声優・寿 美菜子がおよそ5年ぶりとなるツアー<LAWSON presents 寿美菜子 Zepp Live Tour 2023 “Golden hour”>を開催した。神奈川と大阪で行われた今回のツアーは、彼女のキャリアを彩ってきた数々の楽曲に加え、先日リリースされたばかりの1st EP『Curious』からの全楽曲を網羅した、待望のステージに相応しいタイトル通りの“Golden”な装い。
自身が演出にも深く携わった歓喜の2公演から、ツアー初日となる11月5日神奈川・KT Zepp Yokohama公演の模様をレポート。

PHOTOGRAPHY BY佐藤 薫
TEXT BY 澄川龍一

最高の“Golden hour”、その始まりは軽やかに
ソロとしてのツアーは2018年に開催された “emotion”ツアー以来5年ぶりとなる、寿 美菜子によるライブツアー。その前に、今年5月には“さよなら中野サンプラザ”に同じくスフィアの豊崎愛生との2マンライブを経験している。そのときの熱狂を目の当たりにしたスタッフ陣の働きかけもあって完成したのが、1st EPとなる『Curious』であり、今回のツアーであった。そうした過程のなかで、様々な期待と待望が熱気となって、開演前のZepp Yokohamaに充満しているようだった。そんななか会場が暗転すると、まるでその熱気が弾けるように歓声が会場に響き渡る。そしてバンドメンバーのあとにステージ中央から寿が、「最高の“Golden hour”を過ごしましょう!よろしくー!」と勢いよく登場すると、デビューシングル「Shiny+」のギターリフが鳴らされた。ステージ上には平井武士(g)、生田目勇司(ds)、籠島裕昌(key)、平本陽一郎(b)という4ピース編成で、ガツンとしたバンドサウンドが印象的。そのなかで寿は冒頭からハリのある歌唱を聴かせる。久々のワンマンでもその動きは実に軽やかで、ロッキンながら清涼感たっぷりな彼女の魅力が十二分に発揮されたステージとなった。

対して観客は待ってましたと言わんばかりに彼女のイメージカラーである紫色のペンライトで会場を染め上げる。冒頭から「これぞ寿 美菜子のライブ」と言えるエネルギッシュなパフォーマンスで熱量を一気に上げたあとは「ココロスカイ」へ。
いきなりの代表曲の連発に、冒頭のアルペジオですでに客席から大歓声が起こる。寿の歌唱は当時から変わらずフレッシュさを保ちながら、サビの“怖がらずに 行こう”のフレーズなど力強く伸びていく。終盤にはお馴染みの観客の大合唱を経て、“怖がらずに say hello!”とシンガロング。まさしく5年ぶりの再会を祝福するかのような盛り上がりをみせたあとは、その余韻のなかでピアノのフレーズが弾かれる。時は一気に2018年に進んで、EDMサウンドの「Another Wonderland」へ。寿の澄んだボーカルからリズムインして、ダンサブルな原曲にバンドの肉感が加わるパワフルなパフォーマンスを聴かせる。ビートに乗せて体を動かして同時に会場全体を揺らす、こちらも寿美菜子らしいフロアライクな魅力が打ち出されていった。

体全体で再会を喜び、分かち合うにはうってつけのオープニングのあとは、最初のMCへ。ツアー初日、そして久々のワンマンを迎えられたことに喜びを爆発させる寿は、客席に向かって「たくさんのみんなが見えるよー!」と実に嬉しそう。同時に「登場からちょっとうるっときてました」とエモーショナルな気持ちを吐露した。5年ぶりのツアーということで、その景色を改めて思い出すように、「いい景色だねえ、もう」とこぼしたのがまた印象的だった。

この日のステージを彩るバンドメンバーを紹介したあとは、「新曲いってみましよう!」と宣言し、EP『Curious』のなかでもロッキンな「DIVE INTO」へ。
時折がなるようにラフな歌い出しを聴かせてバンドサウンドに心地よく乗せたパフォーマンスを聴かせたあとは、『Curious』からダンサブルな「Sense of Wonder」へ。曲の冒頭で上着を脱いで身軽になったあとは、ビートに乗ってキレのあるダンスを披露する。今回のツアーはシンプルな編成となったが、それだけに彼女の力強いパフォーマンスが際立つし、エンターテイナーとしての実力というものを存分に堪能することができた。

