「女柔道家VSレイプ魔」「全裸バレエ」「あの伝説の本物空手チャンピオンがデビュー!」......。

 AVのいちジャンルとして確立しているアスリートモノ。

プロ顔負けの技を魅せつつ、最終的には犯される彼女たちは、まさか"本物"のはずがなかった。たいていは営業時の面接で、特技欄を埋めたスポーツ名をチェックされ、「じゃあ柔道モノできる?」「バレエ歴10年なんだ、プロレベルじゃん」「県大会出たことあるんだ? 世界チャンピオンってことにしちゃおうか、どうせ分からないし」なんてやりとりがあるかは分からないが、とにかく"設定"を被せられてデビューする、企画物女優たちである。

 しかし、今年1月1日に「MUTEKI」からAVデビューしたアスリート「シンクロ元日本代表・片平あかね」は、"本物"だった。

 昨年末から「あのシンクロ日本代表選手が脱いだ!」など、男性週刊誌の袋とじでヌードグラビアを披露すると、その"本物"の風格漂わせるゴージャスボディが瞬く間に話題となる。

 当然、ネットを中心に正体探りがスタートするが、"本物"だからこそすぐに発覚してしまう。本名で検索すると、「世界水泳選手権日本代表」として「出身県知事を表敬訪問」したなどの情報が簡単に発掘できるレベルだ。

 アスリートとして超有望だった彼女がなぜ、AVの世界に足を踏み入れたのか。インタビューで彼女は、こう答えている。

「世界大会という大舞台を経験したものの、その後、オリンピックへの出場が果たせなかったこともあり、進むべき道を見いだせずにいたんです。(中略)容姿、技量を含めコンプレックスの塊でした。競技をやればやるほど周囲と自分を比較してしまい、どんどん自分を嫌いになってゆく......」(「週刊現代」14年12月27日号)

 引退を決意した彼女が見つけた転職先は、普通のOLだった。

「何の不満もない生活を送ってましたが、平穏すぎる毎日にどこか満たされない自分がいて」(「日刊SPA!」15年1月17日付け)

 同時に蓄積されたのは、テレビで活躍する先輩アスリートたちへの羨望だったようだ。


「水泳界を引退した後に、タレント活動をされている先輩をうらやましく思っていました」(「週刊現代」)
「もともと『人と違ったことがしたい』『目立ちたい』という思いでシンクロを続けてきたから、その気持ちは強まるばかり」(「日刊SPA!」)

 そんなとき、タイミングを見計らったように知人のつてで現れた"芸能関係者"の話を聞き、彼女はOLを辞める決断をしたという。いざ芸能界デビュー、と思いきや、そうではなかった。なぜか、

「自分にあるものといえば、シンクロで鍛えた肉体です。だから、それを披露するということは、わたしにとって自然に出た答えだったと思います」(「週刊現代」)

 と、すんなりとヌードを決意したかのような心情が描かれている。さらにAVデビューへの決意では、

「もちろん葛藤がありました。正直なところ、AVには以前から興味があったし、セックスも興味がないほうではないので(笑)」(「週刊現代」)
「私の性癖なんですけど、恥ずかしい思いをしたいっていうのがどこかにあって。(中略)19歳のとき初めて『気持ちいい』と感じた男性とのセックスは、『足がすごく開いてエロい女だな』とか(中略)淫語をかけられながらバックでガンガン突かれて、凄く濡れちゃったんです。(中略)『AVの現場だったら、その彼よりうまい男優さんから、みんなが見てる前で、もっと虐められる』って思うとたまらなくなって。その好奇心が決め手になったのかなと」(「日刊SPA!」)

 と、男性読者へのサービス精神が溢れる。

 対照的なのが、日本代表選手時代に抱えたコンプレックスについての話ぶり。対照的な仄暗さを漂わせているのだ。

「みんなすごい子ばかりでした。
(中略)だからわたしはどこがいいんだろう、とずっと思い続けていました。ましてや海外のトップ選手なんて観たら、落ち込むことだらけなんです。身長、美貌、身のこなし......。演技だけじゃなく、プライベートでも自信満々で、もう水に入る前から精神的に完敗でした」(「週刊現代」)

 そんな話のあとで語る、「今後やってみたいプレイ」が、「襲われる感じのSEX。襲われながら、何度も何度も果ててみたい(笑)」(「週刊現代」)なのだから、自罰的な自暴自棄感も否めない。

 しかし彼女は、「誰も真似のできないことをやる。そうやって、いつかはオンリーワンになりたい」(「週刊現代」)と、シンクロ時代に成就出来なかった想いを、AVで昇華しようとしている。

 とあるAVプロ関係者が言う。

「挫折を経験したアスリートほど、入り込む余地のある人間はいない」
 
 芸能人が次々とデビューしてしまい、もはや「国民的アイドルはAV女優製造工場」とも言われ、一段落した感すら漂う芸能人モノ。次にAV関係者たちが狙っているのは、本物アスリートなのかもしれない。
(羽屋川ふみ)

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