いや、そもそも菅政権は「説明拒否や嘘をついたら刑事罰」などということを言える立場にない。15日放送『ひるおび!』(TBS)では、片山善博・前鳥取県知事が「国会で118回も嘘ついた人がいるじゃないですか。何のお咎めもないじゃないですか」「上の人がそんな自堕落なことをしていて、弱い庶民がちょっと嘘をついたら刑事罰なんていうのは、法治国家としてバランスを欠いていると私は思います」と安倍晋三前首相の問題を取り上げて一刀両断していたが、まさしくそのとおりだ。
入院勧告に従わない患者に対する刑事罰も同じだ。この1年、さんざん医療提供体制の不備が指摘されながら強化してこなかった安倍・菅政権による失策のツケが回り、その結果、いまは入院するべき状態の患者が入院できず、入院待機中に死亡するという事例が相次いでおこっている。政府の怠慢の末に見殺しになったと言ってもいい状況だが、いまやるべきは「入院を拒否すれば刑事罰」などということではなく、必要な人が必要な医療を受けられる正常な状況をつくることなのは言うまでもない。
しかし、この医療体制の強化においても、それを放置してきた菅首相は強権性を剥き出しにしている。病床確保のために、医療機関への協力要請を現行の「要請」から「勧告」に強め、応じない医療機関名を厚労相や都道府県知事が公表できるようにするというのである。
最近では「コロナ患者を受け入れない民間病院が悪い」「医療逼迫は民間病院のせい」と民間病院が攻撃に晒されているが、病床不足の現状は民間病院の責任ではまったくなく、すべて国の失策にほかならない。実際、田村憲久厚労相も「(病床の確保を)地域医療計画に盛り込み、準備、訓練も含めてしておくべきだった」と口にしている。