日本維新の会HPより


 こんな横暴が許されるわけがない。吉村洋文知事・松井一郎市長の維新コンビが暴走を繰り広げている大阪カジノに対し、市民団体がIR誘致の賛否を問う住民投票の実施を求めて署名運動を展開し、6日には約21万筆の署名を府内の各選挙管理委員会に提出した。

ところが、吉村知事は同日の囲み会見で、「住民投票をおこなう必要はないと考えている」と言い、住民投票の実施を否定する考えをあらわにしたのだ。

 その上、「住民投票をおこなう必要はない」と述べた吉村知事は、つづけて「反対派の意見も聞いて進めていくことが重要」「反対派の方の意見の中心的なところは依存症対策。この依存症対策について正面から対応していく」などと言い出したのだ。

 ふざけるのもいい加減にしろ、という話だ。もちろん依存症対策も大きな問題だが、松井市長や吉村知事は「カジノに税金は一切使わない」「公で金を出すものではない」と説明してきたのに、カジノ建設予定地である夢洲の土壌汚染対策にかかる790億円を大阪市が全額公金で負担することを決定するなど、市民に対する約束破りを平然としてきた。それだけではなく、松井市長や吉村知事が喧伝する年間来訪者数や売り上げなどの試算の甘さも指摘されてきた。こうした疑義から住民投票を実施すべきという声が高まっているというのに、吉村知事は依存症対策だけに問題を矮小化したのだ。

 本サイトで既報のとおり(https://lite-ra.com/2022/05/post-6197.html)、維新はこれまで、「大阪都構想」の賛否を問う住民投票について「究極の民主主義」だと言い張り、2度にわたって住民投票を強行してきた。にもかかわらず、府民の民意がしっかりと示されたIR誘致の賛否を問う住民投票を拒絶しようとする吉村知事。とんだ二枚舌、府民の民意の軽視としか言いようがないだろう。

 だが、大阪カジノをめぐっては、ここにきてさらなる重大疑惑が持ち上がっている。それは、大阪府・市の特別顧問として夢洲の開発を取り仕切る和泉洋人・元首相秘書官の、カジノ事業者出資企業との癒着関係だ。

 和泉元首相補佐官といえば国交省出身で、安倍・菅政権時代には首相補佐官として沖縄・辺野古米軍新基地建設の埋め立て工事や加計学園問題などで暗躍、露骨な圧力や恫喝を繰り返して行政を歪めてきた人物だ。さらに、2020年には厚労省の大坪寛子・大臣官房審議官と公費を使った不倫出張疑惑が浮上、“コネクティングルーム不倫”として大きな批判を浴びた。また、横浜カジノ参入でも菅義偉・前首相の右腕となってきた。和泉氏はその後、岸田政権発足後の今年10月に首相補佐官を退任したが、大阪府と大阪市は今年1月1日付でこの和泉氏を大阪府・市の特別顧問に就任させたのだ。

 この人事については当初から菅前首相と近い松井市長の意向が強く働いたものだと見られてきたが、松井市長は和泉氏の抜擢を「とくに夢洲の街づくりに能力を発揮してほしい」と説明。また、和泉氏は「無報酬ボランティア」だと強調し、〈大阪府大阪市とすれば、働いて頂く限りは他の特別顧問同様の身分補償を提示しましたが、和泉さんから無報酬で手伝うと言って頂きました〉と説明していた。

 ところが、その和泉氏をめぐって、今年3月にある問題が発覚。というのも、松井市長が和泉氏を特別顧問に選任するよう指示した同時期に、和泉氏は少なくとも9社の大手住宅メーカーや建設、不動産関連の有名企業に月100万円のアドバイザリー契約を持ちかけていたと、ノンフィクション作家・森功氏が「週刊現代」(講談社)4月2・9日号でレポート。和泉氏がコンサルタント料を要求したことが判明している企業は、大和ハウス工業や積水ハウス、住友林業、ミサワホーム、三菱地所や三井不動産、住友不動産、東急不動産、森ビルで、年間1億円近い実入りとなる計算だ。

 しかし、さらなる驚きの事実が判明を「しんぶん赤旗 日曜版」6月6日号が報道。和泉氏とアドバイザリー契約を結んだ1社である大和ハウス工業は、なんと、大阪府・市がカジノ事業者に選定した米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスが合弁で設立した「大阪IR株式会社」に出資。大阪カジノにともなう夢洲周辺の商業施設やホテル、物流センターなどの開発に参入することを希望しているというのだ。

 しかも、大阪市は、原則非公開の秘密会議である「夢洲等まちづくり事業調整会議」への報告内容や資料を事前に和泉氏に提供。さらに、特別顧問として同会議のアドバイザーとなっているのだ。

 和泉氏が夢洲開発への参入を狙う大和ハウス工業とアドバイザリー契約を結び、かたや大阪市は和泉氏に開発にかんする行政の非公開情報まで提供していた──。ようするに、大阪カジノ関連企業と癒着関係にある和泉氏によって、またしても行政が歪められようとしているのは間違いないだろう。

 その上、和泉氏とアドバイザリー契約を結び、大阪カジノの利権を貪ろうとする企業は大和ハウス工業だけとはかぎらない。実際、赤旗の取材では、大阪IR株式会社に出資する企業22社のうち、オリックスや竹中工務店など14社は和泉氏との契約を否定したというが、日本MGMリゾーツや大成建設、大林組など7社は契約の有無について回答しなかったという。また、松井市長に対して、和泉氏と大和ハウス工業のアドバイザリー契約への認識を問うたところ、松井市長は回答せず。挙げ句、代わりに回答した大阪都市計画局は「当局としてはすべて承知していない」と述べたというのだ。

 大阪府・市の特別顧問で夢洲開発を取り仕切る和泉氏が、特定企業と癒着関係にあるというのに、「承知していない」とは無責任にもほどがあるが、ともかく、和泉氏が企業の代理人となり、公金をじゃぶじゃぶと使いまくることになるのは目に見えている。そして、それを松井市長は黙認しようとしているのだ。

 吉村知事は3月におこなわれた西宮市長選の街頭演説で「政治家に近い人にだけ利益がいくような昭和型の政治はやめましょう」などと言い放ったが、いったいどの口が、という話だろう。大阪カジノをめぐる和泉氏の特定企業癒着疑惑について、さらなる追及が必要だ。

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