HoneyWorksはインディーズ時代から、ある学園を舞台に、高校生キャラクターたちの恋愛模様を楽曲で紡ぐ青春群像シリーズ「告白実行委員会」をライフワークとして続けている。その中でも、近年注目されているのが、「告白実行委員会~アイドルシリーズ~」だ。
ではなぜ、HoneyWorksが生んだアイドル達とその歌に、リスナーは心惹かれるのか。
TEXT BY 阿部美香
HoneyWorksアイドルには、応援したくなる理由がある
もちろん、HoneyWorks楽曲は、それ単体として音楽的な魅力に溢れている。HoneyWorks節ともいえる明るくキャッチーなメロディー。印象的なフレーズが繰り返される親しみやすさ。クリアでノリの良いサウンド。「告白実行委員会」シリーズ楽曲、HoneyWorks楽曲にはそれらの要素が、そもそも備わっている。そしてそれは、誰もが心地良く聴けるアイドルソングに求められる要素でもある。
だが、それだけがHoneyWorksアイドルソングの魅力ではない。最もリスナーの心を惹くのは、やはり“歌詞”だ。アイドル達がそこに“生きている”爪跡=生き様と、アイドル達の想いが、楽曲の中にしっかりと刻まれているからだ。
コンプレックスを武器に変え、健気に努力するmona
例えば、キュートな女性アイドル・mona(CV&Vo:夏川椎菜)。彼女の本名は成海萌奈。容姿や才能で恵まれた人気読者モデルの姉・成海聖奈(CV&Vo:雨宮天)にコンプレックスを感じ、あの聖奈の妹だと知られないように、monaの芸名でアイドル活動を始めた女の子だ。
「No.1」では、そんな彼女が成海萌奈としてのコンプレックスを払拭していく姿が描かれ、「誇り高きアイドル」ではアイドルとしてステージに立つことへのプライドと決意が込められ、「ファンサ」では、ライブの光景に照らし合わせて、応援してくれるファンへの愛情が描かれる。そして、最新曲「#超絶かわいい」では、アイドルとしてすっかり成長したmonaの自信に満ちた姿が表現される。新しい曲が発表されるたびに、リスナーは、普通の高校生・成海萌奈がmonaとなり、アイドルとしての階段を上っていくドラマを一緒に経験できるのだ。
もう1つ、monaを知るうえで重要なのは、アイドル・monaとしてではなく、素顔の成海萌奈名義で発表されている楽曲もあるということ。そんなmonaのバックボーンは、彼女を主人公にした現在連載中のコミック「私、アイドル宣言」を読むと、ますます共感できることだろう。
不仲から唯一無二の相棒へ! LIP×LIPの大切な絆
monaより一足早く、アイドルシリーズからデビューした男性アイドルユニット・LIP×LIPも、メンバー2人がアイドルユニットとしての結束を深めていくドラマを、楽曲から感じ取ることができるのが魅力だ。梨園で育ちならがらも歌舞伎の道を諦めたクールな染谷勇次郎(CV&Vo:内山昂輝)と、人当たりも良く明るいが、実際は無愛想で女嫌いな柴崎愛蔵(CV&Vo:島﨑信長)。
アイドルである彼らの楽曲には、「ロメオ」や「ノンファンタジー」のように、聴き手に恋人目線を届ける甘いラブソングが多い。だが、LIP×LIPがファンの心を掴んで離さないのはやはり、2人が困難を乗り越えて紡いできた熱い絆を感じさせてくれる曲たちの存在が大きい。
ラブソングのテイストがありながらも、僕にとって君の存在は必要不可欠だと、LIP×LIP2人の関係性を想起させるフレーズが胸に迫る「必要不可欠」、“お前がいるから俺はやれる”とバディ感を歌う「ロデオ」。リアルアイドルでは描かれることのない“不仲”が、物語として描かれているからこそ、それを乗り越えた2人のドラマにファンは想いを馳せられるのだ。
そして、LIP×LIPの物語に先輩アイドルとして登場する、ストリート系ダンスボーカルユニット・Full Throttle4(CV&Vo:斉藤壮馬・内田雄馬・柿原徹也・増田俊樹)にも、それぞれに複雑な環境や悲しい過去があり、Full Throttle4で初めてかけがえのない仲間を見つけられたというドラマがある。LIP×LIPをフィーチャリングしてライバル同士の共闘を描く「新時代」では、お互いのユニットだけでなく、音楽で高め合う2組の絆も感じられ熱い気持ちになる。Full Throttle4が主人公となった作品はまだ発表されてはいないので、今後の展開にも期待したい。
アイドルストーリーから生まれたニュースター“ちゅーたん”
HoneyWorksアイドルの物語からは、さらなる大ヒット曲も生まれた。それが昨年から今年にかけてTikTokやYouTubeで人気を博した「可愛くてごめん feat. ちゅーたん (CV:早見沙織)」だ。キャッチーなサビのフレーズに合わせて投げキッスをするダンス動画が大流行し、昨年末にはSEVENTEENやNCT、IVEといったK-POPアーティストがダンス動画を投稿し、爆発的なヒットソングとなった。
