PHOTOGRAPHY BY 平野タカシ
TEXT BY えびさわなち
視覚から感じるだけではない、心でこのステージを感じてほしい
ライブへの期待感にざわめく会場の明かりが消えると、フロアは静寂に包まれる。そこにオープニングを告げるSE「WⅡ -prologue-」が響き、スペシフィックな音と共にレーザーがゆっくりと観客を照らし出す。瞬間的な光の明滅はフロアとステージを隔てるスクリーンに映し出される映像によって鮮やかな明滅に。幕の奥にWho-yaが姿を現すと、オーディエンスの拍手が沸いた。ドラムのカウントと共にTVアニメ『NIGHT HEAD 2041』のOPテーマ「Icy Ivy」が響きだす。スクリーンはそのままに、映し出される映像の向こうで音をかき鳴らすWho-ya Extended。スクリーンに歌詞とエモーショナルな映像とが映し出され、鋭い音にハイトーンが軽快に駆ける1曲は、サウンドのみならず視覚からも疾走感を届ける。続いたのは「ErroЯ CØDE」。畳みかけるようなビートと軽快なギターサウンドとで紡ぐフロア・ロックにオーディエンスが大きく手を上げる。煌めくネオンライトのような映像が幾何学的に散りばめられた映像とシンクロするステージ。
「俺たちにとっての4回目のワンマンライブ“4vism”へようこそ」と口を開いたWho-ya。「今回は“4vism”というタイトルをつけました。毎回ライブのタイトルの意味はライブに足を運んでくれたみんなにだけ、直接話をしようと思っています」と告げると、会場からは拍手が起こる。そもそもはマティスやデュフィをはじめとした20世紀初頭の絵画運動であるフォーヴィスムをもじった“4vism”。「目で見る色彩じゃなく、心で感じた色を使って絵を描いていく考え方のことです。4周年を記念するワンマンライブで、この考え方をライブという空間に落としこんだら、どんなことが出来るだろうと思って今回のテーマにしました」と語ると、ここに集まった人たちには心に感じた自分だけの色を持って帰ってほしい、と話した。
続けて「パチスロ傷物語 -始マリノ刻-」のテーマソング「Repentance Dance」へ。ステージとフロアを隔てていたスクリーンは解かれ、ダイナミックな音がフロアを席捲していくと、大きく腕を振って応えるオーディエンス。熱いロックナンバーは会場の熱をグンッと上昇させると、フロアを蒼い光が灯してTVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』のOP曲「Synthetic Sympathy」のスリリングなサウンドが轟く。鋭い感情を思わせるギターリフと体の芯に響くようなドラムの音、そしてWho-yaのエッジの効いた歌声。4周年の想いをぶつけ合うようにフロアとステージとの熱が融合し、攪拌していく。
声を出し、音楽を楽しむライブによって完成する楽曲たち
「やっと声出せるようになったね」と声を漏らすようにマイクに向けたWho-ya。「2019年の11月にメジャーデビューしてからすぐにライブが出来ない状況が続いて、それでもそのなかでやりたいことだったりやれることだったりを追求し続けて、そして今ではこうやって目の前であなたの声を聞くことができています。俺たちは今のこの場所が叶っていることが当たり前じゃなくて、どれだけ素晴らしいものなのかを人一倍感じられています。ありがとう」と笑顔を見せた。もっと盛り上がりたいだろう、と会場を煽ると観客から歓声が上がる。満足そうに笑みを浮かべたWho-yaがドラムにコールし、「Bitty, Not Empty」が鳴り出した。「この曲はライブを通じてみんなと一緒に歌ったときに初めて楽曲が完成するって言った曲なんです」と客席へ向けて告げるWho-yaの視線の先には、大きく手を上げてクラップする聴衆の姿。コール&レスポンスで歌声を交歓しながら楽曲は完成の瞬間へと昇っていった。
大歓声のなかで楽曲を完成させたWho-ya Extendedは続く「Dogma-Agnostic」では歌が紡ぐ世界が見えるようなドラマテイックな世界観をその歌で響かせ、闇から光へとガラリと景色を変えるような音層で綴る「Call My Name」では広がりあるダンスロックナンバーで会場をダンスフロアへと変貌させていく。
