「魔性の女」「略奪女王」「共演者キラー」「森ガールのふりをした肉食系」。このように形容詞を並べれば、多くの人は「あの人のことか」と思うことだろう。
そんな蒼井が雑誌のインタビューで、こうした"魔性の女"説に真っ向から反論している。
「自分が本当にやったことを書かれているのであれば、謝ることもできるし、直すこともできるんだけど、恋愛をしてきた時期もぐちゃぐちゃにされて、二股とか略奪とか言われて──事実じゃない嘘がどんどん雪だるまみたいに大きくなっていっちゃったなあって」
このように蒼井が語っているのは、「MEKURU」(ギャンビット)VOL.05。蒼井の30歳の誕生日である8月17日に発売されたこの雑誌では、「蒼井優、最初で最後に恋愛を語る」と題して特集を組んでいるのだ。
蒼井といえば、2008年に岡田准一とフライデーされ、破局後は大森南朋、鈴木浩介、三浦春馬との交際が報じられ、そのほかにも瑛太や堤真一など、さまざまな俳優との浮き名を流してきた。だが、蒼井は今回、自身のスキャンダル報道について、「真実とのギャップがすご過ぎて、自分の名前がなければ自分のことが書かれてるってわからないぐらい差がありますね」と述べている。
なかでも、先程引用した発言のなかにある「二股」「略奪」とは、鈴木浩介との交際を指していると思われる。蒼井と鈴木の交際が発覚したのは12年7月、スポーツ報知と「FRIDAY」(講談社)による報道がきっかけだった。しかしすぐ後、「女性セブン」(小学館)が、鈴木が藤谷美紀と半同棲状態だったことを挙げ"蒼井による略奪"だと報じた。
さらに、13年6月に蒼井と鈴木は異例の"破局報告"を行ったが、「女性自身」(光文社)がその後、蒼井が一方的にメールで「好きな人ができたから」と告げたことが破局の真相だと報道。しかも、鈴木はすでに結婚を見越して新居を購入しており、破局によって毎月50万円のローンが鈴木に残ったと伝えた。
その上、偶然(?)にも岡田准一との破局時も、岡田は蒼井との結婚を意識して約5000万円をかけて自宅をリフォームしていたと報じられていた。
しかし、蒼井にとって鈴木との報道は「事実じゃない嘘」だったと言う。
「メール1通で別れたとか言われてるけど、自分の中で、それはあり得なくて。そうやってできる人って、逆にいいなあと思うんです」
「マンション買わせたとかメール1通で別れたとか言われたときは、人って泣き過ぎると目の下の皮がめくれるぐらい(笑)、心から涙が出るんだなってことがわかって」
さんざん傷ついたと言う蒼井だが、それでもさすがは女優。「役者だからこそ、その傷を仕事に還元できる」と述べ、「お陰でそこからは、泣くシーンになるとすぐ泣けるんですよ」と振り返っている。しかも、ドラマ『Dr.倫太郎』(日本テレビ系)で演じた芸者の役は「週刊誌に書かれてる蒼井優を参考にして芝居をしていた」とさえ話し、皮肉たっぷりにこう語っている。
「男の人にしなだれかかるっていう概念が私にはないから、自分の中の感性になかったことを週刊誌の人が教えてくれたんです」
蒼井の言うとおり、たしかに週刊誌では、"『龍馬伝』(NHK)の打ち上げで酔って香川照之にしなだれかかっていた"と伝えた「女性セブン」にはじまって、"おでん屋デートで大森南朋にしなだれかかっていた"(「週刊女性」主婦と生活社)、"男にしなだれかかる新魔性の女"(「週刊実話」日本ジャーナル出版)などなど、蒼井の小悪魔テクニックは「しなだれかかる」が定説化していた。こうした報道に、蒼井はよほど腹を立てていたのだろう(その週刊誌チェックぶりにも感心してしまうが......)。
では、実際の蒼井の恋愛とはどんなものだったのか。
「自分から好きになるっていうことがあんまりないんですよ。友情と愛情の違いがイマイチわかってなくて」
「(交際時は)自分のキャパ以上に頑張り過ぎて、そのキャパに自分が追いつかなくなって、キーッてなることもあったし。慎ましくしてみたり、お弁当作ってみたり、求められることの3歩先ぐらいをやろうとしてみたり。
人の恋愛をどうこう言えるものではないが、蒼井の口から語られた恋愛模様は、「魔性の女」「略奪女王」という冠とはかけ離れたものだった。むしろ、どこか"優等生"な雰囲気を感じるほどだ。もしかすると、過剰なスキャンダル報道を浴びてきたことで恋愛に慎重になっているのではないか、そんな気さえしてくる。
だが、もしそうだとすれば少し残念でもある。たとえば、蒼井とは演技のタイプがよく似ている大竹しのぶなどは、それこそ「魔性の女」として数々のスキャンダル報道に見舞われてきたが、怖じ気づくことなく恋愛を繰り返し、「略奪愛だ」「子連れ再婚は身勝手だ」「籍も入れない同棲なんて」とさんざん言われようと、いつも堂々としてきた。そして、紫綬褒章を受章した際には「いろんな男の人たちが支えてきてくれた」と語った。その姿は、じつに清々しいものだった。
恋愛の数が多かろうと少なかろうと、それは自由だ。とりわけ日本では恋愛経験の数が多い女性は「不潔」「ビッチ」だのと罵られがちだが、そんなことは勝手に言わせておけばいい。蒼井が「役者だからこそ傷を仕事に還元できる」と話すように、その先の女優・蒼井優が見てみたいのだ。
だから、もしも蒼井が今度は40歳の節目に今回と同様に恋愛について語る機会があるのなら、そのときはこう言っていてほしいなと思う。「魔性の女だけど、文句ある?」と。
(大方 草)