大阪市全域でオンデマンドバス運行開始

 生活に欠かせない「バス」。全国的に深刻な運転士不足や利用者の減少が叫ばれるなか、予約に応じて運行する乗り合い型の「オンデマンドバス」が、3月26日、大阪市内24区全域で利用できるようになりました。

 これまでの路線バスのように決まった時刻表やルートに縛られることなく、利用者の「乗りたい」という要求(オンデマンド)に応えて走るこのサービスは、都市部が抱える「交通空白地」という課題を解決する手段として大きな期待が寄せられています。

人口減少と高齢化が加速する社会において、これからのバスのあり方はどのように変わっていくのか。

 エリアを拡大したオンデマンドバスの現状と、公共交通の課題を深掘りします。

◎取材した専門家:吉田樹教授(福島大学) 公共交通政策に詳しい

利用方法と料金は?

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 呼べば来る、ほぼ好きな時間に乗れるというオンデマンドバス。大阪では、2021年に大阪市生野区と平野区の限られたエリアでの実証実験としてスタートしました。その後、ニーズの高さを受けて徐々に運行エリアを拡大してきましたが、3月26日、ついに大阪市24区すべてのエリアで利用できるようになりました。

 基本的にはエリアの中での乗り降りです。例えば、淀川エリア(新大阪駅近く)で乗車すると、そのエリア内でのみ降車できます。

 キタ・福島エリアなどは大人300円。生野・平野・都島などは大人210円。定期券は1エリア月額5000円ということです。

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 利用方法は、アプリやLINE、電話で予約。時刻表がないため、乗りたい時間に近い時間を予約します。

 路線バスのようにバス停はありませんが、アプリを見ると案内があり、乗車位置の写真も表示されます。

支払いはクレジットカードのみではなく、現金なども使えるということです。

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AIが最適ルートを自動生成

 AIが最適ルートを自動生成するのがオンデマンドバスのポイントです。路線バスはルートが決まっていますが、オンデマンドバスはAIがその時の予約状況を見て、効率的に目的地に到着できるルートを考えます。

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 メリットは、路線や時刻表が固定されていないため需要に合わせて来てくれることや、「必ず座れる」こと。ただし、道路状況や他の客の乗り降りによって遅れるおそれもあります。

タクシーでもバスでもない「中間」の存在

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 公共交通政策に詳しい福島大学の吉田樹教授によると、オンデマンドバスは「タクシーのような柔軟性」と「路線バスのような公共性・安価」の中間のような存在だといいます。

 過去には1975年の東京や2001年の福島でも似たサービスがありましたが、近年は、スマートフォンの普及やIT・AI進化などで普及し「次世代のモビリティー」として注目されています。

オンデマンドバスの“役割”

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 オンデマンドバスは、都市部では「移動の選択肢を増やす補完的なサービス」になり得るもの。主な役割として「混雑回避」「子育て世代や高齢者らの利便性向上」が期待されています。

 一方の過疎地では「生活維持のための“最後の砦”」としての役割を果たしています。通院・通学など生活に不可欠なものだということです。

背景にある「バス業界の危機」

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 なぜいま、これほどまでに新しいバスの形が求められているのでしょうか。

 その背景には、バス業界が直面している極めて深刻な危機的状況があります。国土交通省のデータによれば、現在、路線バスを運営する事業者の約7割が赤字経営に陥っているということです。

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 吉田教授によると、地域公共交通は経営が悪化すると路線の維持が難しくなり、運転手らの人材が流出してしまうということです。

こうした影響により、各地で路線の廃止や大幅な減便が相次ぎ、地域住民が移動手段を失う「交通空白地」の拡大が社会問題となっています。

成功の鍵は「データの活用」

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 こうしたオンデマンドバスの事業。大阪メトロに聞くと、「採算はまだとれていない」ということです。最大7人ほどしか乗れないので、距離が伸びれば伸びるほど採算性が下がるということです。そのためエリアを小さく区切っている側面があります。他の都市部では過去にオンデマンドバスの運行から撤退した事例もあるということで、経営は簡単ではないようです。

 ただし、大阪での取り組みは大阪メトロが運営しているという点において、沿線価値を高めて鉄道利用を維持・促進するための「投資」という側面から、より高い持続性があるとも考えられます。

 成功の鍵は「データの活用」です。誰がどこから乗ったかのデータを分析して、バス停の見直しや交通の再設計をすることで、運行の効率を上げてバス全体を使いやすくしていくことが重要だということです。

 私たちの生活を支える地域の公共交通をどのようにして存続させていくことができるのか。オンデマンドバスはその一つの視座を与えてくれる取り組みであるといえそうです。


(2026年3月26日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『まえはるプレゼン』より)

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