過酷な世界観と骨太なシナリオで人気を集める「アークナイツ」シリーズと、“絶望系アニソンシンガー”のReoNaが三度目の邂逅を果たす――。ReoNaのニューシングル「R.I.P.」は、2023年秋クールのTVアニメ『アークナイツ 【冬隠帰路/PERISH IN FROST】』のEDテーマ。
スマホRPG『アークナイツ- 明日方舟 -』中国版1stアニバーサリー主題歌「Untitled world」、TVアニメ第1期『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』のOPテーマ「Alive」に続き、今回は“アシッドジャズ”や“軍歌”といったキーワードを軸に、新たな世界に方舟を進めるReoNaが今見つめるものとは何なのか?その視線の先の“絶望”に迫る。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
“怒り”も“絶望系”の1つの表現に――「R.I.P.」が切り開く新しいReoNaの世界
――ついにTVアニメ第2期『アークナイツ 【冬隠帰路/PERISH IN FROST】』の放送がスタートしました。ReoNaさんはゲーム版のユーザーでもあるそうですが、今回のTVアニメの感想はいかがですか?
ReoNa 第2期でアニメ化されるシナリオは、私が原作ゲームをプレイしてきたなかで一番号泣した部分なんです。その結末に至るまでのプロセスが、アニメの解像度でより鮮明に描かれているので、余計に心が痛くなることが多くて……今は登場人物たちの行く末を案じながら毎週観ています。
――ネタバレになるので詳しくはお話できないと思いますが、今回アニメ化される部分のシナリオのどんなところに心を震わされたのでしょうか。
ReoNa 「アークナイツ」の世界の根底にある“絶望”を作り出しているのは、主人公たちが所属するロドス(ロドス・アイランド製薬)側も、その敵として描かれるレユニオン(レユニオン・ムーブメント)側も、自分たちなりの“正義”を持って動いていることだと感じていて。例えばTVアニメの第1クールで戦ったメフィストにも自分の正義があるし、フィーネの物語もそうで、ロドスとレユニオンはどちらも鉱石病の感染者だから同じ痛みを知っていて、目指す場所は一緒かもしれないのに、なぜか食い違ってしまって、争い続けている。アニメの第2期では、そういった、どちら側も“正義”で、自分たちが傷つけている側の人にも血が流れていて、心があるということがより浮き彫りになるストーリーなんです。
――確かに、TVアニメ第1期の終盤で描かれたミーシャの命運は、生と悪の二元論では収まりきらない痛ましい物語でしたが、今回の第2部ではその部分がより深まっていくわけですね。
ReoNa 「アークナイツ」はレユニオン側のキャラクターも単純に悪者というわけではないことが多くて、キャラクターデザインやアーク(能力)も含めてすごく魅力的に描かれていることが、やるせない気持ちになるポイントでもあって。種族間のいざこざや同種族だからこそ抱える確執、感染者と非感染者の間にある高い壁、その1つ1つにいがみ合う理由があるし、それを知れば知るほど「アークナイツ」の世界観の解像度が高くなって、あの世界の歴史が見えてくるので、そういう部分にもすごく魅力を感じます。
――善悪で割り切れない価値観というのは現実社会にも置き換えて考えられるものだと思いますが、ReoNaさんもこれまで生きてきたなかで、そういった割り切れない理不尽さを感じたことはありますか?
ReoNa 学生のとき、どんなに人に好かれようと努力しても、どんなに人を傷つけないように努力しても、必死に生きてさえいれば必ず誰かの悪役にならざるを得ない、ということを感じたことがあって。その頃の私は、出来る限り人には優しくありたいと務めていたし、どんなに嫌な人だと感じた相手でも、その人の好きになれるところに目を向けるようにしていて、自分が何かを愛し続けることで、その愛が返ってくるんじゃないか?と思いながら過ごしていたんです。でも、やっぱり私のことを嫌いな人はいたし、私に心無い言葉を投げてくる人がいて。そういうマイナスな感情にさらされていたときに、たまたま何かのマンガで「必死に生きていると誰かの悪役になる」という言葉を目にして、それが自分の中ですごく腑に落ちたんです。そのときに、“正義”の反対は“悪”ではなく、また別の“正義”だということを実感して。だからこそ、「アークナイツ」で描かれている“正義”と“正義”が対立し合う構図が自分の中にスッと入ってきました。
――そういった意識も踏まえたうえで、今回のEDテーマ「R.I.P.」の制作に臨んだかと思いますが、とっかかりにはどんなテーマやキーワードがあったのでしょうか。
ReoNa 今回、1つ大きいテーマとしてあったのが“怒り”で、気持ちの軸としては“怒り”と共に作品と寄り添う楽曲というのがありました。それともう1つ、作品サイドとお話をさせていただいたなかで、レユニオンの足音を感じるような楽曲、いわば“軍歌”みたいなものというキーワードが出てきたんです。これから戦地に赴いて、もしかして死んでしまうかもしれない、誰かを殺してしまうかもしれないけど、それでも進むことしかできない絶望。力強いようで悲しい結末へ誘う行進曲“軍歌”、それを嘆き、揶揄するような、「ハーメルンの笛吹き」のような、間違った方向に進んでいるとわかっていても止められない絶望、地獄へ続く道のりを表現しました。そして「肺が潰れたって叫べ」という歌詞から、今回はホーンセクションを入れようとなって、“アシッドジャズ”というモチーフが出てきました。
――ReoNaさんとアシッドジャズというのは意外な組み合わせでしたが、その発想はどこから?
ReoNa アシッドジャズというのは、私や今回の楽曲を作編曲した毛蟹(LIVE.LAB)さんの音楽ルーツにはないものだったのですが、ディレクターさんのアイデアで、ロックに加え、アシッドジャズの要素を“抗う者”の音楽として表現、挑戦してみることになりました。最初は歌詞の“di-li-pa-pa du-pa-pa”というフレーズがホーンっぽい響きなので、ホーンをフィーチャーした楽曲にしようというところから始まって。それを毛蟹さんのフィルターを通して、ReoNa流のロックテイスト、アシッドジャズテイストがアレンジに加わっていきました。今回はサウンドがめちゃくちゃかっこいいと思っていて。特にアシッドジャズモチーフなら、ベースが花形だよねと、二村学さんにはアレンジが固まる前の段階から参加していただいて、一緒に作らせていただきました。
――作詞はハヤシケイ(LIVE.LAB)さん、作編曲は毛蟹さんということで、ReoNaチームとしては鉄板の布陣ですよね。
ReoNa 今回、渡邉祐記監督や株式会社Yostarの方々といった作品サイドの皆さんとお話をさせていただいたときに、毛蟹さんとケイさんも参加して、渡邉監督がどんな熱量と愛情を持って作品に向き合っているのか、「アークナイツ」という作品が持っている絶望や理不尽さをどう表現したいのか、直接受け取らせていただいたんです。そのときに渡邉監督がおっしゃっていた、「アークナイツ」という世界のやるせなさや絶望に対して、ReoNaが“怒り”で寄り添いたい、というところから楽曲制作がスタートしました。
――でも、以前にインタビューでお話を聞いたことがありますけど、ReoNaさんは怒るのが苦手なんですよね?
