不足が懸念される「ナフサ」って?
中東情勢の緊迫を受けて、先週始まった石油の国家備蓄の放出。既に行われている民間備蓄の放出分と合わせると、国内需要の45日分が市場に放出されることになります。ガソリン補助金の財源として、新たに8000億円の支出も決まり、原油高騰の長期化に備えます。
そんな中、懸念されているのが、生活用品への影響です。原油を精製して作られるナフサは、あらゆるプラスチック製品に加え、衣類やシャンプーなどの大元の原料になっていますが、輸入の多くを中東から頼っていて、調達が難しくなりつつあるのです。
ガソリンのような補助金は適用されていないため、プラスチック製品などを製造するある会社では、ホルムズ海峡封鎖を受けて原材料価格が約4割から5割上昇したといいます。
中東情勢が落ち着く気配が見られない中、私達の生活はどうなっていくのか…野村総合研究所の木内登英氏への取材を踏まえ、MBS・米澤飛鳥解説委員が解説します。
需要割合でガソリンに次ぐ「ナフサ」
3月29日、ナフサなどの石油関連製品について、高市総理は自身のXに「『国内での生産』は原油と同様、国内での精製により国産のナフサの量は確保されるよう取り組んでいます」と投稿。
また、「海外からの輸入」については、中東からのナフサ輸入を他の国からの調達に切り替えるべく取り組んでいるところですと明らかにしました。
■ナフサとは
改めて「ナフサ」とは一体どういうものなのか詳しく見ていきます。
原油を精製することでガソリンや軽油など様々な石油製品ができます。ナフサはそのなかの一つで、石油製品需要に占める割合を見ると、ナフサは24.9%と、ガソリンに次いで非常に大きな割合を占めています。
<石油製品需要に占める割合(出典:石油化学工業協会)>
ガソリン 31.4%
ナフサ 24.9%
軽油 22.1%
重油 10.6%
灯油 8%
ジェット燃料油 3.1%
プラスチック製品に衣服、医療用の物品も…生活に欠かすことのできないナフサ
ナフサ由来の製品は具体的に何があるのでしょうか?
<ナフサ由来の製品の需要割合(出典:石油化学工業協会)>
合成樹脂(プラスチック) 64%
合成繊維(化学繊維) 8%
合成ゴム 8%
塗料 5%
合成洗剤・界面活性剤 2%
その他 13%
ペットボトルやラップなど非常に身近なものである合成樹脂もナフサ由来の製品です。衣服やゴム手袋、塗料、シンナー、合成洗剤などもナフサが使われいて、まさしく生活に欠かすことのできないものといえるでしょう。
また、医療で使われる手袋や注射器、チューブにも使われていて、これらは基本使い捨てのものであるため、不足すると影響が出るおそれがあります。
ナフサの中東依存は全体の80%⁉
イラン情勢の緊迫化を受けたホルムズ海峡の封鎖によって、ナフサにはどのような影響があるのでしょうか。
日本のナフサの調達元を見ると、
▽日本でナフサを精製(約40%)
▽中東から輸入(40%)
▽中東以外から輸入(20%)
となっています。
全体の約40%は日本で精製していますが、その精製元となる原油は9割超が中東産のものとなっています。そして中東からナフサの形で輸入するのが40%ほど。
ナフサ不足による価格への影響には“タイムラグ”
原油からガソリンが精製された場合、その状態でガソリンスタンドなどに運ばれ、消費者の手に届くこととなります。ナフサの場合は、精製後、さらにエチレンやプロピレンなどにし、最終的にラップなどの製品になる…という流れです。
こうしたことから、ガソリンなどの燃料に比べ、価格への影響が出るのにタイムラグがあるということです。
野村総合研究所の木内登英氏は「ナフサを使った製品の品不足が起きてきて、この先、数週間の内に価格が上がってくるおそれがある」と指摘します。
実際にナフサ製品を巡っては、出光興産や三菱ケミカル、三井化学などが減産や価格の引き上げの動きを見せ始めています。
ナフサを多く使っている洗剤やラップのほか、洋服などもナフサ不足の影響を受けやすいといいます。
「ナフサ由来の製品は多岐に上ることから補助金は現実的ではない」
こうした中で、いま打つべき手立ては何なのでしょうか。
3月19日からガソリンなどを1L当たり170円程度に抑える補助金が出ていますが、ナフサには補助金はありません。これについて木内氏は「ナフサを使う製品が多岐にわたりすぎて、補助金は現実的ではない」と話します。
そして、もう一つの手立てである石油備蓄で見ると、国家備蓄1か月分を放出し、24日時点で備蓄は残り計239日分となっています。木内氏は「備蓄放出で賄うナフサは主に日本で精製される分(約40%)」としています。
つまり補助金も難しい、そして備蓄も有限であるというのが現状です。
個人がやるべきは、“量の確保”ではなく、“ムダの削減”
29日、高市総理はXに「特に医療関係については、国内の医療活動が停滞しないよう、異なるサプライチェーン間での石油製品の融通支援など、安定供給を図る体制を立ち上げました」と投稿しました。
木内氏は、今後必要になってくるのは、
▽調達先の分散化
▽国内ナフサ精製量の増加
だと話します。
米澤解説委員は「個人がやるべきは、“量の確保”ではなく、“ムダの削減”」だと指摘。過去を振り返ると、コロナ禍ではマスクが品薄になり、オイルショックのときにはトイレットペーパーが入手しにくくなったということもありました。確保に走るのはなく、まずは今自分が生活している中で、無駄をなくす工夫をするところなのではないか、ということです。
木原官房長官は30日の会見で、
▽石油化学各社がナフサ原料の製品在庫を国内需要の約2ヶ月分は保有している
▽アメリカや南米等からの輸入と国内での精製で、さらに約2ヶ月分の確保は可能である
▽現時点では直ちに需給上の問題は生じていない
と明らかにしました。
ふだんから無駄遣いはしないよう意識している人は多いかもしれませんが、改めて、個人個人が無駄の削減への意識を高めていく必要があるかもしれません。
(2026年3月30日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『米澤プレゼン』より)

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