先月30日に、自身のブログでママ友からイジメられた過去を告白した女優の江角マキコ。「お弁当を作らずメロンパンをポンと持たせている」といった「想像力豊かな内容」のウワサを立てられたり、「露骨に無視をされたり、お茶会やランチ会をその噂を広めるために開かれたり」「子どもと一緒にいる時に無視をされたり、嫌味を言われたり」といった陰湿ないやがらせの実態をつづり、大きな話題を集めた。
しかしその1週間後には、「女性セブン」(小学館)や「週刊新潮」(新潮社)にイジメの加害者とされたママ友たちの反論文が掲載された。「子どもの教育に悪いからという理由で、肩掛けカバンからランドセルの通学を義務付けするよう賛同者を募集していた」「江角がママ友内でAさんに『「Bさんがあなたの悪口を言っていたよ』と言い、Bさんには『Aさんがあなたの悪口を言っていたよ』と言っていた」と、江角の極端な行動に多くの保護者が困惑していたと報じたのだ。
ねじれてしまった両者の言い分だが、互いに不満を感じていたというのは事実だろう。そしてこういったママ友との関係の破たんというのは、誰に身にでも起こること。それゆえ、今回の騒動に大きな関心を寄せられているのだ。そこで、江角の行動を例に、ママ友との関係にほころびが見られたときにどうすればいいのかを、精神科医・水島広子氏の『女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)から学んでみよう。
ママ友の反論文から読み取れるのは、江角の主義主張の強さや上から目線で子育てを語る姿勢だ。ランドセルの件にかんしても、わが子のためという気持ちが出発点だったにもかかわらず、最終的には自分の考えをほかの保護者に押し付ける形になっている。水島氏はこういった「他人のことに口出しをしたがる」女を、「お母さん病/お姉さん病」と呼ぶ。この病気の特徴は「『自分は自分、相手は相手』と線を引く」ことができないところや「その人にとってよいものが他の人にとってよいものとは限らない」という意識の欠如であり、トラブルの元凶になることは間違いない。江角もわが子への愛情を自分だけのものとし、自分とは教育方針が違う人がいることをちゃんと認識すればここまで関係がこじれることはなかっただろう。
では、立場を変えてみて、お母さん病を患っている人に子育て法などを勧められた時はどうすればいいのだろうか。
また、江角・ママ友の両者が互いに罪をなすりつけあっているのが、悪口の話。ママ友に限らず、集団においてその場にいない人の悪口大会は発生してしまうことが多い。基本的なことだが、人間関係の荒波に巻き込まれないのは、そういった場では絶対に「自分自身が人の陰口をきかないこと」が重要だ。だからといって、陰口をやめようと批判的なことを言うのは、お門違いなのだという。なぜなら「陰口とは心に傷を負っている人がするもの」だから。コンプレックスやトラウマを持っている人が「その傷を正論風に語っている」のが悪口なので、「『癒されてない人の痛み』について聞く」というスタンスで相手をねぎらう言葉をかければ、悪口大会に参加しているという罪悪感からまぬがれるという。
江角の場合、悪口大会があったことを触れまわっていた、というのが大きな失敗だろう。仮にママ友が別のママ友の悪口を言っていたとしても、なにかしらの傷があるのだと推測し、心にしまっておく優しさが必要だったのだ。
一連の騒動では表立ってはいないが、江角とママ友の対立に板挟みになった保護者もきっといたはず。仮に自分がそういった環境に置かれた時は、対立する女性の間でどのように振る舞えばいいのか。まず、現実的な方法としては、どちらに誘われても誘いを断り、そのことを苦痛に思わないようにすることが大切だという。
今回の江角の騒動を受けて、「ママ友は怖い!」という声もあがっている。もちろん、集団で無視をされたり、仲間外れにされることは、大人になっても不快な出来事だ。しかし、水島氏は「ママ友は『社会的な仕事』と割り切ることで、簡単に解決する話」だと話す。そして、「ママ友の中にそんなに親しい人ができないのは決して珍しくないこと。『外された』と、悲しんだり落ち込んだりする必要はない」と分析する。
近年の子育てに対する異常な熱気をはらんだ報道とともに、ママ友のイメージがいいようにも悪いようにも肥大化し、ママ友という存在が女性にとって大きな圧力になる傾向がある。もちろん、ママ友として知り合ってから唯一無二の親友になることもあるだろうが、もとを正せば「同じ年ごろの子どもを持つ顔見知り」。過剰な期待や恐怖こそが、ママ友関係を複雑にしていることに気づけば、余計なトラブルには巻き込まれずに済むのではないだろうか。
(江崎理生)