Illustratorのブラシ機能を応用した文字「規制」の作り方を紹介します。Illustratorのみでアナログ感を出し、筆を使用したかのような作字となっています。

*本連載はIllustratorで作る定番&最新グラフィックの制作工程を、一から手順通りに解説するHow to記事です。

■使用する機能「文字ツール」「アウトラインを作成」「はさみツール」「選択ツール」「ダイレクト選択ツール」「ペンツール」「直線ツール」「ブラシパネル」「線パネル」「パスのアウトライン」「長方形ツール」「シェイプ形成」「ラフ効果」「パスファインダーパネル」「透明パネル」

目次

1.ベースとなる文字を用意して加工の下準備を行う

ロゴのベースとなる文字を用意する。今回は筆のタッチや流れるようなストロークを表現のポイントにしたいと思ったので、和文はスタンダードな明朝体「リュウミン L-KL」(モリサワ)に、欧文は伝統的なセリフ体「STIX Two Text」(STI Pub)を使用することに。

そこでまず、新規ドキュメントを[カラーモード:RGBカラー]で作成したら、文字ツールを選んで「規制」と入力。文字パネルで[フォントファミリ:A-OTF リュウミン Pr6N L-KL]と設定する(図1)

【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図1。A-OTF リュウミン Pr6N L-KLはAdobe Fontsで提供されている書体。同じフォントファミリーの書体を複数インストールしている場合は[フォントファミリ:A-OTF リュウミン Pr6N]、[フォントスタイル:L-KL]というふうに、ファミリとスタイルをそれぞれ設定する必要がある続いて文字ツールで「KISEI」と入力し、文字パネルで[フォントファミリ:STIX Two Text]、[フォントスタイル:Regular]に設定する(図2)

【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図2。ここでは[フォントファミリ:STIX Two Text]、[フォントスタイル:Regular]に設定した。STIX Two TextもAdobe Fontsで提供されている書体選択ツールでshiftキーを押しながら入力した文字「規制」と「KISEI」をクリックして選択したら(図3)、書式メニュー→“アウトラインを作成”を実行して文字をアウトライン化しておく(図4)

【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図3。文字「規制」と「KISEI」を両方ともクリックして選択する
【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図4。
アウトライン化すると、文字をパス化して通常の図形と同じように扱えるようになる次に、はさみツールを選び、「規」の1画目の左側と縦画の交差部分にあるアンカーポイントを2カ所クリックしてパスを切断する(図5)

【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図5。はさみツールで赤丸部分(「規」の1画目の左側と縦画の交差部分にあるアンカーポイント)をクリックしてパスを切断する続いて、ダイレクト選択ツールで切り離した横画の左側を囲むようにドラッグして選択したあと、deleteキーで削除(図6)(図7)。さらにペンツールを選び、先ほど切断した2カ所のアンカーポイントをクリックしてパスを閉じておく(図8)

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図6。ダイレクト選択ツールで横画の左側を囲むようにドラッグして選択したあと、deleteキーを押して削除する
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図7
【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図8。ペンツールではさみツールで切断した2カ所をクリックする。はさみツールで切断した部分はアンカーポイントとアンカーポイントがつながっていないオープンパスの状態になっているので、2カ所のアンカーポイントをつなげてパスを閉じておく同様の手順で画線の一部を削除していく(図9)(図10)

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図9。ここでは、後工程で筆のあしらいを配置する部分にあるパーツを削除しておいた
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図10

2. パーツにブラシを適用して筆のタッチを表現する

文字に筆のあしらいをつけていく。まず直線ツールを選んだら、shiftキーを押しながら縦方向にドラッグして縦線を引く(図11)

【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図11。ここでは、「規」の1画目の左側あたりに直線ツールで上から下に向けて縦線を引いた同様に、筆のあしらいを配置したい部分に直線ツールで縦線を引いていく(図12)(図13)(図14)


【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図12。ここでは「規」の「目」の部分に直線ツールで下から上に向けて縦線を引いた
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図13。「制」の文字は、左側の縦画に重なる部分と、その右上の部分に直線ツールで上から下に向けて縦線を引いた。また、りっとうの右側の縦画に沿うよう、下から上に向けて縦線を引いた
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図14。「KISEI」の左右に縦線を引いた。どちらも直線ツールで下から上に向けて縦線を引いている次に、選択ツールで「規」の1画目の左側に引いた縦線をクリックして選択したら、ブラシパネルの下部にある[ブラシライブラリメニュー]ボタンをクリックしてメニューを開き、“アート”→“アート_木炭・鉛筆”を選択(図15)。「アート_木炭・鉛筆」パネルが開くので、そのうち[木炭(滑らか)]をクリックして選択する(図16)(図17)

