2002年の結成以降、アニメ/ゲームシーンにおけるデジタルサウンドを現在まで牽引してきたfripSide。八木沼悟志が生み出し、人々を熱狂させてきた数々の楽曲たちは、2000年代、2010年代、現在とシーンに計り知れない影響を与えてきた。
そして幾度となく歴史を塗り替える音楽を鳴らすfripSideには、八木沼と数々のボーカリストたちの歌声があった。あれから20年あまりが経った2024年1月8日、神奈川・ぴあアリーナMMにて開催された“fripSide 20th Anniversary Festival 2023 -All Phases Assembled-”はそんな歴代のボーカリストが集まった一大フェスだ。およそ4時間にわたる熱狂の一夜をレポートしていこう。

PHOTOGRAPHY BY 中村ユタカ/伊藤真広
TEXT BY 澄川龍一

20周年フェスの幕開けは、歴史の始まりと共に――fripSide 1st Phase 2002-2009
2023年6月の延期から約半年、会場をぴあアリーナMMに変えて開催されたfripSideの20周年記念フェス。アリーナクラスでのワンマンは実に2年ぶりということもあり、ここ最近のライブハウスやホールの雰囲気とはまた異なる、大勢の観客と共に開演を待つこの雰囲気も懐かしくもある。またそこにはかつてのボーカリストも含めたものになるという期待感も含むもので、naoとの1st Phase、南條愛乃との2nd Phase、そして上杉真央&阿部寿世との3rd Phaseと、それぞれのフェイズを楽しみにしながらもそれがどう融合していくのかという、まさにフェスのようなワクワク感がアリーナを埋め尽くしていた。

やがて会場が暗転すると、巨大なステージ中央のLEDモニターには、時計の画像が映し出された。第1期のアンセム曲「hurting heart」の物悲しいピアノver.の旋律と共に、その時計の針はゆっくりと、本来とは逆に進んでいく。そしてその背景には、まだ記憶に新しいコロナ禍での風景など様々な世界情勢を思わせる映像がフラッシュバックしていく。そしてそれが最後には壮大な地球の映像をバックに、“2002”という数字とそこから旅が始まったことを示す一文が記され、歴代のCDジャケットが次々と映し出されていく。会場には、これまでライブのオープニングで鳴らされてきた印象深いインストゥルメンタルが流れている。それが終わったとき、これも変わらずfripSideのトレードマークとなっていた“This desire is bound in the melody”というサウンドロゴが鳴らされ、いよいよ待ちに待った20周年フェスが幕を開けた。
そしてフェスらしくモニターに映されたアタック映像には、“fripSide 1st Phase 2002-2009”という文字が打ち出される。最初のアーティストは、第1期fripSideだ。

待ってましたとばかりの大歓声のなか、そのまま間を置かずにあの印象的なボーカルメロディが鳴り響く。その声は紛れもなく初代ボーカリスト、naoのものだ。そしてそこで聴かれるメロディは、これまでのfripSideのライブを彩ってきた名曲「magicaride」のイントロである。ゆったりとした冒頭のメロディを歌いきったあと、爆発的なバンドサウンドが加わり加速、ステージ奥には真っ赤な衣装をまとったnaoの姿があった。彼女が「盛り上がっていくぞー!」と叫びステージ前方へと躍り出る。そしてその隣りには、多くのシンセに囲まれた八木沼の姿。2000年代を席巻した第1期fripSideがそこにいる――そのルックだけでも感動的だったが、naoの喉から聴かれる凛とした、巨大なアリーナに突き抜かれるようなボーカルの魅力はあの頃のまま、センティメンタルなメロディに変わらず瑞々しさを与えている。特にサビでのハイトーンは絶品で、改めて彼女の唯一無二の声というものがこの1曲で味わうことができた。もちろん観客は開幕から耳をつんざくような大歓声、そして眩しいばかりのペンライトでそれに応える。そんな光景を、終始嬉しそうに見渡しながらプレイする八木沼の姿もまた印象的だった。


