かつてはオタクといえば男のイメージだったが、近年はオタク女子も増加している。男性に免疫がなく、2次元の世界で妄想に生きている非モテのオタク女子も少なくない。
まず、幼い頃から妄想力がすごかったカザマ。小学生のときは少女マンガを読みすぎて、「男子と関わっただけで恋愛を妄想する体質」になってしまっていたという。目が合っただけで、相手は自分のことを好きで、そのまま抱きしめられて......と妄想してしまう。だから、好きな子やイケてる子の前では、即、赤面涙目。それ以外の男子にも、謎のツンデレを発動したり、からかわれるとヒロインモードに突入して「なによー」と相手の男の子をぶってしまったこともあったようだ。
そんな調子だから、いざ婚活しようという気になっても、男性に対しての免疫がないので、社交辞令もどんな話をすればいいかもわからず、女性としてどう対処したらいいか全くわからない。しかも、女子らしくふるまって、まわりの女子から"ぶりっ子"認定されるのも怖いとう自意識も働いてしまう。
ということで、まずはネットで知り合った人に1対1で会おうとメールをする。実際何人かの男性とデートするのだが、何か会話しなければと焦って質問攻めにしたり、「道路側危ないからこっち側に」と女の子扱いされたことにどう対処していいかわからず、考えすぎて黙ってしまう。親に紹介されたお金持ちの爽やかイケメンとも会ってみるが、話が合わず......。会うまではがんばるが、なかなかうまくいかない。
闇雲に男性に会ううちに気づいたのは、「自分が求めているのは、趣味の話ができる人」ということ。そんなときにTwitterで見つけたのが、麻雀とマンガいう同じ趣味を持つある男性。さっそくリプを飛ばし、「おお、麻雀良かったらご一緒したいですわ!」という返事がくると、社交辞令という発想がなかったのが逆に功を奏したのか、すぐに予定を聞いて約束を取り付ける。するとそれまでの男性たちとはちがい、話も合ってすぐに打ち解けた関係に。この人にだったら何でも話せる、そう思ったカザマは彼にこんな疑問をぶつける。「男性の皮ってどうなってるんですか?」――。
実は、カザマは男性に対して免疫がないのはもちろん、エロに関しても初心者で知識も経験値も圧倒的に少ない。そのくせ、唯一の情報源がエロゲーなため、純粋なのにやることは"痴女"なみに大胆なのだ。
そのため、いざ付き合うという段階になってもいろいろな問題が発生する。初デートで映画を見て、手もつながないまま帰る雰囲気になると「何かイベントを起こさなければ」と思い、帰り際に「すいません抱きついていいですか?」と自ら抱きついてしまう。初体験のときも、普通の人は「この人が初めてでいいのだろうか」とか自分の体型、匂い、痛みなどの心配をするだろう。しかし、彼女は「だってHってアヘ顔になるんでしょ!?」と何よりもその心配をしていた。
極めつけは、自分が女性として見られているのか不安に駆られ、スカイプで放った質問だろう。なんと「私で勃ちます?」と聞いてしまうのだ。自信がないのか、大胆なのか、ワケがわからない。"勃つかどうか"はかなり気になるポイントらしく、相手の家に初めて行った目的も、勃つかどうかの確認のみで、それ以外は何事もなく帰る。これまた、ガードが固いのか、ゆるいのかワケがわからない。
しかし、そんなカザマが紆余曲折の末、結婚に辿り着くのである。どうやって結婚に至ったか詳細は本書にゆずるとして、こんなオタクでも結婚できるのかと驚かずにはいられない。しかし共通の趣味の話ができるのは、男性にとってもうれしいことだろう。
(田口いなす)