ReoNa はい、ものすごく苦手です。ただ、私自身の言葉で誰かに怒りをぶつけるのであれば、どうすればいいのかすごく悩みますけど、楽曲や歌詞だからこそ伝えられること・表現できることがあると感じていて。それこそ私が自分で作詞した「FRIENDS」で“I love you”という言葉を使いましたが、それも口に出して誰かに伝えるのは恥ずかしいけど、歌詞にしてなら伝えられるところがあると思うんです。その意味では、「どうやって歌で怒りを表現しよう?」というのはありましたけど、不安はなかったです。
――“怒り”というテーマは、ReoNaさんが標榜している“絶望系”としての表現の形の1つでもあるのでしょうか?
ReoNa もちろん今回の楽曲は「アークナイツ」という作品への寄り添いがあったからこそできたものですが、私の中では“怒り”もまた絶望の1つの形であって。“怒り”を表現できないことも絶望だと思いますし、“絶望系”という軸で言うと「代わりに怒る」ということでもあると思うんです。ムシャクシャしたときにカラオケとかで誰に聴かせるでもなく歌って発散するだとか、学校や会社に向かうときに心を奮い立たせるために音楽を聴くだったりとか。そういう自分の代わりに心を言葉にしてくれる寄り添いみたいなものが、この楽曲にもあればいいなと思いながら歌いました。
――レコーディングでは、実際に“怒り”ややり場のない理不尽な気持ちを意識したのでしょうか。
ReoNa すごく意識しました。タイトルの「R.I.P.」という言葉は「rest in peace」という意味で、亡くなった方に対しては「安らかに眠ってください」という意味になりますけど、生きている人に対して使うと皮肉になってスラング的な意味もあるので、その言葉をどう怒って歌うか。“怒り”という意味では以前に「JAMMER」という楽曲でも表現したことはありますけど、怒って歌う経験が多いわけではなかったので、言葉自体が持つ怒り感をしっかりと伝えられるように考えました。でも、楽器のレコーディングを見学させていただいたのが大きくて。特にブラスの音。金管楽器はキラキラした音色で高らかなイメージが強いですけど、今回はそれだけでなく荒野を感じさせるような演奏をしてくださって。その鈍く光った音を聴いたうえで歌をRecできたので、しっかりと“怒り”を込められたように思います。
――歌詞のどんな部分に特に“怒り”を感じましたか?
ReoNa “なぁ”というフレーズに怒りや苦悩が詰まっていて、この言葉をどう表現するかはすごく考えました。ここはBメロの終わりとも言えるし、サビの頭とも言える場所になるので、そのジャンクションとしてフックになるポイントだと思うんです。ただ、「なぁ」という言葉自体は同意を求めるニュアンスなので、別に怒っていなくても使う言葉でもあるじゃないですか。なので怒っているニュアンスを出すのが難しくて。特に一番最後に出てくる“なぁ”に関しては、煽る感じと言いますか、思いの丈をぶつけるときの“なぁ”を意識して歌いました。でも、きっとケイさんは怒るとき、“なぁ”って言うんだろうなと思って(笑)。すごくケイさんらしい言葉だなって思いました。
――ちなみに第1期のOPテーマ「Alive」は“生”を否応なく感じさせるタイトルで、今回の「R.I.P.」は逆に“死”を想起させるタイトルになっています。その対照性についてはどのように感じましたか?
ReoNa 「Alive」のあとに「R.I.P.」がくる対極性や皮肉感というのは、ケイさんはもしかしたら意識しているかもしれないです。
――それとこの楽曲、TVバージョンは「R.I.P. -TV ver. α-」と「R.I.P. -TV ver. β-」の2種類ありますが、これはどんな意図で?
ReoNa 単純に楽曲の切り出し方が違う2種類があって、アニメの展開に合わせて切り替えて使われることになっています。「R.I.P.」は“もしも神様がいるなら”のところがアニメに使われていたり、特別な構成になっています。アニメの世界を結んでいくエンディングの役割として、必要な要素を特別に編集して、さらに物語に合わせて2パターン用意することになりました。
――MVもかっこいい映像に仕上がっていますよね。ReoNaさんを取り囲むバンドメンバーはホーン隊やコーラスを含めて全員女性で固めていて。
ReoNa きっかけは、楽曲制作をしている時に、アシッドジャズやロックの色々なアーティストの楽曲を聴いたり、MVを観ていたりしていた時に、とてもかっこいい女性ドラマーがいまして。それがとても印象に残っていて。去年サウジアラビアのライブで初めて女性ドラマーの今村舞さんとご一緒させていただいたことともきっかけに、今回は全員女性でMVを作ってみようとなりました。女性として音楽業界を長年戦い抜いてきた大先輩である女性ミュージシャンの皆さんに、女性の持つかっこ良さや勢い、色気を映像で添えていただきたくて、ご一緒させていただきました。
――撮影はいかがでしたか?
