現在、TBS金曜ドラマ『ウロボロス~この愛こそ、正義。』に出演中の小栗旬。
小栗の産後うつについて報じた「女性自身」(光文社)によれば、小栗は最近、俳優仲間に妻・山田優の"浪費癖"を愚痴っているのだという。帰宅するたびに増えていくブランドものの服やバッグ......汗水流して働いた自分のお金がそうした品々に変わっていくことを小栗は我慢している、ということらしい。だが、俳優として順風満帆な小栗がこれくらいのことで悩むものなのか?と疑問も湧いてくる。そこで「女性自身」は、小栗の産後うつ=パタニティ・ブルー説を唱えているのだ。
パタニティ・ブルーというのは、その名の通りマタニティ・ブルーからつくられた男性の不安定状態を指す言葉。いわば"男性の産後うつ"といえるものだ。ただ、女性の場合は、産後のホルモンバランスの乱れもあり、うつ状態が引き起こされやすいといわれているから理解できるものの、男性の場合は身体の変調は起こらないはず。「なのに、産後うつ?」と思う人もいるだろう。しかし、じつのところ、男性にも産後うつにかかる人は意外と多いらしい。
「ニューズウィーク」(CCCメディアハウス)2009年4月29日号には、アメリカでは「毎日1000人以上の父親が産後鬱になっている」というレポートが掲載されている。しかもこれ、「3000人というデータもあり、そうであれば発症率は女性とほぼ同じ25%ということになる」というから、かなりの高確率である。
この記事のなかで取材に応じているのは、カリフォルニア州バークレーの心理療法士であり、男性の産後うつ専門家だというウィル・コートニー氏。専門家がすでに存在すること自体、日本ではまだ信じられないが、コートニー氏いわく、産後うつにかかりやすい男性は「鬱の病歴がある人や妻との関係が良好でない人、父親になることを負担に感じている人」。経済的な不安や子育てによる睡眠不足など、さまざまな要因が考えられているが、もっとも大きな引き金は、妻が産後うつになること。「妻が発症すると夫も半数が発症する」というが、これではまさに負のスパイラルだ。
また、妻が出産したことで男性の身体に変調はないはず、とさっき書いたが、これもコートニー氏によると、「妻の出産に伴い、夫のホルモンバランスも変化する」というから驚きだ。なんでも「(男性ホルモンの)テストステロン値が下がり、(女性ホルモンの)エストロゲン値が上がる」らしく、その原因はいまだ不明。ただ、「進化生物学では、人間は出産後に男が妻子のそばにとどまるようプログラムされていると説明される」と解説している。
さらにやっかいなのは、男性の場合"うつには見えない行動がうつの兆候"であるという点。たとえば、「長時間残業する、すぐカッとなる、ランチでビールを飲む、オフィスを抜け出して不倫したかと思うと、急いで妻の元に帰る」といったことも「鬱の兆候に該当する」というのだ。不倫をうつのせいにされたら妻としてはやるせないが、「不倫に限らず、ギャンブルや散財、ふらっと旅に出る」なども、男性の産後うつには見られる衝動的な行動らしい。
ちなみに、男性の産後うつでは、「赤ん坊が手の付けられないほど泣くことが耐えられないという訴え」が多い。というのも、「男性は自分が無力な気持ちになることに慣れていない」から。泣く赤ちゃんに何もできない無力な自分に苛立つ......その結果、赤ちゃんに手をあげてしまいそうになるケースもある。女性の産後うつでも虐待につながることが指摘されているが、男性にも同じことがいえそうだ。
女性にとって産後は、もっとも夫が頼りになる存在であることにちがいなく、夫の支えを期待している。それが夫のプレッシャーになることもあるかもしれないが、妻がひとり慣れない子育てで精神的に追い込まれれば、ますます夫婦間の溝は深くなり、夫もうつを抱える状態に陥る可能性もある。そうならないためにも、不安を解消するべく互いに話し合い、経済的不安があるなら家計プランを見直したり、いかに子育てを分担するかを決めるなど、ストレスの要因を減らすことが大事だ。
そういう意味でいえば、パタニティ・ブルーを疑われている小栗よりも、ブランドものを買い漁っているといわれる山田優のほうが強いストレスを抱えているようにも思えてくる。ふたりが産後うつでなければいいのだが......。
(大方 草)