この、ちゅーたんは、LIP×LIPのマネージャー見習いとなった主人公・涼海ひよりの奮闘を描くTVアニメ『ヒロインたるもの!~嫌われヒロインと内緒のお仕事~』の登場人物・中村千鶴が、LIP×LIPを推し活するためにバイトに励むメイド喫茶での別名だ。ちゅーたんは、アイドルキャラクターではないが、歌っている曲は見事なアイドルソング。しかも、HoneyWorksアイドルの熱烈なファン目線が彼女の物語にはあり、ちゅーたんの最新曲「すきっちゅーの!」では、ガチ恋“推し活”ファンのリアルな気持ちがより強く描かれている。アイドルからファンへの愛情とともに、ファンからアイドルへの愛情がバックストーリーとして同時に楽しめるからこそ、アイドルの世界を強固にするという二重構造がまた、HoneyWorksアイドルの面白さでもある。
そして「告白実行委員会~アイドルシリーズ~」を生んだHoneyWorksは、2021年より、リアルアイドルグループ・可憐なアイボリーや高嶺のなでしこのサウンドプロデュースも手がけている。どちらもオリジナル楽曲だけでなく、HoneyWorksキャラクターの楽曲カバーを多く披露しているのも、ほかのリアルアイドルグループにはない面白さだ。HoneyWorks楽曲を通じてバーチャルアイドルとリアルアイドルが出会う、新しいアイドル表現を提示している。
バーチャルとリアルを自在に行き来するHoneyWorksが、アイドルを題材に今後どんな展開を見せてくれるのか。ぜひ注目していきたい。
関連リンク
HoneyWorks 公式サイト
https://honeyworks.jp/
高校生群像劇である「告白実行委員会」キャラクターの中で、高校に通いながら芸能活動をしているアイドルと仲間達にスポットが当てられたアイドルシリーズからは、LIP×LIP、mona、Full Throttle4らが、アニメや映画、小説、コミックを通じて新たなストーリーを展開し、リアルでもCDデビューを果たしてヒットを連発。今や彼らは群像劇中のキャラクターとしてだけでなく、“リアルなバーチャルアイドル”として、音楽ファンからも“推される”存在へと成長している。
ではなぜ、HoneyWorksが生んだアイドル達とその歌に、リスナーは心惹かれるのか。
TEXT BY 阿部美香
HoneyWorksアイドルには、応援したくなる理由がある
もちろん、HoneyWorks楽曲は、それ単体として音楽的な魅力に溢れている。HoneyWorks節ともいえる明るくキャッチーなメロディー。印象的なフレーズが繰り返される親しみやすさ。クリアでノリの良いサウンド。「告白実行委員会」シリーズ楽曲、HoneyWorks楽曲にはそれらの要素が、そもそも備わっている。そしてそれは、誰もが心地良く聴けるアイドルソングに求められる要素でもある。
だが、それだけがHoneyWorksアイドルソングの魅力ではない。最もリスナーの心を惹くのは、やはり“歌詞”だ。アイドル達がそこに“生きている”爪跡=生き様と、アイドル達の想いが、楽曲の中にしっかりと刻まれているからだ。
一見、単なる“アイドルらしいラブソング”や“明るく元気なエールソング”に聴こえる曲の中にも、アイドルとしての自分と普通の高校生としての自分、両方を想起させる気持ちや置かれた状況を推察できるワードが盛りこまれ、自身の成長の記録として描かれていく。アイドルそれぞれのセルフストーリーと照らし合わせて曲を味わうことができるから、キャラクターへの共感の輪が広がり、アイドルとして生きる彼らが夢に向かって奮闘する姿を、ファンとしてますます応援したくなるのだ。
コンプレックスを武器に変え、健気に努力するmona
例えば、キュートな女性アイドル・mona(CV&Vo:夏川椎菜)。彼女の本名は成海萌奈。容姿や才能で恵まれた人気読者モデルの姉・成海聖奈(CV&Vo:雨宮天)にコンプレックスを感じ、あの聖奈の妹だと知られないように、monaの芸名でアイドル活動を始めた女の子だ。
「No.1」では、そんな彼女が成海萌奈としてのコンプレックスを払拭していく姿が描かれ、「誇り高きアイドル」ではアイドルとしてステージに立つことへのプライドと決意が込められ、「ファンサ」では、ライブの光景に照らし合わせて、応援してくれるファンへの愛情が描かれる。そして、最新曲「#超絶かわいい」では、アイドルとしてすっかり成長したmonaの自信に満ちた姿が表現される。新しい曲が発表されるたびに、リスナーは、普通の高校生・成海萌奈がmonaとなり、アイドルとしての階段を上っていくドラマを一緒に経験できるのだ。