「ニューシングル『Prayer』をリリースしました。表題曲は自分の内面の世界と、自分たちが生きているこの世界の対比を描いた曲になっています。」。
4周年を前に見つめた「Who-ya Extended」、そこで見つけた答えは———。
「今年に入って、ライブがたくさんできるようになっていって、東京以外の場所やまったく行ったことのなかった海外の国。ライブを通じてたくさんリアルに、等身大の俺たちの音楽をみんなに届けられるようになりました。ライブを通じて自分自身のことをわかってあげられるようになりました。ありがとうございます」と語り掛けるWho-yaにフロアから温かな拍手が送られる。
世界を覆った感染症により、エンターテイメントが止まった時間もあった。音楽をただ静かに楽しまなければいけない瞬間もあった。それらを吹き飛ばすように、心から声を上げられる喜びに満ちたアッパーチューンを、全身で鳴らすWho-ya Extendedと共に大きく手を上げ、声を出し、全身で楽しむオーディエンスの姿が胸を熱くする。間髪入れずに「パチスロ傷物語 -始マリノ刻-」挿入歌である「Die for a life」が轟く。物語シリーズの持つ独特のダークさとポップさ、そして勢いとが共存するダイナミックなダンスチューンでオーディエンスはじっとしていられないとばかりに体を揺らし、楽曲の熱を堪能していた。「皆さん、最後の最後、まだまだ歌えるかー!?」と手を挙げたWho-yaに応え、フロアが手拍子のビートで迎え撃つ「VIVID BANG」。まさに熱と熱がラリーをするようなアッパーなナンバーは、彼らとファンがこうしてライブを作ってきたのだ、と感じさせる一体感と共に終盤の会場の空気をさらにヒートアップさせていく。
「この先、もっともっと大きいステージに行って、たくさんの人とライブという空間を共有していって、みんなと一緒に見たい景色があるから。4年間に感謝だけど、この先もよろしく、と伝えたいです」と熱い想いを語るWho-ya。このライブで感じた景色、熱、色彩感こそが“4vism”である、という彼の言葉に沸いた拍手はなかなか途切れなかった。
そして最後は彼らの始まりの曲。
ステージを去った彼らを追うように鳴り響いたアンコールを求める盛大なクラップに応えるべく再び姿を現したWho-ya Extendedは、TVアニメ『呪術廻戦』第2クールOPテーマである「VIVID VICE」、そして「S-cape 2 the abs」の2曲でライブを“Extended”。4周年を迎え、その先へと踏み出す彼らの熱を、会場に集うオーディエンス1人1人の胸に宿し、「Who-ya Extendedとは」を、全編通してライブで届ける時間に。2024年にはさらに“Extended”することを約束する――そんな瞬間を目撃した夜だった。
■Who-ya Extended 4th ONEMAN LIVE
2023年11月24日(金)@harevutai(東京・池袋)
<セットリスト>
SE. WII -prologue-
01. Icy Ivy (TVアニメ「NIGHT HEAD 2041」 OPテーマ)
02. ErroЯ CØDE
03. Repentance Dance (「パチスロ傷物語 -始マリノ刻-」 テーマソング)
04. Synthetic Sympaty (アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR」 OPテーマ)
05. Bitty, Not Empty
06. Dogma-Agnostic
07. Call My Name
08. Prayer (TVアニメ「はめつのおうこく」 EDテーマ)
09. Gimme Your Tears
10. Dri!zzle
11. Die for a life (「パチスロ傷物語 -始マリノ刻-」 挿入歌)
12. VIVID BANG(long intro ver.)
13. Q-vism (TVアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス 3」 OPテーマ)
EN1. VIVID VICE (TVアニメ「呪術廻戦」第2クールOPテーマ)
EN2. S-cape 2 the abs
関連リンク
Who-ya Extendedオフィシャルサイト
https://www.wyxt.info/