続くMCではEP『Curious』に触れつつ、この日はベストライブ的なものであると語る寿。セットリストを作っていくうえでどうしても入れられない曲、「この曲歌えないなんてもったいないよ!」という曲たちが出てきたという。続いては、そんな楽曲を一気に披露するメドレー“もったいないhour”がスタート。まずは「Like a super woman」でファストなサウンドにお馴染みの振り付けをみんなで楽しんだあとは、「Startline」のサビを小気味よく聴かせる。もちろんサビの終わりでは観客と一緒にシンガロングをしたあとは、ポップな「Candy Color Pop」でキレキレのダンスを披露。そのあとには薄手のストールを羽織って和のテイストを感じさせるミディアム「metamorphose」を経て、「Piece of emotion」で再びパワフルな歌唱を聴かせる。

「横浜まだまだ終わらないよー!みんなで一緒に歌いましょう!」と叫んでからの「FLY @WAY」で再び盛り上がったあとは、「STRIDE」に移ってさらに加速。客席のボルテージも頂点に達したところでメドレーも終わり……かと思ったら再び「Like a super woman」へとどめとばかりにリプリーズ。実に15分にわたる狂乱のメドレーを一気に駆け抜けた。
なるほど、これが聴けないなんて実にもったいない!

次ページ:寿 美菜子の音楽の帰還、そして”Golden hour”の先に見える景色とは

寿 美菜子の音楽の帰還、そして”Golden hour”の先に見える景色とは
ステージも客席もタフで、しかしとにかく楽しい時間を過ごしたあとは、「懐かしい曲をしっとりと」と告げて、「ライラック」へ。デビューシングル「Shiny+」のカップリングに収録されたこの曲。イントロでどよめきが起こる。懐かしい感情が会場を包むなか、ステージ中央の寿は変わらず瑞々しい声を響かせていた。そのままバラード「Dear my…」へ続くと、パワフルでありながら優しく胸に響く絶品な歌唱を聴かせ、しっとりとした雰囲気のなかでいったんステージを後にした。

ステージ上が無人となったあとは、「OMAJINAI」の軽快なインストが流れるなか幕間ラジオ「寿美菜子のGolden hour」がスタート。ツアーの開催地にまつわる思い出話を1人喋り形式で話したあとは、セットも再開。煌びやかな衣装に着替えてまずはファンキーな「OMAJINAI」で後半戦の幕を開ける。軽快なリズムに乗せてトリッキーなフロウを聴かせ、かっこ良くキュートな一面を覗かせる。そこから「ウレイボシ」では熱量の高いボーカルを聴かせ、一転してロックな魅力を聴かせる。かと思えば続く「save my world」ではダンサブルなステージングに振って、しかしボーカルは変わらず力強く観客を煽っていく。

MCでバンドメンバーと談笑したあとは、再び『Curious』から「唇にWasp」を披露。
これまでアクティブなステージに対して、この曲ではスタンドマイクをややもたれかかるようにして、エモ系のラウドなサウンドに乗せてパワフルな歌唱を聴かせていく。ロッキンな魅力の寿のライブにおいてもまたフレッシュなアプローチが感じられた。そこからライブはクライマックスに向けて激化、続いて「カラフルダイアリー」では会場が青や赤く染まるなかでアグレッシブに盛り上がったあとは、ピアノの高速フレーズとともに「girly highester!」がスタート。会場のテンションも最高潮に達するなかで、観客もこの瞬間を待っていたとばかりに一緒に大合唱。改めてこの爆発力、そしてこの一体感は強烈だ。

これぞ寿 美菜子のライブというパフォーマンスを終え、その熱が会場に籠るなか、ギターのアルペジオが鳴らされる。そのなかで「このゴールデンアワーが始まるまで、約5年かかりました。長かったね。でも無事に今日を迎えられました」と語ったあと、「これからもみんなで最高の“Golden hour”を過ごしていきましょう!」と言って本編最後に披露されたのは、ツアーのタイトルにもなった「Golden hour」。青く照らされるステージでは壮大なバンドサウンドが鳴らされていく、それがサビになると一気に金色に輝く。まるで夜が明けるかのような、眩いばかりのステージ上、その中心に立つ寿は力強く開放感あふれるボーカルを響かせている。この場にいる人たちが観たかった、そして聴きたかったもの、そして彼女がみんなと過ごしたいと思っていた”Golden hour”とは、まさにこの瞬間だったのだ。


