TEXT BY 須永兼次
PHOTOGRAPHY BY
結城さやか
バースデー当日ならではの“自由で意外”なサプライズ、次々炸裂!?
まずはOP映像で、分厚い岩盤をぶち破って本公演のキービジュアルが登場して“爆誕”を表現すると、吹き出し花火がステージを彩るなか小林が現れ、ステージでも“爆誕”の雰囲気を表す。そしてニコッと笑顔を見せたのと同時に、その笑顔とこの記念すべき日が一番似合う「Happy ∞ Birthday」からライブは幕を開ける。序盤はメインステージをゆっくり歩きながらコミュニケーションを取るように歌唱すると、冒頭から大きなコールを返してくれた観客にサビのコール部分も委ねる形で披露していく。また、2サビ明けには軽快なステップをみせて観客を魅了。ハッピーかつクオリティの高いパフォーマンスをいきなり見せてくれた。楽しすぎて曲に合わせたラストの記念撮影をうっかり忘れてしまったのは、ご愛嬌と言ったところだろう。
改めて記念の1枚を収めたところで、「最高の誕生日になりそうな予感がしている」ということで、めでたいときならではの“きゃんぱい”曲「Easy Fizzy」へ。ミドルテンポのファンクに合わせて歌声からは少し力を抜き、表情にウキウキ感を溢れさせながら“きゃんぱい”のようにファンと指ハートを交わしていく。楽曲の中盤以降では美しくスピンも決めたりしながら、心の内を身振りも含めて伝えていくと、そのままシームレスに「Holiday!!」へ。サビの指振りが生んださらなる一体感のなか、大サビ冒頭をシャウト気味に歌唱することで溢れる楽しさを表現。Dメロの太くて強い歌声でのグルーヴィーな歌唱など、ボーカルワークにも隙がない。
それに続けて流れたのは、なんと彼女が初めてリリースした楽曲「君を守りたい」のイントロ。驚きと歓喜のざわめきが、徐々に広がっていく。ここでは直前までとはうって変わって凛とした表情へと切り替わり、ハードな楽曲にマッチするシャープかつ力強い歌声を頭サビから響かせていく。その歌声は、この曲を知っているかどうかなど関係なく、すべての観客の撃ち抜いていくもの。Dメロ部分のラップもスタイリッシュにこなしていくと、スポットライトに照らされながらの落ちサビでの歌声とパフォーマンスからは、とにかく凄まじい迫力が感じられた。
歌唱後には、連続で披露した4曲についてのトークに続いて1着目として着用している純白の衣装の話題に。これはOP映像から繋がる「生まれたて」をイメージしたものであり、「ここからまた新たに皆さんと一緒に物語を作っていくようなイメージ」を込めたことを明かしてくれた。
MC明け1曲目を飾ったのは、「Sunset Bicycle」。薄紫の照明に加えファンが灯すオレンジのペンライトがこの曲の舞台となる世界を構築するなか、ゆるりとした佇まいでありながらスーッとノビのある歌声を響かせ、またもファンを魅了していく。
と、ステージ奥のスクリーンに上映されたのは、開演前物販に登場した謎の着ぐるみパンダの密着(?)映像。待機列の近くをお散歩したり、ロビーに展開されていたフォトブースの等身大パネルと2ショットを撮ったりとなかなかにフリーダムなこのパンダ、映像の最後には中身が小林であることが明かされた。
そんな映像の間にカラフルな衣装に着替えた小林が後半1曲目として歌ったのは、メジャーデビュー曲「NO LIFE CODE」。1着目とは対称的な衣装を身にまとって、カラフルな世界を歌っていく。再び楽曲冒頭から声を張り上げるファンとコミュニケーションを取りながら、ぐわっと広がる歌声を響かせていく。Dメロ明けの一斉ジャンプで場内のボルテージがさらに高まっていくなか、小林はプレゼントを装填したバズーカを構え「爆誕、いくぞー!」と次々発射。そのボルテージどおりに右へ左へと爆裂させた。
歌唱後、歌詞になぞらえて「自由なこと、意外なことをしてみました!」とバズーカ発射を振り返りつつ、2着目の衣装の紹介とともに「私は、みんなと出会えたことで色がいっぱいつきました!」と感謝の想いを改めて届けていく。その「みんなと出会えた」きっかけとして「この子に導かれたからなのかな?」と語り、「今日は、そんな歌をうたいたいと思います」と続けるとファンからはどよめきが。
そのどよめきは「Deep Resonance」の歌い出しの瞬間、歓喜の絶叫へと変わる。なぜならこの曲は、彼女が津島善子役を担当する『ラブライブ!サンシャイン!!』の作中ユニット・Aqoursの楽曲だから。すぐさまイメージカラーの白一色に染まった客席を前に、ハードなロックを真っ直ぐ力強く歌い上げ、ボーカル力の凄みを遺憾なく発揮していく。
雨を抜けた先の世界で、これからもみんなと更新し続ける“最高”
そしてしばしの暗転の間、雨音と幻想的なシンセの音色が流れると、晴れやかな世界へと向かう大バラード「Border Rain」へ。優しい歌い出しから少しずつ想いを広げていき、サビでは強く胸に響かせるようにその想いをもうひと押し。表情も含めたそのサビでの懸命さが、また心を震わせる。この曲でも観客とのシンガロングを交え、アッパーチューンとは違った形で心を1つにし、ラストのフレーズを力強く歌って楽曲を締め括った。
