「安倍やめろ」のヤジを警察が取締り! 産経も「刑事罰にあたる」と脅し…“選挙妨害”拡大解釈でロシア並み言論弾圧国家へ

 参院選投開票日を控えて全国遊説に精を出している安倍首相だが、いま、とんでもない動画がSNS上で拡散されている。

 安倍自民党は党役員の遊説会情報を特設サイトで掲載しているにもかかわらず、安倍首相の情報は一切出さないという“ステルス”遊説をつづけている。だが、それでも安倍首相の街頭演説がはじまると、聴衆から「安倍やめろ!」というヤジがどこからともなく飛び、安倍政権に反対するプラカードが掲げられるという状態が“定番”化しつつある。

 しかし、そうやって声をあげた市民が、すぐさま警察に排除されてしまう模様を収めた動画が、いま、SNS上で拡がっているのだ。

 その動画は、15日に北海道のJR札幌駅前でおこなわれた自民党の街頭演説会を撮影したもの。安倍首相は選挙カーの上でマイクを握り、北海道選挙区から立候補している高橋はるみ候補を紹介するのだが、その際、選挙カーから少し離れた正面あたりにいたひとりの男性が、こう声をあげた。

「安倍やめろー!」「帰れー!」

 すると、その声をあげている男性を、制服を着た警察官と私服警官と思われる数人の男性らがすぐさま取り囲み、男性を引きずるようにして後方へと強制的に“排除”したのだ。

 これはどう考えてもおかしい。総理大臣の街頭演説に対し、市民が怒りの声をぶつけるのは表現の自由にほかならない。

 こう言うと「公選法には選挙妨害罪がある」と主張する者がいるだろうが、選挙妨害罪について定めた公選法225条および第230条には、こう規定されているだけだ。

〈交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき〉(225条の2)
〈選挙に関し、多衆集合して、交通若しくは集会の便を妨げ、又は演説を妨害した者〉(230条)

 一方、動画に映し出されている男性は、たったひとり、肉声で声をあげている。動画をみるかぎり、安倍首相のスピーチが男性のヤジによってストップもしていないし、そのヤジで演説が聞こえなくなるということもないように見える。ましてや、男性は道路や選挙カーの前に出て叫んだわけでも、まわりの聴衆や選挙員に狼藉を働いたわけでも、マイクを奪い取ったわけでもない。男性の行為は、公選法違反としてどれも当てはまらないのだ。

 一体、何の法的根拠があって、警察は市民を排除したのか。本サイトは16日、北海道警察本部に取材を申し込んだが、同広報課報道係の担当者は「取材には応じられない」という返事。一方、朝日新聞デジタル16日付け記事では、北海道警察警備部は「トラブル防止と公選法の選挙の自由妨害違反になるおそれがある事案について、警察官が声かけした」とコメントしている。

●弁護士も「演説妨害には当たらない」「行き過ぎた忖度」と指摘

 しかし、動画で男性はほかの聴衆と小競り合いになっているとか、そういう状況にはなっていないし、繰り返すが「選挙の自由妨害罪」に抵触した行為をおこなっていない。「表現の自由」を巡る問題に詳しい弁護士の芳永克彦氏は、公選法に定められた選挙の自由妨害罪について、こう話す。

「演説を妨害したということで、排除されたり、拘束されたりするというのは明らかに行き過ぎだと思いますね。
 北海道警は公職選挙法225条2号の〈演説を妨害し〉に当たる可能性を説明したようですが、これは単に演説を妨害すれば該当するわけではありません。条文では〈交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき〉、つまり、偽計詐術その他不正の方法をもって選挙の自由を妨害したということが、要件になっています。
 同じ225条の1号や3号の条文を見ても、1号では「暴行若しくは威力を加え又はこれをかどわかしたとき」、3号も「威迫したとき」とあり、暴力、威力、さらう、脅かすなどの不正行為が要件になっています。
 最高裁で有罪になった判例が2つほどありますが、いずれも暴力絡み。演説者を拘束したり、押さえつけたり、という暴力が絡んだ事件なので、今回問題になっているケースとは違います。
 演説者を吊るし上げて演説できなくさせたとか、演説会場を塞いで入れなくするとか、スクラムを組んで演説者を取り囲んで聴衆が近づけなくするとか、あるいは街宣車の大音量のスピーカーで休みなくがなり立てて誰も演説を聞き取れないというような、違法性の高いケースでないと、この条文で取り締まるということは許されない、というのが私の解釈です。今回のことは安倍首相に対する忖度というのか、行き過ぎですね」

 だが、警官に排除された市民はこの男性だけではなかった。前述した朝日新聞デジタル記事によると、〈年金問題にふれた首相に対して「増税反対」と叫んだ女性1人も、警官5、6人に取り囲まれ、腕をつかまれて後方へ移動させられた〉のだという。

●安倍首相の演説妨害は排除し、山本太郎と共産党の演説妨害は放置

 増税を決め、さらには年金問題で国民の不安を煽った政府の責任者である総理大臣が、マイクを通して言いたい放題で自己正当化をはかるなか、市民が「増税反対」と意見をぶつけることの、一体何が選挙妨害だというのだろうか。

 しかし、これとよく似たケースは、安倍首相の街頭演説では前々から起こっており、実際、本サイトもそうした場面に遭遇したことがある。

 それは2016年の参院選でのこと。安倍首相がJR吉祥寺駅北口前で街頭演説をおこなうと告知され大勢の人が集まっていたのだが、安倍首相の演説がはじまる前、「安倍政治を許さない」というプラカードを掲げて歩いていた男性がSPにぴったりマークされ、走って駆けつけた警官に注意を受けて選挙カーから遠ざけるように誘導されていた。本サイト記者がその警官にどういった法的根拠で移動させたのか話を訊くと、「プラカードはデモ扱いになるので、きょうはデモは禁止なので」との説明だった。

