澤野弘之によるプロデュースで昨年デビューを果たした若きシンガー・SennaRinが、およそ1年ぶりとなるニューシングル「S9aiR(スクエア)」をリリースした。今年も澤野弘之のライブや海外でのイベント出演、そして自身2度目となるワンマンライブでその実力を遺憾なく発揮してきた彼女が本作で示したコンセプトは、“多面性”。
INTERVIEW BY TEXT BY 澄川龍一
ライブでも新しい挑戦はどんどんしていきたい
――ニューシングル「S9aiR」のお話の前に、まずは今年10月7日に行われた2ndワンマン“Qv”についてのお話を。1stワンマン以来、丸1年ぶりとなったワンマンですが、今年に入っても国内外の様々なイベントに出演されるなど、精力的なライブ活動がありましたが、それを経てのワンマンはどんなお気持ちで臨まれましたか?
SennaRin 去年の1stワンマンは色んな国で出演したどのライブよりも一番緊張していました。去年は夏にかけてサウジアラビアやカナダに行かせていただいて、国立競技場含め様々な場所で歌わせていただいたのですが、気負うみたいものではなく、ワクワクに近い緊張感は強くありました。でもワンマンライブはやっぱり私が主人公で、私が歌わなければ始まらないし、すべて私に責任があるというか。最初から最後まで私が皆さんを楽しませないと、というプレッシャーみたいなものは強く感じていて。でも歌い始めた瞬間に、皆さんが私の歌をあたたかく聴いてくださってるのがわかってすごく安心しましたし、1曲1曲を楽しみながら歌えました。それが経験としてあったので、今年のワンマンライブは去年より緊張することはなく、いい空間をお届けしたいというワクワク感のほうが強いライブになりました。
――たしかに「最果て」と共に始まったライブ序盤は、曲のノリの良さもあってすごく楽しそうに歌われている印象でした。ステージの構造上、お客さんとの距離も近く、よく顔も見えていたのかなと。
SennaRin 今回は最前列の方が握手できるくらいの近さだったので、本当に1人1人の顔がよく見えました。
――お客さんの聴き方の変化も印象的でしたよね。
SennaRin そうですね。それはひしひしと感じました。
――バックを支える田辺トシノさん(b、key)と伊藤ハルトシさん(g、chelo)の演奏も力になった?
SennaRin 大きかったですね。今まで歌ってきた楽曲も、ハルトシさんと田辺さんの演奏によって少し変わった形でお届けできました。今回のアコースティックパートはリハーサルでも一度も同じ演奏はなかったので、そのときの1回しか聴けないノリがありました。
――そしてライブの最後の「melt」では、初となるピアノ弾き語りも経験されました。あそこではやはり緊張は……。
SennaRin さすがにしました(笑)。本番1ヵ月前に澤野さんから「弾き語りしたらかっこいいと思う」と言われて、毎日練習しました。練習の時点では足も動かないし、弾いていて本番を想像しただけで「震える……」みたいな緊張感がすごかったです(笑)。
――そうした新しい試みも多くあったライブはその先のキャリアにも活きていきそうですね。
SennaRin そうですね。今回はコンセプトとして新しい挑戦をどんどんしていきたいというのがあったので、弾き語りをしようと言われたときに「そんなことできない!」みたいな反応はもちろんなくて、「このタイミングでやったらかっこいい!」と思いましたし、挑戦するワクワクがあって楽しみではありました。今後もこういった挑戦はしていきたいというのはずっとあります。
「私の人格、いくつ登場させているんだろう?」
――さて、そのライブでも披露されたニューシングル「S9aiR」についてお伺いします。Rinさんが歌詞(cAnON.との共作)を書く前に、澤野さんから楽曲をもらったときの感想はいかがでしたか?
