声優南條愛乃による、ソロ活動10周年を記念したワンマンライブ“南條愛乃 10th Anniversary Live -FUN! & Memories- supported by animelo”が2023年12月23、24日に、彼女の地元である静岡県の、富士市文化会館 ロゼシアター 大ホールにて行われた。“FUN!”と称したDAY1は、文字通り彼女とファンの強い結びつきを感じさせる、熱く盛り上がる楽曲を中心に行われたが、対してDAY2となる”Memories”では、彼女の真骨頂でもある歌を聴かせるバラードを中心としたエモーショナルな楽曲中心と、セットリストを大幅に変えての構成となった。
そこで見えてきた彼女の10年とはなんだったのか。同時に掲載された”FUN!”のレポートと合わせて読めば、その本質に触れられるはずだ。

※1日目“FUN!”のライブレポートはこちら

PHOTOGRAPHY BY 江藤はんな(SHERPA+)
TEXT BY 澄川龍一

DAY2は、光に満ちたステージで優しく、丁寧に10年を辿る
熱狂と大歓声に彩られた、言い換えれば非常にタフだった“FUN!”の翌日、会場の富士市文化会館 ロゼシアターは昨日と変わらずライブへの期待感に溢れていた。彼女がこれまで様々な場所で発言してきたとおり、この“FUN! & Memories”は2日間でそれぞれ異なるステージが見られるということを多くの観客は知っている。昨日の熱狂を経てどんなステージを見られるのか、そうした緊張感というものもこの日の開演前には感じられた。

開演時刻になり会場が暗転すると、昨日と同じように水の中を泡立つSEが聴かれ、ステージ上の幕がゆっくりと左右に引かれる。いつもの布陣にかつてのメンバーだった森藤晶司(key)を加えた昨日と同じ編成のバンドメンバーがスタンバイするなか、流れてきたのはデビューミニアルバム『カタルモア』の冒頭に収録された小曲「blue」だった。昨日は10周年記念作『ジャーニーズ・トランク』のオープニングである「blue -青の記憶-」だったが、10年の中での現在地を示す幕開けの“FUN!”に対して、この日は始まりを示す「blue」からのスタートとなった。いずれにせよ、昨日とは異なるステージになるというのはここからも伺える。そして森藤のピアノに導かれるように南條愛乃がステージに現れ、中央で歌い始めたのは、こちらも『カタルモア』に収録されたバラード「光」だ。昨日と変わって赤くドレスアップされたステージ上で、昨日と同じく白い衣装に身を包んだ彼女は、こちらも優しく包み込むような歌声をしっとりと響かせていく。バンドの演奏もタイトながら、彼女の感情を際立たせるようエモーショナルな鳴りをしている。
それを観客は着席したままじっと聴いている。ライブのスタートからゆったりとした始まりを告げる滑り出しだったが、それがこの日のスタンダートであり、南條愛乃の大きな魅力の1つである“バラードで聴かせる”ことを示すものだった。

 

楽曲が終わり、昨日とは打って変わって歓声ではなく大きな拍手が鳴り響く。これもまた昨日とはことなる光景だし、以降もこうした観客の反響は続く。ステージ上のパフォーマンスも大きな変化があったと同時に、それを見つめる観客もまた、昨日と違ったこの日の楽しみ方を感じ取ったようである。そこから続いて佐々木のピアノから、南條の1stシングルとなるバラード「君が笑む夕暮れ」へと続く。会場のライティングや客席が、夕暮れ時のような淡いオレンジ色で統一されるなか、切ないボーカルがドラマチックに響きわたる。「光」にしてもこの曲にしても、やはりこうしたバラードが彼女のキャリア初期には印象に残っていた。そんな10年前の想いにふけるような瞬間を経て、最初のMCでは、「今日は“Memories”ということで、より振り返るような」セットになると語る南條。お次は、星野が使っていたハイチェアーを拝借して、自身も座りながら「今日もいい天気だよ」を披露。ステージ中央には傘をさしたMaiMaiとAkanekoのダンサー2名が彩る。そうした動のダンサーに対して、それを傍で座って見つめながら歌う静の南條、という構図がまた面白い。
ちなみに、この日の構成や演奏、もちろん南條のパフォーマンスは昨日とがらっと変わっていたが、ダンサーの見せ方も当然変化が見られ、そうした全体の見せ方の違いも非常に興味深いものがあった。

