シルクスクリーンキット「SURIMACCA(スリマッカ)」による印刷では、使う色の数だけ版をつくることで、多色刷りもできます。ただ、たくさんの色を使う複雑な図案でつくるのは楽しい反面、製版の数や揃えるインクの数が多くなるため、手間やコストがかさんでしまいます。
しかし、少ない版の数やインクの種類でも、インクの使い方を工夫することでさまざまな印刷表現をすることが可能です。
※版の作成から印刷までの手順を一通り紹介する【基本編】はこちら

もくじ

最初に多色刷りの「版」をつくる

シルクスクリーンでは、版画などと同様に、複数の色を使う図案の場合は色ごとに版が必要になります。また、版の印刷可能範囲の中に複数の図案を入れて製版することも可能です。ここでは、作例としてXSサイズ(印刷可能範囲200mm×80mm)に、80mm×80mmのモチーフを2種類入れて、2色で刷るため2色分の原稿を入稿し、製版しました。製版の詳しい作成手順は【基本編】をご参照ください。

インクの使い方を工夫しながら、スリマッカでさまざまなシルクスクリーンの印刷表現を楽しもう!
2色で刷ることを想定した元の図案
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原稿では黒い部分が色が付く場所になる。こちらは元の図案で緑の部分を原稿化したもの
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元の図案で黄色の部分を原稿化したもの
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元の図案の緑の部分の版。白っぽいところが色が付くところ(図案が見やすいよう版を黒い紙の上に置いて撮影)
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元の図案の黄色の部分の版(図案が見やすいよう版を黒い紙の上に置いて撮影)「SURIMACCA」のフレームはブロックのように組み立てられるので、版のサイズに合わせて組み替えられます。今回のXSの版では、それぞれ黄色の短い直線のものを2本と青の角のフレームを4個ずつ使いました。2種類の版をシリコンゴムやローラーを使い、版に張っていきます。版を張る手順は【基本編】をご参照ください。

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2色分制作した版それぞれを、「SURIMACCA」のフレームに張ったところ

2色の「版」を使ってコースターに印刷する

ここでは、2色の版を使ってコースターをつくっていきます。まずは版の左側のモチーフの、1色目を刷っていきます。
写真だと見えづらいかもしれませんが、肉眼で見ると版の図案はきちんと視認できるので、印刷位置を合わせて無地のコースターの上に版を張ったフレームを置きます。そして、よく混ぜたくすみブルーのインクを版の図案上部に出し、スキージーを手前に引いて印刷します。

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(1)印刷する紙に図案の位置を合わせて版を重ね、インクを置く
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(2)スキージーを手前に引いて印刷する続いて、右側の図案もくすみブルーのインクで印刷していきます。

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(3)印刷する紙に、右側の図案を合わせて版を重ねる
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(4)版の上にインクを置き、スキージーを手前に引いて印刷する
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(5)コースターに、2つのモチーフそれぞれのくすみブルーの部分を印刷したところくすみブルーで印刷したコースターが乾いたら、もう1つの版を使ってコーラルのインクで印刷をしていきます。コースターの上に印刷位置を合わせて版を張ったフレームを重ね、コーラルのインクで印刷すると、くすみブルーとコーラル2色を使ったコースターが刷り上がります。
 

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(6)くすみブルーで印刷をしたコースターの上に印刷位置を合わせて版を置き、コーラルのインクを置く
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(7)スキージーを手前に引き、コーラルのインクで印刷する
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(8)もう一つの図案も、くすみブルーのインクで印刷したコースターに位置を合わせて重ね、コーラルのインクを置く
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(9)スキージを手前に引き、コーラルのインクで印刷する
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(10)くすみブルーとコーラル2色のコースターが刷り上がりました 

刷り方を工夫することで、さまざまな印刷が楽しめる

「SURIMACCA」では、きっちり図案に沿って色を刷り分けるだけでなく、刷り方を工夫することで、さまざまな印刷表現が可能です。例えば、インクの色を重ねて印刷することもできます。同じインクの組み合わせでも、どちらを上にするかによって、色の出方が変わってきます。

