『バケモノの子』はショタ萌え映画か? 細田守監督の"ショタ愛"を検証してみた

『バケモノの子』はショタ萌え映画か? 細田守監督の"ショタ愛"を検証してみた
『バケモノの子』公式サイトより

 7月11日に公開された映画『バケモノの子』。前作から3年ぶりとなる細田守監督の最新作は、興行収入70億円も見込める好調なスタートを切り、すでに今夏最大の話題作となっている。そんな『バケモノの子』だが、細田ファンの間では主人公の少年・九太が9歳の頃の幼少期が「かわいすぎる」「いいショタ」と評判で、一部では『バケモノの子』ではなく"ショタの子"とまで言われるほど、ショタ萌えがすごいと話題になっているのだ。一体どういうことなのか、実際に観に行ってみた。

 物語は、ある日、ひとりぼっちの九太が渋谷でバケモノの熊徹と出会い、彼らが暮らすバケモノの世界である渋天街に迷いこんだことからはじまる。そして、九太は熊徹に弟子入りし、奇妙な共同生活を通して互いに成長していくというもの。

 まず、九太はヨレヨレのTシャツに短パンという姿で登場するのだが、自宅のマンション、渋谷の路地裏に逃げ込んだとき、渋天街に着いた最初の夜など、しょっちゅう体操座りや片膝を立てた状態でしゃがみこむ。その際、短パンから覗くのが、細く尖った膝小僧。実はコレ、「膝小僧舐めたい」といった感想も見受けられるほど、ショタ好きにとっては欠かせない萌えポイントらしい。
 そして、それ以上にショタ好きが盛り上がっているのが、九太が白いふんどし一丁で川に入り、熊徹の投げてよこす魚を受け取ろうとするシーン。

「ショタの褌シーンが見たいなら劇場へ行くべき」「九太くんのふんどしとかえっちすぎる」「ふんどし姿は見に行く価値十分にあった」

 その場面自体は数秒なのに、まるでそこが映画のメインでもあるかのようなコメントが多数見られた。膝小僧や細長い手足といった身体的特徴は、成長期ならすぐに変化していく。九太の身長が伸びたり、少し余裕のあった服がピッタリになっていく描写もあるが、その刹那的なところや儚さも魅力なのだろう。

 そんな主人公・九太以上の人気を誇るショタっ子が、熊徹のライバルで渋天街の誰もが一流と認める猪王山の息子・一郎彦だ。弟の二郎丸はヤンチャで純粋な男の子だが、兄の一郎彦は猪の帽子をかぶった美少年で、父に憧れ、尊敬する優等生。猪王山と熊徹が戦うシーンでは、両手のこぶしを握り、瞳をキラキラさせながら必死に父を応援する。また、父に稽古のお願いを断られたときも、二郎丸が「えーまた?」と不満気に口にするなか、一郎彦は健気に笑顔を向け、「はい」と答える。九太とは対照的なキャラで、九太が生意気無邪気ショタだとすれば、一郎彦は健気ショタといったところだろうか。

 しかも一郎彦は、どうやら細田監督の"お気に入りショタ"でもあるようなのだ。

 細田監督は『バケモノの子』小説版(KADOKAWA/角川書店)も自ら執筆しているのだが、小説版で描かれる一郎彦の描写は九太や二郎丸とはちょっと違う。二郎丸は「ウリ坊みたいにコロコロ太った子」としか書かれていないのに、一郎彦は「スラリとした背の子」「色白の整った顔立ちと落ち着いた物腰」「弟に話しかける爽やかな横顔。耳の形に飛び出た帽子の下の、白い肌と端整な鼻筋。自信にあふれた目」と、事細かに描写されているのだ。主人公の九太ですら「ぼさぼさの髪。何日も洗っていない薄汚れた肌。飯もろくに食わない痩せた体」としか書かれていないのに、だ。こう見ると、細田監督の今作の推しショタは、九太よりも一郎彦なのかもしれない。一郎彦が主人公以上に人気なのも、監督の愛情がつまったキャラゆえだろうか。

 いずれにしても、『バケモノの子』が評判通り、ショタファンを大満足させる映画であるのはたしかだろう。しかし細田守作品のショタ萌えは『バケモノの子』に限ったことではない。これまでの作品でもさまざまなショタキャラが登場しているのだ。

 前作の『おおかみこどもの雨と雪』では、おおかみこどもである弟の雨がかわいすぎると話題になった。また、雨の人気に隠れてしまいがちだが、雪の同級生で転校生の少年・草平も「小学生なのにかっこよすぎる」と密かに人気を集めた。

『サマーウォーズ』では、主人公のへたれ男子高校生・小磯健二と、格闘ネットゲームのチャンピオンでもある13歳の少年・池沢佳主馬が登場する。とくに、佳主馬は真のヒロインとまで言われるほどショタコンに人気のキャラだ。褐色の肌にタンクトップという姿だけでもエロいのに加え、初対面の健二にパソコンを貸してと言われ「言い方がダメ。もっと取引先に言うみたいに言って」と返すSっ気にやられた人が大勢現れた。

 さらに、この『サマーウォーズ』の、佳主馬のアバターであるキング・カズマが負けて掲示板に誹謗中傷が書き込まれるシーンでは、「カズマたんの指をチュッパチュッパ」というコメントが紛れ込んでいた──。

