2012年12月12日にミニアルバム『カタルモア』でソロデビューを果たし、2022年12月に10周年を記念したアルバム『ジャーニーズ・トランク』をリリース。2023年春には本作を伴うツアーを行うなど、昨年から今年にかけて10周年のアニバーサリーイヤーを過ごしてきた南條愛乃。その締め括りともいえるワンマンライブ“南條愛乃 10th Anniversary Live -FUN! & Memories- supported by animelo”が2023年12月23、24日に、彼女の地元である静岡県の、富士市文化会館 ロゼシアター 大ホールにて開催された。今回は2日間を“FUN!”“Memories”に分け、異なるステージを展開。南條愛乃が歩んだ軌跡をそれぞれの角度から照らしていった。まずは初日、ファンとともに盛り上がる楽曲をたっぷりに構成された“FUN!”の模様をレポートしよう。※2日目“Memories”のライブレポートはこちらPHOTOGRAPHY BY 江藤はんな(SHERPA+)TEXT BY 澄川龍一10周年を盛り上げる、楽しいが詰まったライブ初日会場となった富士市文化会館 ロゼシアター 大ホールに多くのファンが詰めかけるなか、場内には南條の楽曲が流れている。開演が近づく頃には、待ちきれないとばかりに会場のそこかしこからコールや手拍子が聴かれる。10周年記念ライブという、アニバーサリー最大のお祭りをとことん楽しもうという熱気が早くも立ち込めるような雰囲気のなかで会場が暗転すると、ボコボコとした空気音とともに「blue -青の記憶-」が流れる。同時にステージを覆っていた幕が左右に引かれると、水中を思わせる映像が流れ、バンドメンバーの姿が。そこからバンドが鳴らしたのは「飛ぶサカナ」のイントロだ。そして、ステージ後方から白いコート姿の南條愛乃が登場し、いよいよアニバーサリーライブの幕が開いた。10周年記念作『ジャーニーズ・トランク』のイントロダクションからデビュー作『カタルモア』の楽曲へと流れるスタートは見事で、まさに10年の時を飛び越えたよう。佐々木聡作によるピアノをはじめとした軽快なバンドサウンドやそこに乗る南條のボーカルも伸びやかで軽やかに感じられる。青く染まった客席、その水面を跳ねるように南條のボーカルが届いてくる。アウトロまで素晴らしいパフォーマンスを聴かせたあとは、そのまま「ゼロイチキセキ」へ。客席も青からピンクに様変わりし、キャッチーなメロディも相まって、早速“FUN!”な空間が形成されていく。ちなみにこの日のバンドは佐々木、星野 威(g)、キタムラユウタ(b)、八木一美(ds)といういつものメンバーに加えて、2018年までライブに帯同していた初代キーボーディストの森藤晶司も参加というスペシャルなもの。佐々木と森藤それぞれの鍵盤が息を合わせて演奏しているのも印象深かった。 冒頭から掛け値なしに楽しくリラクシングな雰囲気のなかで、最初のMCでの南條の第一声は「……やあ」という、これまた肩の力が抜けまくったもの。もちろん観客も「やあ!」とシンプルに返す。「今日は“FUN!”っぽい曲を用意しました」と話したあと、次の曲「スキップトラベル」のタイトルを告げる。様々な旅が込められた軽やかなこの曲も、この日にぴったり。リズム隊を中心としたタメの効いたサウンドに乗せて、南條のボーカルもレイドバック気味。このまったりとした、駆け足ではない感じがまた彼女らしく心地良い。そのあとはオリジナル楽曲のメドレーということで、ロッキンなイントロに意外ともいえるどよめきと歓声が上がった「わガまま♡ブれいん」、そして「ゼリーな女」と続き、ダンサーのMaiMaiとAkanekoの2名と共に南條もキュートなダンスを披露。さらにはこちらもダンサブルな人気曲「idc」へと移り、ダンサーと息の合った振付を見せる。かと思えばギターソロ前には「祝!10周年プラス1!」と突如ステージ前に躍り出たりと観客を楽しませる。最後にはビシッとキメのポーズをし、ダンサーのMaiMaiに「南ちゃん10周年おめでとう!」と言わせるなど、遊び心満載のメドレーとなった。 そうした楽しいブロックのあとは「次のブロックは優しいよ~」と告げて、しっとりとした楽曲が続いていく。