ReoNa 皆さん顔見知りの方々ばかりだったので、現場は女性ミュージシャンの同窓会みたいな感じでした(笑)。でも、いざ演奏が始まると皆さんすごくかっこいいし、疑似ガールズバンドをさせてもらった感じで、すごく楽しかったです。ReoNaとして今までにない映像になったと思います。皆さんめちゃくちゃかっこいいので、女性が持つかっこ良さを隅々まで観てもらいたいです。
――ReoNaさんもかっこ良かったですよ。
ReoNa ありがとうございます(笑)。
「NHK みんなのうた」との出会い、もう1つの「VITA」、毛蟹が描く新しい“絶望”の歌
――カップリング曲のうち「地球が一枚の板だったら」は、2023年4・5月度のNHK「みんなのうた」でオンエアされた楽曲になります。
ReoNa NHK「みんなのうた」は私自身も小さな頃から受け取っていたもので、今回担当させていただくにあたって思い返してみたら、「ああ、この楽曲も知っているな」ということが多くて。この楽曲をきっかけにお子さんがいる方がReoNaに出会ってくださったり、「自分の子供も聴いています!」というお声をいただいたりもして、改めて「みんなのうた」というのは言葉の通り“みんなの歌”だということを感じました。傘村トータ(LIVE.LAB)さんの温かく絶望に寄り添う楽曲を「みんなのうた」として発表することができて良かったです。
――傘村トータさんの楽曲には、必ず優しさが感じられますけど、その中でも今回の楽曲は、子供向けの絵本のような世界観になっていますよね。
ReoNa 温かさ成分をもうひと匙加えた感じと言いますか。でもやっぱり、背中も押さないし手も引かない楽曲なんですよね。“君が100泣いたら 僕も100泣こう”と歌うのは、まさに寄り添う楽曲だと思います。「1人で抱えないでね」っていう。やっぱり家族や友人、恋人、同僚、大切に思う人に対しては、1人で抱えないでほしい気持ちは誰にでもあると思っていて。そういう想いが詰まっている楽曲だと思います。
――この楽曲はすでにライブでも歌われていますが、レコーディングを含め、この楽曲を歌うときは、やはり“君”に向けて優しく歌いかけるようなイメージなのでしょうか?
ReoNa そうですね。ただ、レコーディングで最初に歌ったときは、やっぱり私は何を歌っても暗くなるんだな、と思ってすごく落ち込んでしまって(苦笑)。なので、今の歌に辿り着くまでに色々と試行錯誤をしました。レコーディング現場には傘村トータ氏にも来てもらっていたのですが、私が言葉の温度感や優しさ成分を歌で表現するためにどうすればいいか悩んでいたときに、ふいに傘村トータ氏が手元にあった紙を折りたたんで、“僕”と“君”の指人形を作ってくれたんです。その人形で“僕”と“君”をイメージしながら歌うことで、今の歌に辿り着くことができて。“僕”と“君”の歌なので、私が1人で悩んでいても、そこに正解はなかったんです。優しい歌になっていたらいいなあと思います。
――そしてシングルの初回生産限定盤と通常盤には「VITA -The Days-」を収録。これは家庭用ゲーム「ソードアート・オンライン Last Recollection」の主題歌「VITA」の新バージョンになりますが、9分超のバラード風のアレンジになっていて、原曲とはまったく趣きが変わりましたね。
ReoNa 私もびっくりするくらい変わりました。単純にアコースティックバージョンにするのではなく、まったく別の新曲としての「VITA」に生まれ変わらせたい、という話になって。なので私の歌も全然違う印象のものになっているのですが、それも元々の「VITA」があって、それこそ色んなライブで一緒に走って色んな思い出を作ってきたからこそ、歌えた歌だと思っていて。レコーディングするときもゲームの映像を観ながら歌いましたし、きっとゲームをプレイした方はより特別を感じてくださると思います。
――サウンド的にはストリングスを大々的にフィーチャーした、とてもドラマチックで壮大なアレンジに仕上がっています。
ReoNa 今回は、宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)さんに編曲していただきました。宮野さんは元々劇伴のお仕事をたくさんされている方だからこそ、「SAO」が好きな方には、お!っと思うような仕掛けやフレーズが散りばめられていて、作品にしっかりと寄り添った音にしてくださいました。ゲーム版「SAO」との歴史があったからこそできた楽曲ですし、言葉の響き方もガラッと変わりました。
――1つ1つの言葉をより大切にしているのが伝わってくるような歌い方に感じました。
ReoNa 元々の「VITA」は、決意表明や祈りのような切実さがすごくあると思っていて。“命はあなたを忘れない”という歌詞は、それこそ覚悟であり、そうであってほしいと願う祈りでもあると思うんですね。でも、今回の「VITA -The Days-」は、意識したわけでもなく自然と、さも当たり前のような感覚で歌うことができて……説明が難しいですけど、決意表明というよりは、「命ってそういうものだよね」と読み聞かせるような感覚で歌いました。歌詞は同じなのに、歌っているときの気持ちはまるで違いました。
――そしてもう1曲、期間生産限定盤に収録の「原作者」は、毛蟹さんが作詞・作曲・編曲を手がけた、ほぼピアノのみをバックにした楽曲です。
ReoNa ReoNaの楽曲というのは、出来上がるまでの生い立ちが楽曲ごとに全然違っていて、言葉の1つ1つまで入念に相談しながらできた楽曲もあれば、私が「最近こんなことを考えているんです」という思いをしたためてもらうこともありますし、アニメやゲーム作品にしっかりと向き合ってお話しながら作るパターンもあって。その中には、クリエイターさんが作詞・作曲したものをスッといただくパターンもあるのですが、その意味で「原作者」は毛蟹さんに私が付いていった楽曲と言っていいと思います。それこそ毛蟹さんに「月姫 -A piece of blue glass moon-」の楽曲を作っていただいたときは、「俺は“月姫”のことだけを考えて楽曲を作るから、ReoNaは自分でこの楽曲をReoNaの楽曲にしろ!」っていう感じだったんです。それに近い感じで、毛蟹さんが思い描く歌詞とメロディを私が歌にする、という形で出来上がったのが、この「原作者」になります。
――でも、夢や理想を追い求めるなかで味わう“絶望”が描かれている意味では、ReoNaさんが歌ってこそ意味のある楽曲にも感じました。
ReoNa こんなにも私自身の意見が入っていない、毛蟹さんから「はい」と渡されたものに対して、「私は歌えない」と思えないことが逆に悔しくて「毛蟹さんらしいな」と思いつつ、私も自分に重ねられる部分がちゃんとあったんです。
――最初に楽曲を受け取ったとき、どんな風に感じましたか?
ReoNa まず、毛蟹さんは原作者になりたかったんだろうな、と感じましたし、そういう夢に対する想いというのは、この楽曲を受け取る人の夢の大きさや今いる場所によって、刺さり方や感じ方が全然違うんだろうなと思って。でも、私の中では毛蟹さんはすでに原作者でもあるんですよね。私にとって毛蟹さんは脚本家であり原作者であって、私はそれを受け取って1人の演者として板に立つというイメージなので。
――この楽曲では、夢や理想の自分、なりたい自分になれない悔しさみたいなものが描かれていますが、その気持ちに何かしらの決着を求めるのではなく、ポンと置かれているような歌という印象を受けました。
ReoNa 独白のような感じですよね。この楽曲は仮歌から本番のボーカルRecまで、すべて毛蟹さんとお話しながら進めていったのですが、独り言感やもがき苦しむような感じ、声の置き所やフレーズごとの感情の振れ幅というのは、お互い意見をリレーしながら模索するなかで出来上がった感じでした。多分、毛蟹さんの中に私の声のイメージがあって、それに対して私が独白感というイメージで歌って一致した感じです。
――ちなみに楽曲の後半で、主線とは別のコーラスが加わってきますが、あれはどういう意図で作られたのでしょうか?
