EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイトより


 大阪・関西万博をめぐり、新たな事実が判明した。今年3月28日、ガス爆発事故が起こった万博の会場建設現場である夢洲1区において、昨年夏期の調査で1日約2トンものメタンガスが発生していたというのだ。

 この問題を報じたしんぶん赤旗25日付記事によると、大阪広域環境施設組合は冬と夏の年2回、メタンガスを排出するために夢洲1区に設置されている約80本のガス抜き管で調査を実施。〈冬期調査では2021年に1日に1293キログラムだったメタンガス発生量が24年には1546キログラムに、夏期調査では21年に1日に580キログラムだった発生量が23年には1989キログラムに急増〉しているという。

 そもそも夢洲1区は廃棄物最終処分場であり、万博協会も「ガス抜きのパイプが何十本かあるようなエリアなので基本的には飲食店舗も火気厳禁で募集している」と説明してきた。つまり裏を返せば、何らかの拍子で事故が起こっても不思議はない危険な場所なのだ。

 その上、今回、万博開催期間の真っ只中である夏期にはメタンガスの発生量が急増すると判明したとなれば、さらに危険の度合いは増したと言えよう。

 しかも、問題は「ガス爆発事故が発生するのでは」という懸念が高まったことだけではない。

もっとも恐ろしいのは、吉村洋文・大阪府知事や横山英幸・大阪市長および万博協会の“隠蔽体質”だ。

 実際、ここにきて、ガス爆発事故をめぐって吉村知事らや万博協会による情報隠蔽疑惑が数々持ち上がっている。

 前述したように、万博の建設工事現場でガス爆発事故が発生したのは3月28日10時55分ごろだったが、万博協会が事故の発生を公表したのは翌29日になってのこと。さらに、協会が被害状況や再発防止策を発表したのは、事故から2週間以上も経った4月19日だった。

 この事故の公表や被害説明の遅さ自体、杜撰極まりないが、じつは吉村知事らや万博協会はその後も、不都合な事実を隠蔽しつづけていた。それが、最近になって事実を認めた「消防への連絡の遅れ」と「天井の破損」の問題だ。

 じつは、5月初旬、ある市民が情報公開請求を通じて大阪市から開示された大阪市消防局此花消防署の記録を入手。なんとそこには、工事現場の整備を担っている鹿島・飛島建設共同企業体(JV)の鹿島建設設備課長代理が爆発事故の発生を消防署に連絡したのは、事故発生からなんと約4時間半後の15時半であることが記述されていたのだ。

 しかも、それまで万博協会は爆発事故について「コンクリート床と床点検口の破損」しか公表していなかったが、この消防記録には〈建延500㎡内において床面及び天井に破損があった〉とも記載。つまり、爆発により天井にまで被害が及んでいたというのに、それを吉村知事らや万博協会が隠していることまでもが判明したのである。

 市民の手によって明らかにされた「消防への連絡は事故から4時間半後」「天井の破損」というこれらの事実は、赤旗が5月16日付で報道。しかし、赤旗の問い合わせに対して万博協会は回答をおこなわなかった。

 ところが、同19日夜に朝日新聞デジタルが「消防への連絡は4時間半後」という問題を報じたところ、翌20日に大阪市と鹿島は慌てて事実を認めた。さらに、22日になってようやく、万博協会は天井10カ所、床下2カ所が損傷していた事実を公表したのだ。

 そもそも消防への連絡に4時間半も要したことは、事故が発生したことを隠そうと画策した結果、遅滞を招いたのではないかとも疑われる問題だ。天井の破損を隠していたのも、爆発事故を矮小化しようとした可能性が高い。つまり、吉村知事らや万博協会は、万博会場の安全性に疑義が向けられないようにするため、これらの情報を隠蔽してきたとしか考えられないだろう。

 だが、吉村知事や横山市長、万博協会は、この期に及んでも、責任を回避するために詭弁を弄しつづけているのだ。

 万博協会は天井の破損について、事故直後に鹿島側の担当者の立ち会いのもと大阪市消防局が現場を調べ、天井などの損傷も把握していたものの、その情報が鹿島内で共有されず、5月20日になって万博協会に報告がなされた、と説明。もしこの説明が事実だったとしても、以前より懸念されていたガス爆発事故が発生したというのに鹿島側に丸投げで万博協会が独自に調査をおこなっていない時点で、万博協会の管理・監督がまったく不十分だとしか言いようがない。

 しかし、吉村知事は、万博協会の管理の不徹底を問うこともなく、「事故が発生したときは速やかにすべての情報をぜひ協会に報告してもらいたい」とコメント。鹿島側に責任をなすりつけ、あたかも自分には何の責任もないかのように他人事を装ったのだ。

 さらに、消防への連絡が4時間半もかかったという問題についても、消防法違反にも問われかねない問題であるにもかかわらず、吉村知事は平然と「遅滞なく報告された」「とくに意図があったわけではないと思う」などと言い放ったのである。

 爆発事故が連続して起こる可能性だって考えられたというのに、4時間半も消防に連絡を怠ったことを「遅滞なく報告された」と言い張るとは呆れるほかないが、問題は天井の破損についてのコメントのほうだ。

吉村知事は鹿島側が報告を怠ったとして責任を事業者に被せていたが、本当に吉村知事は何も知らなかったのか。

 ガス爆発事故は大阪万博の準備や開催に影響を及ぼす可能性があり機運醸成にも水を差しかねない重大事であり、大阪市消防局による現場調査の結果は共有されていたと考えるほうが自然だ。ちなみに天井の破損が記載された消防記録は、4月8日付。少なくともこの時点で吉村知事は天井の破損について把握していたにもかかわらず、それを隠蔽しつづけてきたのではないか。

 しかも、事故当時の現場の写真は、大阪市の開示情報では大半が黒塗りにされており、万博協会も事故の全貌が把握できない写真しか公表していない。一方、れいわ新選組の大石あきこ議員は23日、〈このたび現場の方から「使ってください」と以下の写真を提供いただきました〉とし、破損した点検口側から撮影したと思われる写真を旧Twitterに投稿。

つまり、事故発生時の現場写真は存在するのに、いまだに大阪市や万博協会は隠蔽しているのである。

 ガス爆発事故の情報をひた隠しにする組織が、1日2トンものメタンガスが噴き出している会場で安全に万博を運営できるとは到底思えない。大阪万博をめぐっては、大阪府が20億円規模の事業費を使って子どもたちを万博に“動員”する計画を進めているが、教職員や保護者らから「ガス爆発の危険があるような場所に行かせるのは怖い」「避難計画もないのに不安」という声が続出。最近では交野市が市内13校の学校単位での参加を見送ると表明したばかりだが、吉村知事らや万博協会の事故対応を見れば、その選択はあまりにも正しいと言わざるを得ないだろう。