「君のとなり わたしの場所」では猫とたわむれるMVをバックに優しい歌声を聴かせ、「逢えなくても」では、一転してピアノの伴奏のみで歌声を響かせる。ここでの南條のボーカルが素晴らしく、特にサビでの歌唱は感情が大きく広がっていき、それがゆっくりと収束していくような美しい起伏を見せていった。終盤に向かうにつれてそのエモーションはより際立ち、感動的なエンディングを迎える。その鬼気迫るパフォーマンスを終えた瞬間、固唾を呑んで見守っていた客席からは万雷の拍手が鳴り響いた。その余韻のなかで始まったのは、ソフトロック調の「ヒトリとキミと」。再び南條はゆったりとしたリズムに乗せてゆっくり歩いたり、途中小走りをしたり、行進するかのように歩いたりと、まるでステージ上を旅するように歩いては歌う。着席していた観客を立たせたあとは、「久々にやりたい曲があるんですよ」と言って「みんなの“好きな言葉”で書いた歌」をスタート。なぜか序盤は気張った調子で歌ってみたり、“ラーメン”のフレーズを“どん兵衛”と、南條がCMに声で出演中の日清どん兵衛に変えてみたりとここでも遊び心満載なパフォーマンスを展開。途中で観客から募った“好きな言葉”を次々と読み上げるお馴染みの部分では、最後に「食べ放題!」と盛大に締め括った。次ページ:最後まで熱量の高い”FUN!”のステージは、みんなの歓声とともに最後まで熱量の高い”FUN!”のステージは、みんなの歓声とともにダンサーとバンドによるインストパートを挟んだあとのライブ後半戦は、空気が一転してヘビーな雰囲気に。「一切は物語」が鳴らされるなか、暗がりのなかを南條とフードを被ったダンサーがうごめき赤くダークな色調で照らされる呪術的な展開へ。曲のエンディングを迎えスポットライトに映し出された南條は、この日の“FUN!”のテーマカラーである青い衣装をまとっていた。そこからの「誇ノ花」の歌い出しは素晴らしく、桜の花びらが舞う映像をバックに、抒情感たっぷりに歌い上げる姿は実に美しかった。幻想的な後半戦の滑り出しのあとは、バンドメンバーとこの10年を振り返り、続いての曲へ。「みんな、あれ覚えている?」と変則的なクラップを促せば、次の曲はもちろん「THE MEMORIES APARTMENT」だ。イントロで観客と息の合ったクラップを鳴らし軽快に聴かせたあとは、こちらも清涼感たっぷりの「Recording.」へ。ワンマンでは2022年の『A Tiny Winter Story』を引っ提げたツアーのファイナルでも披露されていたこの曲。あのときはコロナ禍で歓声が出せなかったが、今回はしっかりと“楽しい人は?”のあとに「ハーイハイ!」と観客のレスポンスが聴こえ、観客との“FUN!”な空間をしっかりと作り上げていた。MCを挟んだあとはライブも終盤戦ということで、アグレッシブな楽曲が続く。森藤のピアノが効いたロッキンなサウンドのなかで強くも切ない魅力的なボーカルを聴かせる「Simple feelings」、ソリッドなサウンドに流れるような歌声が印象に残る「iD*」、そこからさらにサウンドを激化させて観客も一体となって歓声を響かせた「青星」と、熱量の高いパフォーマンスを続ける。そして最後には、自身のキャリアと切っても切り離せない存在である『グリザイア』シリーズのメドレーに突入。まずは南條にとって最初の『グリザイア』楽曲である「あなたの愛した世界」へ。あれからおよそ10年、シンガーとして進化を繰り返してきた南條だが、ここで聴かれるボーカルは変わらず瑞々しい。加えて背景には『グリザイアの果実』のエンディングアニメーションが流れるエモい演出も見られ、改めて歴史を感じさせる。「あなたの愛した世界」の美しい余韻のあとは、アグレッシブはデジタルサウンドが鳴らされ、「黄昏のスタアライト」へ。疾走感溢れる演奏のなかを突き抜けるような南條の高音が実にかっこいい。そしてそこから本編のエンディングとなる「きみを探しに」へと向かう。ここまでおよそ2時間かけて歌い続けてきた南條だが、彼女のボーカルはいまだパワフルな力強さをキープしている。それどころか、体全体を使った歌声、そしてその様は、生命力に満ちたていた。