株式会社日本文芸社は7月28日、『プロの小説家が教えるクリエイターのための語彙力図鑑』の売れ行きが好評で3刷重版が決定したと発表しました。本書を紹介する情報がTwitter(現 X)ユーザーに投稿され、魅力的なタイトルに加えて「頭の中のイメージを適切に描写する言葉選び」という内容に期待度が高まっています。
本記事では実際に本書を読んで、作成した文章をどのようにブラッシュアップできるか、試してみたいと思います。

『プロの小説家が教えるクリエイターのための語彙力図鑑』は多様な分野のクリエイターに役立つ

『プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑』は6月16日に発売された書籍で、タイトルに「プロの小説家が教える」と書いてある通り、著者の秀島迅さんは小説家として活動しているプロの作家です。現役の小説家や小説家デビューを目指す人が役に立つのはもちろんですが、コピーライターや映像作家、漫画家など、多岐にわたるクリエイターに向けた語彙のテクニックを伝授する内容となっています。

本書の特徴は単に語彙力の乏しさを補うだけでなく、魅力的な描写技法を磨くための指南書として役立ちます。カテゴリー別に語彙のバリエーションを紹介することに加えて、テーマに合わせたこだわりのポイントが記載されています。

品切れ続出の『プロの小説家が教える語彙力図鑑』を読んでみたら、頭の中のイメージを適切に描写する言葉選びができる実用的な1冊だった
語彙に加えて具体的な使い方が掲載されている
品切れ続出の『プロの小説家が教える語彙力図鑑』を読んでみたら、頭の中のイメージを適切に描写する言葉選びができる実用的な1冊だった
感情や身体的特徴、声、感触、情景などの表現を具体的に解説しています。例えば「感情」のパートでは27のテーマが含まれていますが、「喜び」のページでは「ほおが緩む」「ガッツポーズ」、「心地よい気分」など、具体的な語彙が示されています。

品切れ続出の『プロの小説家が教える語彙力図鑑』を読んでみたら、頭の中のイメージを適切に描写する言葉選びができる実用的な1冊だった
さらに、語彙だけでなく、その使い方や意識すべき点までセットで解説されており、文章を適切に書けるようになる技法書としても活用できます。「喜び」についての解説では、喜びという感情が共有されることが、読者のカタルシス(気持ちが解放されること)につながると説明があり、適切にカタルシスを機能させるには喜びを溜めることが重要であるとしています。「喜び」それ自体の描写方法に加えて、使い方にまで言及している点はかなり踏み込んだテクニックで、本書の大きな特徴と言えます。

品切れ続出の『プロの小説家が教える語彙力図鑑』を読んでみたら、頭の中のイメージを適切に描写する言葉選びができる実用的な1冊だった
検定により本書の習得具合をチェックできる
品切れ続出の『プロの小説家が教える語彙力図鑑』を読んでみたら、頭の中のイメージを適切に描写する言葉選びができる実用的な1冊だった
語彙に関するコラムも掲載されている「語彙力図鑑」として役立つだけでなく、イラストを文章化するという「語彙力検定」を掲載することで、実用性も高めています。魅力的な内容であることから欠品が出ていましたが、日本文芸社のTwitter(現 X)では在庫復活を知らせています。 

実際に文章をブラッシュアップしてみた

本書を実際に手に取り、誰でも実用できるのか試してみました。
まず、磨く前の文章として「歯を見せて大声でしゃべる人」を用意しました。この文章から場面を想像すると「歯が見えるくらい口を大きく開けて何かを話しているのだろうな」程度の情報だけが伝わり、感情や意図は伝わりづらいと思います。しかし本書に学び、語彙や表現の仕方を変えることで、より感情や場面の意味が伝わる文章として磨き上げることができるかもしれません。

本書の96ページに掲載されている「声量」を参考として文章をブラッシュアップしたいと思います。「声量」のページには「歯を見せて大声でしゃべる人」に使われている「大声」を表現する多岐にわたる言葉と表現が紹介されていて、声の大きさや特質を描写するための豊富な語彙が掲載されています。また、声を表現する際のバリエーションに焦点を当て、登場人物の心情をリアルに伝えるための技巧と言い回しの重要性を強調しています。作家はもちろん、分野を問わずクリエイターであれば、人物描写や感情表現の豊かさとして参考にできることがたくさんある内容と言えそうです。

以下、具体的にブラッシュアップをした文章と、本書で参考にした点についてをまとめています。

「歯を見せて大声でしゃべる人」を改善してみる

改善案1 「彼は歯を見せて大声で笑い、周囲を震わせた」 
この表現では紹介されている具体例を参考にしました。「大声を張り上げる」や「鼓膜が破れそうなほどの怒鳴り声」など、紹介されている語彙を参考にすることで、周りの状況に与える影響を伝えようとしています。歯を見せることを笑顔と関連させ、感情の高揚やエネルギーに溢れる様子を描写しました。

改善案2 「彼女の声は、歯を見せての大声で、怒りと失望に満ちていた」 
この表現は「声を表現する語彙」がたくさんあるという説明を参考にしています。
「歯を見せる」ことで強いネガティブを表現し、人物の感情の深さを描こうとしました。歯を見せる様子を「怒鳴る」と組み合わせることで、感情の強度が強調されたように思います。

改善案3 「子供たちは歯を見せて大声で歌い、楽しさを全身で表現していた」  
この表現も「改善案1」での「大声を張り上げる」といった表現から派生しています。子供たちの無邪気な笑顔と大声から、純粋な楽しみを表し、周囲の人々に感動や温かさといったポジティブな要素が伝わるような表現になるようブラッシュアップしました。

ここで試してみたように、本書は紹介されている語彙をそのまま当てはめていくことで表現のクオリティが高くなるだけでなく、1つのテーマに対する深掘り情報を参考にしながら、一歩進んだ表現に挑戦することもできるように感じました。大声と笑顔を組み合わせたり、人々の感情や心情を多岐にわたって描写することにより、「歯を見せて大声でしゃべる人」といった単調な情報を生き生きとした文章に改善することができたのではないでしょうか。小説に限らず、読み手が受け取る感情や情報を考慮することで、より深い共感と理解を促すことができるようになりそうです。

今回参考にした96ページの「声量」だけでなく、本書ではさまざまなテーマが用意されており、いずれも文章を深める際に参考になるものばかりでした。

企業CM制作のシナリオライティングなど、多岐にわたる作品を手掛けるプロフェッショナルである著者の秀島迅さんが、「本当は門外不出にしたい」と語る秘伝の語彙テクニックが結集されています。分野を問わず、何かを表現したり伝えたりすることに挑むクリエイターであれば、一度は手に取っておきたい一冊と言えそうです。

関連ページ:https://www.nihonbungeisha.co.jp/book/b625111.html  
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/453722116X

株式会社日本文芸社  
URL:https://www.nihonbungeisha.co.jp/  

2023/08/04

品切れ続出の『プロの小説家が教える語彙力図鑑』を読んでみたら、頭の中のイメージを適切に描写する言葉選びができる実用的な1冊だった
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