SennaRin 楽曲をいただいた時点で音はもうほぼ今の形になっていて、いたるところに色んな音が散りばめられているなと思い、楽曲から歌詞を膨らませました。イメージは、シルバーや白い宇宙船の中でぷかぷかと浮いていて、クレイジーな音楽を聴いている女の子、みたいな。そこから歌詞のテーマはどうしようか考え、遊び心がある楽曲なので歌も歌詞も遊び心がある引っ掛けのある感じにしたいなと思ったので、1人が持つ“多面性”というところにフォーカスを当てて書いてきました。
――まさに多面性というコンセプトは、先の”Qv(立方体)”というライブのタイトルにもあるように、ここ最近のRinさんのテーマにもなっているのかなと。
SennaRin 私自身が熱血系ではないので、「こうしたい!」みたいな前のめりでいくという歌詞は書けなくて。熱量はあるんだけど熱血系ではない、「私はこう思っているんだよね」って少し冷静な温度感で歌詞は書いていけたらいいなと思っています。それに対して色んな受け取り方で噛み砕いてほしいなというのが今までの歌詞の書き方でしたし、今後もそうしていくんだと思います。
――そうしたテーマのなかで、Rinさんのボーカルも実に多彩な歌声を聴くことができます。
SennaRin 「私の人格をいくつ登場させているんだろう?」というくらい声色を変えてレコーディングをしていきました。澤野さんから最初に「色んなニュアンスで歌ってみて」という提案をいただいて、一行ずつ人格を変えて歌っているので、聴いて楽しい感じになっていると思います。
――それこそ矢継ぎ早に現れるさま様な人格を、どうレコーディングしているのかなと。
SennaRin 澤野さんから「少し違う感じで歌ってみて」と言われ、その場で歌っていく。あと、今までのレコーディングもそうですけど、言葉尻の温度感というのがあって、例えば“いや騙されたフリして”というのも「いや騙されたフリして……」というニュアンスをつけるんですけど、そこの言葉の温度感みたいなのも感覚で受け取りながらやっていきました。
――計算して人格を入れ込むというより、その場の感覚で表情がどんどん変わっていくと。それをこなすのもすごいなと。
SennaRin とにかく感覚勝負です。なので、張り詰めた空気のなか時間をかけてやったというわけではないんですよね。まず1回歌って、そこから変化をつけて、全体を歌って終わるという感じです。
――もちろん自分で歌詞を書くうえで感覚がすでに入っていることもあるかと思いますが、現場で決まっていくことが多いと。
SennaRin はい。
――いやすごい。簡単な曲ではないし、そこで細かいニュアンスを作っていくスピード感といいますか、改めてそのポテンシャルが伺えました。
SennaRin いえいえ(笑)。ブレスも普段はだいたい感覚でいくんですけど、「これはさすがにブレスの位置を決めなきゃ歌えない!」と思って、さすがに歌詞にメモしました。“Keep in mind that”と言うフレーズの前でブレスをしているんですけど、ここでブレスを入れなければ他でする場所がないんです。そこで一気にグッと吸い込んで。カラオケで歌っていただくとわかると思うんですけど、本当にないです(笑)。その1回も「フッ」くらいのブレスです。よく、歌いながら成長する楽曲っていいますけど、この楽曲は言ってしまえば、レコーディングのときに歌えていたかって言われると、「どうなんだろう……?」っていうくらい。
――それこそレコーディング後のワンマンライブでも初披露しましたが、そのときはいかがでしたか?
SennaRin すごく楽しかったです。前回のワンマンで「最果て」を初披露したときもそうだったのですが、アドレナリンの出方が桁違いなんですよ。
研ぎ澄まされるような静寂を、言葉で汚したくない
――この楽曲はTVアニメ『僕らの雨いろプロトコル』のOPテーマ。自身初のOPテーマというのは、映像と共にご覧になっていかがでしたか?
