いよいよ今年もフィギュアシーズンが始まった。高橋大輔、浅田真央らスター選手が一気に抜けたなか、フィギュアヲタたちの注目を一身に集めるのがソチ五輪金メダリストの羽生結弦だ。
そんな羽生くん初の写真集『YUZURU 羽生結弦写真集』(集英社)が先日発売されがのだが、こちらもバカ売れしているという。10代からアラサー、アラフォー、フィギュアオタクに腐女子、はては男性まで魅了してしまう彼の魅力とは、一体どんなところにあるのだろうか。
まず羽生といえば、そのかわいらしさやふと見せる無邪気さ。そんな少年ぽい一面から"ショタ"と言われることもあるが、ガチ勢からしてみれば身長170㎝を超える19歳の男性がショタなんてありえないと一部では猛抗議する声もあがっていた。しかし、この写真集では羽生の正真正銘のショタ時代からその成長ぶりを辿ることができる。まだ12歳だった2007年から、今夏まで7年の軌跡が収められているのだ。
ノービス(9~13歳のクラス)時代は、プルシェンコに憧れてマッシュルームカットにしていた羽生。その髪型と赤やオレンジの羽がついたかわいい衣装も相まってか、2008年当時中1の羽生は、女の子のような中性的な顔とあどけない笑顔が印象的だ。ショタ好きはもちろん、かわいいものが大好きな女子も、当時の写真はきっと見逃せないところだろう。そこから徐々に成長し、2014年に撮影されたNHK復興支援ソング「花は咲く~羽生結弦Ver.~」では、かなり大人びた姿を見せている。
羽生のかわいさは国内人気にとどまらない。海外でも「カワイイ!」と話題になっている。ロシアではかわいいものにつける「~シカ」をつけ、「ユズーニャ・ハニューシカ」という愛称で親しまれているという。羽生のかわいらしさは、なにも中性的な容姿やプーさんが好きといった乙女趣味だけではない。
たとえば、カメラを向けられた際に自分の両頬を手の甲で押さえる仕草。2009年の『ジュニアグランプリファイナル』で結果を聞き思わず両手で顔を覆う仕草。またリンクの上で足を投げ出してペタンと座っている様はテディベアのよう。そして、パーカー姿のオフショットでは片方だけ萌え袖――。どんなときでもさり気なく、抜かりなく母性本能をくすぐるかわいらしさを発揮しているのだ。
また、そのかわいらしさと並んで多くの人が羽生の魅力として挙げるのが、彼のもつ王子様的要素だろう。"王子様系男子"なる呼称も定着し、女子高生からアラサーまでもがハマっている。たしかに、白く細長い手足に超小顔という2次元から抜け出たかのようなスタイル、仕草、表情には、王子様と呼ぶにふさわしいものがある。それに、所作には、宝塚の男役にも通じるような、女性が理想とするカッコよさと美しさが具現化されている。写真集でも、そのしなやかな身体を活かしたレイバックイナバウアーやドーナツスピンをじっくり堪能することもできる。そして、今年6月にソチ五輪の凱旋公演として仙台で行われたアイスショーで、暗闇にスポットライトが当たるなか、ジーパンと黒のTシャツというラフな格好で、笑顔で軽やかにステップを踏んでいる羽生。さらに、2013年のスケートカナダでの、感情のこもった真剣なまなざしで指先まで意識された手を前方に差しのべる仕草。2012年のグランプリファイナルで頭の後ろと腰に手を当て、爽やかな笑顔でポーズを決める姿などは、ザ・王子様といった感じで、見るものをうっとりさせる。かっこよさや男らしさもあるのだが、決して男臭くならないところも彼が王子様と呼ばれる所以だろう。
一方、腐女子やオタク的な楽しみ方をしたいなら、コーチであるブライアン・オーサーとのツーショットも外せない。
ただ、ほかの男子選手との絡みはないため、腐女子的には少々物足りないかと思いきや、彼女たちはまったく違う点で楽しんでいるよう。普段はニコニコした細い目が印象的な羽生。しかし、氷上ではスイッチが入るのか、時折見せる鋭い目つきはドSっぽくて、見ているだけでゾクゾクさせられると評判だが、ネットではその目つきがある人物に似ていると話題になっているのだ。それが、腐女子にも大人気の『進撃の巨人』(講談社)に登場するリヴァイ兵長。一時期、羽生は『新世紀エヴァンゲリオン』(テレビ東京)の碇シンジにも似ていると話題になったが、彼女たちはこういった2次元的要素でも楽しんでいるらしい。
このように、子どもと大人、かわいらしさとかっこよさ、2次元と3次元といった境目を行ったり来たりしながら絶妙なバランスを保っているところこそ、彼が持つ唯一無二の魅力なのかもしれない。
(田口いなす)