INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
私とリムルの、チーム『転スラ』の絆に信頼して任せていただけた
——今年の夏は6月からの3ヵ月連続配信リリースや、“Animelo Summer Live”のご出演などありましたが、改めて振り返って、岡咲さんにとってはどんな夏でしたか?
岡咲美保 声優アーティストとして活動してきた2年間のなかで、夏の音楽活動が多かったんですよね。デビューも9月でしたし。今年の夏は、より音楽漬けな日々でした。まず3ヵ月連続のリリースで制作から携わらせていただいたのがすごく大きくて、今まで歌をうたうとかMVを撮っていただくとか、自分はそこに力を注いでいたんですけど、それだけじゃなくて今回は楽曲を選ばせていただいたり、初めて作詞もさせていただいて。
——配信シングルでの制作は、岡咲さんにも大きな影響があったわけですね。
岡咲 はい。もちろん忙しくもあったんですけど、皆さんに届ける前の仕込みの楽しさみたいな、そういうのを感じた夏でしたね。
——そうした夏を過ごされたあとには、11月に早くもニューシングル「ココロトラベル」がリリースとなります。こちらについては配信シングルの制作と被っていたんですか?
岡咲 ほぼ同時期でした。
——なるほど、とはいえ配信と今回のシングル、特に本作は2曲ともタイアップということで、アプローチもそれぞれ異なると思います。
岡咲 そうですね。ラフから完パケまでの自分の歌声を聴くたびに、私が声優ということもあるかもしれないですけど、曲によって全然違う世界観を楽しみながら作っていました。
——今回の2曲だけでもアプローチが異なるだけに、まさにこの夏は色んな世界観を行き来していたと。「ココロトラベル」は、岡咲さんにとって馴染みの深いアニメである『転生したらスライムだった件 コリウスの夢』のED主題歌。主人公のリムルを長年演じてきた作品のエンディングを初めて担当することには大きな意味があるのでは?
岡咲 はい……もう、責任重大です……!岡咲美保として『転スラ』アニメの楽曲を担当させていただけるなんて夢物語だと思っていたので、まさかこんな嬉しいお話をいただけるなんて思っていなかったですし、今まで色んな数々のアーティストさんが繋いでこられた『転スラ』楽曲のバトンを私に回していただけるなんて……。これまで5年間リムルを演じさせていただいて、私とリムルとの絆、チーム『転スラ』の絆みたいなものに信頼して任せていただけたのかなと思うと、誇らしさと嬉しさで胸がいっぱいです。
——岡咲さんにとっても思い入れも強い作品だけに、感慨もひとしおですよね。
岡咲 本当に周りの方たちに恵まれてるなって感謝もしましたし、同時に、皆さんの想いに応えねばならないなという気持ちがすごく大きくなって。
——そうした想いというのは、5年前のアニメ開始時から歌っているのと、5年経って歌えるとではまた意味合いも異なってくるのかなと。リムルのキャラクターソングは歌われてきたかと思いますが、それとはまた違う。
岡咲 はい、そこは大きかったです。『転スラ』として必要とされている私の居場所や役割は、リムルを担当すること。それは大前提として、でもそのなかで新たに岡咲美保という居場所をいただけたので、だとするならば、やっぱりリムルに対して想いを伝えられる場でもあるのかなというのは思っていて。だから最初からリムルの声で歌うというのは自分の頭には一切なくて。彼はアニメーションの中やマンガの中や小説の中で生きているキャラクターですけど、そこを飛び越えて私の目の前にリムルがいると思って、私の等身大の声で想いを伝えられたのかなというのは感じていますね。
——キャラクターソングのようにリムルの想いを歌うだけではなく、リムルに向けて岡咲さんの想いを伝えるような。
岡咲 キャラクターソングではリムルの声でリムルの気持ちになって、というところを、今回の「ココロトラベル」では自分の内側にスポットを持ってくるようなイメージでやっているので、それは全然違いましたね。
リムルが「そんなの出たもんでいいよ」みたいに言ってくれる感じがして
——そうしたアプローチについてはサウンドを受けても変わってくると思いますが、今回の楽曲についても岡咲さんがセレクトに関わっているのですか?
岡咲 はい、そうなんです。コンペで選ばせていただきました。
——この曲が選ばれた決め手はなんだったんですか?
