新連載「デスクワーカーのための東洋医学×お悩み解決術」がスタート! クリエイターやデスクワークが日常の皆さんに、東洋医学をベースとした養生方法をお伝えしていきます。自宅で簡単にできるセルフチェックや、ツボ押し、気功を活用し、環境の変化や内外のストレスに負けない柔軟な心身を作っていきましょう。
初回は、東洋医学とはどんなものなのか、自分の体質チェック、デスクワークにおいて気をつけたい身体の部位を紹介します。

東洋医学を教えてくれるのは、鍼灸院「アキュサリュート高輪」の院長・瀬尾港二先生。イラストはお笑いコンビ蛙亭の中野周平さんです。

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漢方薬や薬膳も。身体が持つ“自然治癒力”を高める東洋医学

東洋医学とは?西洋医学との違いって?

瀬尾 私たちが一般的に病院などで受けている治療は「西洋医学」と呼ばれ、不調の原因となっている悪い部分を薬や手術で直接取り除くというアプローチの医学です。科学の発達とともに大きく進化し、最先端の技術を用いた検査や処置を行っています。

対してこの連載でお伝えしていく「東洋医学」(中国では中医学と呼ばれる)は、人間が持つ自然治癒力を引き出し、健康維持や病気の改善を目指していく伝承医学です。2000年以上前の古代中国で生まれたもので、日本には5~6世紀頃に伝わり、日本の風土や日本人の体質に合わせて発展してきました。

そもそも西洋医学、東洋医学では、そのベースとなる健康観が異なります。西洋医学では身体や心が一定の状態を保つことを健康とし、そこから外れたときに病気になるという考え方で、熱や脈拍、血圧などの正常値・基準値を重視します。そのため、治療もこの恒常的な数値を「もとに戻す」という明確な目的に向かって行います。平熱よりも高い熱が出た場合には熱を下げる薬を処方し、平常時の熱に戻すというのが治療の一例です。


東洋医学では精神や心も身体の一部と捉え、「体調は常に変化するもの」と考えます。私たちは日々の食事、人間関係、季節の変化や環境によるストレスなど、身体の内外から心身へとさまざまな影響を受けています。そんな変化に接したときでも自然治癒力によってストレスを跳ね返すことができ、心身ともにバランスが取れる状態を健康と定義し、そのバランスが崩れていることを「未病」と言います。

東洋医学では、気の流れを重視する

瀬尾 東洋医学では体内を「気・血・津液(しんえき)」の3つがそれぞれ巡っているという考えで、特に「気」の流れを最も重視します。気は目に見えないエネルギーですが、生命活動の根源として考えられています。巡る範囲が広く、特定の組織だけでなく全身を巡っているため、気の流れが悪いと血流や津液も滞ってしまいます。

普段の暮らしの中で、同じ姿勢や同じ動き、身体の冷えなどからも滞りを生み、「凝り」として感じやすくなります。「なんだか少し凝ってるなぁ」と感じることはよくあると思いますが、その程度の不調でも放っておくことで身体だけでなくメンタル面にも影響してしまうので、要注意。精神面の不調から身体の不調へと拡大していくことも多いのです。

東洋医学の主な治療法は、植物や動物、鉱物などを薬に用いる漢方薬や、身体の経絡や経穴を利用する鍼やお灸、指圧などの手技療法、薬のような働きの食材を食事に取り入れる薬膳など、日常生活で行いやすい養生法もあります。

この連載では、気の滞りをなくし、巡りを促すためのツボ押しや気功、季節の変化に合わせた食養生など、東洋医学の面から自然治癒力を高めるアプローチをしていきます。

暑がり、寒がり、あなたはどっち?東洋医学で体質チェック

瀬尾 東洋医学では、体質の傾向を大まかに分類することができます。まずベースとなるのは、寒がり傾向にある冷え体質「陽虚(ようきょ)」か、暑がり傾向のほてり体質「陰虚(いんきょ)」。
このふたつはどちらかご自身でも判断しやすいのではないかと思います。

また、気血が不足傾向にある「気血両虚体質(疲労貧血体質)」は、気が足りないことで疲れやすい、元気がないなどの「気虚(ききょ)体質」と、血が足りないためめまいや立ちくらみが起こりやすく、顔色も悪い「血虚(けっきょ)体質」に分けられます。