ReoNa あそこのコーラスは“夢では芸術家 あなたは建築家 誰もがドクター ロックスター”と歌っているのですが、多分、毛蟹さんはあそこで色んな人の人生観を表現したかったんだと思います。なのであそこのコーラスは私の声だけでなく、毛蟹さんの声も入っています。
――男性の声も入っているなと思ったのですが、あれは毛蟹さんだったんですね。
ReoNa ReoNaのレコーディングはその場にいる人にコーラスを入れてもらうことが多くて、「Someday」では傘村トータさんと堀江晶太さんとスタッフさんと私でコーラスを歌っていますし、今回の「原作者」でも、私と毛蟹さんと実はもう1人、女性スタッフも歌ってくれていて、ちょうど私と毛蟹さんの声の間の成分を足してくれました。現場で実際に録って試すことが多くて、今回は厚みのあるコーラスが合うということで今の形になりました。
5周年イヤーのアニバーサリーツアーに向けて、ReoNaが今感じること
――ReoNaさんは今年8月にデビュー5周年イヤーを迎えて、来年5月からは新たなツアー『ReoNa 5th Anniversary Concert Tour “ハロー、アンハッピー”』を開催することも発表されましたが、節目の年となるこの1年、どんな活動をしていきたいですか?
ReoNa 今はちょうどアコースティックツアー(“ふあんぷらぐど2023”)を行っているところなのですが、アコースティックツアーは2年ぶりなので、感覚的に思い出すこともありますし、以前とは変わった部分があることを肌で感じていて。最近はバンドセットのライブが続いて、並行して2ndアルバムのレコーディングもあって、ライブと制作を駆け抜けた先で、伴奏はピアノとギターだけで自分の声が占める割合の大きいライブに立ち返った今、言葉をメロディに乗せること、言葉を音楽として伝えることをより意識するようになったと思うんです。その中で自分の歌が変化していることを感じますし、このアコースティックツアーを経ることで、さらに一歩、歌で伝えることの正解が掴めるんじゃないかと思っていて。なので来年のバンドセットのライブも、ぜひ楽しみにしていただきたいです。
――その来年のツアーのタイトルが“ハロー、アンハッピー”ということで、ある種、原点回帰を感じさせます。
ReoNa 今回はデビュー5周年という1つの大きい節目を迎えたので、改めてこのタイトルにさせていただきました。
――それは楽しみです。あと、来年のツアーは鹿児島公演もありますね。
ReoNa そうなんです……!ついに地元の鹿児島に帰ることができます。CAPARVO HALLは元々2020年に行く予定だったので、やっと念願が叶うことになりました。いつかは奄美大島でもライブができればと思います。
●リリース情報
ReoNa 8th Single
TVアニメ「アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】」EDテーマ
「R.I.P.」
発売中
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■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【初回生産限定盤(CD+DVD)】
品番:VVCL 2350-51
価格:¥1,980(税込)
※撮り下ろしフォトブック同梱
※トールケースサイズ三方背スリーブケース仕様
【通常盤(CD)】
品番:VVCL 2352
価格:¥1,320(税込)
<CD>
M1.「R.I.P.」
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.) ブラスアレンジ:宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)
M2.「地球が一枚の板だったら」
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:傘村トータ(LIVE LAB.) 編曲:小松一也
M3.「VITA -The Days-」
作詞:毛蟹(LIVE LAB.)、ReoNa 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
M4.「R.I.P.」-Instrumental-
<DVD>
「R.I.P.」Music Video
「VITA -The Days-」Music Video
【期間生産限定盤(CD+DVD)】
品番:VVCL 2353-54
価格:¥1,760(税込)
※TVアニメ『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】描きおろしイラスト使用ミニポスター
※TVアニメ『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】描きおろしイラスト使用三方背ケース付
<CD>
M1.「R.I.P.」
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.) ブラスアレンジ:宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)
M2.「地球が一枚の板だったら」
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:傘村トータ(LIVE LAB.) 編曲:小松一也
M3.「原作者」
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
M4.「R.I.P.」-TV ver-
<DVD>
TVアニメ『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】ノンクレジットエンディング映像収録
●ライブ情報
『ReoNa 5th Anniversary Concert Tour “ハロー、アンハッピー”』
5/18(土)戸田市文化会館(埼玉)OPEN 17:00 / START 18:00
5/19(日)戸田市文化会館(埼玉)OPEN 16:00 / START 17:00
6/8(土)NHK大阪ホール(大阪)OPEN 17:00 / START 18:00
6/9(日)NHK大阪ホール(大阪)OPEN 16:00 / START 17:00
6/15(土)BLUE LIVE HIROSHIMA(広島)OPEN 17:00 / START 18:00
6/16(日)高松 festhalle(香川)OPEN 17:00 / START 18:00
6/21(金)SENDAI GIGS(宮城)OPEN 18:00 / START 19:00
6/23(日)サッポロファクトリーホール(北海道)OPEN 17:00 / START 18:00
7/6(土)Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール(愛知)OPEN 17:00 / START 18:00
7/14(日)福岡国際会議場(福岡)OPEN 17:00 / START 18:00
7/15(月・祝)鹿児島 CAPARVO HALL(鹿児島)OPEN 17:15 / START 18:00
全席指定/全自由 ¥8,200(税込)
※一部、ドリンク代別途
※6歳以上チケット必要
※未就学児童入場不可
★CD「R.I.P.」購入者限定先行受付実施!【11/26(日)23:59まで(抽選申込)】
チケット一般発売日に先駆けて、CD「R.I.P.」購入者限定で『ReoNa 5th Anniversary Concert Tour “ハロー、アンハッピー”』チケット先行受付実施が決定しました。詳しくは、シングル「R.I.P.」に封入されているチラシをご確認の上、お申込みください。(応募には封入されているチラシに記載されているシリアルナンバーが必要となります)
▼受付期間
11月15日(水)10:00~11月26日(日)23:59まで(抽選申込)
※申込は1公演2枚まで、複数公演申し込み可能
関連リンク
ReoNa オフィシャルサイト
https://www.reona-reona.com/
ReoNaオフィシャルX(旧Twitter)
https://twitter.com/xoxleoxox
ReoNaオフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCyUhtF50BuUjr2jOhxF3IjQ
お互いの“正義”をかざしてさらに激化していく争いの“絶望”に寄り添うように歌われる、ReoNa史上最も“怒り”に溢れた、鈍く重々しいブラスロックチューンだ。
スマホRPG『アークナイツ- 明日方舟 -』中国版1stアニバーサリー主題歌「Untitled world」、TVアニメ第1期『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』のOPテーマ「Alive」に続き、今回は“アシッドジャズ”や“軍歌”といったキーワードを軸に、新たな世界に方舟を進めるReoNaが今見つめるものとは何なのか?その視線の先の“絶望”に迫る。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
“怒り”も“絶望系”の1つの表現に――「R.I.P.」が切り開く新しいReoNaの世界
――ついにTVアニメ第2期『アークナイツ 【冬隠帰路/PERISH IN FROST】』の放送がスタートしました。ReoNaさんはゲーム版のユーザーでもあるそうですが、今回のTVアニメの感想はいかがですか?
