現在、木曜ドラマ劇場『同窓生 ~人は、三度、恋をする~』(TBS系)に出演しているARATA改め井浦新。視聴率こそ振るわないが、井浦自体の評価は上々。
が、そんな評判の一方で、"不思議"ぶりも注目されている。ドラマの番宣で出演した『内村とザワつく夜』(TBS系)では、「僕は河童を見るために日本中旅をして探しています」と言い出し、スタジオは騒然。司会の内村光良に「新さんのまわりに変わった人っていますか?」と訊かれたときには、唐突に「人生の大先輩のような存在で、聖徳太子の時代に実在した人物なんですけど、役小角という人がいて」と語り出した。大先輩に違いはないが、約1400年前の先輩である。
その後も"変わった先輩はいるか"と問われて、いたって真面目に「葛飾北斎」の話を始めたりと、すっかり"へんな人"扱いを受けてしまった井浦。そんな井浦の真髄を堪能できるのが、現在、レギュラーMCを務めている『日曜美術館』(NHK教育テレビ)である。そこで今回は、先日発売されたエッセイ集『井浦新の日曜美術館』(青幻舎)から、かっこいいだけではおさまらない井浦の"へんな魅力"を紹介しよう。
まず、井浦が美術に興味をもったのは「縄文がスタート」「縄文が根本」。父親に静岡の登呂遺跡に連れて行かれた幼い井浦は、目の当たりにした縄文文化に大興奮し、「変な三角形の家だなとか、なんで床が高いのかとか、火起こし器が面白いとか、今でも鮮明に覚えています」という。『いっぷく!』(TBS系)に出演したときも、当時、子どもたちが熱狂したキン消し(キン肉マン消しゴム)で遊ぶ感覚で土偶で遊んでいたことを明かしていたが、幼少期から少し変わった子だったことが伺える。
河童を探して日本中を旅することからもわかるように、「昔からフィールドワークというか、野外研究というものが大好き」な井浦。
「これが"日曜美術館"というものか!」
と、激しすぎる衝撃を受けている。そして、作品に対するこれまでの想いが強すぎた井浦は、作品を手にした瞬間の抑えきれない想いをこう表現している。
「突然にその距離感が無くなって(中略)正直いって気持ちが追いつきませんでした」
「「ええっ、本当にいいのですか......」と、動揺しながら、喜びが心から溢れ出して、物凄く嬉しい顔をしていたと思います」
「とにかく緊張していましたが、手の平に冷たくヒタっとくっついた感触は忘れられません」
断っておくが、これは恋人とはじめて抱き合った瞬間の描写ではない。陶器を手にもった感想である。マンガ『へうげもの』(講談社)の世界のようだが、現実の話だ。
さらに、井浦のケタ外れな感動の旅はつづく。獅子や狛犬が好きだという井浦だが、平安時代につくられた木像の獅子に対面したときは、「奇跡としかいいようがありません」と熱狂。その感想はこのようなものだった。
「凜と張った胸から、ぎゅっとへこませたお腹のくぼみまで、少し顔を傾けることによって生まれたラインが造形的にも美しい」
再度断るが、これは初夜に見た恋人の裸体を描写したものではない。獅子の木像の描写である。獅子のお腹のくぼみとは、こんなに感激できるものなのか......。
番組とは関係なく美術鑑賞が生きがいなだけあり、「これこそ、自分の足跡ですから、捨てられません」という理由で、展覧会のチラシはチケットと一緒に保管。容赦なく増えていくチラシをA4 ファイルに入れていく地味な作業を時間を見つけては楽しくこなしているらしい。なかでも「気分があがる」のは、展覧会グッズ。「いつもいろいろなものを買ってしまいます」とミーハー心を洩らしつつ、展覧会の図録で「家の床は抜けそうです」という。床が抜けるのはまずい事態と思われるが、井浦はなんだかとてもうれしそうだ。
もちろん、「影響を受けたり、学びをいただいたりした先達の方々」への「勝手に墓参り」も忘れない。番組本番中でもゲストのいい言葉を聞けば、「なんでも書き残しておかないと気が済まない」ので、進行役なのにすかさずメモる。──「趣味はアート鑑賞」と言うと「スカした野郎」と思われそうなものだが、ここまでくればアイドルやアニメのオタクと何ら変わらない。まさしく純然たるアートヲタなのだろう。
ただ、こうして井浦のヲタ活を追っていると、どこかあやかりたい気分にもなってくる。『日曜美術館』を通して初めて知ったという画家・神田日勝の絵と対峙したとき、井浦は「「僕は、こうやって生きているけど、君はどうだ。闘っているのか」と、「問い」を突きつけられているような気持ちでいっぱいでした」と振り返っているのだが、美術から発見や新鮮な驚きをすなおに感じ取れる姿は、うらやましい限りだ。
ちなみに、この日勝の回の収録を終え、充実感でいっぱいになった井浦の一言は、こうだ。
「なんか、いいぞ!」
──『孤独のグルメ』(扶桑社)の井之頭五郎にも通じる、ざっくりしてるのに何か胸に響いてくる感じ。この素朴すぎる部分やちょっとヘンなところは、同年代でも肉体美で売る西島秀俊あたりよりも観察する分にはずっと面白い。
たしかに、なんかいいぞ、井浦新!
(サニーうどん)