なぜ増加?大阪で「特区民泊」めぐる退去トラブル

 「令和8年3月末日までのご退去をお願い申し上げます」

 大阪市内のある賃貸マンションに突然貼られた文書。ここに住む女性Aさんは困惑の声をあげました。マンションを丸ごと「特区民泊に変える」と通知され、「2か月以内の退去」を要求されたというのです。

 「特区民泊」とはインバウンド増加に対して宿泊施設不足を解消するためにできた制度で、国が指定した地域では通常より緩和された営業要件で民泊を運営できます。

 全国の『特区民泊』の9割以上が集中している大阪市で、なぜこうしたトラブルが増えているのか?そして、Aさんは本当に退去しなくてはいけないのか?

「頭が真っ白」「理不尽」突然の退去要求…マンションが特区民泊に!?

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 (Aさん)「頭真っ白です。まさか自分にこんなことが起きるとは思っていませんでした」

 困惑の声を漏らすのは、大阪市内に住む女性・Aさんです。築30年以上の賃貸マンションに21年前から住んでいます。

 (Aさん)「日当たりもすごく良くて。隣の騒音とかもなかったので、とても住み心地が良かったです。とても気に入っていました」

住み慣れたマンションが『民泊』に!?“2か月以内の退去”突然要求 家主側は「住居者と合意」主張も…住人は「頭真っ白。まさか自分にこんなことが起きるとは」と困惑
MBS

住み慣れたマンションが『民泊』に!?“2か月以内の退去”突然要求 家主側は「住居者と合意」主張も…住人は「頭真っ白。まさか自分にこんなことが起きるとは」と困惑

 家賃は月約7万円。住み慣れたこの部屋で今後も暮らしたいと思っていましたが、今年1月、マンションのエレベーターに「ある文書」が貼られたといいます。

 「突然のご連絡ではございますが、令和8年(今年)3月末日までのご退去をお願い申し上げます」

 文書はマンションのオーナーが変更になり、民泊事業を始めるため「2か月以内の退去」を求めるものでした。退去に応じない場合は「家賃を3万円程度値上げする」とも書かれていました。

新たなオーナーの不動産会社に連絡し“抗議”したが…

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 (Aさん)「退去ありきの文言だったので、理不尽でしかないです。何をどうすればいいのかわからない状態ですね」

 Aさんら住民は新たにオーナーとなった不動産会社に連絡し「あまりにも突然すぎる」などと伝えましたが…

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 (Aさん)「もし退去に応じるのであれば、(会社側は)『家賃の3か月分はお支払いする』ということでしたけど、引っ越し代とか次のアパート・マンションを借りるにあたっても足りない」

「民泊にしたい。だから出てってくれ」は正当事由がない

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 Aさんは退去しないといけないのでしょうか?

 建物の貸し借りなどのルールを定める「借地借家法」では、そもそも大家が退去を請求する場合は6か月前までに通知しなければならないと定められています。

 さらに、賃貸トラブルに詳しい法律の専門家は、今回のような理由で立ち退きを迫ることはできないと指摘します。

 (きづがわ共同法律事務所 増田尚弁護士)「借りている人は、基本的には“住み続ける権利”が契約上保障されている。家主さんが『民泊の方がもうかるかもしれない』『民泊にしたい。だから出ていってくれ』というのは正当事由がない

「家賃3か月分の支払い」は不十分と指摘 “立ち退きを正当化できるものではない”

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 また、家主側は退去に応じれば「家賃3か月分」を支払うとしていますが、その額も不十分で、立ち退きを正当化できるものではないと言います。

 (増田尚弁護士)「引っ越し代であったり、転居先を確保するときの初期費用ですね。敷金であったり、火災保険料とか仲介手数料とか。転居を余儀なくされることの不利益を補填するものでなければならない

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 こうした見解に対し、不動産会社の担当者は、住民と合意の上で退去手続きを進めていると答えました。

 (不動産会社の担当者)「退去する住人には家賃約3~4か月分の補償金を払っている。退去を求めるには6か月前までに通知が必要だが、住居者と合意したので問題はない

「収益性は賃貸よりも高い」5月の新規受付停止を前に“駆け込み申請”か

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 大阪市内で起きている退去トラブル。民泊問題に詳しい大学教授は、特区民泊に関する「ある動き」をきっかけに、こうしたトラブルが増えているといいます。

 (阪南大学 松村嘉久教授)「民泊の新規受付の期限が切られたので、人が住んでいるとこでも買って、特区民泊に変えるから出て行ってくださいという流れが来ていると思います」

 大阪市は民泊を巡る騒音やゴミなどの問題を受け、その解決を優先するために今年5月29日をもって特区民泊の新規受付を停止することを決めたのです。

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 去年1年間の大阪市への「特区民泊」の申請数を見ると、去年9月に市が新規受付を停止する方針が明らかになったところ、10月の申請は336件と月別で過去最多に。12月にはそれを超える364件と、またも最多を更新しました。

 受付停止を前に「駆け込み申請」が起きているのです。

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 (阪南大学 松村嘉久教授)「収益性は賃貸住宅とかよりも絶対、特区民泊の方が高いので、既存の物件を購入して民泊として申請して物件を確保する。

確保したら、あとは極端な言い方をすると転売もできますので」

民泊めぐる退去トラブルの相談 大阪市・横山市長の見解は?

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 大阪市にも民泊に絡む退去トラブルの相談が寄せられていると言います。こうした状況について横山市長に聞くと…

 (大阪市 横山英幸市長)「事案によっては法的に解決しないといけないトラブル事案もあろうかと思います。必要な指導があれば随時指導にいくし、リーガル面でのご相談であれば法律相談の窓口をご案内する」

「話し合い1回もない」納得いかぬまま引っ越し…補償金で新居の初期費用は賄えず

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 取材班が訪れてみると、Aさんは引っ越しの作業を進めていました。

 (Aさん)「無料の法律相談所に行ったときに『(裁判に勝って)ある程度のお金をもらっても全て弁護士費用に消えていってしまうよ』って言われたら、何のためにやってんのかわからないし、そこでもう(心が)折れました

 法的に争う道もありましたが、Aさんは最終的にオーナー側の求めに応じ退去することにしたのです。

 ただ、オーナー側から補償として払われた30万円弱では新居の初期費用などは賄えておらず、心から納得しているわけではないといいます。

 (Aさん)「『住民の合意』って言っているけど、話し合いとかも1回もないですよ。一方的にあの紙が入ってただけで合意も何も…合意っていうのはちょっと違うと思います。納得いかない引っ越しだなという思いはずっとあると思います

 (2026年3月25日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『憤マン』より)

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