そうしたゆったりとした曲が続いてくこの日、この時点で夕暮れから雨、のち晴れといったような、季節や天候の移ろいが表現されているような印象が残った。それはまるで、移ろいゆく光景をこの10年という時間になぞらえているようにも感じられていて、それをゆったりとした曲調で丁寧に、じっくりと10年を辿るように歌っている南條……とも感じられる。そうした感慨のなか歌われたのはオリジナル楽曲のメドレー。まずは「黄昏のスタアライト」のカップリングとなった「優しくつもる言葉の花」。“青く晴れた空に思った”というフレーズで始まるこの曲も、移ろいゆく時間というものを感じさせる。そこからクリスマスイブというこの日にぴったりでもある「リトル・メモリー」へと続くと、南條はゆったりとしたリズムに乗せて、時折マイムを交えながら会場を歩く。そこからキラキラとしたサウンドの「Gerbera」では観客と一緒に手を振りながら高く伸びる歌声を聴かせた。

 

メドレーのあとのMCでは、「リトル・メモリー」から、6年前のクリスマスに行われた5周年ライブを思い出を語る南條。こうしてまた“Memories”を想起させるエピソードを聴かせたあとは、地元・静岡での開催もあり披露したかったという「7月25日」を披露。最初の“ずっと続いてた 昨日の雨上がり”という歌い出しからグッと引き込まれる。明るく照らされたステージも相待って、優しくも温かく、またどこか慈悲深くもあるようなボーカルが聴こえ、素晴らしいパフォーマンスを展開する。
ピアノのイントロから始まる「and I」では、ほんの少しリズムをラフにした歌い方が印象的で、それがまた涙腺を刺激する。そうしたボーカルを聴かせる楽曲を経て、今度は懐かしいMVを背景に「光のはじまり」へと続く。一転してアッパーなサウンドに白い光で埋め尽くされ客席も、躍動感溢れる南條の歌声に歓声を送っていた。

前半最後の楽曲に行く前に、MCで「まだライブでやったことのない曲がありまして」と話す南條。「できるかなー。緊張するね」とそわそわしながらも森藤のピアノから始まった「It’ll be dawn soon.」では凛々しい表情を見せ、空間的なサウンドのなかで実に幻想的なボーカルを聴かせる。このステージがまた絶品で、コンテンポラリーダンス調の振り付けのダンサーを両脇に従えて、またフレッシュなステージを見せていった。

様々な想いを胸に歩いた10年。きっとその先にも刻まれていく“Memories”たち
ダンサーとバンドによるインストパートを挟んだあとは、ライブも後半戦。昨日のこの場所では「一才は物語」で大きなインパクトを残したが、この日はひぐらしと鈴のSEから「藪の中のジンテーゼ」が始まり、こちらもまた趣向の異なるステージとなった。和風の映像をバックに、まるで南條とダンサーが影絵のようにシルエットが映し出される。そのなかでミステリアスなムードで雰囲気たっぷりの南條の歌唱が美しく艶やかに響いていく。
そして曲が終わって暗転したあと、モニターには紫色のライティングと、優しいコーラスが響きわたる。『ジャーニーズ・トランク』収録の「Lonely voyage」がここで披露された。南條はステージ後方から微動だにせず、しかし時折感情が昂ったかのように強く声を張り上げる。その溢れんばかりの想いは最後、“また一緒に歌おう”という、本当に聴こえるか聴こえないかくらいのひっそりとした声に集約されていく。胸に手を当てるその姿からは、確かな想いが見てとれた。MCでも「……どうしても思い出しちゃうね」と語る南條。これまで数々の出会いや別れもあった、そうした10年史の別の側面を伺うことができたなかで、「色んなことがすべて含めて、大切な思い出がある10年だったなと改めて思いました」と語る。改めて想いを語る南條の姿がとても印象に残った。

 

メンバー紹介を経てライブは終盤戦へ。「螺旋の春」で優しい歌唱を聴かせたあとは、「+1 day」とポジティブなサウンドを聴かせる。このブロックは、これまで多くのファンの背中を押してきた彼女の真っ直ぐなメッセージが詰まった楽曲たちが披露される。その最後には「believe in myself」という、こちらも彼女の原点にあるような強いメッセージをパワフルな歌声で聴かせていく。
そこからMCを挟んで、昨日に続いての『グリザイア』メドレーへと突入。「believe in myself」でアッパーな熱気を保ったまま始まった「サヨナラの惑星」では、スリリングな展開のなかでドラマチックな歌声を響かせていく。そこから「涙流るるまま」でしっとりとした聴かせたあとは、「新世界」で再びアグレッシブに。最後には今年リリースされた「瓦礫に咲く花」を披露。懐かしさ溢れる昨日のメドレーに対して、こちらは今の南條も映し出すような、近年の『グリザイア』楽曲が展開されていった。