インクの使い方を工夫しながら、スリマッカでさまざまなシルクスクリーンの印刷表現を楽しもう!
くすみブルーで印刷した上に、少し版をズラしてコーラルを印刷。色が重なっているところは下のくすみブルーが透けてグレーがかったピンク色に
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コーラルで印刷した上に、少し版をズラしてくすみブルーを印刷。くすみブルーの方が色が強く下のコーラルはあまり透けないので、色が重なったところもくすみブルーにまた、1つの版にインクを左右に分けて置くことで、版を重ねずとも2色使った印刷をすることが可能です。インクを交互に少しずつ置いて、ボーダーにするといったこともできますし、例えば図案の上部にくすみブルー、真ん中くらいの高さにコーラルのインクを置いて刷ると、くすみブルーからグラデーションで真ん中辺りからコーラルに色が変わるといった刷り上がりになります。

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版の左側にコーラル、右側にくすみブルーのインクを置いて刷る
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左がコーラル、右がくすみブルーのツートンカラーに刷り上がった「SURIMACCA」のインクは混色できるので、くすみブルーとコーラルを混ぜて印刷してみました。
相性によっては、混色したものにアイロンをかけると変色することがあるそうなので、布に刷る場合は余り布などでテストをしておくと安心でしょう。

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コーラル2:くすみブルー1くらいの割合で混色したインクを版の上に置いて刷る
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ピンク寄りの紫色に刷り上がった版にインクをランダムに置くと、マーブル模様にすることもできます。こちらは、【基本編】で使ったフクロウ柄の1色の版を使いました。版の上でくすみブルーとコーラルのインクを軽く混ぜてマーブル状にし、布バッグに印刷しています。

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版の上にくすみブルーとコーラル2色のインクを出し、軽く混ぜてマーブル状にする
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フクロウがくすみブルーとコーラルのマーブルに刷り上がった他にも、プリンターなどで印刷した線画のキャラクターの、洋服部分にだけ「SURIMACCA」で印刷するなど、さまざまな使い方ができます。デザインやものづくりが好きな人であれば、そうしたアイデアを考えること自体が楽しいでしょう。

まとめ

シルクスクリーンで多色刷りをする際には、色ごとに版をつくる必要があります。そのため、たくさん色を使う複雑な図案でつくるのは楽しい反面、手間や費用がかかってしまいます。しかし、1~2色の図案でも刷り方を工夫することで、ボーダーやマーブルといったさまざまな印刷表現ができます。また、「SURIMACCA」のインクは混色することができるので、数色の購入でも混ぜて色の幅を広げることができます。印刷でオーダーするのとは違い、1刷りごとに色の出し方を変えることができるのもシルクスクリーンならではの楽しさです。

印刷は布や紙のほか、無塗装の木材などにも行えます。
紙はツルツルしたコーティングがされたものだとインクの定着が悪くなるので、ケント紙などある程度インクを吸い込んでくれるものがよいでしょう。また、コピー用紙など薄い紙だとインクが乗ったときに波打ってしまうことがあるので、少し厚みのある紙が適しています。

インクは、乾燥すると布では洗濯が可能になるほどにしっかり定着します。そのため作業時の服や台などにインクをつけてしまうと取れなくなってしまいます。印刷作業をするときは、机にカバーをかけたり、汚れてもよい服装で行うと安心です。

大阪と東京にある店舗のワークスペースでも、「SURIMACCA」を使った印刷をすることができます。道具を揃えるのは大変だ、自分で作業をするのは不安だという方は、スタッフに相談もできるのでこちらで制作するとよいでしょう。

DATA製品名:SURIMACCA(スリマッカ)
実売価格:製版990円~、インク770円~、SURIMACCAセット4,840円(すべて税込)
公式サイト:https://surimacca.com/
発売元、公式ECサイト:https://jam-p.com/
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B097BLDGB8/

インクの使い方を工夫しながら、スリマッカでさまざまなシルクスクリーンの印刷表現を楽しもう!
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