岡咲 コンペは割と曲数があったんですけど、それぞれの曲を聴くだけじゃなくて、実際に歌ってみたんです。そのときにこの曲は初めて歌ったのに懐かしく感じて。“心が旅に出かけてるのさ”という歌い出しから、私がリムルと出会ったことやこの5年間の旅路、これからの旅路、リムルが見てきた世界、そして『コリウスの夢』の世界……と、本当に色々な景色が感じられたので、この曲にさせていただきました。
——たしかに『転スラ』らしい世界観と、岡咲さんのポップな世界観が非常にマッチしたサウンドだなと感じますね。コンペの段階で歌った際にご自身のボーカルアプローチはすでに固まっていたのですか?
岡咲 同じ曲でも歌い方で聴こえ方って本当に変わるなというのはこの仕事をしていて常々思うんです。なのでガチガチに作り込むのではなくて、今回は溢れ出るものを素直に出したいなと思い、レコーディングは自分の気持ちをフラットにして臨みました。
——なるほど。
岡咲 私、自分のフラットな場所って意外とわからなくて。自信のなさもあり、どの私がフラットなのかまだ確立できてないんですよね。でも今回、リムルが目の前にいてくれたことでフラットになれた部分はあります。
——さて、「ココロトラベル」ではMVも制作されましたが、撮影はいかがでしたか?
岡咲 今まではスタジオでかわいく撮っていただくことが多かったんですけど、今回は自然に身を委ねて。周りの世界観がすごく素敵で、その異世界に迷い込んだ自分を映し出せばそれで物語が成立するような場所での撮影だったので、木々や光に包まれながら、ただただ楽しく撮影させていただきました。映像も、異世界感がありつつ自然のエネルギーも感じるものになっています。私は木漏れ日に手をかざす手だけのカットが好きで、あれを観ると元気をもらえる気がして、スクショをたくさん撮りました(笑)。
——パワースポットの写真を待ち受けにするみたいな(笑)。さて、本作のもう1曲「キボウノレシピ」もタイアップということで、TVアニメ『とあるおっさんのVRMMO活動記』のOPテーマとなります。
岡咲 そうなんです。「ココロトラベル」が異世界だったらこちらはゲームの世界で、ステージを変えて自分と見つめ合えるような作品でもあります。「ココロトラベル」とはアプローチの仕方がまったく違っていて、この曲は作品に準じてポップに届けたいなというのが一番最初に自分のイメージにありました。原作のコミックを読むと、肩の力を抜いて楽しい気分になれるし、自分もこの世界に入ったらこういうことをしたいなと思う一方で、「あ、だったら別にゲームじゃなくても、今送っている日常でもできることあるよね」という日常への活力をもらったり。
——楽曲としてもそうした“楽しさ”を感じさせる、非常にポップな仕上がりとなりましたね。
岡咲 ポップさはすごく意識しましたし、主人公・アースの、自分の好きなことに真っ直ぐで揺るがない姿勢が好きで、そのアプローチをどういう方向性にするかをまず考えました。戦いのシーンもあるのでそれをかっこ良く語るのもアリかなと思ったんですけど、キャラクターも多いですし、個性豊かなキャラクターたちと出会うことでアースの柔軟さが際立っていくところも面白くて。だからみんなで歌ってハッピーになれるような曲にしたい!と思ったときに、サビの“君と君と君と スペシャル気分”というところでみんなで一緒に歌う光景が想像できたんです。アニメのキャラクターたちもそうですし、私もいつかライブで皆さんと一緒に歌えることを想像したらすごくわくわくしたので、「この曲で!」と決めました。
——ボーカルもまた楽しくキュートに、これぞ岡咲さんと思わせるような声になっていますね。
岡咲 ありがとうございます!「毎日、その日が楽しければずっと楽しいよ!」ということを伝えたいなと思ったときに、力が入りすぎると相手も一生懸命になっちゃうじゃないですか。私はレコーディングで、リズムに乗らなきゃとか、音楽としてこうやりたいっていうイメージを持って臨むんですけど、でもやっぱり一番はマインドで、私自身が楽しんで、音を楽しまないと、というのを考えて、笑顔で歌っているのが伝わる音色を意識しました。
——この曲もキュートなMVを制作されていますが、撮影はいかがでしたか?
岡咲 とにかく楽しかったです!
