この国のマスコミやネットはいったいどういうリテラシーをしているのか。吉村洋文大阪府知事と大村秀章愛知県知事のバトルのことだ。
大村知事が「東京と大阪で医療崩壊が起きている」と指摘したことをめぐって繰り広げられたこの応酬、多くのメディアが“知事バトル”などと取り上げた。しかし、ほとんどは大村知事の発言を“言いがかり”“余計な発言”などと批判し、吉村知事については“さすが冷静な反論、“論争は吉村さんの圧勝“などと持ち上げるものだった。
しかし、ほんとうにそうなのか。改めてバトルの経緯を検証してみたところ、まったく違う実態が見えてきた。
まず、メディアでは「大村知事が先に吉村知事に絡んだ」などと批判されているが、大村知事は別に、吉村知事に絡んだわけではない。定例会見で、第二波が来たとき医療崩壊を絶対に避ける必要があると主張するなかで、「病院に入れないということと、それから救急を断るという、この二つはやっぱり医療崩壊ですよ。それが東京と大阪で起きているわけですから、それはですね、よその国の話ではないんですね」と発言しただけだ。
しかも、その内容はしごく当然のものだ。東京と大阪では実際に救急受け入れを停止する病院が複数にのぼり、明らかに通常の医療や救急医療に支障が出ていた。第二波が来たとき愛知がこうした事態に陥ることのない体制を整えたいと表明するのは、県のトップとしては、むしろ評価すべき態度と言っていい。また、大村知事は別の日の会見で、「愛知県は病院で受け入れ困難だった感染者数や救急件数などを情報公開しており、全国で同様の検証が必要」と語っていたが、これも、正論だろう。