そして本編ラストには「白い季節の約束」へ。この季節にぴったりなバラードのあとには、そのアンサーソング的な立ち位置の「A Tiny Winter Story」へと続いていく。それぞれ異なる視点でのバラードのなかで表情を変えながら、しかしいずれも南條の優しく包み込むようなボーカルを存分に堪能しながら、本編のエンディングを迎えたのだった。

アンコールでは「このメンバーでやるのは初めて」という、最新シングル「閃 -Sen-」をワンマン初披露。この日のコンセプトとは少し異なるが、南條バンドでの初披露は実に刺激的だし、シャープなサウンドに、まさに一閃というべき南條の火力の高い歌唱は、「EVOLUTiON:」に続く新たなライブアンセムの誕生を感じさせるもので、この先に控えるライブツアー“南條愛乃 Live Tour 2024 ~LIVE of The Fantasic Garden~ supported by animelo”へのヒントにもなるであろうパフォーマンスだった。そのエンディングのあと、点高くピースサインを掲げたら、今度は「ジャーニーズ・トランク」の合図だ。こちらは昨日も披露していた両日共通の楽曲だが、この日は背景に歴代のライブ映像が映し出されるというまたスペシャルなもので、より祝福感の増したなかでの演奏となった。


 

最後のMCでは「皆さんといっぱい対話を重ねて、つらい日々もあるかもしれませんけど、それも一緒に楽しんでいけたらいいな、ソロが始まったらいいなという希望を元に、12月12日に歩き始めた」とソロデビュー前を振り返った南條。そこで披露されたのは、南條愛乃の想いが詰まった始まりの楽曲「カタルモア」だ。森藤のピアノをバックに、10年以上前の自身の想いを受け取ったのか、その言葉1つ1つを確かめるように歌う姿が印象的だった。そして10周年記念ライブの最後を飾ったのは、南條と、そしてみんなのアンセムである「・R・i・n・g・」だ。南條とみんなが作り上げる“En”と”Ai”、それを象徴するように上空からはハートマークの紙が舞っていた。まさしく、愛に溢れたこの日、そして2日間を締め括る感動的なエンディングだ。

10周年という記念碑を経て、現在は10と1年が過ぎた。その間も南條は精力的な活動を続けていて、10周年のその先というものが次々と提示されてきた。その、遠くまで伸びた旅路を見据えるなかで、改めて10年という時間を振り返ることができたこの2日間。それぞれがまったく異なるステージとなったが、いずれもが南條愛乃という音楽には決して欠かすことのできない重要なエレメントであることは間違いないだろう。歌いもうたったメドレーも含む全53曲。こんなにも多くの曲を、あるいはそれ以上の想いを抱えて歩いてきた10年という旅路の先には、もうすでに次の約束が控えている。そのとき南條とみんなの間には、また新たな“FUN!”と“Memories”が刻まれることだろう。

 

※1日目“FUN!”のライブレポートはこちら

<セットリスト>
南條愛乃 10th Anniversary Live -FUN! & Memories- supported by animelo(DAY2:Memories)

M01. blue
M02. 光
M03. 君が笑む夕暮れ(TVアニメ『東京レイヴンズ』エンディングテーマ)
M04. 今日もいい天気だよ
M05. 優しくつもる言葉の花
M06. リトル・メモリー
M07. Gerbera
M08. 7月25日
M09. and I
M10. 光のはじまり(TVアニメ『アトム ザ・ビギニング』エンディングテーマ)
M11. It’ll be dawn soon.
M12. 藪の中のジンテーゼ(TVアニメ『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』エンディングテーマ)
M13. Lonely voyage
M14. 螺旋の春
M15. + 1day
M16. believe in myself
M17. サヨナラの惑星(「グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION」エンディングテーマ)
M18. 涙流るるまま(アニメ『グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION スターゲイザー』エンディングテーマ)
M19. 新世界( スマートフォンアプリゲーム『グリザイア クロノスリベリオン』オープニングテーマ)
M20. 瓦礫に咲く花(PC版『グリザイア クロノスリベリオン』エンディングテーマ)
M21. 白い季節の約束
M22. A Tiny Winter Story
M23. 閃 -Sen-(TVアニメ『冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた』オープニングテーマ)
M24. ジャーニーズ・トランク
M25. カタルモア
M26. ・R・i・n・g・
※M5~M7はメドレー

