2020年の新型コロナウイルスの影響による緊急事態宣言から影を落とし続けたエンタメ界にいよいよ光が射した2023年。今年、アーティストデビュー15周年を迎えた宮野真守は、「一緒に歌おう」という想いをそのまま形にした「Sing a song together」を軸に、「SINGING!」を冠した全国ツアーを開催。
そんなツアーのファイナル公演をレポートする。そこに集うすべての人たち・チームマモが1つの「TEAM」として体感した、歌声に溢れた時間はまさに幸せの瞬間ばかりだった。

TEXT BY えびさわなち
PHOTOGRAPHY BY 山内洋枝(PROGRESS-M)、青木早霞(PROGRESS-M)

「Sing a song together」を芯に置く、会場が一体感に溢れたツアーファイナルの夜
大きな拍手に包まれた、東京・国立代々木競技場 第一体育館。1964年に「世界のタンゲ」こと丹下健三が設計した日本のモダニズム建築の最も芸術的な姿を残すこの場所の、満員の観客が一身に視線を注ぐステージに宮野真守は立っていた。オープニングの映像と共に幕を開けた“MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2023 ~SINGING!~”は、その始まりから約4年ぶりの歓声響くライブとなった。

ショーの幕開けを告げるような高揚感ある音に導かれてバンドが、ダンサーが、そして宮野が姿を現し、「Sing a song together」が会場に響き渡り、そして“Na…”の歌声が会場から湧き上がる。「歌え!」と宮野の呼び声にオーディエンスの歌声はさらに大きくなる。始まりの1曲目から花道を歩き、遠く2階席の観客にも、まるで一人ひとりに声をかけるように歌う宮野はミントグリーンの衣装から伸びる大きな手を広げ、共に歌う。今年8月にデジタルリリースしたそんな想いをタイトルに冠したこの曲は、ライブが宮野自身の芯に在ることを感じさせ、「僕はここにいるよ」という歌声が少しもぶれることのない真っ直ぐで素直なメッセージを強く意識させた。

続く「SHOUT!」はアニメ『カードファイト!!ヴァンガードG ストライドゲート編』のOPテーマであり、戦いへと挑む熱が宿る1曲。ここでも大きく声を上げるオーディエンス。パワー感あるバンドのグルーヴが、宮野と会場の歌声の勢いをさらに加速させていくようだった。
「THE ENTERTAINMENT(HIRO REMIX)」はポップなダンスチューンへとアレンジされたバージョンで、会場をダンスフロアへと変貌させる。ヒップなダンスでシェイクする宮野が、会場を魅了するとオーディエンスも軽快ビートに体を揺らして応える。

「Sing a song together」の軽快なSEで場面を変えると、続いたのは「FANTASISTA 2023」だ。3rdアルバム『FANTASISTA』に収録された1曲は、その誕生から時を経た2023年の姿として、都会的なシティポップのエッセンスを散りばめられたダンスチューンに。会場から大きな歌声の塊は振り注ぎ、バンドとの息の合ったステージングで大人な雰囲気を放った宮野はかけていたサングラスを客席へと投げると、ライブはホーンとピアノの音がゴージャスに響く「行こう!」へ。ステージ上を駆け抜けるように歌い、軽やかなステップを踏む宮野は会場と一体で声を上げ、ライブを全身全霊で堪能していることがうかがえる。畳みかけるように響いたロッキンなナンバー「Greed」では、ギター/バンドマスターの木原良輔がステージ前方へと出てくると、そのギターが鋭く唸りを上げる。そのリフに誘われるように宮野の歌声も雄々しく、荒々しく鳴ると会場で光るペンライトの輝きも大きな光の波を作っていた。


ツアーファイナルも“笑顔”を生み出し続けた宮野
バンドメンバー、そしてダンサー紹介でそれぞれのソロパートで大歓声が沸いた代々木第一体育館に静かなピアノとギターの旋律が響くと、ステージに一筋のスポットライト。そこにゆっくりと歩いて表れた宮野は黒のジャケットにパンツというスタイシッリュな姿。「Invincible Love」をしっとりと聴かせる。1つずつ、丁寧に言葉をオーディエンスに向けて差し出すような歌声に、フロアのオーディエンスがじっとその身に歌を受け止めるように聴いている姿が印象的だった。