ReoNa 第2期でアニメ化されるシナリオは、私が原作ゲームをプレイしてきたなかで一番号泣した部分なんです。その結末に至るまでのプロセスが、アニメの解像度でより鮮明に描かれているので、余計に心が痛くなることが多くて……今は登場人物たちの行く末を案じながら毎週観ています。
――ネタバレになるので詳しくはお話できないと思いますが、今回アニメ化される部分のシナリオのどんなところに心を震わされたのでしょうか。
ReoNa 「アークナイツ」の世界の根底にある“絶望”を作り出しているのは、主人公たちが所属するロドス(ロドス・アイランド製薬)側も、その敵として描かれるレユニオン(レユニオン・ムーブメント)側も、自分たちなりの“正義”を持って動いていることだと感じていて。例えばTVアニメの第1クールで戦ったメフィストにも自分の正義があるし、フィーネの物語もそうで、ロドスとレユニオンはどちらも鉱石病の感染者だから同じ痛みを知っていて、目指す場所は一緒かもしれないのに、なぜか食い違ってしまって、争い続けている。アニメの第2期では、そういった、どちら側も“正義”で、自分たちが傷つけている側の人にも血が流れていて、心があるということがより浮き彫りになるストーリーなんです。
――確かに、TVアニメ第1期の終盤で描かれたミーシャの命運は、生と悪の二元論では収まりきらない痛ましい物語でしたが、今回の第2部ではその部分がより深まっていくわけですね。
ReoNa 「アークナイツ」はレユニオン側のキャラクターも単純に悪者というわけではないことが多くて、キャラクターデザインやアーク(能力)も含めてすごく魅力的に描かれていることが、やるせない気持ちになるポイントでもあって。種族間のいざこざや同種族だからこそ抱える確執、感染者と非感染者の間にある高い壁、その1つ1つにいがみ合う理由があるし、それを知れば知るほど「アークナイツ」の世界観の解像度が高くなって、あの世界の歴史が見えてくるので、そういう部分にもすごく魅力を感じます。
――善悪で割り切れない価値観というのは現実社会にも置き換えて考えられるものだと思いますが、ReoNaさんもこれまで生きてきたなかで、そういった割り切れない理不尽さを感じたことはありますか?
ReoNa 学生のとき、どんなに人に好かれようと努力しても、どんなに人を傷つけないように努力しても、必死に生きてさえいれば必ず誰かの悪役にならざるを得ない、ということを感じたことがあって。その頃の私は、出来る限り人には優しくありたいと務めていたし、どんなに嫌な人だと感じた相手でも、その人の好きになれるところに目を向けるようにしていて、自分が何かを愛し続けることで、その愛が返ってくるんじゃないか?と思いながら過ごしていたんです。でも、やっぱり私のことを嫌いな人はいたし、私に心無い言葉を投げてくる人がいて。そういうマイナスな感情にさらされていたときに、たまたま何かのマンガで「必死に生きていると誰かの悪役になる」という言葉を目にして、それが自分の中ですごく腑に落ちたんです。そのときに、“正義”の反対は“悪”ではなく、また別の“正義”だということを実感して。だからこそ、「アークナイツ」で描かれている“正義”と“正義”が対立し合う構図が自分の中にスッと入ってきました。
――そういった意識も踏まえたうえで、今回のEDテーマ「R.I.P.」の制作に臨んだかと思いますが、とっかかりにはどんなテーマやキーワードがあったのでしょうか。
ReoNa 今回、1つ大きいテーマとしてあったのが“怒り”で、気持ちの軸としては“怒り”と共に作品と寄り添う楽曲というのがありました。それともう1つ、作品サイドとお話をさせていただいたなかで、レユニオンの足音を感じるような楽曲、いわば“軍歌”みたいなものというキーワードが出てきたんです。これから戦地に赴いて、もしかして死んでしまうかもしれない、誰かを殺してしまうかもしれないけど、それでも進むことしかできない絶望。力強いようで悲しい結末へ誘う行進曲“軍歌”、それを嘆き、揶揄するような、「ハーメルンの笛吹き」のような、間違った方向に進んでいるとわかっていても止められない絶望、地獄へ続く道のりを表現しました。そして「肺が潰れたって叫べ」という歌詞から、今回はホーンセクションを入れようとなって、“アシッドジャズ”というモチーフが出てきました。
――ReoNaさんとアシッドジャズというのは意外な組み合わせでしたが、その発想はどこから?
ReoNa アシッドジャズというのは、私や今回の楽曲を作編曲した毛蟹(LIVE.LAB)さんの音楽ルーツにはないものだったのですが、ディレクターさんのアイデアで、ロックに加え、アシッドジャズの要素を“抗う者”の音楽として表現、挑戦してみることになりました。最初は歌詞の“di-li-pa-pa du-pa-pa”というフレーズがホーンっぽい響きなので、ホーンをフィーチャーした楽曲にしようというところから始まって。それを毛蟹さんのフィルターを通して、ReoNa流のロックテイスト、アシッドジャズテイストがアレンジに加わっていきました。今回はサウンドがめちゃくちゃかっこいいと思っていて。特にアシッドジャズモチーフなら、ベースが花形だよねと、二村学さんにはアレンジが固まる前の段階から参加していただいて、一緒に作らせていただきました。
――作詞はハヤシケイ(LIVE.LAB)さん、作編曲は毛蟹さんということで、ReoNaチームとしては鉄板の布陣ですよね。
ReoNa 今回、渡邉祐記監督や株式会社Yostarの方々といった作品サイドの皆さんとお話をさせていただいたときに、毛蟹さんとケイさんも参加して、渡邉監督がどんな熱量と愛情を持って作品に向き合っているのか、「アークナイツ」という作品が持っている絶望や理不尽さをどう表現したいのか、直接受け取らせていただいたんです。そのときに渡邉監督がおっしゃっていた、「アークナイツ」という世界のやるせなさや絶望に対して、ReoNaが“怒り”で寄り添いたい、というところから楽曲制作がスタートしました。
――でも、以前にインタビューでお話を聞いたことがありますけど、ReoNaさんは怒るのが苦手なんですよね?