 プラカードを掲げたら「デモ扱い」になるのなら、安倍支持者が掲げるプラカードも下ろさせるべきだが、警察がそういう注意をしているところは見たことがない。ようするに、安倍首相や政権与党である自民党に反対するプラカードやヤジだけが取り締まりの対象になっているということではないのか。

 実際、JR札幌駅前での男性が警官に強制排除される動画が拡散されるなか、SNS上では今月12日におこなわれた京都選挙区から立候補している共産党・倉林明子候補の応援に山本太郎・れいわ新選組代表が駆け付けた街頭演説において、“メガホンで演説妨害していた人が警察に守られていた”と報告する写真付きツイートに注目が集まっている。写真では、拡声器を持った男性のまわりを4人の制服警官が取り囲んでいるのだが、そのツイートでは〈警察に抗議したら刑事さんが出て来て憲法で保障されているとバッサリ〉と記述されている。

 こちらは動画がないため事実関係を確認できなかったが、もしこれが事実であるならば、警察は憲法で保障された「表現の自由」を相手によって使い分けているということになるだろう。

 現に、こうした実態を裏付けるような証言も出てきた。元北海道警察警視長で2004年に北海道警の裏金問題を告発した原田宏二氏は、昨日、こうツイートした。

〈私は捜査2課長の経験者。そもそも、選挙は国の警察の警察庁が仕切ってる。都道府県警察の選挙を仕切る捜査2課長は若いキャリアのポスト、人事は警察庁。捜査費用も国費。警察庁長官の人事は内閣総理大臣が握る。
道警が忖度するのは当然。警察は政治的に中立は幻想。〉

●産経新聞は呼びかけハッシュタグを「組織」と決めつけ「刑事罰に当たる」

 いや、安倍首相のために批判勢力を排除しようとしているのは、警察だけではない。今回の参院選では、安倍首相に反対・批判の声をあげる市民の行為を、自民党の萩生田光一・幹事長代行は「組織的に演説を妨害される方もいる」と発言。御用マスコミもその発言に倣って、安倍首相に向けられる声を“組織的ヤジ”などと表現している。

 御用メディアも同様だ。フジサンケイグループのサンケイスポーツは9日付けの記事で〈安倍首相の街頭演説に対する組織的とみられる妨害〉と記載。さらに産経新聞は「首相演説で妨害相次ぐ 聴衆に被害 公選法に抵触も」と題した記事を掲載し(13日Web版)、安倍首相の街頭演説の情報が〈「#会いに行ける国難」として拡散されて〉いると指摘。安倍首相に対するヤジについて、こう記述している

〈行き過ぎた集団によるやじなどは公職選挙法に違反し、刑事罰の対象となる可能性もある〉
〈公選法は演説妨害を「選挙の自由妨害」として刑事罰の対象にする。個人のやじは該当しないとみられるが、集団で演説が聞き取れないほどの妨害行為を行った場合は同法が適用される可能性がある〉

 産経は「組織的」などというが、いまおこなわれている「安倍やめろ」のヤジは、「組織的」なものではまったくない。

 JR札幌駅前の男性も、やはり札幌で警察に排除された女性も、いずれもひとりで声をあげていたと見られるし、今月7日におこなわれた東京・JR中野駅前での安倍首相街頭演説でも、声をあげている人の姿は多く見られたが、あらゆる場所で個別にヤジが起こっていた印象だ。横断幕を掲げた人たちでも多くて十数人~数人規模だった。

 産経は「#会いに行ける国難」というハッシュタグで集まった市民まで「組織」扱いして「刑事罰の対象になる」などといっており、ここまでくると、いいがかりとしかいいようがない。

●違法排除の現場にはマスコミが多数いたのに、動画が拡散するまでどこも報道せず

 この産経の記事の主張についても、前述の芳永弁護士はこう疑問を呈する。

「そもそも組織的だからといって、ただちに不正ということにはならないでしょう。安倍首相に野次を飛ばしたり、抗議をしたりする人たちが多数いたとしても、それだけでは、公職選挙法225条2号違反にはならない。
 判例には〈他の野次発言者と相呼応し、一般聴衆がその演説を聞き取り難くなるほど執拗に自らも野次発言あるいは質問などをなし、一時演説を中止するも止むなきに至らしめるがごときは、この公職選挙法225条に該当する〉とありますから、聞き取りにくい人が若干いたとしても、それだけでは要件に足りないと考えるべきです。刑事犯罪にならないようなことを、公職選挙法225条で引っ掛けようというのは本末転倒でしょう」

 ようするに、産経などの御用メディアは、正当な表現行為である市民による批判の声を封じ込めるため、そして強制排除を正当化するために、「組織的な演説妨害」「刑事罰の対象になる」などと脅しているのだ。

 しかも、今回の札幌のケースを見ると、それは脅しでなく、現実になっている。

 それは、警察による違法な市民の強制排除だけではない。もうひとつ深刻なのは、この現場にはマスコミの取材陣がおり、声をあげた市民が強制排除される場面を目撃していた、ということだ。つまり、記者たちは市民を排除する警察を誰も止めなかったどころか、そのことを報道さえしなかった。動画が拡散されるまではどのメディアも記事にしなかった。

 現役の総理大臣へのヤジも許されず、それが報道もされない世界──。もはやこの国の民主主義は、政権に抗議する市民に警官が弾圧を繰り返すロシアと同じようなレベルといっていいだろう。
(編集部)

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