SennaRin 映像と曲が合わさったときの楽曲の聴こえ方が変わって、かっこいいなと思いました。題材がeスポーツというところや、街の風景などが歌詞とリンクしていますし。
――そして映像というと、MVも制作されましたが、こちらも多面性を意識したストーリー仕立てになっていますね。
SennaRin これは私から提案させていただくという形ではあったのですが、ここでも多面性を表現したいなと。色んな人格を登場させて、どこか過去の自分に執着してしまう人や、他人からの評価をすごく意識して自分を見失いがちになってしまう人、とにかく色んな人格。4人格くらい登場していて、その人格どれも自分だよというところを表現したいという部分がありました。
――途中から登場するRinさんは鎖で繋がれたりしているのは依存の表れであると。
SennaRin 「S9aiR」の女の子は私に依存してるんですけど、「mist」の主人公は私で、私もその女の子に依存してしまって共依存となっているイメージです。
――そうした「S9aiR」と映像的に繋がっていくような「mist」ですが、こちらはしっとりとしたトラックにボーカルを聴かせる仕上がりになっていますね。
SennaRin 最初に聴いたときは、すごく研ぎ澄まされた静寂を感じるなと思いました。そこから自分の内面の弱い部分が人に依存して、自分を見失ってしまうみたいなテーマで歌唱を書きたいなと思っていたんです。澤野さんの楽曲はサビで開放感があるので、最後のサビに向けてどんどん自分の気持ちをさらけ出す、開放するイメージの楽曲になっているかなと思います。
――歌詞も1つ1つの言葉を置くような、隙間の多いメロディに当てるワードが印象的で。
SennaRin “monotone reload 声 狂わないで”というところが独特で、言葉でこの空気感を汚したくないなというのは思っていて。だからこの景色を想像したままにパッて言葉で表現するほうがいいのかなと思ったんです。ここは淡々とした、不思議な歌詞にはなっていると思うんですけど、逆に変な繋ぎ方をしないで書きました。
――そしてほかにも3月に配信で披露された「yet.」「Ray」を収録されています。どちらも『機動戦士ガンダムUC』で使用された楽曲を日本語でカバーされています。
SennaRin はい。日本語詞を書かせていただきました。どちらの楽曲も主人公を立てて、その主人公の気持ちに個人的に寄り添うように歌詞を書いていきました。「yet.」は主人公のバナージの気持ち、バナージとミネバに対する想いを書いていったんですけど、バナージの「悲しいと感じる心があるってことを忘れたくない」というセリフがすごく印象に残っていて、そこからこの歌詞を派生させていきました。
――なるほど、「Ray」はいかがでしたか?
SennaRin この曲はマリーダです。マリーダが最後に、「あなたは私の光。もう一度、私を生んでくれた光でした」ってジンネマンに言うんです。自分は消えるんだけど、すごい傷を持っていて、でもあなたがもう一度私を生んでくれたんですみたいな……切実な想いのようなものを感じて、この歌詞は本当にサーって書いていきましたね。でも何回歌っても、やっぱり後半は泣きそうになっちゃいます。
――そんなシングルがリリースされ、今年もワンマンのほかに様々なライブの出演がありましたが、振り返ってみていかがでしたか?
SennaRin 今年に入ってベトナム、サウジアラビア、ブラジル、上海、ドイツ、ニューヨーク……本当に色んな都市に行かせていただいたんですけど、やっぱりその場所に行かないとわからない様々な音楽の受け取り方や楽しみ方があって、ステージに立って歌ってるんだけど、私が皆さんの声から、パワーをいただきました。色んな場所で色んな楽曲を届けていくうちに、自分の中で自信もついたし、でももっとこうしたいという意欲も湧いてきたり、すごくいい経験になりました。
――今年培ったものが、また来年にも活きていきそうですね。来年には“リスアニ!LIVE 2024”で初めて日本武道館のステージに立ちますね。
SennaRin はい。私は今年、日本武道館に初めて行ったんです。
――初武道館だったんですね。
SennaRin なんだか独特ですよね。ちょっとステージを囲むようになっていて、その中心に立っている方はやっぱりすごくかっこいいです。そこで歌えるのはすごく嬉しいですし、皆さんにSennaRinを知っていただく機会になればと思います。
――2024年最初のライブが武道館という、いい幕開けになりそうですね。
SennaRin 今年も色んなところでライブをさせていただきました。来年に向けて今もすごくかっこいい新曲を作っていますし、2/17に3回目のワンマンライブも決まっています。皆さんに直接歌をお届けできる機会がもっと増えていけばと思います。
●リリース情報
SennaRin 2ndシングル
「S9aiR」
発売中
【通常盤(CD)】
品番:VVCL 2375
価格:¥1,430(税込)
<CD>
01. S9aiR(TVアニメ「僕らの雨いろプロトコル」OPテーマ)
02. mist
03. yet.