気血があっても滞って動きがない「気滞血瘀体質」もあり、気が滞ってイライラしやすい「気滞(きたい)体質」、血が滞って肌色の悪さや黒ずみなどが出やすい「瘀血体質」に分類ができます。

最後に、身体の中に余分な水や脂分が滞っている「痰湿(たんしつ)体質」。これは、身体が重だるい傾向にあります。

これらはどれかひとつだけでなく、複数該当することもあります。前述の通り、寒がり・暑がりが最も大きなチェックポイント。下記の症状分類で自分の体質を確認してみてください。自分の心と身体の変化に敏感でいること、常に内観していくことが健康維持のためにはとても大切です。

体質チェック&首や背中など気をつけたい身体の部位も!デスクワーカーのための東洋医学入門編
陽虚体質(冷え体質)

寒がり手足が冷えやすい顔色に精彩がない低体温気味便が軟らかい夜間の尿量が多い(頻尿)温かい飲み物を好む
体質チェック&首や背中など気をつけたい身体の部位も!デスクワーカーのための東洋医学入門編
陰虚体質(ほてり体質)

暑がり手足がほてりやすい寝汗をかく身体は痩せ気味便秘気味尿が濃い冷たい飲み物を好む頬が赤い不眠気味喉が渇く
体質チェック&首や背中など気をつけたい身体の部位も!デスクワーカーのための東洋医学入門編
気血両虚体質(疲労貧血体質)/気虚体質

疲れやすい息切れしやすい食欲がない冷や汗をかきやすい便が軟らかい元気がなくやる気がでない気血両虚体質(疲労貧血体質)/血虚体質

顔色が青白いか土気色唇の色が悪いめまいがある立ちくらみがある動悸がある不眠気味手足がしびれやすい便が乾燥してコロコロしている
体質チェック&首や背中など気をつけたい身体の部位も!デスクワーカーのための東洋医学入門編
気滞血瘀体質(滞り体質)/気滞体質

イライラしやすい胸や上腹部が張って痛むため息やゲップが出やすい便秘気味気滞血瘀体質(滞り体質)/お血体質

皮膚の色が暗い唇の色が暗い目の周囲に黒ずみがある肌が鱗状に荒れる刺すような痛みがある
体質チェック&首や背中など気をつけたい身体の部位も!デスクワーカーのための東洋医学入門編
痰湿体質(脂体質)

口の中が甘く粘る体が重たくだるい口は乾くが飲み物を飲みたくない脂太り

要注意!デスクワーカーに起こりがちな身体の滞りポイント

体質チェック&首や背中など気をつけたい身体の部位も!デスクワーカーのための東洋医学入門編
瀬尾 デスクワーカーの方たちによく見られる、身体の悩みを紹介していきます。次回以降の連載で詳しく取り上げていくので、まずはどんなところに注意した方がいいのかチェックしてみてください。

首気の流れで最も重要な部位が首。
モニターを見続けることで眼精疲労から首・肩が凝ることが多いので注意が必要です。脳への血流が圧迫されて精神面への影響も大きく、うつ病を引き起こす可能性も。寒い時期は首周りの冷え対策もおすすめです。

背中長時間同じ姿勢で座っていると背中が凝りやすいのですが、痛みを感じにくいポイントでもあります。凝りを放置することで腰痛へとつながることも。座りっぱなしは避けて、1時間に1回は立ち上がる習慣を。

腕イラストレーターやデザイナーの方に多い腕の痛み。腕を酷使したり、疲労が蓄積されたりすることで腱鞘炎にもなりやすいので注意が必要です。使い過ぎを避け、こまめな休憩を大切に。

ふくらはぎ座り姿勢は下半身の滞りも生みやすく、足やお尻がむくみがちに。中でも特にふくらはぎは血液やリンパを循環させるポンプのような役割を果たしているため、適度に動かすことで滞りをなくしましょう。

耳耳はストレスの影響を受けやすいので、聞こえにくくなったり、エレベーターに乗ったときのような耳の詰まりを感じたりしたら要注意。
突発性難聴を引き起こしてしまう場合も。耳はツボがたくさんあるので、軽く揉むなどのケアもおすすめです。

以上、デスクワーカーのための東洋医学入門でした。次回は2023年11月24日(金)公開、「理想の姿勢」がテーマです。

体質チェック&首や背中など気をつけたい身体の部位も!デスクワーカーのための東洋医学入門編
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