※上記セットリストのプレイリストはこちら

●リリース情報
南條愛乃 アルバム
『The Fantasic Garden』
発売中

【初回限定盤A(CD+2BD+PHOTOBOOK)】

品番:GNCA-1658
価格:¥12,100(税込)
特製スリーブケース仕様
フォトブック(24P)

【初回限定盤B(CD+BD+PHOTOBOOK)】

品番:GNCA-1659
価格:¥5,500(税込)
特製スリーブケース仕様
フォトブック(24P)

【通常盤(CD)】

品番:GNCA-1660
価格:¥3,300(税込)

<CD>
1.Welcome to The Garden
作詞:南條愛乃 作曲・編曲:笠井雄太(Elements Garden)
2.trust myself
作詞:南條愛乃 作曲:上松範康(Elements Garden) 編曲:菊田大介(Elements Garden)
3.ホレヴォ
作詞・作曲・編曲:藤永龍太郎(Elements Garden)
4.ナイショの午睡
作詞:Spirit Garden 作曲・編曲:近藤世真(Elements Garden)
5.ゆれる金魚鉢
作詞:南條愛乃 作曲・編曲:藤間 仁(Elements Garden)
6.薔薇色Ethereal
作詞:Spirit Garden 作曲・編曲:近藤世真(Elements Garden)
7.打ち上げて花盛り
作詞:南條愛乃 作曲・編曲:日高勇輝(Elements Garden)
8.MANIFEST
作詞:Spirit Garden 作曲・編曲:日高勇輝(Elements Garden)
9.閃 -Sen-
作詞:南條愛乃 作曲・編曲:日高勇輝(Elements Garden)
10.breathe in
作詞:南條愛乃 作曲・編曲:近藤世真(Elements Garden)
11.「だけど」
作詞:南條愛乃 作曲・編曲:菊田大介(Elements Garden)
12.またねの魔法
作詞:南條愛乃 作曲・編曲:藤田淳平(Elements Garden)

<初回限定盤A 特典内容>
特製スリーブケース仕様
特典Blu-ray(2 枚)

▼ Disc1:南條一間 ~シーズン7~(全6 話)
#01 じじいとわたしとガム
#02 じじいとわたしとAI チャット
#03 じじいとわたしと紙飛行機
#04 じじいとわたしと綿棒アート
#05 じじいとわたしと苔テラリウム
#06 じじいとわたしと麺ジョルノ

▼ Disc2:
・南條愛乃 Live Tour 2022 ~A Tiny Winter Story~ supported by animelo mix <2022.10.16 さいたま市文化センター>
・南條愛乃 Live Tour 2023 ~ジャーニーズ・トランク~ supported by animelo <2023.5.7 立川ステージガーデン>
フォトブック(24P)

<初回限定盤B 特典内容>
特製スリーブケース仕様
特典Blu-ray:南條一間 ~シーズン7~(全6 話)
#01 じじいとわたしとガム
#02 じじいとわたしとAI チャット
#03 じじいとわたしと紙飛行機
#04 じじいとわたしと綿棒アート
#05 じじいとわたしと苔テラリウム
#06 じじいとわたしと麺ジョルノ
フォトブック(24P)

南條愛乃 デジタルシングル
「光のトリル」
2024年1月18日(木)配信開始

01. 光のトリル(TVアニメ『魔女と野獣』エンディングテーマ)
作詞:こだまさおり 作曲・編曲:井内舞子
02. 光のトリル

●ライブ情報
『南條愛乃 Live Tour 2024 ~LIVE of The Fantasic Garden~ supported by animelo』

2024年6月2日(日) 16:30開場 / 17:30開演
会場:Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール

2024年6月23日(日) 16:30開場 / 17:30開演
会場:大阪国際交流センター 大ホール

2024年7月7日(日) 16:00開場 / 17:00開演
会場:神奈川県民ホール 大ホール

関連リンク
南條愛乃 公式サイト
http://nbcuni-music.com/yoshino_nanjo/

南條愛乃 公式X
https://twitter.com/nanjolno

オフィシャルファンクラブ「ごきんじょるの友の会」
https://www.gokinjolno.jp/
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