しいハーモニーを奏でながら3人がステージに戻った。最新アルバムからバラード「遥かな航海」を携え、優しげな表情で客席を見つめながらこれまでの長い道程を振り返る。麻倉の「アンコールありがとうございます!まだまだ楽しみましょう!」の声を合図に、「Etoile」では会場に集まった1人1人に手を振ってゆく。そして1stアルバム『Sail Canvas』のラストを締め括る「ひかるカケラ」。ファンが待つ客席に向けてメンバーが駆け出し、悔いも体力も一滴も残さないとばかりに全身を使って想いを届ける。

「アンコールはキラキラ光る3曲。みんなが星に見えたね」と雨宮がこの時間を振り返る。夏川も「遥かな航海、Etoile、ひかるカケラはズルい。歌詞を噛み締めながら歌うとズルい」と涙を拭きながら語った。

雨宮は最後の挨拶で、ツアーを共に駆け抜けた客席に「戦友って感じだね」と語りかける。「ステージにナンちゃんがさっき倒れ込んだときの手の跡がついてるの。そんなに出し切るステージはやったことがないし、今までで一番パワフルなツアーでした。みんながいたからできた、全部を出し切ってくれてありがとうございました!」と締め括った。

麻倉は「最初に体感10分って言った通りだったでしょ?」と悪戯に笑う。「たくさん全力をもらって、みんなで高め合って、戦いでもあり支え合いでもあるツアーでした。今日で終わっちゃうのが寂しいし、せっかく体力がついたからランニングでも始めようかな?このツアーができて本当に幸せでした!」と麻倉らしく語ってくれた。

夏川は「久しぶりに声出しができるようになって、そうだこれがTrySailだって。少し前まではこの先どうなっちゃうんだろうって思いながら、でも苦しいときも大切に重ねてきたからこそ今この場所があるんだなって思います。海に道はないって「遥かなる航海」で歌ったけど、どうなるかわからない道でも皆さんが橋みたいにいてくれるから迷わず進めます。ツアー楽しかったです!お疲れ様でした!」と感謝の想いを伝えた。

「最後までついてきてくれますか!?いや、ついて行っていいですか!?」の掛け声と共に、アンコールラストの「Follow You!」。3人で指を合わせてハートを作ったり、千秋楽を終えんとする彼女たちが達成感に溢れた楽しげな表情を見せてくれる。何度も何度も会場中に手を振りながら、アンコールは幕を下ろしていった。

終演アナウンスが流れても「もう1回!」コールは鳴り止まず、TrySailが三度ステージに舞い戻る。「疲れてるくせにー!」と軽口を交わしながらも、「このツアーでずっと歌ってきたこの曲を、最後にもう一度みんなで一緒に歌いましょう!」とツアータイトルでもある最後の「SuperBloom」が始まった。Wアンコールで披露されたのは、今年8月に「THE FIRST TAKE」にて公開された、もう1つのアレンジの「SuperBloom」。彼女たちは口々に体力の限界を口にしていたが、見る側からすればオープニングからWアンコールに至るまでひたすら上がり続けるボルテージと、どんなに弾けたパフォーマンス中も全くブレない歌声、軽やかなステップと驚異の体力を見せつけられた。メンバーが会場を自由に駆け回るなか、雨宮と夏川が互いの手を合わせてハートを作る一幕も。また、間奏中に夏川が麻倉の背後をおずおずと尾け始め、それに気づいた麻倉が振り返ると夏川がハートの半分を差し出す。麻倉がそれに応えてハートが完成すると、会場から割れんばかりの喝采が贈られるシーンも見られた。

全身全霊で駆け抜けたツアーの終わりを惜しむように、「遥かなる航海」のインストに乗せて客席に手を振る。夏川は「またどこかで絶対会おうな!」、雨宮は「絶対元気でな!」、そして最後に麻倉が「本当にありがとうございました!お休みなさい!」と叫んで、今度こそ本当にTrySailの声出し解禁ツアー千秋楽は幕を下ろしたのであった。

長く続いたエンターテインメントにとっての暗闇が、再会を信じてパフォーマンスを磨き続けた彼女たちと、それを待ち続けたファンの力によって見事に晴れていく。常軌を逸するノンストップのツアーを乗り越えたTrySailが、この先さらに大きな存在としてアニメ音楽に影響を及ぼしてくれるのが楽しみでならない。

<セットリスト>
01. SuperBloom
02. Re Bon Voyage
03. Favorite days
04. Baby My Step
05. マイハートリバイバル
06. adrenaline!!!
07. ちゅるちゅわ
08. はなれない距離
09. flower
10. マリアに乾杯
11. ハレノバテイクオーバー
12. ユメシンデレラ
13. Mermaid
14. Lapis
15. Truth.
16. 誰が為に愛は鳴る
17. High Free Spirits
18. Good Luck darling
19. Ah! La Vie En Rose!!!-ア!ラ・ビ・アン・ローズ-
20. Sunsetカンフー
21. 華麗ワンターン

EN1. 遥かな航海
EN2. Etoile
EN3. ひかるカケラ
EN4. Follow You!

Wアンコール. SuperBloom – From THE FIRST TAKE

●イベント情報
リスアニ!LIVE 2024
2024年1月27日(土)SATURDAY STAGE
開場15:00/開演16:00(予定)
2024年1月28日(日)SUNDAY STAGE
開場14:00/開演15:00(予定)

会場
日本武道館

TrySailは1月28日(日)SUNDAY STAGEに出演!

チケット(※すべて全席指定)
1月27日(土)SATURDAY STAGE、1月28日(日)SUNDAY STAGE
¥10,000(税抜)/¥11,000(税込)

最速先行受付(イープラス)
受付期間:2023年10月1日(日)0:00~10月22日(日)23:59
受付はこちらから
https://eplus.jp/lisani2024/

詳しくはイベント公式サイトをチェック
https://www.lisani.jp/live/

関連リンク
TrySail オフィシャルサイト
https://trysail.jp/

TrySail オフィシャルTwitter
https://twitter.com/trysail_staff

TrySail オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCuI2in6tTAjsaqzdeOeWZkQ
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