歌を終えた宮野が顔を上げ、会場を見渡すと「マモー!」と彼を呼ぶ声が会場いっぱいに響く。イヤモニを外し、その声に耳を傾ける宮野。2019年に開催された“MAMORU MIYANO ASIA LIVE TOUR 2019~BLAZING!~”以来の歓声であるというこのライブを、心から噛み締めていることがその表情からも伝わってくる。ツアーファイナルが始まったことを告げると、改めてマイクを握る。「約4年ぶりの、念願の、声援ありのツアー。皆さん、楽しんでますかー?大いに声を出してください。盛り上がってますか?」と叫ぶ宮野に、「イェーイ!」と天井を突き破らん勢いの大歓声が応え、やっとこの瞬間がやってきた、と共に喜びを分かち合う。観客を全員座らせ、ここからゆっくりアコースティックの時間を、と呼び掛けたものの、「おめかししてきた」という衣装を見せるべく花道とその先のサブステージをランウェイに見立ててのウォーキングを披露する宮野。彼の動きに合わせて咄嗟の動きにあわせてすかさず演奏を入れ込むバンドメンバーと、それに呼応するオーディエンスに対して「すごいね!今日は神回だわ(笑)」と笑みを浮かべた。

アーティストデビュー15周年だからこそ昔の歌もやろうと思う、と2009年にリリースされた「ぼくのキセキ」をハートフルに歌い出す。「一緒に歌おう」と呼びかければ、観客もそのメロディに声を重ねていく。女子の声、男子の声、みんな一緒に。
3拍子で紡がれる1曲は会場を1つにした。バンドメンバーと共に和気あいあいとしたMCタイムで、彼らとの柔らかな空気を醸すと、オーディエンスもステージのメンバー同様に笑顔に。そしてライブはアコースティックコーナーのラストナンバーである「EVERLASTING」へ。キーボードの佐野宏晃の織りなすドラマティックなピアノのフレーズと共に歌い上げる宮野。その声にドラムの中村“マーボー”真行のリズムが、ベースの前田逸平の奏でるビートが重なり、大きな存在感を放つ1曲は会場に染みわたっていった。

“いつかきっと”と耐え続けた想いを結実させた大合唱
南海キャンディーズの山里亮太、福士蒼汰、星野 源からの15周年のお祝いメッセージが織り交ぜられた幕間映像と共に新曲「ICHIGO~甘くてChuぱいぜ~」を披露した宮野が、キュートなイメージソングによって笑いで会場を包み込むと、続けてフリンジのついた衣装でセクシーにワイルドに魅せる「愛の詩~Ulyssesの宴~」が鳴り出す。ガラリと会場の空気を変えた1曲は、ビッグバンド的なサウンドをチームマモで堪能させるグルーヴィでエモーショナルなナンバーだ。コール&レスポンスでも会場の熱を上昇させた宮野は、続いてダンスメドレーへ。

和ロックアレンジされた「FIRE」での艶やかなボーカルのあとには、ドラムの音がリズミカルに響いて幕を開ける「Now and Forever」、さらに軽やかなポップチューン「Butterfly」をダンサーと共に魅せると、硬質でスペーシフィックな音が鋭く響くエレクトロロックナンバーの「Space Travellers」で疾風のボーカルを乗せ、最後はラテンのリズムで妖艶に聴かせる「EGOISTIC」、と宮野のレンジの広い世界観をメドレーでまとめあげる。オーディエンスは時に歓声をあげ、時にコーラスを入れ、時にクラップで楽曲に参加をし、宮野と共に楽曲を作り上げた。

終盤に向かおうというこの瞬間に、宮野は静かに息を吸い込み歌い出した「カノン」。ピアノと宮野の歌から始まり、熱いエレクトロのロックへと突入していく情熱的な名曲に会場が青と紫の光に染められ、観客が声を重ねる。
続けて「Quiet explosion」が鳴り出すと、ロックオペラのようなダイナミックでゴージャスな音が重厚に轟く1曲でパワフルなボーカルを響かせ、フロアを熱で侵食していった。曲間のSEのような「Sing a song together」でファンと歌声を重ねたあとには、「Kiss×Kiss」でファンのもとへ。トロッコに乗ると観客のすぐ近くまで向かい、甘い歌声を聴かせながら一人ひとりと視線を合わせ、全身を使って感謝を伝えていく宮野。彼の通る場所からは黄色い歓声が次々に上がると、満足そうに笑みを浮かべた宮野は歌のままに投げキッスを贈っていく。ステージを守るFUMI、TOSHI、HIDE、YUZZYたちダンサーは「15周年おめでとう」と書かれたうちわを振り、この場所に集うすべての人たちが会場を愛で満たしていた。「みんなの近くに行けました。みんなの輝く笑顔を間近で見ることができました。ありがとー!」という言葉に、会場からも「ありがとう」の大合唱が響き、宮野も笑顔に。

