Lightroomで写真の歪み・傾き・角度を補正する方法を紹介します。建物などの水平垂直が明確にわかる写真は、少しでも傾きがあると違和感が出てしまいます。
三脚を使ってしっかりフレーミングをしない限り、水平垂直を確保した写真を撮るのはなかなか難しいものです。歪み補正の方法はしっかり抑えておきましょう。
*Lightroom Classic画面で解説しますがLightroom CCも基本的には同様の操作で補正可能です。
■使用する機能「レンズ補正」、変形パネル(「オフ」、「自動」、「ガイド付き」、「水平方向」、「垂直方向」、「フル」)
目次
1.写真の歪み・傾き・角度補正の前に「レンズ補正」をする
今回はこの写真を使って写真の歪みや傾き補正を行います
(図1)。
図1歪みの補正の前に、まずは[基本補正]パネルで画像の色味などを調整しておきます
(図2)。
図2Lightroomで写真の歪み・傾き・角度の調整は[変形]パネルで行いますが、その前に一つ大事な作業として「レンズ補正」があります。
カメラのレンズにはそれぞれのレンズ特有のクセがあり、少なからず歪みがあります。レンズの中心を軸に膨張しているように映る樽型と、その逆で中心を軸にすぼまるように映る糸巻き型の2種類の歪みがあります。
本来、水平垂直のラインで映るはずが、レンズの特性で歪んでしまうと傾きなどがわかりずらいので、
[変形]パネルで歪み補正をする前には必ずレンズ補正を行いましょう。このレンズの特徴を補正してくれる機能が、[レンズ補正]パネルの[プロファイル補正]です
(図3)。
図3。[レンズ補正]パネルの[プロファイル補正]をクリックまず[色収差を除去]と[プロファイル補正を使用]にチェックが入っていることを確認しましょう。この項目は、撮影したカメラとレンズとの相性を判別し、その組み合わせを適切に補正してくれる機能です。
ほとんどの場合は自動でカメラとレンズの情報をメタデータから拾い上げて補正してくれます。
[色収差を除去]と[プロファイル補正を使用]のチェックが外れている場合は、
図4のように表示されます。
図4何かしらのエラーで情報を取得できない場合や、古いレンズ、最新のレンズなど稀に該当するレンズがない場合もありますが、そうした場合は、[メーカー]、[モデル]、[プロファイル]からそれぞれ似た焦点距離のものを選ぶと大体いい結果が得られると思います
(図5)。
図5。左から[メーカー]、[モデル]、[プロファイル]を手動で選んだ図。自動で補正できない場合は手動で焦点距離の似たレンズを選ぶ今回の写真の場合、[プロファイル補正を使用]のチェックがない画像は、写真の真ん中を中心に窪んでいる、奥まっている感じで画像の四隅が暗くなっています
(図6の左図)。それに比べてチェックありの画像は、建物が手前に飛び出しているような、しっかり直線のラインが出ていて四隅の暗さもありません
(図6の右図)。
図6あまり出番はないと思いますが、このレンズ補正の調整は手動でも可能です。[レンズ補正]パネルの[手動]に切り替え、[ゆがみ]の[適用量]を左に動かすと樽型になり
(図7)、右に動かすと糸巻き型になります
(図8)。
図7
図8もし写真がふとっちょ(樽型)だったらスライダーを右にドラッグして、逆にほそっちょ(糸巻き型)だったらスライダーを左にドラッグして、タテとヨコのラインが大体真っ直ぐに見えるように補正しましょう。
レンズ補正の確認ができたら、[変形]を使って、歪み・傾き・角度の調整を行います。2.[変形]パネルで自動的に歪み・傾き・角度を補正する
[変形]パネルを開きます
(図9)。[オフ]、[自動]、[ガイド付き]、[水平方向]、[垂直方向]、[フル]と6つの項目があります。
その中で[自動]、[水平方向]、[垂直方向]、[フル]の4つはワンクリックで補正ができます。
図9[自動]はタテヨコの水平垂直を補正してくれます
(図10)。
図10[水平方向]はヨコの水平を補正してくれます
(図11)。
図11[垂直]はタテの垂直を補正してくれます
(図12)。
図12[フル]はタテヨコの水平垂直と、遠近法の補正をしてくれます
(図13)。
図13
3.[ガイド付き]で自動補正+手動で傾きを調整する
[自動]と[フル]は似ていますが少し違いがあります。垂直の要素がいろいろとあり、実際には少し左に傾いて設置されている電柱を加味して補正されているので、建物が右に傾いているようです。この画像に関しては、結果として[自動]が一番良い傾き補正となりました。
