2024年にクリエイティブ業界で注目を集めたトピックの一つが、Canvaの興隆とCanvaをプロユースで利用して活躍する若手クリエイターや一般ユーザーの増加です。Adobe Creative Cloudの料金値上げをきっかけに解約するユーザーが増える一方、Canvaは多くの企業に導入され、その普及率が急速に高まっています。
しかし、Canvaの存在感が増す中で、Adobeがプロユースのクリエイティブツールとして蓄積してきた高度な機能や豊富なリソースに改めて価値を見出すクリエイターも少なくありません。特にSNSでは、Adobeツールの優位性を再評価する意見も多く見られます。また、誰もが手軽に利用できるクリエイティブツールとしてCanvaではなくAdobe Expressを推奨する声も増加しています。そこで本記事では、CanvaとAdobe Expressの違いについてクリエイター視点で比較・検証し、それぞれの特徴や違いを徹底解説します。
目次
▶ユーザーのターゲット層や用途の違い
【Canvaの特徴】
Canvaは、主に初心者から中級者まで幅広いユーザーを対象としたオンラインのデザインツールです。ドラック&ドロップ操作などにより、直感的な操作が可能で手軽に利用できるため、専門知識がないノンデザイナーの方でもプロフェッショナルな見た目の作品を簡単に制作することが可能です。また、動画編集、プレゼン資料の制作、ホワイトボード機能、SNS向けのコンテンツ制作など、DTPやWebデザイン以外の領域も広くカバーしています。さらに、複数人での共同編集機能や、豊富なテンプレート・素材ライブラリを提供し、デザイン経験の少ない人にとっても使い勝手が良いので、ビジネスシーンにおける簡易的なクリエイティブツールとして急速に普及率が高まっています。
Canvaのホーム画面Canvaについては、本連載の過去記事「低コストで誰でも簡単にデザインができるオンラインツール「Canva」の基礎知識と使い方」でも詳しく解説していますので、そちらも参考にしてみてください。
【Adobe Expressの特徴】
一方、Adobe Expressは、Adobeが提供するオンラインデザインツールです。ライトユーザー向けであると認識されることが多いツールですが、Adobeのフォントやストック素材が利用できるほか、PhotoshopやIllustratorなどのAdobe製品との連携がスムーズで、プロのクリエイターにも適した設計となっているツールです。
Adobe Expressのホーム画面▶CanvaとAdobe Expressの料金プランの比較
【Canvaの料金プラン】
Canvaのプランは「個人およびチーム」と「教育版」に分かれており、「個人およびチーム」には、無料で利用できる「Canva無料」、一人あたり年額11,800円(3人以上は年額45,000円)で利用できる「Canvaチームス」、価格については問い合わせが必要な大規模企業向けの「Canvaエンタープライズ」が提供されています。
無料プランでも基本的な機能や一部のテンプレート・素材は利用できますが、高度な編集機能の多くは有料プランに加入することで利用可能になります。
Canvaの料金プランCanvaの料金プラン
Canva無料CanvaプロCanvaチームスCanvaエンタープライズ価格0円/年間11,800円/年間、1人あたり15,000円/年間、1人あたり(3人以上は45,000円/年間)料金は問い合わせテンプレート200万以上450万以上450万以上450万以上素材300万以上1.3億以上1.3億以上1.3億以上生成AI一部を利用可能すべてを利用可能すべてを利用可能すべてを利用可能印刷デザインをCMYKとしてエクスポート✕◯◯◯ストレージ5GB1TB1TB1TBサポートAIアシスタント、
チャットボットオンラインカスタ
マーサポートあり オンラインカスタ
マーサポートあり優先的なカスタマーサポート・デザインサポート・専属のCSマネージャー※料金プランの内容については変更の可能性もあります。詳細については公式サイトにあるCanvaの料金プランページもご自身でご確認ください。上記のプランの他に、教育機関向けに教育版のプランが提供されています。
【Adobe Expressの料金プラン】