04. Ray
05. S9aiR (Instrumental)
【期間生産限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:VVCL 2376-2377
価格:¥2,200(税込)
※TVアニメ「僕らの雨いろプロトコル」描き下ろしイラスト使用ジャケット
<CD>
01. S9aiR(TVアニメ「僕らの雨いろプロトコル」OPテーマ)
02. mist
03. yet.
04. Ray
05. S9aiR (TV ver.)
<Blu-ray>
01. 「S9aiR」 MUSIC VIDEO
02. TVアニメ「僕らの雨いろプロトコル」ノンクレジットオープニング映像
●イベント情報
リスアニ!LIVE 2024
2024年1月27日(土)SATURDAY STAGE
開場15:00/開演16:00(予定)
2024年1月28日(日)SUNDAY STAGE
開場14:00/開演15:00(予定)
会場
日本武道館
SennaRinは1月27日(土)SATURDAY STAGEに出演!
チケット(※すべて全席指定)
1月27日(土)SATURDAY STAGE、1月28日(日)SUNDAY STAGE
¥10,000(税抜)/¥11,000(税込)
詳しくはイベント公式サイトをチェック
関連リンク
SennaRin オフィシャルサイト
https://www.sennarin.com/
SennaRin X
https://twitter.com/senna_rin
SennaRin 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCF3GFSms-WSRmJKvOgLC7mw
様々な人格を有するようなボーカリゼーションが印象的な楽曲について、また待望の“リスアニ!LIVE”出演も控える2024年の展望などじっくりと聞いた。
INTERVIEW BY TEXT BY 澄川龍一
ライブでも新しい挑戦はどんどんしていきたい
――ニューシングル「S9aiR」のお話の前に、まずは今年10月7日に行われた2ndワンマン“Qv”についてのお話を。1stワンマン以来、丸1年ぶりとなったワンマンですが、今年に入っても国内外の様々なイベントに出演されるなど、精力的なライブ活動がありましたが、それを経てのワンマンはどんなお気持ちで臨まれましたか?
SennaRin 去年の1stワンマンは色んな国で出演したどのライブよりも一番緊張していました。去年は夏にかけてサウジアラビアやカナダに行かせていただいて、国立競技場含め様々な場所で歌わせていただいたのですが、気負うみたいものではなく、ワクワクに近い緊張感は強くありました。でもワンマンライブはやっぱり私が主人公で、私が歌わなければ始まらないし、すべて私に責任があるというか。最初から最後まで私が皆さんを楽しませないと、というプレッシャーみたいなものは強く感じていて。でも歌い始めた瞬間に、皆さんが私の歌をあたたかく聴いてくださってるのがわかってすごく安心しましたし、1曲1曲を楽しみながら歌えました。それが経験としてあったので、今年のワンマンライブは去年より緊張することはなく、いい空間をお届けしたいというワクワク感のほうが強いライブになりました。
――たしかに「最果て」と共に始まったライブ序盤は、曲のノリの良さもあってすごく楽しそうに歌われている印象でした。ステージの構造上、お客さんとの距離も近く、よく顔も見えていたのかなと。
SennaRin 今回は最前列の方が握手できるくらいの近さだったので、本当に1人1人の顔がよく見えました。
――お客さんの聴き方の変化も印象的でしたよね。
ノリのいい序盤から、中盤のアコースティックセットからはうっとり聴き入っているように見えて。
SennaRin そうですね。それはひしひしと感じました。
――バックを支える田辺トシノさん(b、key)と伊藤ハルトシさん(g、chelo)の演奏も力になった?