曲明けには「Deep Resonance」を届けられた嬉しさや、「Border Rain」を呼び水に「コロナ禍という雨を抜けて、太陽のなかにみんなと進むことができて嬉しい」と語る小林。自らの言葉で感極まりかけたところで、話題はこのライブの前週にリリースされた新曲へ移行。「振付もちょっと難しいけど、踊れる範囲で盛り上がってくれたら!」と呼びかけてから、その新曲「グミチュウ」の披露へ。1-Aメロでは歌詞にマッチした色のペンライトを指さしながらキュートに歌唱し、サビではフィンガーダンスのように細かい指や腕の動きも織り交ぜられたダンスを切れ味鋭く、しかしこちらもキュートさを溢れさせながら魅せていく。2-Aメロの擬音部分ではさらに甘さ・キュートさを増幅させるなど、1曲の中で色々な楽しみ方のできるアソートのような楽曲を隅々まで味わわせて、そのまま続けたカップリング曲「Original My Life」が本編ラストナンバー!コールがふんだんに盛り込まれたこの曲は、新たなライブ必殺ナンバーの1つになる予感満載の、ハイスピードでアツいロックナンバー。爆誕祭の成功を確信させるかのような客席からの大きなコールと、それを受けて飛び跳ねまくり、落ちサビでは「たのしー!」とシャウトするステージ上の小林……この光景こそ、まさに彼女のライブにおけるの最高潮の瞬間ではないだろうか。こうして最後までステージを楽しみ尽くした彼女は、シャウトとジャンプで楽曲を締め括り、そのまま袖へと駆け抜けていった。
ステージが暗転すると、すかさず場内に「あいきゃん!」コールが響き始め、しばしそれが続いたところで小林がステージにカムバック。1曲目として歌ったのは、またもAqoursのナンバー「キセキヒカル」だ。バラード調のアレンジがなされた1コーラス目ではスポットライトを浴びながら歌い、小林愛香の“人生ソング”と呼んでいるこの曲を、ときに優しくときに力強く歌唱。人生の大事な節目の日に、“今の小林愛香”が歌う姿が実にハマるナンバーを1サビまで歌ったところで、彼女の表情は晴れやかさでいっぱいのものに。……と思っていると、間奏で原曲に近いアレンジに変わったタイミングで、なんと客席通路へと降りる二重のサプライズが炸裂!眼前のファンと視線を交わしながらの歌唱を通じて、メッセージを込めた歌声を一人ひとりにそっと優しく届けていった。
歌唱後、「来ちゃった!」と冗談ぶりながらも客席最後方まで届くように笑顔を振りまく小林は、自身も少々目を潤ませつつゆっくりステージへ戻り始める。と、ここでバンドメンバーが「Happy birthday to you」を演奏し、ファンはそれに合わせて大合唱。笑顔でケーキのロウソクを吹き消して改めて祝福ムードが漂うが、そんななか爆誕祭も、いよいよラストが迫ってくる。まずはアンコールやバースデーソングの合唱への感謝を告げ、「この世界に生まれてきて、みんなと会えて本当によかった!」と今の感情を伝えたところで、「Lorem Ipsum」からとにかく熱く騒いで盛り上がれるラスト2曲へ!
イントロから観客を煽って場内の熱を高めていくと、みんなと一緒に“遊んで”いるなかで感じた楽しさがそうさせたのか、1-Aメロからフレーズの切り方が音源とは全く違うものに。サビでは小林の「いくぞー!」のシャウトをきっかけにペンライトがくるくる回れば、自身もその光景からパワーを得てコロコロ表情を変えながら、エネルギッシュなステージを観客とともにしていく。そして「いつもの『アレ』になりにきたんだよね!?」との恒例の煽りから続いたのが、ラストナンバー「Can you sing along?」だ。イントロからテンションMAXの観客と身振り手振りを通じて繋がっていくと、2サビ明けには「最高過ぎるよ!(小林)」「全部最高!(観客)」のコール・アンド・レスポンスが行なわれてボルテージは頂点へと向かってぐいぐいUP。銀テープ発射とともに大サビでこの日のMAXへと到達し、最後まで“最高”を更新し続けた彼女はジャンプエンドで曲を締め括り、この日一番の笑顔で「“最高”をありがとう!」との言葉を届けた。そして「また一緒にあそぼーね!」と呼びかけ降壇。スクリーンには「だいすきなみんなへ」と題された彼女からの愛が込められた直筆メッセージが映し出され、BGMとして流された「Original My Life」のインストをファンのコールが彩る、いつまでも終わってほしくないと思うような素敵すぎる時間が流れていた。
楽曲を十二分に表現する歌声やパフォーマンスを通じて、この日も様々なアングルから心を揺さぶってくれた小林愛香。全力全開のパフォーマンスをクオリティ高く届けることで観客の全力を引き出し、それを受け止めることでさらに自身の120%が引き出される――そんな想いのやり取りが繰り返されることで、最後には毎回“最高”を更新するようなライブが出来上がっていくのだろう。これから彼女の音楽を通じた表現のグラデーションがどこまで鮮やかに、そしてバリエーション豊かなものになっていくのか。それを1人でも多くの人に楽しみながら見守ってもらいたいと、心の底から思わせてくれたライブだった。
小林愛香 爆誕祭 「Happy ∞ Birthday」
2023.10.23@大宮ソニックシティ大ホール
【SET LIST】
M01. Happy ∞ Birthday
M02. Easy Fizzy
M03. Holiday!!
M04. Please! Please! Please!
M05. 君を守りたい
M06. Sunset Bicycle
M07. マコトピリオド
M08. Night Camp
M09. NO LIFE CODE
M10. Deep Resonance
M11. AMBITIOUS GOAL
M12. Crazy Easy Mode
M13. Border Rain
M14. グミチュウ
M15. Original My Life
EN1. キセキヒカル
EN2. Lorem Ipsum
EN3. Can you sing along?
関連リンク
小林愛香
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