それでも私(筆者)のような疑い深い人間は、本当に水平垂直がちゃんと補正されてるのかな?と心配になってしまうんですよね。そんな人におすすめなのが自動と手動のいいとこ取りができる[ガイド付き]です
(図14)。
図14水平垂直の基準となるものが欲しいのでグリッドも表示しておきます。グリッド表示は、画面表示領域の下「グリッドを表示:常にオン]にして
(図15)、その下のスライダーでグリッドの大きさ調整もできます。細かすぎると画像が見にくくなるのでうまく調整しましょう
(図16)。
なお、[ガイド付き]補正には、直接このグリッドは必要ないので、適宜表示してください。
図16[変形]パネルで[ガイド付き]を選択したら、まずは垂直から補正していきます。中心に写っている郵便局の建物がメインなので、建物の両端の縦のラインで垂直を合わせます。
屋根の付け根付近にポインターを合わせて建物の下側にドラッグすると、2点の四角のポイントと線が表示されました
(図17)。これが左側の垂直の基準線です。
図17。一度線を作った後でも四角をドラッグすれば基準線の位置は変更できる。線の始点や終点を見やすくしたい場合は、画面下の[ルーペ表示]にチェックを入れるとマウスオーバーしている部分が拡大される右側も同じように、基準の線を作って
(図18)、ドラッグを離すと自動的に垂直に補正されます
(図19)。リアルタイムで補正されるのでわかりやすいですね。
図18
図19。右が補正後の画像続けて、建物の上部と下部にも基準の線を作って水平方向を補正しました
(図20)。
図20これで水平垂直の補正はできましたが、この建物は昭和12年に建てられていて年月と共に多少歪みも出ているので、拡大してポイントを修正していきます。
画面を拡大して、四角のポイントにポインターを合わせてドラッグして位置を微調整します
(図21)(図22)。
図21
図22この方法だと電柱や屋根の上の雪など、水平垂直の微妙なずれを加味して自動補正することがないので、結果的には一番間違いがないと思います
(図23)。
図23。[ガイド付き]で傾きを補正した画像
4.画像の上下左右の位置、拡大・縮小を調整
次に、グリッドに対して建物が中心にきていないので、スライダーの[変形]パネルの[Xオフセット]を右にドラッグしてセンターに位置するようにします。[Yオフセット]も左に少しドラッグして若干建物を下げます
(図24)。
図24
(図24の設定値)位置をずらしたことで、左下に余白が出ているので、[拡大・縮小]スライダーを動かして、余白が消えるまで拡大します
(図25)。
図25。[拡大・縮小:103]に設定して少し拡大したもしも[拡大・縮小:100]でどこかに余白が出ている場合は、余白が消えるまで拡大してください。[切り抜きを制限]にチェックを入れると余白は出ませんが、余白が出ないように拡大してトリミングされてしまい元に戻せなくなるので、チェックはオフがおすすめです。
以上で歪み・傾きが補正できました。最後に[HSL]パネルで空のブルーを調整したら完成です
(図26)(図27)(図28)。
図26。
完成写真
図27。完成写真にガイドを表示した図。建物を基準に水平垂直の傾きが補正されていることがわかる
図28。完成写真の[HSL]パネルの設定値
水平垂直がしっかり合っているとすっきり見えます。しかしガイドで確認してみると、屋根の真ん中の盛り上がりや、2階の窓枠のセンターと1階の入り口のセンターがズレていたり、電柱が傾いていたり、建物と道路が水平ではなかったり、さまざまな要素があるので、
どこを基準にするとちゃんと見えるかを考えて作業をすることが大事ですね。
そういった要素を考えると、ワンクリックで水平垂直が補正される[ガイド付き]以外の項目でのばらつきも納得できます。また、建物は必ず水平垂直だといいわけではなく、下から見上げれば上窄まりになり、大きさを表現することもできます。あえて歪みや傾きを生かした撮影も魅力的なので、必要なところで適切に使い分けましょう。今回の写真の場合、元の画像と完成画像を見比べると、左中天地の余白がトリミングされて、被写体が拡大されていることがわかります。今回の写真は大きく歪んでいなかったので、あまり影響はありませんでしたが、もっとパースがついている写真の場合は、パースを修正するために画像がかなり拡大されてしまいます。
写真によっては建物が切れてしまうことがあるので、補正をする可能性がある場合は、あらかじめひと回り以上引いて、フレーミングをするように心がけましょう。以上、Lightroomで写真の歪み・傾き・角度を補正する方法でした。
●構成:編集部 ●構成+制作+写真:谷本夏[studio track72] ●編集:編集部