SennaRin 大きかったですね。今まで歌ってきた楽曲も、ハルトシさんと田辺さんの演奏によって少し変わった形でお届けできました。今回のアコースティックパートはリハーサルでも一度も同じ演奏はなかったので、そのときの1回しか聴けないノリがありました。
――そしてライブの最後の「melt」では、初となるピアノ弾き語りも経験されました。あそこではやはり緊張は……。
SennaRin さすがにしました(笑)。本番1ヵ月前に澤野さんから「弾き語りしたらかっこいいと思う」と言われて、毎日練習しました。練習の時点では足も動かないし、弾いていて本番を想像しただけで「震える……」みたいな緊張感がすごかったです(笑)。
――そうした新しい試みも多くあったライブはその先のキャリアにも活きていきそうですね。
SennaRin そうですね。今回はコンセプトとして新しい挑戦をどんどんしていきたいというのがあったので、弾き語りをしようと言われたときに「そんなことできない!」みたいな反応はもちろんなくて、「このタイミングでやったらかっこいい!」と思いましたし、挑戦するワクワクがあって楽しみではありました。今後もこういった挑戦はしていきたいというのはずっとあります。
「私の人格、いくつ登場させているんだろう?」
――さて、そのライブでも披露されたニューシングル「S9aiR」についてお伺いします。Rinさんが歌詞(cAnON.との共作)を書く前に、澤野さんから楽曲をもらったときの感想はいかがでしたか?
SennaRin 楽曲をいただいた時点で音はもうほぼ今の形になっていて、いたるところに色んな音が散りばめられているなと思い、楽曲から歌詞を膨らませました。イメージは、シルバーや白い宇宙船の中でぷかぷかと浮いていて、クレイジーな音楽を聴いている女の子、みたいな。そこから歌詞のテーマはどうしようか考え、遊び心がある楽曲なので歌も歌詞も遊び心がある引っ掛けのある感じにしたいなと思ったので、1人が持つ“多面性”というところにフォーカスを当てて書いてきました。
――まさに多面性というコンセプトは、先の”Qv(立方体)”というライブのタイトルにもあるように、ここ最近のRinさんのテーマにもなっているのかなと。
SennaRin 私自身が熱血系ではないので、「こうしたい!」みたいな前のめりでいくという歌詞は書けなくて。熱量はあるんだけど熱血系ではない、「私はこう思っているんだよね」って少し冷静な温度感で歌詞は書いていけたらいいなと思っています。それに対して色んな受け取り方で噛み砕いてほしいなというのが今までの歌詞の書き方でしたし、今後もそうしていくんだと思います。
――そうしたテーマのなかで、Rinさんのボーカルも実に多彩な歌声を聴くことができます。
レコーディングはいかがでしたか?
SennaRin 「私の人格をいくつ登場させているんだろう?」というくらい声色を変えてレコーディングをしていきました。澤野さんから最初に「色んなニュアンスで歌ってみて」という提案をいただいて、一行ずつ人格を変えて歌っているので、聴いて楽しい感じになっていると思います。
――それこそ矢継ぎ早に現れるさま様な人格を、どうレコーディングしているのかなと。
SennaRin 澤野さんから「少し違う感じで歌ってみて」と言われ、その場で歌っていく。あと、今までのレコーディングもそうですけど、言葉尻の温度感というのがあって、例えば“いや騙されたフリして”というのも「いや騙されたフリして……」というニュアンスをつけるんですけど、そこの言葉の温度感みたいなのも感覚で受け取りながらやっていきました。
――計算して人格を入れ込むというより、その場の感覚で表情がどんどん変わっていくと。それをこなすのもすごいなと。
SennaRin とにかく感覚勝負です。なので、張り詰めた空気のなか時間をかけてやったというわけではないんですよね。まず1回歌って、そこから変化をつけて、全体を歌って終わるという感じです。
――もちろん自分で歌詞を書くうえで感覚がすでに入っていることもあるかと思いますが、現場で決まっていくことが多いと。
SennaRin はい。
とても楽しいレコーディングでした。
――いやすごい。簡単な曲ではないし、そこで細かいニュアンスを作っていくスピード感といいますか、改めてそのポテンシャルが伺えました。
SennaRin いえいえ(笑)。ブレスも普段はだいたい感覚でいくんですけど、「これはさすがにブレスの位置を決めなきゃ歌えない!」と思って、さすがに歌詞にメモしました。“Keep in mind that”と言うフレーズの前でブレスをしているんですけど、ここでブレスを入れなければ他でする場所がないんです。そこで一気にグッと吸い込んで。カラオケで歌っていただくとわかると思うんですけど、本当にないです(笑)。その1回も「フッ」くらいのブレスです。よく、歌いながら成長する楽曲っていいますけど、この楽曲は言ってしまえば、レコーディングのときに歌えていたかって言われると、「どうなんだろう……?」っていうくらい。
――それこそレコーディング後のワンマンライブでも初披露しましたが、そのときはいかがでしたか?