そのままセットは続いての「never no astray」へ。初期fripSideらしい少し青さも残る切ないメロディが印象的なこの楽曲でもnaoの甘く切ない声は素晴らしい。初めて第1期のライブを観るファンも多いであろうなかで、観客を一気に引き込んでいく。そして続くMCではnaoが「fripSide……1st Phaseでーす!」と、どこかたどたどしい自己紹介からスタート。およそ20年前にこの2人でスタートしたfripSide、八木沼も「お客さんが0人だったのが、まさかこんなことになるとは……」と感慨深く語っていた。また肩肘張らない2人のトークも懐かしくもありつつ新鮮な雰囲気で、楽曲の張り詰めた空気とは一変してのリラックスした空気が感じられた。そこから「spiral of despair」でセットが再開すると、再びキリッとした緊張が戻る。硬質なビートの中でnaoの浮遊感のある独特なボーカルが聴かれたあとは、これもまた人気の「sky -version 2008-」へ。歌い出しから大歓声が起こるなか、青い色のペンライトが会場に灯される。途中で八木沼のコーラスも入ると、naoもまた八木沼のほうを向いてハーモニーを聴かせる姿が、ノスタルジックな魅力の楽曲にさらなるエモーションを加えていた。そして続く「save me again -version 2023-」(『infinite Resonance 2』のアレンジだ)でも、八木沼によってサビのハモメロがリフレインされるなか、そこにnaoが加わるエンディングも感動的だ。直後のMCでも「先生(八木沼)のコーラス、イケボイケボ」と言うと、少し照れた仕草を見せる八木沼という、1期ならではの関係性が見られるのもほっこりさせる。
続いて披露されたのは「Red -reduction division-」。赤くライトアップされたステージ上で真っ赤な衣装のnaoが立ち、その背後には赤い月が照らされているという幻想的なステージに、観客のボルテージもさらに上昇。必殺の破壊力を持つサビに、赤いペンライトと共に大きく腕を振り上げる姿が多く見られた。先のMCでは「1期の曲でこんなにも盛り上がってくれて嬉しいです」と言っていた八木沼だったが、さらなる熱狂の渦にある会場の、すり鉢状の客席を見上げながら嬉しそうな表情を浮かべていた。そこから、ダンサーを従えて切ないボーカルを聴かせる「come to mind -version 2022-」を聴かせたあとは、この1st Phaseの最後のMCへ。八木沼は「2期の南條(愛乃)さん、3期の2人と古い曲を大切にカバーしてきてくれたんですね。これがfripSideの良さ」と語る。こうして第1期の曲が埋もれずに歌い継がれてきたからこそ、この日を迎えられ、そしてこのような熱狂を生んだのだ。そしてその大きな立役者であるnaoに、八木沼は「naoちゃん、改めて来てくれて本当にありがとう」と感謝を述べた。そして最後のブロックに突入、「true eternity」では爽やかなサウンドにnaoも観客と共に大きく手を振る。そしてそのあとに歌われたのは、第1期fripSide最後の楽曲にして唯一のアニメ主題歌である「flower of bravery」だ。まさかこの曲を聴くことができるとは……というこの日最大のどよめきをアリーナに起こし、オレンジとピンクが入り混じるなか、伝説の1st Phaseのステージは幕を閉じた。


お祭りを彩るゲストとのコラボレーション――fripSide 2nd Phase×angela

1st Phaseの衝撃がまだ余韻としてアリーナに残るなか、続いてのアタック映像に映されたのは、“南條愛乃×angela”というもの。観客としては息を整える間もなく訪れたコラボに観客は大歓声を送る。しかしその次に鳴らされたのは「sister’s noise」のイントロなのだから、その歓声はもう一段階大きくなっていくという、ちょっとした狂乱状態のなかセットがスタート。まずはステージ前方から南條が最初のフレーズを歌えば、後方からリフターで登場したangelaのastukoがそのあとを継ぐ。南條のボーカルによるfripSideも2年ぶりながら、そこにatsukoのパワフルな歌唱が加わることで、またangela・KATSUのギターも合わさって、これまでとはまた違う太いサウンドが形成されていく。そのなかで南條とatsukoのパフォーマンスは自由で、8人のダンサーがステージを彩るなか2人が手を繋いだりしながらこのコラボを楽しむ姿が見られた。そこからKATSUだけが残って、続いてはfripSide 3rd Phase×KATSUのコラボへ。
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