もう1つ、monaを知るうえで重要なのは、アイドル・monaとしてではなく、素顔の成海萌奈名義で発表されている楽曲もあるということ。そんなmonaのバックボーンは、彼女を主人公にした現在連載中のコミック「私、アイドル宣言」を読むと、ますます共感できることだろう。
不仲から唯一無二の相棒へ! LIP×LIPの大切な絆
monaより一足早く、アイドルシリーズからデビューした男性アイドルユニット・LIP×LIPも、メンバー2人がアイドルユニットとしての結束を深めていくドラマを、楽曲から感じ取ることができるのが魅力だ。梨園で育ちならがらも歌舞伎の道を諦めたクールな染谷勇次郎(CV&Vo:内山昂輝)と、人当たりも良く明るいが、実際は無愛想で女嫌いな柴崎愛蔵(CV&Vo:島﨑信長)。
はじめは不仲で衝突を繰り返しているが、アイドル活動を続けるうちに信頼し合い、仲間として成長していく。その波乱のストーリーは、結成秘話を描いた映画「LIP×LIP FILM×LIVE~この世界の楽しみ方~」でも語られた。
アイドルである彼らの楽曲には、「ロメオ」や「ノンファンタジー」のように、聴き手に恋人目線を届ける甘いラブソングが多い。だが、LIP×LIPがファンの心を掴んで離さないのはやはり、2人が困難を乗り越えて紡いできた熱い絆を感じさせてくれる曲たちの存在が大きい。
ラブソングのテイストがありながらも、僕にとって君の存在は必要不可欠だと、LIP×LIP2人の関係性を想起させるフレーズが胸に迫る「必要不可欠」、“お前がいるから俺はやれる”とバディ感を歌う「ロデオ」。リアルアイドルでは描かれることのない“不仲”が、物語として描かれているからこそ、それを乗り越えた2人のドラマにファンは想いを馳せられるのだ。
そして、LIP×LIPの物語に先輩アイドルとして登場する、ストリート系ダンスボーカルユニット・Full Throttle4(CV&Vo:斉藤壮馬・内田雄馬・柿原徹也・増田俊樹)にも、それぞれに複雑な環境や悲しい過去があり、Full Throttle4で初めてかけがえのない仲間を見つけられたというドラマがある。LIP×LIPをフィーチャリングしてライバル同士の共闘を描く「新時代」では、お互いのユニットだけでなく、音楽で高め合う2組の絆も感じられ熱い気持ちになる。Full Throttle4が主人公となった作品はまだ発表されてはいないので、今後の展開にも期待したい。
アイドルストーリーから生まれたニュースター“ちゅーたん”
HoneyWorksアイドルの物語からは、さらなる大ヒット曲も生まれた。それが昨年から今年にかけてTikTokやYouTubeで人気を博した「可愛くてごめん feat. ちゅーたん (CV:早見沙織)」だ。キャッチーなサビのフレーズに合わせて投げキッスをするダンス動画が大流行し、昨年末にはSEVENTEENやNCT、IVEといったK-POPアーティストがダンス動画を投稿し、爆発的なヒットソングとなった。
この、ちゅーたんは、LIP×LIPのマネージャー見習いとなった主人公・涼海ひよりの奮闘を描くTVアニメ『ヒロインたるもの!~嫌われヒロインと内緒のお仕事~』の登場人物・中村千鶴が、LIP×LIPを推し活するためにバイトに励むメイド喫茶での別名だ。ちゅーたんは、アイドルキャラクターではないが、歌っている曲は見事なアイドルソング。しかも、HoneyWorksアイドルの熱烈なファン目線が彼女の物語にはあり、ちゅーたんの最新曲「すきっちゅーの!」では、ガチ恋“推し活”ファンのリアルな気持ちがより強く描かれている。アイドルからファンへの愛情とともに、ファンからアイドルへの愛情がバックストーリーとして同時に楽しめるからこそ、アイドルの世界を強固にするという二重構造がまた、HoneyWorksアイドルの面白さでもある。
そして「告白実行委員会~アイドルシリーズ~」を生んだHoneyWorksは、2021年より、リアルアイドルグループ・可憐なアイボリーや高嶺のなでしこのサウンドプロデュースも手がけている。どちらもオリジナル楽曲だけでなく、HoneyWorksキャラクターの楽曲カバーを多く披露しているのも、ほかのリアルアイドルグループにはない面白さだ。HoneyWorks楽曲を通じてバーチャルアイドルとリアルアイドルが出会う、新しいアイドル表現を提示している。
バーチャルとリアルを自在に行き来するHoneyWorksが、アイドルを題材に今後どんな展開を見せてくれるのか。ぜひ注目していきたい。
関連リンク
HoneyWorks 公式サイト
https://honeyworks.jp/
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