SennaRin すごく楽しかったです。前回のワンマンで「最果て」を初披露したときもそうだったのですが、アドレナリンの出方が桁違いなんですよ。
聴いた方がいないという状況で新曲を歌うのはもうすごいアドレナリンで、ニュアンスをどんどん変えるというのも相まって本当に楽しかったですね。コロコロ気持ちが変わっていくのも自分で感じながら、歌うのは楽しかったですね。だから歌っているときは楽しいだけ。澤野さんの楽曲は、イントロからアウトロまで全部がかっこいいので、歌っている私もそうなんですけど、やっぱり聴いているほうもイントロから引き込まれるような楽曲が多いんじゃないかなと思います。だから最初からアドレナリンが出ますね。
研ぎ澄まされるような静寂を、言葉で汚したくない
――この楽曲はTVアニメ『僕らの雨いろプロトコル』のOPテーマ。自身初のOPテーマというのは、映像と共にご覧になっていかがでしたか?
SennaRin 映像と曲が合わさったときの楽曲の聴こえ方が変わって、かっこいいなと思いました。題材がeスポーツというところや、街の風景などが歌詞とリンクしていますし。
――そして映像というと、MVも制作されましたが、こちらも多面性を意識したストーリー仕立てになっていますね。
SennaRin これは私から提案させていただくという形ではあったのですが、ここでも多面性を表現したいなと。色んな人格を登場させて、どこか過去の自分に執着してしまう人や、他人からの評価をすごく意識して自分を見失いがちになってしまう人、とにかく色んな人格。4人格くらい登場していて、その人格どれも自分だよというところを表現したいという部分がありました。
ストーリーとしては自分に色んな一面がありすぎて最後は自分の人格が奪われちゃうみたいなバッドエンド。それと「S9aiR」のカップリング曲の「mist」は、“共依存”をテーマに歌詞を進めたんですけど、MVの色んな人格の1つが、人に依存してしまう自分。その依存する相手が私なんですよね。
――途中から登場するRinさんは鎖で繋がれたりしているのは依存の表れであると。
SennaRin 「S9aiR」の女の子は私に依存してるんですけど、「mist」の主人公は私で、私もその女の子に依存してしまって共依存となっているイメージです。
――そうした「S9aiR」と映像的に繋がっていくような「mist」ですが、こちらはしっとりとしたトラックにボーカルを聴かせる仕上がりになっていますね。
SennaRin 最初に聴いたときは、すごく研ぎ澄まされた静寂を感じるなと思いました。そこから自分の内面の弱い部分が人に依存して、自分を見失ってしまうみたいなテーマで歌唱を書きたいなと思っていたんです。澤野さんの楽曲はサビで開放感があるので、最後のサビに向けてどんどん自分の気持ちをさらけ出す、開放するイメージの楽曲になっているかなと思います。
――歌詞も1つ1つの言葉を置くような、隙間の多いメロディに当てるワードが印象的で。
SennaRin “monotone reload 声 狂わないで”というところが独特で、言葉でこの空気感を汚したくないなというのは思っていて。だからこの景色を想像したままにパッて言葉で表現するほうがいいのかなと思ったんです。ここは淡々とした、不思議な歌詞にはなっていると思うんですけど、逆に変な繋ぎ方をしないで書きました。
――そしてほかにも3月に配信で披露された「yet.」「Ray」を収録されています。どちらも『機動戦士ガンダムUC』で使用された楽曲を日本語でカバーされています。
SennaRin はい。日本語詞を書かせていただきました。どちらの楽曲も主人公を立てて、その主人公の気持ちに個人的に寄り添うように歌詞を書いていきました。「yet.」は主人公のバナージの気持ち、バナージとミネバに対する想いを書いていったんですけど、バナージの「悲しいと感じる心があるってことを忘れたくない」というセリフがすごく印象に残っていて、そこからこの歌詞を派生させていきました。
――なるほど、「Ray」はいかがでしたか?