「Golden hour」で感動的なエンディングを迎えたあと、会場からはアンコールの大歓声がこだまする。それに応えるように「Believe ×」の爆音が鳴らされ、キャップにTシャツとツアーグッズを着た寿が登場してアンコールがスタート。ライブが最終盤に入っても寿のパフォーマンスは活き活きとして、途中カラーボールを客席に投げながら、ボーカルもダンスも変わらずエネルギッシュに、また軽やかだ。続くMCでは「こうして皆さんと楽しむことができて、ツアーを開催できて本当に嬉しい気持ちでいっぱいです」と改めて喜びを語る寿。

「この景色を夢に見たいです、今日の夜。今日のこの美しい皆さんの笑顔と最高の輝き、光。これを夢で見たいなと思うほどに、本当に満たされました。幸せな時間、“Golden hour”をありがとうございました!」と感謝を述べた。そしてこのあと、『Curious』からまだ歌っていない楽曲として「Chilling out」を披露したのだが、その前に「残すところ2曲、やっぱり私たちは歌う、とにかく歌っていこう」と宣言した通り、この曲では観客と一緒にシンガロング。しかもただ歌うだけではなく、客席を真ん中から左右に分け、下手側の観客にメインのメロディを、上手側の観客にハモのメロディをとそれぞれパートを分けて歌唱指導していく。

より重層的なシンガロングが鳴らされるとともに、会場全体で音楽を楽しむ光景が展開されていった。そしてこの日最後にチョイスされた楽曲は、ロッキンな「black hole」だった。
ソリッドなサウンドに、キリッとした熱量の高いボーカルが聴かれるこの曲に、もちろん観客は大歓声で応える。一方でこの曲で終えるということは、あくまで激しくこの先の未来も突き進んでいく、そんな力強い意志を表明するようにも感じられた。アグレッシブに”Golden hour”を駆け抜けた寿は、最後に「最高の時間でした! また一緒に音楽しましょう!」と叫び、激動の一夜を終えた。

改めて寿 美菜子が鳴らす音楽の帰還、そしてあらたな一歩を踏みしめることを力強く宣言した久々のワンマン、そしてツアー初日。ベスト的な楽曲と『Curious』という新たなチャレンジが混ざり合う構成は、それらが目で耳ではっきりと伝わる生命力に溢れるステージとなった。寿にとっても、そして観客にとってもあまりに多くのことがあったこの5年を経て果たした歓喜の再会は、まさに夜明けのように美しく、眩しく映った。そして夜が明けたあとには、“Golden hour”のその先――このツアーのあとの寿 美菜子の音楽というものにも期待が集まる。そこにはきっと、夜明けよりもっと眩しく、楽しい世界が待っているはずだ。

<セットリスト>
M01.Shiny+
M02.ココロスカイ
M03.Another Wonderland
M04.DIVE INTO
M05.Sense of Wonder
M06.Medley「もったいないhour」
Like a super woman
Startline
Candy Color Pop
metamorphose
Piece of emotion
FLY@WAY
STRIDE
Like a super woman
M07.ライラック
M08.Dear my…
RADIO TIME
M09.OMAJINAI
M10.ウレイボシ
M11.save my world
M12.唇にWasp
M13.カラフルダイアリー
M14.girly highester!
M15.Golden hour

EN1.Believe ×
EN2.Chilling out
EN3.black hole

●リリース情報
1stEP
「Curious」
2023年10月25日(水)

【[初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】
価格:¥3,300(税込)
品番:SMCL-832~833

【通常盤(CD)】
価格:¥2,200(税込)
品番:SMCL-834

<CD>
唇にWasp
作詞:寿 美菜子 作曲・編曲:山本玲史

Sense of Wonder
作詞:寿 美菜子 作曲・編曲:ひびね。

DIVE INTO
作詞:寿 美菜子 作曲・編曲:金崎真士

OMAJINAI
作詞 : クボタカイ 作曲 : クボタカイ, Taro Ishida 編曲 : Taro Ishida

Chilling out
作詞:寿 美菜子 作曲・編曲:山崎真吾

Golden hour
作詞:寿 美菜子 作曲・編曲:川口圭太

<Blu-ray>
・Golden hour Music Clip
・Curious TV SPOT 15sec+30sec

関連リンク
寿 美菜子 公式サイト
https://www.kotobukiminako.com/
編集部おすすめ