「おしるこ」と「ぜんざい」の勢力図/出典:ヤフー・データソリューションLINEヤフー株式会社が提供する「ヤフー・データソリューション」から、生成AIを利用した面白いレポートが公開されています。「おしるこ」と「ぜんざい」、犬や猫の鳴き声など、地域によって異なる表現やワードを抽出・分析したレポートです。


詳細なレポートは、note上での「関西は犬の鳴き声に関心!? 検索データと生成AIで未知の地域差を見出す」というページでも公開されています。本記事では、このトピックについて注目してみました。

【目次】

SNSでのトレンドにもなった「地域差」

今回の試みは「Yahoo! JAPAN」の検索ビッグデータを使って網羅的にワードのペアを調べつつ、生成AIで効率的に抽出するといったプロセスで実施されました。地域特性は異なるけれども、関係性が近いワードのペアを生成AIの力によって、効率的に絞り込むという処理です。

おしるこ vs ぜんざいなどの地域差の違いを読み解く! ヤフー・データソリューションの分析に注目
調査の処理のイメージ。検索ワードのペアを生成し(左)、AIを使って意味合いが近いペアを抽出する(右)/出典:ヤフー・データソリューションこの調査の土台になったのは、「どの地域にも特有の表現や好みや価値観がある」といった文化人類学的な視点でした。それぞれの地域の特性は、ほかの地域と対比させてギャップを感じたときに初めて認識できるものです。かつては地域ごとの差異を把握するのは困難な作業でしたが、現代ではインターネットの発達によって以前よりはるかに地域差を実感しやすくなったと言えるでしょう。

例えば、ごく最近では人気ゲーム「スプラトゥーン」によるX(旧Twitter)の公式総合アカウントで発信された「コレなんて呼ぶ? 回転焼き vs 大判焼き vs 今川焼き」が大きな話題となりました。

この企画はゲーム内でテーマに沿った陣営に分かれてプレイヤーが競い合う「フェス」の1つとして開催され、2023年11月18日(土)の9:00から11月20日(月)の9:00までの48時間にわたって実施されます。早くもXのコメント欄では「今川焼きっていうよね?」「個人的には大判焼き」「回転焼きって言ってる」「おやきは?」「御座候だろ」など大いに盛り上がっているようです。

東西での表現の違いをデータから読み取る

「ヤフー・データソリューション」によるレポートでは、まず「東西での表現の違い」について触れられています。「回転焼き・大判焼き・今川焼き」のように「おしるこ・ぜんざい」も地域差が表れる代表的な例として知られていますが、今回の調査ではその違いが「東西でクッキリ分かれる」ことがデータに基づいて示されました。

本記事の冒頭に掲載した “勢力図” の色分けされている画像を眺めると一目瞭然で、東日本が「おしるこ」優勢で、西日本が「ぜんざい」優勢であることが分かります。
ちなみにレポートでは、「おしるこ」と「ぜんざい」が単なる呼び名の違いだけではなく、意味合いも異なることが補足として紹介されていました。

     「おしるこ」と「ぜんざい」の意味の違い/出典:ヤフー・データソリューション  関東 関西おしるこ つぶあん・こしあんを問わず、小豆に砂糖を加えた汁物 つぶあんの汁物ぜんざい もちや白玉に汁気の少ないあんをかけたもの こしあんの汁物そのほか、今回のレポートでは「通話できない vs 電話できない」「ポークソテー vs ポークステーキ」といった違いについても可視化されています。特に「通話」と「電話」の使い分けについては、普段の生活で地域差があると意識することは少ないでしょう。しかし、今回のレポートでは、それらも概ね東西で傾向が分かれていることが示されており、興味深い結果です。

おしるこ vs ぜんざいなどの地域差の違いを読み解く! ヤフー・データソリューションの分析に注目
「通話できない」と「電話できない」の勢力図/
出典:ヤフー・データソリューション
おしるこ vs ぜんざいなどの地域差の違いを読み解く! ヤフー・データソリューションの分析に注目
「ポークソテー」と「ポークステーキ」の勢力図
/出典:ヤフー・データソリューション

特定の地域に絞った分析

次に今回のレポートでは、東西のみにとどまらず「特定地域の状態」といった点についても触れられています。たとえば「猫の鳴き声」と「犬の鳴き声」について、関西や東海圏ではそのほかの地域と違って「犬の鳴き声」のほうにより強い関心を持っていることが示されています。言い換えると「より多く検索されている」という状態です。

おしるこ vs ぜんざいなどの地域差の違いを読み解く! ヤフー・データソリューションの分析に注目
「犬の鳴き声」と「猫の鳴き声」の勢力図/出典:ヤフー・データソリューションなぜ、このようなことが起きるのかは精査してみないと分からないことですが、レポート内では「声が大きい犬種を飼っている人が多い」「ご近所付き合いのかせにならないかの配慮の意図が強い」といった可能性が推察されています。というのも、「犬の鳴き声」とともに「防音対策」というワードが検索されていることが、該当地域の特徴として見えてきたからです。

このような全く予想もできない地域性が仮説として出されるのは、ビッグデータの分析の非常に面白いところでしょう。今回のレポートでは同様に「ランチ vs グルメ」の違いについても触れられています。

「地域性」の分析・研究とテクノロジー

「ヤフー・データソリューション」のレポートは、さまざまなことを考えさせられる興味深いものでした。1つは現代における「地域性」についてです。


インターネットを中心としたテクノロジーの発達は、基本的に「地域性」を薄めます。かつては現地に行かないと購入できなかった “ご当地もの” のアイテムも、現代ではインターネット通販などで場所を問わずに買いやすくなりました。都心部と地方との “情報格差” についても、大昔と比べればはるかに緩和されているはずです。

本来であれば「地域性」が弱まるのが普通の流れであるはずの現代で、それでもなお、ここまでデータとしてはっきりした違いを感じさせるものも確かに残っています。これらの「地域による違い」は、今後もずっと続いていくのか、あるいはどの時点で変化が起きるものであるのか興味は尽きません。

もう1つ重要なことは、テクノロジーの発達によって新たな見方・発想が登場する、ということでしょう。今回のような統計・分析も、ビッグデータや生成AIを活用した手法でないと実現が難しく、段違いに手間がかかってしまいます。

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「ヤフー・データソリューション」では「今後は、3キーワード以上のより複雑な地域性」なども検討していくそうです。今回のレポートは、単純に「地域差の違いを知る」という楽しさがあるとともに、同時に「技術の進歩によってできること・可能性が広がる」ことも感じさせる面白い内容であったと言えるでしょう。

レポートURL:https://note.com/ds_yahoojp/n/n979e086c0acb

LINEヤフー株式会社/ヤフー・データソリューション
URL:https://ds.yahoo.co.jp/

2023/11/10

おしるこ vs ぜんざいなどの地域差の違いを読み解く! ヤフー・データソリューションの分析に注目
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