ReoNa はい、ものすごく苦手です。ただ、私自身の言葉で誰かに怒りをぶつけるのであれば、どうすればいいのかすごく悩みますけど、楽曲や歌詞だからこそ伝えられること・表現できることがあると感じていて。それこそ私が自分で作詞した「FRIENDS」で“I love you”という言葉を使いましたが、それも口に出して誰かに伝えるのは恥ずかしいけど、歌詞にしてなら伝えられるところがあると思うんです。その意味では、「どうやって歌で怒りを表現しよう?」というのはありましたけど、不安はなかったです。
――“怒り”というテーマは、ReoNaさんが標榜している“絶望系”としての表現の形の1つでもあるのでしょうか?
ReoNa もちろん今回の楽曲は「アークナイツ」という作品への寄り添いがあったからこそできたものですが、私の中では“怒り”もまた絶望の1つの形であって。“怒り”を表現できないことも絶望だと思いますし、“絶望系”という軸で言うと「代わりに怒る」ということでもあると思うんです。ムシャクシャしたときにカラオケとかで誰に聴かせるでもなく歌って発散するだとか、学校や会社に向かうときに心を奮い立たせるために音楽を聴くだったりとか。そういう自分の代わりに心を言葉にしてくれる寄り添いみたいなものが、この楽曲にもあればいいなと思いながら歌いました。
――レコーディングでは、実際に“怒り”ややり場のない理不尽な気持ちを意識したのでしょうか。
ReoNa すごく意識しました。タイトルの「R.I.P.」という言葉は「rest in peace」という意味で、亡くなった方に対しては「安らかに眠ってください」という意味になりますけど、生きている人に対して使うと皮肉になってスラング的な意味もあるので、その言葉をどう怒って歌うか。“怒り”という意味では以前に「JAMMER」という楽曲でも表現したことはありますけど、怒って歌う経験が多いわけではなかったので、言葉自体が持つ怒り感をしっかりと伝えられるように考えました。でも、楽器のレコーディングを見学させていただいたのが大きくて。特にブラスの音。金管楽器はキラキラした音色で高らかなイメージが強いですけど、今回はそれだけでなく荒野を感じさせるような演奏をしてくださって。その鈍く光った音を聴いたうえで歌をRecできたので、しっかりと“怒り”を込められたように思います。
――歌詞のどんな部分に特に“怒り”を感じましたか?
ReoNa “なぁ”というフレーズに怒りや苦悩が詰まっていて、この言葉をどう表現するかはすごく考えました。ここはBメロの終わりとも言えるし、サビの頭とも言える場所になるので、そのジャンクションとしてフックになるポイントだと思うんです。ただ、「なぁ」という言葉自体は同意を求めるニュアンスなので、別に怒っていなくても使う言葉でもあるじゃないですか。なので怒っているニュアンスを出すのが難しくて。特に一番最後に出てくる“なぁ”に関しては、煽る感じと言いますか、思いの丈をぶつけるときの“なぁ”を意識して歌いました。でも、きっとケイさんは怒るとき、“なぁ”って言うんだろうなと思って(笑)。すごくケイさんらしい言葉だなって思いました。
――ちなみに第1期のOPテーマ「Alive」は“生”を否応なく感じさせるタイトルで、今回の「R.I.P.」は逆に“死”を想起させるタイトルになっています。その対照性についてはどのように感じましたか?
ReoNa 「Alive」のあとに「R.I.P.」がくる対極性や皮肉感というのは、ケイさんはもしかしたら意識しているかもしれないです。
――それとこの楽曲、TVバージョンは「R.I.P. -TV ver. α-」と「R.I.P. -TV ver. β-」の2種類ありますが、これはどんな意図で?
ReoNa 単純に楽曲の切り出し方が違う2種類があって、アニメの展開に合わせて切り替えて使われることになっています。「R.I.P.」は“もしも神様がいるなら”のところがアニメに使われていたり、特別な構成になっています。アニメの世界を結んでいくエンディングの役割として、必要な要素を特別に編集して、さらに物語に合わせて2パターン用意することになりました。
きっとアニメのお話が進むにつれて楽曲の印象も変わると思いますし、アニメでは特別な編集になっているからこそ、作品から楽曲を知った方にはぜひフルコーラスを聴いていただきたいです。
――MVもかっこいい映像に仕上がっていますよね。ReoNaさんを取り囲むバンドメンバーはホーン隊やコーラスを含めて全員女性で固めていて。
ReoNa きっかけは、楽曲制作をしている時に、アシッドジャズやロックの色々なアーティストの楽曲を聴いたり、MVを観ていたりしていた時に、とてもかっこいい女性ドラマーがいまして。それがとても印象に残っていて。去年サウジアラビアのライブで初めて女性ドラマーの今村舞さんとご一緒させていただいたことともきっかけに、今回は全員女性でMVを作ってみようとなりました。女性として音楽業界を長年戦い抜いてきた大先輩である女性ミュージシャンの皆さんに、女性の持つかっこ良さや勢い、色気を映像で添えていただきたくて、ご一緒させていただきました。
――撮影はいかがでしたか?
