昼におこなわれた1部。開演前の会場は、パーティーがはじまる前のような、華やいだざわめきに満ちていた。ふっと照明が落ち、幻想的な空気のなか、東山のライブバンド・レインボードッグスのメンバーたちにつづいて、東山本人がステージに姿を現す。ロックテイストと上品さをあわせもつデニム生地の上下に、花が散りばめられたレースのスカートをまとった、まさに「パーティーライブ」らしい衣装だ。
「ひとりきりじゃ 辿り着けない景色」というフレーズからはじまった「君と僕のシンフォニー」。オールスタンディングのフロアも、最初から爆発するような熱気と歓声、手拍子で迎える。東山のソロライブでみんなが声出しできる機会は本当に久しぶりのこと。ステージとフロアの境界を乗り越えるように、ようやく響き渡った声の数々を、東山は「7周年ありがとうー!」という感謝の叫びで受けとめた。
東山が愛するペンギンのモチーフ全開の「ウェルカム・トゥ・レインボーワンダーランド!」では、緩急自在の「ペンペン!」の大合唱。「次はかわいく!」というお願いに対して精一杯「ペンペンッ……!」と返したフロアに、「ふふ、かわいい!」と笑顔を見せる東山(かわいい)。
「『このCD初めて買ったんだよなあ』『このときのリリイベ楽しかったんだよなあ』と、皆さんの歩みと私の歩みを重ねあわせて聴いてくれたら嬉しいです!」ということばの後に演奏されたのは、これまで7枚リリースされたアニメタイアップシングル曲を詰めこんだ“7周年メドレー”だ。
「True Destiny」「イマココ」「灯火のまにまに」「歩いていこう!」「冷めない魔法」……。一曲一曲に思い出がつまっているからこそ、その記憶が連鎖するメドレーは感情を揺さぶる。会場全体はもちろん、女性専用エリアへ手を振る様子も、東山らしいホスピタリティにあふれていた。「あの日のことば」の、「めくるめくるめくるめくるめく日々」というメロディーとともに左右に揺れるペンライトが、一緒に過ごしてきた月日の輪郭を浮かびあがらせる。
メドレーのラストを飾ったのは、2023年7月にリリースされたシングル曲「door」。リリースイベントを除けば、やはりソロライブでは初披露。高音域へと伸びゆく東山の歌声を堪能できる一曲であり、自身のライブにおいても新たな“扉”が開いた時間だったといえるかもしれない。
そしてステージ上に設置されたのは、一台のキーボード。普段のライブでのダンスにかえて、今回は弾き語りに挑むという。演奏するのは、「7周年に欠かすことができない曲」という「Rainbow」。
当時はトンネルのなかにいるような気がしていたという東山。いまトンネルを抜けたとはいいきれなくても、光が見えたり、ひとりじゃないかもと感じられたりする。そんな「7周年のいろんな心境をこめながら、皆さんにお披露目することができたらいいと思います」と話し、「Rainbow」はたっぷりの思いをこめて演奏された。
冒頭の歌詞のように、たしかに「ここにいる」東山が奏でる、真摯な音色。途中で若干のミスタッチがあり、演奏後には東山も苦笑いしながら「ああああ……!」と崩れ落ちはしたのだが、「どんなに間違えても歌が外れたとしても、100%東山から奏でられている音」を届けると覚悟を決めていたのだという。もちろんファンは、東山が普段からパーフェクトなパフォーマンスを目指し、かたちにしてきたことを知っている。そのすべてが虹のように、かけがえのない軌跡を描く。
ファンのリクエスト曲コーナーで観客を沸かせたのは、投票で3位になったという「ガラクタフルワールド」。そのエモーショナルさで支持を集める一曲だ。カバーリクエストのコーナーでは、東山が桐崎千棘役を務めた2014年放送のテレビアニメ「ニセコイ」第1期最終話のエンディングテーマ「想像ダイアリー」(原曲は桐崎千棘・小野寺小咲・鶫誠士郎・橘万里花名義)と、熱いリクエストが多数寄せられたというYOASOBI「アイドル」が歌われた。バラエティ豊かな楽曲がパーティーライブを彩る。
「さあ、ここからもたたみかけていきたいと思います! 東山の“ハッピーセット”、いきますよー!」という掛け声とともに、怒涛の終盤へ。咲き誇る未来を予感させるロックチューン「FLOWER」に、軽快に刻むギターやうねるベース、駆け出すドラムとキーボードが体を揺らす「ワゴン」。「ANIMAX MUSIX 2023」などでも歌われ、ソロのライブではようやくの初声出しとなった「グー」は、真っ赤なペンライトに染まるフロア、速いテンポでのコール&レスポンスと、まさにお祭り騒ぎとなった。
続くのは新曲「(前略)全人類へのファンファーレ!」。歌手活動7周年・前夜祭企画 3カ月連続配信リリースの第3弾として2023年12月にリリースされたシングルだ。本来は異様に長いタイトルをもつがゆえに、タイトルコールはもはや愉快な寸劇に。