先日、ニュースサイトで元東スポ記者がAVデビューしたことを報じられ、話題になっている。元パ・リーグの担当をしていた野球記者で、球界でも話題になるくらいの美人だったらしいが、2年ほどで退社。
メディア的には日経元記者の鈴木涼美に続いて、という感じで話題にしたということのようだが、AVの垣根がますます低くなっていることは間違いないだろう。
いや、それどころか、AVは一部で「憧れの職業」になっているらしい。数年前、女子高生の「憧れの職業」ランキングでキャバクラ嬢が堂々の1位に輝き、世間を驚かせたことがあったが、それ以上にびっくりする事象が、今、起こっているらしい。それは、「AV女優になりたいのになれない」と女性たちが嘆いているというのだ。
その現実を浮き彫りにしているのが、「週刊プレイボーイ」(集英社)11月17日号に掲載された「AV女優になれなかった女たち」という座談会。この記事によれば、どうやら近年、AV女優志望者が増加しており、スカウトではなく自ら面接に出向く人まで登場。それでもAV女優になれなかった女性3名が、座談会を行っているのだ。
この座談会に参加しているのは、Hカップの21歳女子大生・ゆきさんと、自称"貧乏育ちの元グラドル"という27歳のみなみさん、経験人数100人以上という23歳フリーター・えりさんの3人。彼女たちは、いったいどんな理由でAV女優を目指し、そしてなれなかったのだろうか?
「楽してお金欲しかったからです。自分の女としての武器はHカップの巨乳しかないってわかってたんで裸になることも全然抵抗ありませんでした。キャバの体験もしたんですけど、うまくしゃべれませんでしたし」
そう答えているのは、ゆきさん。
もともとグラビアアイドルとして活動していたみなみさんは、「グラビアでも、撮影会とかですごく面積の小さい水着を着せられて、動くと普通にポロリとかしちゃうし、もうこれなら脱いでAV出たほうが有名になれるだろって」と思い、AV女優を視野に入れることに。「あのグラドルがAVデビュー」的な扱いを期待し新たな道にかけるも、しかしマネージャーが持ってきたのは企画モノだった。そのことに納得できずAVの道へは進まなかったらしい。
一方、AVで通行人や学園モノの生徒役といったエキストラのバイトもしていたえりさんは、前述したふたりの動機とはまた違う。彼女は最近増えているAV女優という存在に憧れている女性の1人だ。直接現場を見てきた彼女は、「抵抗どころか、むしろプロの方に撮っていただいて感謝って感覚。(中略)スタッフからお姫さま扱いされてる女優さんがうらやましかったりもした」と語っている。
このように、AV女優になりたくてもなれなかった女性たちは、この3人以外にも数多くいるはずだ。AV女優を獲得するために渋谷や歌舞伎町といった繁華街で熾烈なスカウト合戦が行われたのも、いまや昔の話。──しかし、なぜこのように状態に陥っているのだろうか。
まず原因のひとつに挙げられるのは、AV女優の"地位向上"だ。飯島愛が先鞭をつけた"AV女優からタレントへの転身"というルートはいまも引き継がれ、NHKの大河ドラマ『龍馬伝』にも出演したみひろや、最近では高専出身という"リケジョ"の一面を活かし、トヨタが運営するWebサイトでも連載をもつ紗倉まななど、多方面で活躍するAV女優は数多い。さらに、まだ若い元AKBメンバーさえAVにぞくぞくと参入する現状は、「芸能界で落ちぶれた女優・タレントの行き着く場所」という過去のイメージを塗り替え、「一旗揚げる場所」へと刷新されているのかもしれない。芸能界へのステップアップのために。あるいは、タレントとしてくすぶっていた立場から一念発起して......。
だが、この現象が80~00年代初頭までなら来る者拒まずでAV業界も大いに受け入れただろう。問題は、女性たちがAV女優になりたがっても、肝心のAVの売り上げが伸び悩み、業界全体が落ち込んでいることだ。
AV業界が拡大してきたことの裏には、ビデオデッキの普及がある。しかし、いまはそれに代わってネットが台頭し、そのことでDVDやBlu-rayの売上は伸び悩んでいる。実際、TSUTAYAをメインにDVDなどを供給する販売会社・MPDの2014年3月期決算報告を見ると、「AVセル」が329億4500万円と前期よりも15.8%も減少。本が1.1%増、ゲームが3.8%減、レンタルが4.2%減であることを考えると、AVのセル販売の下落具合がずば抜けていることがわかるだろう。
さらに、低価格志向によるコストの切り詰めも厳しい。そのしわ寄せは、もちろんギャラにも波及。昔は単体女優であれば1本あたり1000万円のギャラが支払われることもザラにあったが、いまでは100万円が相場。企画モノの女優であれば2~3万円となり、日給でいえば風俗嬢のほうが高額になる場合もある。
このように、完全に需要と供給のバランスが偏っているAV業界。
(島原らん)