「やっぱりライブって、歌って、力を持っているね。こんなに大勢の、1万人以上のみんなが1つになって、楽しんで、『マモー!』って呼んでくれて、最高の笑顔を見せてくれて。こんな幸せな空間、こんなピースフルな空間、なかなかないよ。本当にみんなのおかげです。
どうもありがとうございます!」と告げる宮野に、彼を呼ぶ声がこだまする。約4年ぶりの声出しの出来るツアー、そのファイナル。エンタメが苦しい状況にあったなかでも少しずつ前に進み、その瞬間にできる最高を、最善を目指してきたという彼がなによりも嬉しかったことはファンがそれを受け止めてくれたことだったという。まだマスクをしたままとは言え、声を出すことのできるライブで感じた、最高の瞬間。「また最高の時間を作ろう」と約束して本編ラストの「TEAM」を歌う。自分たちはチームである。ステージのメンバーも、作り上げるスタッフも、そして集まるファンも。合唱曲として作ったこの曲は、前回のライブではステージのメンバーだけで合唱し、マスクの向こうで、心で合唱しているファンの熱とで作った空間だったけれど、今は、思いっきり声を出して歌うことができる。シンプルに、飾り気なく想いのままに重ねられた言葉を歌い上げる宮野に重なる観客の歌。そして共に歌うサビはビジョンにも歌詞が映し出され、会場を震わせるほどの大きな歌声が湧く。その声に耳を傾ける宮野は「最高」と声を漏らした。感情が詰め込まれたハートフルで大きな存在感の1曲は、彼の15周年を高らかに祝い、大きな歌声が戻ってきたという素敵な瞬間を、2023年という時代に刻み付けたのだった。


「マモ!」のアンコールの声に応えてステージに登場したチームマモ。『劇場版 Fate/Grand Order – 神聖円卓領域キャメロット – 後編 Paladin;Agateram』の主題歌であり、Jin Nakamuraの作曲、そして坂本真綾が作詞をした1曲を切々と歌い上げた宮野は「夢が叶った」と紡ぐ。コロナ禍真っ只中に作り、いつか観客の声が降り注ぐ場所で歌いたいと作ったナンバーを、会場のみんなの声に導かれてステージで歌えたこと。“いつか”と希望を持って抱いてきた曲を歌えたことに感謝を告げた。さらに、アンコール2曲目の「EXCITING!」で再び火のついたオーディエンスのテンションの宮野を求める声は止まず、Wアンコールの「J☆S」も会場に響く。3時間以上にわたって繰り広げられたツアーのファイナルは、声援解禁の幸せな時間を最後の最後まで味わいつくすライブだった。希望を忘れずに15周年を迎え、走り続けたチームマモの快進撃はまだまだ続いていくのだ、という熱い予感を刻んで。

<セットリスト>
MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2023 ~SINGING!~
2023年10月22日(日)

M1.Sing a song together
M2.SHOUT!
M3. THE ENTERTAINMENT (HIRO REMIX)
~Sing a song together Emotional House mix~
M4. FANTASISTA 2023
M5.行こう!
M6.Greed
~Theme of SINGING!~
M7.Invincible Love
MC
M8. ぼくのキセキ
MC
M9.EVERLASTING
幕間映像
M10.愛の詩~Ulyssesの宴~
M11. Dirty Orange 2023 REMIX(FIRE~Now and Forever~Butterfly~Space Travellers~EGOISTIC)
M12.カノン
M13.Quiet explosion
~Sing a song together Disco mix~
M14.Kiss×Kiss
MC
M15.TEAM

【アンコール】
M16.透明
MC
M17. EXCITING!

【Wアンコール】
M18.J☆S

●ライブ情報
MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2023 ~SINGING!~
supported by JOYSOUND

日時:
<10月21日 (土)>15:00 開場 / 16:00 開演
<10月22日 (日)>15:00 開場 / 16:00 開演
会場:東京都・国立代々木競技場 第一体育館

「billboard classics 宮野真守 Premium Symphonic Concert 2024」
2024年6月8日(土)東京ガーデンシアター
2024年6月15日(土)京都コンサートホール
2024年6月16日(日)京都コンサートホール

●ライブ映像 放送情報
CS放送 TBSチャンネル1「宮野真守 LIVE TOUR 2023 ~SINGING!~」
放送日:12月10日(日)20:00~
https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/o2811/

●リリース情報
24th Single「Sing a song together」
発売日:2023年12月13日(水)

品番:KICM-2145
価格:¥1,364+税 (CD only)

収録内容:
M1 Sing a song together
M2 Sing a song together LIVE ver.
M3 カップリング楽曲(新曲)

▶ご予約はこちらから
https://lnk.to/MM_24thSg

●配信情報
ツアーファイナル公演 セットリストプレイリストが公開中!
https://lnk.to/MM_SINGINGSETLIST

関連リンク
宮野真守
公式ホームページ
https://miyanomamoru.com

公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/miyanomamoru_PR
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