「前向きキラキラ系」がはまる! アムウェイ創業者が語る"ブラック企業の論理"

「前向きキラキラ系」がはまる! アムウェイ創業者が語る"ブラック企業の論理"
『Simply Rich アムウェイ共同創業者の人生と教訓』(日刊工業新聞社)

 アムウェイが絶好調だ。日本での2013年度売上高は969億6800万円(前年比 3.4%増の2年連続成長)で、世界合計ともなると118億ドル(13年度)と新記録を達成している。同社が公式HPにて発表している会員数推移のデータによると、「ディストリビューター」と呼ばれる販売員は現在公称70万5000人。61万5000人だった04年頃から右肩上がりに推移しているのだ。

 しかし、アムウェイといえば、"悪印象"を持つ読者も少なくないだろう。同社は、会費を支払って登録した販売員「ディストリビューター」を介して新たな販売員や会員の獲得や商品の販促を行い、その売り上げからボーナスをバックしていく連鎖販売取引(マルチレベル・マーケティング、ネットワークビジネス)、いわゆる「マルチ商法」をビジネスモデルとしており、日本にその言葉を広めた外資系企業なのだ。

 日本でブームになったのは90年代半ば頃、同社の売り上げがピークに達したとされる1996年度には、2121億9500万円もの公称売上高を発表したほどだ。99年には東京・渋谷に本社ビルが完成。「成功者」と呼ばれるセレブ・ディストリビューターが話題となり、彼らの生活に憧れる若者たちをどんどん取り込んだ。

 しかし、その成果報酬制度のために、同僚や友人にかたっぱしから声をかけるなど強引な勧誘活動が横行。売り上げ目標や、ノルマを達成するために自ら商品を買い込んで借金をする者も続出し、97年には国民生活センターより「苦情・相談件数が4年連続で1000件を超えている」と報告され、社会問題化した過去がある。

 現在、当時のことを知らない20代の若者たち、なかでも、若い女性の間で、再びアムウェイが広まりつつある。野菜ソムリエに美容師、エステティシャン、ヨガ講師......美容や健康の環境志向に意識が高く、かつオシャレな、いわゆる"キラキラ系"とされる職業の女性の間でアムウェイが広がっているという。

 こうした人々をさらに洗脳するようなバイブルが出版された。アムウェイの共同創業者リッチ・デヴォスによる『Simply Rich』(日刊工業新聞社)だ。

「アムウェイは、他人を助けることで成り立つビジネスである。化粧品の『アーティストリー』、サプリメントの『ニュートリライト』、そのほか多くの商品を扱っており、アムウェイビジネスではそれらの製品から売り上げを得る。アムウェイビジネスの本質は、人々が豊かで幸せな生活を送る手助けをする点にある」
「マルチレベル・マーケティングは、それまでには存在していない方式だ。(略)このビジネスは資金がゼロに近い状態からスタートして多くの売り上げを得られる、世界で数少ないチャンスの一つということである」
「今や、そうしたディストリビューターのうち数百人が億万長者となり、数千人がビジネスオーナーとして成功し、数十万人が家計の足しになる売り上げを得ている。(略)その原点といえば、2人の若者が人々の潜在能力、人間の精神には『より良いもの』を求める気持ちがもともと備わっていることに気づいたという、そんなシンプルなことなのだ」

 などと、「豊かで幸せな生活」「あなたならできる。私はあなたのことを信じている!」とポジティブな発言が満載なのだ。

 だが、同書で語られるアムウェイの歴史からはポジティブの裏の"ブラック"ともいうべき思想が垣間見れる。

 1959年にアメリカ・ミシガン州でリッチ・デヴォスとジェイ・ヴァン・アンデルによって創業したアムウェイだが、2人はもともとはカリフォルニアのサプリメント(栄養補給食品)会社・ニュートリライト社のディストリビューターだった。このニュートリライトがマルチレベル・マーケティングの先駆けだ。

 しかし、48年に米・食品医薬局(FDA)がニュートリライト社のパンフレットの記述の多くが「誇大広告」だと告発し、ニュートリライト社の経営が失速したために新規ビジネスとしてアムウェイを立ち上げたのだ(のちにアムウェイがニュートリライト社を買収しサプリメント事業として展開することになる)。

 ニュートリライト社がサプリメント中心だったことに対して、アムウェイは多目的洗剤L.O.C.を主力商品としてスタートする。しかし、販売面では、ニュートリライト社のディストリビューターを使うことによって急成長が可能になった。なお、「アムウェイ」という社名は「アメリカン・ウェイ」が由来だ。「フリーエンタープライズ(自由な起業家精神)による体制こそが、アメリカの経済をずっと動かしてきた原動力であり、その中でビジネスを経営する自由ほどアメリカを象徴する事象は他にはない」と考えたためだ。

 急成長するにつれ、社会からの視線も厳しさを増す。1975年、連邦取引委員会(FTC)が告発。「アムウェイのセールスプランは『ディストリビューターを増やし続けることで成り立つピラミッド型ディストリビューター方式』と主張し、そうした方式は『必ず失敗する』もので、『詐欺的な行為である可能性が看過できないほど高い』と断じた」のだ。

 ところが、2年半かけて裁判で争った末、「報酬が新規会員の勧誘ではなく、最終消費者の製品販売のみに基づいていたこと」から「ピラミッド商法ではない」との判決を得て、アムウェイのセールスプランは合法的とのお墨付きを得ることになった。

 この背景には、アムウェイの共同創業者リッチ・デヴォスが政治的に働きかけを行なったことも大きいようだ。アメリカン・ウェイを体現する共和党を積極的に支援。「フリーエンタープライズ体制」のレーガン政権時代には共和党全国委員会の財務会長に任命されたほどの関係だからだ。その後、日本アムウェイは10番目の拠点として1979年に設立され、日本でも急成長をとげる。

 しかし、その後も「アムウェイに騙された」と元ディストリビューターからの批判は続くことになる。こうした批判に対し、共同創業者リッチ・デヴォスは次のように反論する。

「アムウェイビジネスに挑戦して失敗した人たちもたくさんいるが、そうした人々も自分自身に正直になれば、製品販売やスポンサー活動など必要な努力をしていなかったと認めざるをえないだろう。ビジネスを興すには、一生懸命に長時間働いて、障害があってもくじけず、前向きな姿勢を貫くことが必要だ。こうした素質を最初から持たない、もしくは身につけることができない人たちは、別の人生を模索した方がよい。私には、アムウェイに挑戦して自分向きではないと判断した人たちを批判するつもりはまったくない。しかし、アムウェイを批判する前に、自分の行動に責任を持ってほしいと思う」

 つまり、成功した人以外は「必要な努力をしていなかった」。失敗した責任は自分で負えという自己責任論を展開するのだ。

 こうした自己責任論は現在のブラック企業が氾濫する日本でもよく聞かれる"ブラック論理"だ。

 アムウェイ本社にとってはディストリビューターにできるだけ多く商品在庫を仕入れてもらうことが利益の源泉。アムウェイ商品を大量仕入れしてくれるディストリビューターが多ければ多いほど望ましい。そのためには「前向きな姿勢」をもたせることが必要だ。「前向きな姿勢」で仕入れさせるだけ仕入れさせて、返品期限をすぎたら返品を許さない。それがアムウェイ商法なのである。

 "キラキラ系"とされる職業は個人事業主が多く、常に前向きな姿勢を求められる。キラキラ系はアムウェイビジネスの格好のカモになっているのもこうした背景があるからなのかもしれない。
(小石川シンイチ)

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