ReoNa 皆さん顔見知りの方々ばかりだったので、現場は女性ミュージシャンの同窓会みたいな感じでした(笑)。でも、いざ演奏が始まると皆さんすごくかっこいいし、疑似ガールズバンドをさせてもらった感じで、すごく楽しかったです。ReoNaとして今までにない映像になったと思います。皆さんめちゃくちゃかっこいいので、女性が持つかっこ良さを隅々まで観てもらいたいです。
――ReoNaさんもかっこ良かったですよ。
ReoNa ありがとうございます(笑)。
「NHK みんなのうた」との出会い、もう1つの「VITA」、毛蟹が描く新しい“絶望”の歌
――カップリング曲のうち「地球が一枚の板だったら」は、2023年4・5月度のNHK「みんなのうた」でオンエアされた楽曲になります。
ReoNa NHK「みんなのうた」は私自身も小さな頃から受け取っていたもので、今回担当させていただくにあたって思い返してみたら、「ああ、この楽曲も知っているな」ということが多くて。この楽曲をきっかけにお子さんがいる方がReoNaに出会ってくださったり、「自分の子供も聴いています!」というお声をいただいたりもして、改めて「みんなのうた」というのは言葉の通り“みんなの歌”だということを感じました。傘村トータ(LIVE.LAB)さんの温かく絶望に寄り添う楽曲を「みんなのうた」として発表することができて良かったです。
――傘村トータさんの楽曲には、必ず優しさが感じられますけど、その中でも今回の楽曲は、子供向けの絵本のような世界観になっていますよね。
ReoNa 温かさ成分をもうひと匙加えた感じと言いますか。でもやっぱり、背中も押さないし手も引かない楽曲なんですよね。“君が100泣いたら 僕も100泣こう”と歌うのは、まさに寄り添う楽曲だと思います。「1人で抱えないでね」っていう。やっぱり家族や友人、恋人、同僚、大切に思う人に対しては、1人で抱えないでほしい気持ちは誰にでもあると思っていて。そういう想いが詰まっている楽曲だと思います。
――この楽曲はすでにライブでも歌われていますが、レコーディングを含め、この楽曲を歌うときは、やはり“君”に向けて優しく歌いかけるようなイメージなのでしょうか?
ReoNa そうですね。ただ、レコーディングで最初に歌ったときは、やっぱり私は何を歌っても暗くなるんだな、と思ってすごく落ち込んでしまって(苦笑)。なので、今の歌に辿り着くまでに色々と試行錯誤をしました。レコーディング現場には傘村トータ氏にも来てもらっていたのですが、私が言葉の温度感や優しさ成分を歌で表現するためにどうすればいいか悩んでいたときに、ふいに傘村トータ氏が手元にあった紙を折りたたんで、“僕”と“君”の指人形を作ってくれたんです。その人形で“僕”と“君”をイメージしながら歌うことで、今の歌に辿り着くことができて。“僕”と“君”の歌なので、私が1人で悩んでいても、そこに正解はなかったんです。優しい歌になっていたらいいなあと思います。
――そしてシングルの初回生産限定盤と通常盤には「VITA -The Days-」を収録。これは家庭用ゲーム「ソードアート・オンライン Last Recollection」の主題歌「VITA」の新バージョンになりますが、9分超のバラード風のアレンジになっていて、原曲とはまったく趣きが変わりましたね。
ReoNa 私もびっくりするくらい変わりました。単純にアコースティックバージョンにするのではなく、まったく別の新曲としての「VITA」に生まれ変わらせたい、という話になって。なので私の歌も全然違う印象のものになっているのですが、それも元々の「VITA」があって、それこそ色んなライブで一緒に走って色んな思い出を作ってきたからこそ、歌えた歌だと思っていて。レコーディングするときもゲームの映像を観ながら歌いましたし、きっとゲームをプレイした方はより特別を感じてくださると思います。
――サウンド的にはストリングスを大々的にフィーチャーした、とてもドラマチックで壮大なアレンジに仕上がっています。
ReoNa 今回は、宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)さんに編曲していただきました。宮野さんは元々劇伴のお仕事をたくさんされている方だからこそ、「SAO」が好きな方には、お!っと思うような仕掛けやフレーズが散りばめられていて、作品にしっかりと寄り添った音にしてくださいました。ゲーム版「SAO」との歴史があったからこそできた楽曲ですし、言葉の響き方もガラッと変わりました。
――1つ1つの言葉をより大切にしているのが伝わってくるような歌い方に感じました。
ReoNa 元々の「VITA」は、決意表明や祈りのような切実さがすごくあると思っていて。“命はあなたを忘れない”という歌詞は、それこそ覚悟であり、そうであってほしいと願う祈りでもあると思うんですね。でも、今回の「VITA -The Days-」は、意識したわけでもなく自然と、さも当たり前のような感覚で歌うことができて……説明が難しいですけど、決意表明というよりは、「命ってそういうものだよね」と読み聞かせるような感覚で歌いました。歌詞は同じなのに、歌っているときの気持ちはまるで違いました。
――そしてもう1曲、期間生産限定盤に収録の「原作者」は、毛蟹さんが作詞・作曲・編曲を手がけた、ほぼピアノのみをバックにした楽曲です。
ReoNa ReoNaの楽曲というのは、出来上がるまでの生い立ちが楽曲ごとに全然違っていて、言葉の1つ1つまで入念に相談しながらできた楽曲もあれば、私が「最近こんなことを考えているんです」という思いをしたためてもらうこともありますし、アニメやゲーム作品にしっかりと向き合ってお話しながら作るパターンもあって。その中には、クリエイターさんが作詞・作曲したものをスッといただくパターンもあるのですが、その意味で「原作者」は毛蟹さんに私が付いていった楽曲と言っていいと思います。それこそ毛蟹さんに「月姫 -A piece of blue glass moon-」の楽曲を作っていただいたときは、「俺は“月姫”のことだけを考えて楽曲を作るから、ReoNaは自分でこの楽曲をReoNaの楽曲にしろ!」っていう感じだったんです。それに近い感じで、毛蟹さんが思い描く歌詞とメロディを私が歌にする、という形で出来上がったのが、この「原作者」になります。
――でも、夢や理想を追い求めるなかで味わう“絶望”が描かれている意味では、ReoNaさんが歌ってこそ意味のある楽曲にも感じました。
ReoNa こんなにも私自身の意見が入っていない、毛蟹さんから「はい」と渡されたものに対して、「私は歌えない」と思えないことが逆に悔しくて「毛蟹さんらしいな」と思いつつ、私も自分に重ねられる部分がちゃんとあったんです。
――最初に楽曲を受け取ったとき、どんな風に感じましたか?
ReoNa まず、毛蟹さんは原作者になりたかったんだろうな、と感じましたし、そういう夢に対する想いというのは、この楽曲を受け取る人の夢の大きさや今いる場所によって、刺さり方や感じ方が全然違うんだろうなと思って。でも、私の中では毛蟹さんはすでに原作者でもあるんですよね。私にとって毛蟹さんは脚本家であり原作者であって、私はそれを受け取って1人の演者として板に立つというイメージなので。
――この楽曲では、夢や理想の自分、なりたい自分になれない悔しさみたいなものが描かれていますが、その気持ちに何かしらの決着を求めるのではなく、ポンと置かれているような歌という印象を受けました。
ReoNa 独白のような感じですよね。この楽曲は仮歌から本番のボーカルRecまで、すべて毛蟹さんとお話しながら進めていったのですが、独り言感やもがき苦しむような感じ、声の置き所やフレーズごとの感情の振れ幅というのは、お互い意見をリレーしながら模索するなかで出来上がった感じでした。多分、毛蟹さんの中に私の声のイメージがあって、それに対して私が独白感というイメージで歌って一致した感じです。
――ちなみに楽曲の後半で、主線とは別のコーラスが加わってきますが、あれはどういう意図で作られたのでしょうか?