SennaRin この曲はマリーダです。マリーダが最後に、「あなたは私の光。もう一度、私を生んでくれた光でした」ってジンネマンに言うんです。自分は消えるんだけど、すごい傷を持っていて、でもあなたがもう一度私を生んでくれたんですみたいな……切実な想いのようなものを感じて、この歌詞は本当にサーって書いていきましたね。でも何回歌っても、やっぱり後半は泣きそうになっちゃいます。
――そんなシングルがリリースされ、今年もワンマンのほかに様々なライブの出演がありましたが、振り返ってみていかがでしたか?
SennaRin 今年に入ってベトナム、サウジアラビア、ブラジル、上海、ドイツ、ニューヨーク……本当に色んな都市に行かせていただいたんですけど、やっぱりその場所に行かないとわからない様々な音楽の受け取り方や楽しみ方があって、ステージに立って歌ってるんだけど、私が皆さんの声から、パワーをいただきました。色んな場所で色んな楽曲を届けていくうちに、自分の中で自信もついたし、でももっとこうしたいという意欲も湧いてきたり、すごくいい経験になりました。
――今年培ったものが、また来年にも活きていきそうですね。来年には“リスアニ!LIVE 2024”で初めて日本武道館のステージに立ちますね。
SennaRin はい。私は今年、日本武道館に初めて行ったんです。
――初武道館だったんですね。
SennaRin なんだか独特ですよね。ちょっとステージを囲むようになっていて、その中心に立っている方はやっぱりすごくかっこいいです。そこで歌えるのはすごく嬉しいですし、皆さんにSennaRinを知っていただく機会になればと思います。
――2024年最初のライブが武道館という、いい幕開けになりそうですね。
SennaRin 今年も色んなところでライブをさせていただきました。来年に向けて今もすごくかっこいい新曲を作っていますし、2/17に3回目のワンマンライブも決まっています。皆さんに直接歌をお届けできる機会がもっと増えていけばと思います。
●リリース情報
SennaRin 2ndシングル
「S9aiR」
発売中
【通常盤(CD)】
品番:VVCL 2375
価格:¥1,430(税込)
<CD>
01. S9aiR(TVアニメ「僕らの雨いろプロトコル」OPテーマ)
02. mist
03. yet.
04. Ray
05. S9aiR (Instrumental)
【期間生産限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:VVCL 2376-2377
価格:¥2,200(税込)
※TVアニメ「僕らの雨いろプロトコル」描き下ろしイラスト使用ジャケット
<CD>
01. S9aiR(TVアニメ「僕らの雨いろプロトコル」OPテーマ)
02. mist
03. yet.
04. Ray
05. S9aiR (TV ver.)
<Blu-ray>
01. 「S9aiR」 MUSIC VIDEO
02. TVアニメ「僕らの雨いろプロトコル」ノンクレジットオープニング映像
●イベント情報
リスアニ!LIVE 2024
2024年1月27日(土)SATURDAY STAGE
開場15:00/開演16:00(予定)
2024年1月28日(日)SUNDAY STAGE
開場14:00/開演15:00(予定)
会場
日本武道館
SennaRinは1月27日(土)SATURDAY STAGEに出演!
チケット(※すべて全席指定)
1月27日(土)SATURDAY STAGE、1月28日(日)SUNDAY STAGE
¥10,000(税抜)/¥11,000(税込)
詳しくはイベント公式サイトをチェック
関連リンク
SennaRin オフィシャルサイト
https://www.sennarin.com/
SennaRin X
https://twitter.com/senna_rin
SennaRin 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCF3GFSms-WSRmJKvOgLC7mw
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