元ブレーンに批判された安倍首相(首相官邸HPより)


 ついに明日から消費税率が10%に引き上げられる。10月7日に発表される8月分の景気動向指数の基調判断では3・4月分につづいてもっとも悪い「悪化」に修正される可能性も指摘されているというのに、そんななかで増税を決行するなど、はっきり言って正気の沙汰ではない。

 もちろん、これは本サイトだけの主張ではない。安倍首相のブレーンとして第二次政権発足時から政策を支えてきた人物さえ主張していることなのだ。

 それは、前内閣官房参与である藤井聡・京都大学大学院教授。本サイトでも何度か取り上げてきたが、藤井教授は思想的にも右派で安倍首相の有力ブレーンのひとりと目されていたが、一方で消費増税反対を主張し、昨年末に内閣参与を実質「解任」に近いかたちで退職した。

 その藤井教授が、9月24日に放送された『大竹まこと ゴールデンラジオ』(文化放送)にゲスト出演。そこで、いかに消費税率10%への引き上げが日本経済に大打撃を与えるかを訴えたのだ。

「17年間5%で据え置かれた消費税率が、安倍さんがたったの5年で5%から10%に、倍にしてしまうと。これは一般の方が想像する何千万倍、何万倍もの悪影響を経済に及ぼす」

 安倍首相は増税によって社会保障を充実させると言って憚らないが、実際には消費増税と同時に明日から後期高齢者医療制度で低所得者に対する保険料軽減の特例措置を廃止する。消費税は低所得者であるほど負担が重くなる逆進性があるというのに、さらに追い打ちをかけようというのだ。

「社会保障の充実」など頭のなかにまったくないのに、どうして増税しようというのか。その理由を、藤井教授はこう述べる。

「何で消費税が上げられているかといえば理由は簡単で、法人税を引き下げたことによる空いた税金の穴埋めさせられているんです。

たとえば、大企業さんとか、有名な鉄鋼企業さんとかね、有名なインターネット企業さんとかね、何千億、何兆円と売り上げていらっしゃるような大企業が数百億円しか税金払ってないんですよ。完璧な税金対策をおこなってですね、利益を全部出さんようにして、税金をほとんど払っていない。こういったところの補填を、庶民がさせられている」

 そもそも、安倍首相はアベノミクスの成長戦略として法人税率をどんどん引き下げ、法人実効税率は第二次安倍政権発足時の37%から現在は29.74%まで減少しているが、その上、藤井教授の指摘どおり多くの大企業が法人税を優遇されているのだ。

 現に、ソフトバンクグループが2018年3月期の決算で連結純利益(国際会計基準)を1兆389億円も計上しながら、税務上の欠損金計上という合法的な“租税回避”をおこない、法人税がゼロ円だったことが発覚、ネット上でも話題となったが、日本ではこのほかにも研究開発減税などの租税特別措置によって多くの大企業が法人税を優遇されている。

 そうやって大企業が税の優遇を受け、2018年度の内部留保は463兆1308億円と安倍政権下で過去最高を更新しつづけている反面、その穴埋めをお年寄りや子どもにまで課せられる消費税で強いる──。まさに鬼畜の所業としか言いようがないが、さらに問題なのは、消費増税によって給与までもが減るという指摘だ。

 藤井教授は、増税によって消費が落ち込み、そして「サラリーマンの給料が下がる」と言う。

「確実に下がりますから。2014年の増税のときでもトータル6%下がっているんです、サラリーマン給与が。たった3%(消費税率を)上げるだけで。(消費税率を)3%上げると(給与が)倍下がるんですね。そうすると、みなさんの所得が減りますから、所得税収が下がるんです。

その結果、何が起こるかっていうと、長い目でみると、4~5年ぐらいでみると、『増税しいひんほうが税収高かったやんけ』と。そういうことに、いまですらなってるんです」

 それでなくても前回2014年の増税で受けた打撃から回復できず、賃金も上がっていない。実際、今年に入って7カ月連続で実質賃金が前年同月比でマイナスを記録しつづけている。いまおこなうべきは増税ではなく、むしろ減税なのだ。

「僕は、財政再建をしたいんだったら増税はしてはいかんというのが立案のコアだったんです。(中略)減税しなさい、と。いま5%にしたらですね、10%から5%にしたら、空前の消費ブームが起きます」
「僕らは100万円金払っても90万円分のモノしか手に入れられないけれど、5%に税金がなったら、100万円払ったら95万円分のお米とかパンとか服とか買えるんです。だから、ものすごく我々豊かになれますし、モノの予算が5%、値段が全部下がりますから、確実に景気は良くなるんです」

 増税ではなく減税を──。あきらかに日本経済を冷え込ませ、低所得者ほど生活が追い込まれるという、暴挙と呼ぶべき増税が実行されようとしているのに、一方、この間のメディアの報道はどうだったか。法人税の問題にも目をつむり、それどころか「プレミアム付商品券やポイント還元でどれだけお得か」といった話題に終始し、増税を既定路線として扱ってきた。

 しかし、本サイトでも報じたように、政府は「プレミアム付商品券」制度では、「確にゃん」なるゆるキャラを使って広報をおこなっているのだが、そのゆるキャラを使った広報に注ぎ込まれた血税はなんと14億円。同じくポイント還元制度でも約60億円もの宣伝広告費が計上されている(詳しくは過去記事参照→https://lite-ra.com/2019/09/post-4988.html)。

 こんな国民を馬鹿にした話もないが、この「ゆるキャラ広報に血税14億円」問題を取り上げたのは、本サイトが把握したかぎりでは9月26日放送の『ビビット』(TBS)のみ。メディアは相変わらず「駆け込み需要でお得なのは何か」だのといった話題ばかりだ。

 藤井教授は消費増税が実行される明日10月1日から「消費税減税運動をはじめる」と述べていたが、増税されたからといってそれを黙って受け入れる必要などない。この国の主権者は国民だ。減税のみならず消費税の廃止だって、国民の意志として政府に訴え、動かすことはいくらでもできる。メディアは国民に諦めろと言わんばかりに消費税批判を封じ込んでいるが、それに流されることはないのだ。

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