もちろんサビの最後には観客が「愛してる」の大きな大きなシンガロングが聴かれ、南條とバンド、ダンサー、そして観客とすべてが1つになってライブを楽しむ、まさに“FUN!”な本編は大団円で幕を閉じた。 しっとりとした「サクラタイマー」で始まったアンコールでは、背景に映し出された、桜並木の映像を時折振り返りながら優しいボーカルを聴かせる。その後のMCでは「みんなと一緒に成長してきたというか、成長させてもらったというか、一緒に生きてきたなって10年分感じまして、セトリを考えながら温かい気持ちになりました」と語る南條。改めて、この10年という軌跡をファンの声と共に迎えられたことに感慨深い表情を見せていた。そしてそこから「みんなまだ声出る?」と観客に問いかけたあとは、アグレッシブな「EVOLUTiON:」へ。南條愛乃の近年のライブアンセムとなったこの曲、アンコールに入っても南條のボーカルは変わらずタフなままで、対して観客も変わらず大歓声とともにタフなパフォーマンスを見せる。肉感の強いサウンドのなかで、“EVOLUTiON!”のシンガロングを響かせた。そしてこの日最後には、10周年を記念した1曲「ジャーニーズ・トランク」を披露。背後にはこのライブのエンブレムが映し出され、星型の紙が舞い、祝福感たっぷりなエンディングを迎えた。 10周年イヤーのグランドフィナーレを飾る2日間の初日は“FUN!”という、文字通りファンと共に盛り上がる楽曲が取り揃えられた、楽しくも熱い一夜となった。そこで見えてきたのは、改めて彼女のライブには観客の存在は欠かせない、これまでが、彼女がいかにファンのことを見つめてきた10年だったのだと強く感じさせるものだったということだ。そしてファンと繋いできた10年の道のりの先には、先日リリースされたElements Gardenとのコラボレーションアルバム『The Fantasic Garden』と、2024年にはそれを伴うツアーが控えている。彼女が歩んだ旅路はまだまだ続く……とその前には、10周年記念ライブのDAY2となる”Memories”が待っている。そこで南條愛乃が見せたものとはなんだったのか、その模様もあわせてご覧いただきたい。※2日目“Memories”のライブレポートはこちら<セットリスト>南條愛乃 10th Anniversary Live -FUN! & Memories- supported by animelo(DAY1:FUN!)M01. blue -青の記憶-M02. 飛ぶサカナM03. ゼロイチキセキ(TVアニメ 『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』エンディングテーマ)M04. スキップトラベルM05. わガまま♡ブれいんM06. ゼリーな女M07. idcM08. 君のとなり わたしの場所(TVアニメ 『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』エンディングテーマ)M09. 逢えなくてもM10. ヒトリとキミと(TVアニメ『天才王子の赤字国家再生術』エンディングテーマ)M11. みんなの“好きな言葉”で書いた歌M12. 一切は物語(TVアニメ『ベルセルク』第2期エンディングテーマ)M13. 誇ノ花M14. THE MEMORIES APARTMENTM15. Recording.M16. Simple feelingsM17. iD*M18. 青星M19. あなたの愛した世界(TVアニメ『グリザイアの果実』エンディングテーマ)M20. 