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生成AIによる画像を自動検出して除外するSNS
「Cara」プロジェクトは、20年間にわたりデジタルアートのコミュニティで活動してきた张晶娜氏(Jingna Zhang/別名:zemotion)によって設立されました。チームのメンバーとして、シニアエンジニアのKatie Borisov氏と、博士課程(Ph.D)の学生でフルスタックエンジニアのJake RT氏もWebサイトで紹介されています。
https://cara.app/aboutまた、さまざまな企業や職種の友人やアートディレクターなどからもフィードバックを受けたとのことで、「Who’s On Board?」という欄には、Marvel Studios、NVIDIA、Sony Santa Monica、SpaceXといった記載も見られます。
「Cara」では、iOS用とAndroid用のモバイルアプリも提供されています。サードパーティのサービスを使用して画像の検出とモデレーションが自動化されていますが、「Cara」がユーザーのコンテンツをAIモデルのトレーニングに使用することはなく、サードパーティ企業にも「Cara」のユーザーデータを機械学習に使う権限は付与されていない、と明確に示されています。
「Cara」では、AI検出によって「ユーザーのポートフォリオからAI画像が自動的に除外」されるようです。また、勝手にAIスクレイピングされることから作品を保護する機能として、「Glaze」プロジェクトとの連携によって「Cara」に統合された「Cara Glaze」を利用できるようになります。
「Glaze」についての参考記事:画像生成AI学習防止ツール「emamori」と「Glaze」でクリエイターの権利を守る(前編)
https://www.mdn.co.jp/web/helpful_tips/7084画像生成AI学習防止ツール「emamori」と「Glaze」でクリエイターの権利を守る(後編)
https://www.mdn.co.jp/web/helpful_tips/7085
AI学習に対してのアーティストからの “NO” の声
「Cara」がクリエイターに注目された背景には、「InstagramやFacebookを運営するMeta社がユーザーの投稿をAIのトレーニングに使う」「オプトアウトの方法が非常に面倒で不確実」と一部メディアやユーザーが報じ、日本国内でもSNSで噂・伝聞として爆発的に広まったことがあります。
「Bringing Generative AI Experiences to People in Europe」
Meta社発表/2024年5月22日(水)
https://about.fb.com/news/h/bringing-generative-ai-experiences-to-people-in-europe/「New AI Tools, Meta Verified and More for Businesses on WhatsApp」
Meta社発表/2024年6月6日(木)
https://about.fb.com/news/2024/06/new-ai-tools-meta-verified-and-more-for-businesses-on-whatsapp/また、AIのトレーニングについては、2024年6月10日(月)のプレスリリースで説明されており、さまざまな補足はあるものの、その中で「Models may be trained on people’s publicly shared posts(モデルは人々が公開した投稿に基づいてトレーニングされる可能性がある)」といった記述は見られます。
「Building AI Technology for Europeans in a Transparent and Responsible Way」
Meta社発表/2024年6月10日(月)
https://about.fb.com/news/2024/06/building-ai-technology-for-europeans-in-a-transparent-and-responsible-way/これらの姿勢に大きく反応(抵抗)したのが、Instagramで日常的に作品を投稿しているクリエイターたちでした。Instagramからの派生サービスであるThreadsでは、連日にわたり特に多くの不安の声が上がっていました。
今後の進化に期待の新しいプラットフォーム
「Cara」は日本語には対応していませんが、アプリのダウンロードや登録自体は、割と簡単に進められます。投稿についても既存のSNSに慣れているユーザーであれば、さほど問題なく直感的に操作できるでしょう。プラットフォーム全体では、やはりイラスト作品の投稿が圧倒的に多いように感じられました。「Bluesky」では最近になってDMの機能が実装されて再び注目されましたが、「Cara」にはあらかじめ既にメッセージ機能や通知機能も用意されています。




なお、肝となるAIのフィルタリングなどについては、今後じっくりと時間をかけて検証していく必要があり、5月29日(水)の時点での報告では、セキュリティ対策のため「Glaze は一時的に無効になっています」ともアナウンスされています。

「Cara」については大きな期待の声が上がる一方で、「イラストレーターたちには注目されているが、そのほかの多くのユーザーが参加するかどうかは予想できない」「日本語対応でないのがつらい」といった感想も聞こえてきます。さらに、ただでさえSNSが乱立している中で「また新しいSNSを始めなければいけないのか……」といった “SNS疲れ” を感じるクリエイターが増えていることも確かです。
とはいえ、AI問題に一石を投じる試みであることは確実で、今後の動向も注視していきたいプラットフォームであるように感じられました。
Cara Project
URL:https://cara.app/
2024/06/14