ReoNa あそこのコーラスは“夢では芸術家 あなたは建築家 誰もがドクター ロックスター”と歌っているのですが、多分、毛蟹さんはあそこで色んな人の人生観を表現したかったんだと思います。なのであそこのコーラスは私の声だけでなく、毛蟹さんの声も入っています。
――男性の声も入っているなと思ったのですが、あれは毛蟹さんだったんですね。
ReoNa ReoNaのレコーディングはその場にいる人にコーラスを入れてもらうことが多くて、「Someday」では傘村トータさんと堀江晶太さんとスタッフさんと私でコーラスを歌っていますし、今回の「原作者」でも、私と毛蟹さんと実はもう1人、女性スタッフも歌ってくれていて、ちょうど私と毛蟹さんの声の間の成分を足してくれました。現場で実際に録って試すことが多くて、今回は厚みのあるコーラスが合うということで今の形になりました。
5周年イヤーのアニバーサリーツアーに向けて、ReoNaが今感じること
――ReoNaさんは今年8月にデビュー5周年イヤーを迎えて、来年5月からは新たなツアー『ReoNa 5th Anniversary Concert Tour “ハロー、アンハッピー”』を開催することも発表されましたが、節目の年となるこの1年、どんな活動をしていきたいですか?
ReoNa 今はちょうどアコースティックツアー(“ふあんぷらぐど2023”)を行っているところなのですが、アコースティックツアーは2年ぶりなので、感覚的に思い出すこともありますし、以前とは変わった部分があることを肌で感じていて。最近はバンドセットのライブが続いて、並行して2ndアルバムのレコーディングもあって、ライブと制作を駆け抜けた先で、伴奏はピアノとギターだけで自分の声が占める割合の大きいライブに立ち返った今、言葉をメロディに乗せること、言葉を音楽として伝えることをより意識するようになったと思うんです。その中で自分の歌が変化していることを感じますし、このアコースティックツアーを経ることで、さらに一歩、歌で伝えることの正解が掴めるんじゃないかと思っていて。なので来年のバンドセットのライブも、ぜひ楽しみにしていただきたいです。
――その来年のツアーのタイトルが“ハロー、アンハッピー”ということで、ある種、原点回帰を感じさせます。
ReoNa 今回はデビュー5周年という1つの大きい節目を迎えたので、改めてこのタイトルにさせていただきました。
――それは楽しみです。あと、来年のツアーは鹿児島公演もありますね。
ReoNa そうなんです……!ついに地元の鹿児島に帰ることができます。CAPARVO HALLは元々2020年に行く予定だったので、やっと念願が叶うことになりました。いつかは奄美大島でもライブができればと思います。
●リリース情報
ReoNa 8th Single
TVアニメ「アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】」EDテーマ
「R.I.P.」
発売中
予約・購入はこちら
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【初回生産限定盤(CD+DVD)】
品番:VVCL 2350-51
価格:¥1,980(税込)
※撮り下ろしフォトブック同梱
※トールケースサイズ三方背スリーブケース仕様
【通常盤(CD)】
品番:VVCL 2352
価格:¥1,320(税込)
<CD>
M1.「R.I.P.」
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.) ブラスアレンジ:宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)
M2.「地球が一枚の板だったら」
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:傘村トータ(LIVE LAB.) 編曲:小松一也
M3.「VITA -The Days-」
作詞:毛蟹(LIVE LAB.)、ReoNa 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
M4.「R.I.P.」-Instrumental-
<DVD>
「R.I.P.」Music Video
「VITA -The Days-」Music Video
【期間生産限定盤(CD+DVD)】
品番:VVCL 2353-54
価格:¥1,760(税込)
※TVアニメ『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】描きおろしイラスト使用ミニポスター
※TVアニメ『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】描きおろしイラスト使用三方背ケース付
<CD>
M1.「R.I.P.」
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.) ブラスアレンジ:宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)
M2.「地球が一枚の板だったら」
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:傘村トータ(LIVE LAB.) 編曲:小松一也
M3.「原作者」
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
M4.「R.I.P.」-TV ver-
<DVD>
TVアニメ『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】ノンクレジットエンディング映像収録
●ライブ情報
『ReoNa 5th Anniversary Concert Tour “ハロー、アンハッピー”』
5/18(土)戸田市文化会館(埼玉)OPEN 17:00 / START 18:00
5/19(日)戸田市文化会館(埼玉)OPEN 16:00 / START 17:00
6/8(土)NHK大阪ホール(大阪)OPEN 17:00 / START 18:00
6/9(日)NHK大阪ホール(大阪)OPEN 16:00 / START 17:00
6/15(土)BLUE LIVE HIROSHIMA(広島)OPEN 17:00 / START 18:00
6/16(日)高松 festhalle(香川)OPEN 17:00 / START 18:00
6/21(金)SENDAI GIGS(宮城)OPEN 18:00 / START 19:00
6/23(日)サッポロファクトリーホール(北海道)OPEN 17:00 / START 18:00
7/6(土)Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール(愛知)OPEN 17:00 / START 18:00
7/14(日)福岡国際会議場(福岡)OPEN 17:00 / START 18:00
7/15(月・祝)鹿児島 CAPARVO HALL(鹿児島)OPEN 17:15 / START 18:00
全席指定/全自由 ¥8,200(税込)
※一部、ドリンク代別途
※6歳以上チケット必要
※未就学児童入場不可
★CD「R.I.P.」購入者限定先行受付実施!【11/26(日)23:59まで(抽選申込)】
チケット一般発売日に先駆けて、CD「R.I.P.」購入者限定で『ReoNa 5th Anniversary Concert Tour “ハロー、アンハッピー”』チケット先行受付実施が決定しました。詳しくは、シングル「R.I.P.」に封入されているチラシをご確認の上、お申込みください。(応募には封入されているチラシに記載されているシリアルナンバーが必要となります)
▼受付期間
11月15日(水)10:00~11月26日(日)23:59まで(抽選申込)
※申込は1公演2枚まで、複数公演申し込み可能
関連リンク
ReoNa オフィシャルサイト
https://www.reona-reona.com/
ReoNaオフィシャルX(旧Twitter)
https://twitter.com/xoxleoxox
ReoNaオフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCyUhtF50BuUjr2jOhxF3IjQ
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