 と、ざっとあげただけでも、これだけのエピソード。ショタ萌えは、明らかに細田作品の大きな特徴のひとつとなっているのだ。というより、細田監督は明らかにそれを狙っていると言っていいだろう。

 細田監督は「SWITCH」(スイッチ・パブリッシング)Vol.33のインタビューで「少年が夏休みに冒険して、一歩成長する」のがアニメーション映画の王道と語り、昔から少年を主人公にした物語を作りたかったという強い思いを明かしている。

「とはいえ少年を主人公にしたそういう作品は今はなかなか企画が通りづらくて、僕も結局少女を主人公にして『時をかける少女』を作ったんですが......」

 それでも細田監督の少年ものへの思いはかなり強いものだったらしく、同誌でプロデューサーの丸山正雄も「『サマーウォーズ』で女の子を主人公にしろと指示したのに、女の子に加えて無理やり男の子を出してきて」と語っている。

 さらに、「キネマ旬報」(キネマ旬報社)2015年7月下旬号では、『バケモノの子』の作画監督である山下高明が今作では細田監督が「男ものをやりたいとか言ってた感じもありました」と話しているし、17歳になった九太が渋谷に戻って出会うヒロインの楓も、同い年くらいの男の子になる案もあったという。

 なかには、「細田監督のショタ趣味は宮崎駿コンプレックスをこじらせたせいで、宮崎のロリに対抗し、ショタを追求しているのでは」などという説もあるが、決してそれだけの理由とは思えないほどのこだわりがある。

 たとえば今回、少年期の九太を演じた宮崎あおいは、初の少年役で不安になり、監督に聞いてみたそうだが、それに対する細田監督の答えがこれだ。

「女性が演じることでの艶っぽさみたいなものも出ていて、いいと思います」(前述「SWITCH」Vol.33)

 いや、そもそも少年キャラに求めるものが艶っぽさなのか?と不思議に思うが、じつは『サマーウォーズ』で佳主馬を演じる谷村美月にも「基本的にはそのままでいいんだよ」とアドバイスしていたという。少年役に、谷村美月や宮﨑あおいといった女優を起用するのにも監督のこだわりがあることがうかがえる。

 さらに、『サマーウォーズ』で念願の男の子を描いた際、細田監督は少年の魅力ついて、もっと本音らしきことも口にしている。季刊「エス」(飛鳥新社)VOL.39 2012年6月号のインタビューでのことだ。

「いやぁ、これねぇ...絵コンテを描いていても、レイアウトチェックや原画チェックをしていても思うんだけどさ、健二君はさておき、佳主馬が色っぽくて」
「首筋とかを描いていて、何かドキドキするんだよ...こっちはもう中高年なのに」
「一二歳くらいの子の妙な色気っていうのはさあ...手足が妙に長くて、細くてさ、それで変声期でさ。変化の瞬間って、実はすごく魅力的なのに、たぶん中一や中二の男の子たちは自分のそういう魅力に気づいてないんだよね。惜しいなあ、みたいなね。まあ、みんな手を出さないからね。同年代の女の子も若過ぎて、男の子の魅力に気づけないじゃん。いやあ、良いんだよね...プール帰りの男の子とかって、すごく色っぽいんだよね」
「何かそういう、いやらしい目線を佳主馬には監督ながら注いでしまう...」

 王道作品が作りたいとか、誰かに対抗するためという理由だけで、ここまでショタの魅力を熱く語れるものだろうか。ショタ萌えポイントをしっかりおさえ、細部までこだわった描写。魅力的なショタキャラが生まれるのは、やはり細田監督自身のショタ愛があってこそだろう。

 そんな細田監督のショタ愛だが、過去作品からの流れをよく見てみると、ショタはショタでも作品によって描かれ方が微妙に変化してきているように思える。とにかく"男の子が描きたい!"という思いが叶った『サマーウォーズ』では、自分の趣味が溢れ出してしまった感もあるが、『おおかみこどもの雨と雪』では、男子に人気の"かわいいショタ"である雨と、お姉さんとショタの組み合わせを描くおねショタジャンルでも女子に人気の"かっこいいショタ"である草平が登場している。いわゆる男女それぞれに人気のショタを詰め合わせた作品といえるかもしれない。

 逆に、今作の『バケモノの子』では、1人のショタの表と裏のような姿を描いている。子どもらしく、不満や言いたいことを言えて、それを言ってもきちんと受け止めてくれる相手が居る九太と、言いたいことが言えなくて闇を抱えていく一郎彦。小さなきっかけや選択、周りの環境でどちらにもなり得る二面性を2人のショタで表現しているようだ。

 最近のショタキャラからはあからさまなエロは減ってきているし、「エス」のインタビューで語ったようなショタ愛発言もあまり見られなくなってきてはいるが、たとえ自分に息子が生まれようとも、彼のなかにあるショタ愛は変わっていないはずだ。

 もしかしたら、自分のなかのショタ愛を、多くの人に受け入れられるエンターテインメントにどう昇華するか試行錯誤しているのかもしれない。まあ、観ている側からするとどれも「ショタかわええ」としか思わないのかもしれないが。
(田口いなす)

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