黄昏のスタアライト(TVアニメ グリザイアの楽園「カプリスの繭」編 エンディングテーマ)M21. きみを探しに(TVアニメ グリザイアの楽園「ブランエールの種」編 エンディングテーマ)M22. サクラタイマーM23. EVOLUTiON:(TVアニメ『進化の実~知らないうちに勝ち組人生~』オープニングテーマ)M24. ジャーニーズ・トランク※M5~M7/M19~M21はメドレー※上記セットリストのプレイリストはこちら●リリース情報南條愛乃 アルバム『The Fantasic Garden』発売中【初回限定盤A(CD+2BD+PHOTOBOOK)】品番:GNCA-1658価格:¥12,100(税込)特製スリーブケース仕様フォトブック(24P)【初回限定盤B(CD+BD+PHOTOBOOK)】品番:GNCA-1659価格:¥5,500(税込)特製スリーブケース仕様フォトブック(24P)【通常盤(CD)】品番:GNCA-1660価格:¥3,300(税込)<CD>1.Welcome to The Garden作詞:南條愛乃 作曲・編曲:笠井雄太(Elements Garden)2.trust myself作詞:南條愛乃 作曲:上松範康(Elements Garden) 編曲:菊田大介(Elements Garden)3.ホレヴォ作詞・作曲・編曲:藤永龍太郎(Elements Garden)4.ナイショの午睡作詞:Spirit Garden 作曲・編曲:近藤世真(Elements Garden)5.ゆれる金魚鉢作詞:南條愛乃 作曲・編曲:藤間 仁(Elements Garden)6.薔薇色Ethereal作詞:Spirit Garden 作曲・編曲:近藤世真(Elements Garden)7.打ち上げて花盛り作詞:南條愛乃 作曲・編曲:日高勇輝(Elements Garden)8.MANIFEST作詞:Spirit Garden 作曲・編曲:日高勇輝(Elements Garden)9.閃 -Sen-作詞:南條愛乃 作曲・編曲:日高勇輝(Elements Garden)10.breathe in作詞:南條愛乃 作曲・編曲:近藤世真(Elements Garden)11.「だけど」作詞:南條愛乃 作曲・編曲:菊田大介(Elements Garden)12.またねの魔法作詞:南條愛乃 作曲・編曲:藤田淳平(Elements Garden)<初回限定盤A 特典内容>特製スリーブケース仕様特典Blu-ray(2 枚)▼ Disc1:南條一間 ~シーズン7~(全6 話)#01 じじいとわたしとガム#02 じじいとわたしとAI チャット#03 じじいとわたしと紙飛行機#04 じじいとわたしと綿棒アート#05 じじいとわたしと苔テラリウム#06 じじいとわたしと麺ジョルノ▼ Disc2:・南條愛乃 Live Tour 2022 ~A Tiny Winter Story~ supported by animelo mix <2022.10.16 さいたま市文化センター>・南條愛乃 Live Tour 2023 ~ジャーニーズ・トランク~ supported by animelo <2023.5.7 立川ステージガーデン>フォトブック(24P)<初回限定盤B 特典内容>特製スリーブケース仕様特典Blu-ray:南條一間 ~シーズン7~(全6 話)#01 じじいとわたしとガム#02 じじいとわたしとAI チャット#03 じじいとわたしと紙飛行機#04 じじいとわたしと綿棒アート#05 じじいとわたしと苔テラリウム#06 じじいとわたしと麺ジョルノフォトブック(24P)南條愛乃 デジタルシングル「光のトリル」2024年1月18日(木)配信開始01. 光のトリル(TVアニメ『魔女と野獣』エンディングテーマ)作詞:こだまさおり 作曲・編曲:井内舞子02. 光のトリル ●ライブ情報『南條愛乃 Live Tour 2024 ~LIVE of The Fantasic Garden~ supported by animelo』2024年6月2日(日) 16:30開場 / 17:30開演会場:Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール2024年6月23日(日) 16:30開場 / 17:30開演会場:大阪国際交流センター 大ホール2024年7月7日(日) 16:00開場 / 17:00開演会場:神奈川県民ホール 大ホール関連リンク南條愛乃 公式サイトhttp://nbcuni-music.com/yoshino_nanjo/南條愛乃 公式Xhttps://twitter.com/nanjolnoオフィシャルファンクラブ「ごきんじょるの友の会」https://www.gokinjolno.jp/