【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図15。ブラシパネルで、ブラシライブラリメニュー→“アート”→“アート_木炭・鉛筆”を選択する
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図16。「アート_木炭・鉛筆」パネルには、アナログ感のあるブラシが多数用意されている
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図17続いて、表現したいイメージに合わせて線パネルで[線幅]を太くしていく。ここではアナログっぽい筆のタッチを表現するため[線幅:19px]に調整した(図18)

【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図18。
ここでは、線パネルで[線幅:19px]に調整した同様に、ほかの縦線にもブラシを適用していく。「規」の「目」部分の縦線はブラシを[木炭(まだら)]に、線パネルで[線幅:13px]に設定した(図19)

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図19「制」の左側の縦画に重なる部分に引いた縦線はブラシを[木炭(丸い)]に、線パネルで[線幅:15px]に設定(図20)。その右上に引いた縦線は、ブラシを[木炭(粗い)]に、線パネルで[線幅:9px]に設定した(図21)。また、りっとうの右側の縦画に沿うように引いた縦線はブラシを[木炭]に、線パネルで[線幅:13px]に設定している(図22)

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図20
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図21
【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図22「KISEI」の左側に引いた縦線はブラシを[木炭]に、線パネルで[線幅:20px]に設定(図23)。右側の縦線はブラシを[木炭(滑らか)]に、線パネルで[線幅:20px]に設定した(図24)

【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図23
【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図24選択ツールでshiftキーを押しながら、ブラシを適用した縦線をすべてクリックして選択したら(図25)、オブジェクトメニュー→“パス”→“パスのアウトライン”を実行(図26)

【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図25
【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図26。アウトライン化することで線が塗りに変換される長方形ツールで、ブラシを適用した縦線のうち不要な部分を覆うように長方形を描き(図27)、選択ツールでshiftキーを押しながら、ブラシを適用した縦線と、長方形の両方ともを選択(図28)。optionキー(Macの場合。WindowsではAltキー)を押しながら、シェイプ形成ツールで削除したい領域内をドラッグして除去する(図29)(図30)


【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図27。ブラシを適用した縦線の不要な部分を覆うように長方形を描く
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図28
【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図29。optionキー(Macの場合。WindowsではAltキー)を押しながら、シェイプ形成ツールで領域内をドラッグすると、その部分を削除できる
【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図30

3.文字にアナログ的な質感をつける

文字に手書きのニュアンスや紙の質感をつけていく。まず、選択ツールで文字全体を囲むようにアートボード上をドラッグしてすべて選択したら(図31)、パスファインダーパネルの[形状モード:合体]をクリック(図32)(図33)

【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図31。文字全体を選択する
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図32。パスファインダーパネルの[形状モード:合体]を選択する
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図33合体した文字が選択された状態のまま、効果メニュー→“パスの変形”→“ラフ...”を[サイズ:0.1%]、[パーセント]、[詳細:100/inch]、[ポイント:丸く]で適用する(図34)(図35)

【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図34。[サイズ:0.1%]、[パーセント]、[詳細:100/inch]、[ポイント:丸く]に設定する
【Illustrator】ブラシ機能を応用し、アナログの質感を加えた文字「規制」の作り方
図35。文字のエッジに手で書いたような微妙なブレをつけることができる次に、紙のテクスチャ素材を用意して、ファイルメニュー→“配置...”でアートボード上に配置したら(図36)、そのテクスチャ素材が選択された状態のまま、オブジェクトメニュー→“重ね順”→“最背面へ”を実行し、位置を調整する(図37)

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図36。
今回は「Adobe Stock」で探したスクラッチ風のテクスチャ素材を使用している
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図37選択ツールで文字をクリックして選択したあと、カラーパネルで[塗り]を暗いグレー[#1b1b1b]に設定(図38)(図39)。続いて透明パネルで[描画モード:乗算]に変更すれば完成(図40)(図41)

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図38。[塗り]を暗いグレー[#1b1b1b]に設定する
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図39
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図40。[描画モード:乗算]に設定する
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図41。完成ビジュアル。文字のカラーを黒ではなく暗いグレーにして乗算で重ねることで、背面のテクスチャの風合いを生かすことができる「読めるギリギリのラインを狙って、要素を隠したり消したりすることがポイントです」と櫻井さん。以上、ブラシ機能を応用した文字「規制」の作り方でした。

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