——楽しそうだったのは映像からも伝わってきますね(笑)。
岡咲 本当に楽しくて!「ココロトラベル」とはまた違ってかわいらしくポップに、映像もかわいいモーションをつけていただいて。
——なんとなく苦手そうだなというのは、あのイチゴを切る手つきからも感じられますね(笑)。
岡咲 最初に料理をするって言われたときに、ちゃんと「大丈夫ですか」って聞いたんです。でも、「やりましょう」という流れになりまして(笑)。で、やってみたらイチゴは切れたんですけどセンスがなくて(笑)。
——あはは(笑)。
考えられるから、足りないと思うから挑戦したいと思える
——実に対照的な2曲でそれぞれ岡咲さんの魅力をしっかり詰め込むことができたシングルとなりましたが、9月15日にはアーティスト活動2周年を迎えた岡咲さんとしては、デビューから2年経ったことをどう受け止めていますか?
岡咲 私自身まだまだだなと思うところはたくさんあるんですけど、自分のいいところだなと1つ思えるのは、挑戦することに対してフットワークが軽いところ。今回それを、この夏からのリリースを重ねていくなかで発揮できたのかなと思っていますし、色々と挑戦するなかで「自分のこういうところをもっと出していきたい」とか「次はこれがやりたい」とか、色んな気づきを見つけられたシーズンだったと思います。そしてそれをどんどんと試していける、自分が制作に入っていけるような体制で作っていけたということにすごく感謝の気持ちでいっぱいです。どんどんステップアップができているというのは自分の中ですごく感じています。
——それこそ2年前の自分と比べても成長を実感できている?
岡咲 2年前の9月15日は自分の心もすごくバタバタしていたし、やりたいことを実際にやってみると色んな景色が見えて、自分がやりたいことはすごくハードルが高いこともわかりました。でも、届けられたときの喜びもわかったし……と、本当に色んな感情が渦巻いています。挑戦することで色んな世界が開けるんだと思えるようになりましたね。
——そんな岡咲さんですが、今作リリース後の来年1月には、初のワンマンも控えていますね。念願のライブ、決まったときのお気持ちはいかがでしたか?
岡咲 「やったー!!」ですね!!ライブって情熱をもって挑まないといけない場なので、作品のライブイベントとかも緊張しちゃうんですけど、ワンマンライブのお話をいただいたときは、嬉しいって心の底から思えた。それってやっぱり早く皆さんに直接届けたい、という想いが自分の中で強かったからなんですよね。
——ファンの方々と喜びを分かち合える場所としても念願になりますね。
岡咲 私はコロナ禍でのデビューだったので、皆さんとの距離感を“取り戻す”というより“知っていく”みたいな段階からスタートしているんですよね。無観客から有観客を知り、声出しを作品ライブやフェスを通して知ったあとで、今度はワンマンライブできっと新しい景色が見えるんだろうなって思っています。新しい自分との出会いもあると思いますし、すごくポジティブなドキドキを感じています!
——まさにデビューから2年経って、本当に開花する瞬間が訪れるワンマンとなりそうですね。最後に、改めて新しいフェーズへと向かうこれからへの意気込みをお聞かせください。
岡咲 その都度その都度「やりたい」と芽生えた感情が冷める前に挑戦させていただけていることが本当に嬉しくて。そして、自分の“好き”を自信を持って届けられていることがすごく嬉しいんです。でもまた「あれがしたいこれがしたい」が出てくると思いますし、きっと明日にはまた新しい感情が芽生えていると思います。3年目も変わらずにそんな自分の姿勢を肯定し受け止めて、自分のやりたいことに素直に向かっていきたいなと思います。
●リリース情報
3rd Single
「ココロトラベル」
11月1日発売
【CD+Blu-ray盤】
品番:KIZM-781~2
価格:¥1,980(税込)
【通常盤】
品番:KICM-2139
定価:¥1,430(税込)
<CD>※全形態共通
M1. ココロトラベル(完全新作アニメーション『転生したらスライムだった件 コリウスの夢』エンディング主題歌)
作詞・作曲・編曲:永塚健登
M2. キボウノレシピ(TVアニメ『とあるおっさんのVRMMO活動記』EDテーマ)
作詞・作曲・編曲 : 青柳 諒
M3. ココロトラベル off vocal version
M4. キボウノレシピ off vocal version
<Blu-ray>
・「ココロトラベル」MUSIC VIDEO
・「キボウノレシピ」MUSIC VIDEO
・MAKING
●ライブ情報
「Miho Okasaki 1st LIVE 2024 ~キラメキブルーム~ supported by animelo」
日時:2024年1月27日(土)開場:16:30 開演:17:30
場所:神奈川・関内ホール 大ホール
関連リンク
岡咲美保 オフィシャルサイト
https://okasakimiho.com/
岡咲美保 オフィシャルX(旧Twitter)
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岡咲美保 オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/c/okasakimiho