“影の総理”と呼ばれて久しい菅義偉官房長官が、最近、著名な企業経営者らと会食をした“仲良し写真”が出てきて、ネット上で話題になっている。安倍首相の有力な“お友だち”として知られる、あの幻冬舎の見城徹社長が11日、自身の755やTwitterに投稿したものだ。
見城社長が〈起業家仲間と菅義偉官房長官を囲んで。東麻布[富麗華]にて〉と、いささか自慢げにアップした写真には、向かって右に見城氏、左にエイベックスの松浦勝人会長CEOが鎮座し、その中心で菅官房長官が満面の笑み──。
後ろには12人の男がずらりと立ち並んでいる。「Abema TV」の代表でサイバーエージェントの藤田晋社長、GMOインターネットの熊谷正寿会長兼社長、他にもいまをときめくベンチャー系企業などの経営者ばかりだ。
見城氏やこうした起業家との会食といえば、安倍首相の専売特許という印象だが、菅官房長官も親分の真似を始めたということなのだろうか。
いや、そうではない。安倍首相ほど知られていないだけで、実は菅官房長官もまた、以前からこういった会食を繰り返すことで財界・マスコミ界での“親政権人脈”を固めてきた。実際、菅氏は朝はホテルでの朝食の際に学者や財界人などと毎日のように席を設け、夜ははしごして複数の会食をこなすことも多く、そうしたなかで、情報収集だけでなく、裏工作のチャンネルを形成しているとされる。
たとえば、先の沖縄県知事選では、同時期に引退ライブをおこなった安室奈美恵をめぐって、自民党と官邸がきな臭い動きをしていたことが取り沙汰されたが、このときも、菅義偉官房長官が一時、安室の音楽プロモーターを通じて圧力をかけようとしていたことが報じられた。
〈彼女の動向にピリピリしているのが、菅義偉官房長官だ。(中略)安室に関しては、「(契約先の)エイベックスの松浦(勝人会長)とは知り合いだから」と嘯いてる。
「菅氏は、安室のライブやツアーを一手に担う音楽プロモーターとも面識があります。
前述した12月の会食の際、菅氏の隣にエイベックスの松浦会長が座っていたことは何も偶然ではないのである。
●東国原英夫が「『ひるおび!』の恵と菅さんがご飯を食べた」と暴露
実際、安倍首相と違って首相動静に載らない分、菅官房長官のほうがはるかに“暗躍”しているとも言えるだろう。顕著なのが、テレビのキャスター、コメンテーター、ジャーナリストへの会食による懐柔工作だ。
たとえば、その相手として名前があがったのが『ひるおび!』(TBS)の恵俊彰だ。『ひるおび!』といえば、田崎史郎氏や八代英輝弁護士ら安倍応援団による政権擁護姿勢が有名だが、MCの恵も菅官房長官と会食をしていたというのである。
この話を暴露したのは、東国原英夫。今年5月の『ゴゴスマ~GOGO! Smile!』(CBCテレビ)のなかでいきなり「『ひるおび!』の恵と菅さんがご飯を食べた」と発言したのである。
「東国原の発言以前から、恵と菅官房長官が食事をしているという情報は流れていました。一度だけでなく、何度か会っている可能性もあります」(全国紙政治部記者)
『ひるおび!』で安倍政権擁護に誘導する仕切りには、こういう裏があったということなのだろうか。
菅官房長官のこうした懐柔工作は、政権に批判的なキャスターにも向けられている。
「(菅官房長官は)黙って来た。誰かから聞いて知ったんだろう。最初から最後までいたよ。終わると『今日はいい話を聞かせていただいて、ありがとうございました』と言って帰っていった。怖いよな」
「『どこで何を話しているか、全部知っていますよ』ということを見せているわけだ。『人脈も把握しています。岸井さんが動いているところにはいつでも入っていけますよ』というメッセージかもしれない」(『偽りの保守・安倍晋三の正体』より)
●圧力を受けた古賀茂明が著書で暴露した“菅官房長官の手口”
しかも、菅官房長官のメディア工作は飴玉をしゃぶらせる懐柔工作だけではない。ニュース番組やワイドショーなどの放送をいちいちチェックしており、気にくわない報道やコメントがあれば、すぐさま上層部にクレームを入れることで圧力を高めているのだ。
有名なのが、『報道ステーション』(テレビ朝日)での古賀茂明降板事件だろう。念のため振り返っておくと、当時、レギュラーコメンテーターだった古賀氏は、2015年1月23日の放送で、ISによる後藤健二さん、湯川遥菜さんの人質事件について安倍首相が「『イスラム国』と戦う周辺国に2億ドル出します」と宣戦布告とも取られかねない発言をおこなったことを批判。
「“私はシャルリー”っていうプラカードを持ってフランス人が行進しましたけど、まぁ私だったら“I am not ABE”(私は安倍じゃない)というプラカードを掲げて、『日本人は違いますよ』ということを、しっかり言っていく必要があるんじゃないかと思いましたね」
この発言に、官邸は大激怒。本サイトでも当時伝えているが、このとき「菅官房長官の秘書官」が放送中から番組編集長に電話をかけまくり、出なかったため、今度はショートメールで猛抗議した。その内容は「古賀は万死に値する」というようなもので、恫喝以外の何物でもなかった。
のちに古賀氏は著書『日本中枢の狂謀』(講談社)で、このときの恫喝した菅官房長官の秘書官が、警察官僚の中村格氏であったことを明かしている。中村氏といえば、官邸に近いジャーナリスト・山口敬之氏による伊藤詩織さんへの性暴力疑惑をめぐって、直前で山口氏の逮捕取りやめを指示した人物として知られるが、このようにして、菅官房長官は硬軟織り交ぜてマスコミをコントロールしようと企てているのだ。
また、古賀氏は同書のなかで、菅氏のやり口をこう分析している。
〈一強多弱の政治状況が続き、圧倒的優位を保つ安倍政権の官房長官に食事に呼ばれれば、悪い気はしない。そして、いろいろ面白い情報を教えてもらえれば、自分の仕事上、大きなプラスになる。そういう計算で、誰もが菅官房長官の軍門に降り、会食後は、あからさまな政権批判をしなくなったそうだ。民主党のブレーンとして有名だった政治学者なども、いとも簡単に寝返っていく様を見ながら、菅官房長官の秘書官も、その手練手管に舌を巻いたという。〉
●「週刊文春」の翁長知事攻撃記事の背後にも菅官房長官の存在が
さらに、菅官房長官は官邸と昵懇のジャーナリストや記者らに対して、陰に陽に情報をあたえることで、政敵のバッシング等や情報操作を仕掛けている。
たとえば、「週刊文春」に掲載された翁長雄志・前沖縄知事へのネガティブキャンペーンだ。同誌は2015年4月23日号で「翁長知事を暴走させる中国・過激派・美人弁護士」と題した大特集をトップで掲載。あたかも翁長知事が中国と過激派に操られているかのような、明らかなデマ記事を書き立てるなど、翁長バッシングや沖縄へのヘイトまがいを何度も展開してきたが、この種の記事を手がけた同誌の記者は菅官房長官と非常に食い込んでおり、謀略情報も菅官房長官の周辺から入手しているのではないか、とささやかれてきた。
実際、こうした「週刊文春」の沖縄報道に関わってきた記者は、退社後の2017年に著書『沖縄を売った男』(扶桑社)を出版しているのだが、その帯には、菅官房長官の顔写真が堂々と掲載されていた。しかも、この記者は先の沖縄知事選では、菅官房長官が中心になって擁立した“基地容認派”の佐喜真淳氏の選対に入っていたことが確認されている。
いずれにしても、菅官房長官はただの“鉄面皮”ではなく、国民の与り知らないところで、不気味な“笑顔”を振りまくことで裏工作をおこなっている。今回はたまたま、目立ちたがり屋の見城社長がTwitterで大々的にバラしてしまったから公になったものの、会食に代表される菅氏の暗躍はまだまだ氷山の一角だ。わたしたちは、こうした“影の総理”の下劣なやり口だけでなく、その誘いにまんまと乗ってしまう業界人、メディア人に対しても警戒を強めていかねばならないだろう。
(編集部)