Adobe Expressの「個人およびグループ向け」のプランには「無料プラン」、月額1,180円の「プレミアムプラン」、一人あたり月額700円(初年度のみ月額400円)の「グループ版」の3つのプランが提供されています。「法人向け」には一人あたり月額700円(初年度のみ月額400円)の「グループ版」と、価格については問い合わせが必要な大規模企業向けの「エンタープライズ」版が提供されています。
年額のCanvaと異なり、Adobe Expressの料金プランは月額になりますので、比較する場合は年間料金に換算する必要があります。単純比較はできませんが、Adobeのプレミアムプランが1,180円✕12で年額14,160円となることを考えると、同等のプランと思われるCanvaプロの料金11,800円よりもやや高いランニングコストがかかることになると思われます。後述しますが、利用可能なフォントの種類やストレージの容量などに大きな違いがあります。Adobe Expressのほうが割高に感じるユーザーもいると思いますが、利用目的・環境によっては、大きな価格差ではなくAdobe Expressのサービス内容にお得感を感じるユーザーも多いかもしれません。
Adobe Expressの料金プランAdobe Expressの料金プラン
無料プランプレミアムプラングループ版価格0円/月1,180円/月 (税込)700円(→初年度のみ400円)1人当たり、月額 (税別)テンプレート10万点以上の画像・動画用テンプレートを利用可能無料プランで提供されているテンプレートに加え画像・動画用のプレミアムテンプレートをすべて利用可能無料プランで提供されているテンプレートに加え画像・動画用のプレミアムテンプレートをすべて利用可能アセット100万点以上の限定コレクションを利用可能 2億点以上ものロイヤリティフリー素材を利用可能 2億点以上ものロイヤリティフリー素材を利用可能フォント1,000種類以上のカスタムフォントへのアクセス25,000種類以上のカスタムフォントへのアクセス25,000種類以上のカスタムフォントへのアクセス編集ツール写真、動画、ドキュメントを編集動画の背景削除ツール、高度なアニメーションツールなども利用可能動画の背景削除ツール、高度なアニメーションツールなども利用可能バージョン履歴10日30日180日ストレージ5GB100GB1ユーザーあたり1TB(組織用に容量をプール)生成AI機能なしありあり
※料金プランの内容については変更の可能性もあります。詳細については公式サイトにあるAdobe Expressの料金プランページもご自身でご確認ください。上記のプランの他に、法人向け、学生向け、教育機関向け、非営利団体向けのプランが提供されています。
※筆者が無料プランを実際に使ってみた比較・検証記事となっていますので、有料プランの機能やツールの存在なども含めて十分にカバーできていない可能性もあります。本記事をもとに、実際にご自身でも使い勝手を検証されることをお勧めします。
▶画像編集機能
【Canvaの画像編集機能】
印刷に関する画像編集は、フィルター機能、エフェクト機能、透明度調整機能などが搭載されています。また、画像素材も豊富で、例えば「いらすとや」のイラスト素材が無料で使い放題で利用できます。さらに、有料プランには、生成AIを使った機能が充実しているので、一般ユーザーであっても人物の切り抜きなど、専門性を要する編集にも対応できるようになります。ただし、生成AIイラストに関しては、不正なトレーニングによるものである可能性もあり、現時点では企業ブランディングにおいてマイナスになるリスクもあるので、注意して利用することが大切です。
様々な画像編集機能が搭載されたCanva【Adobe Expressの画像編集機能】
Adobe Expressの無料プランでは背景を削除した切り抜き画像を作成する編集機能が利用可能です。
簡単に背景を削除する機能を搭載したAdobe Express▶テキスト編集機能
【Canvaのテキスト編集機能】
Canvaの印刷向けフォーマットでのテキスト編集パネルには「フォントの種類」「文字サイズの調整」「テキストカラー」「太字」「斜体」「下線」「取り消し線」「大文字・小文字の切り替え」「配置(揃え)」「箇条書き」「スペース」「縦書きのテキスト」「透明度」「エフェクト」「アニメート」といった機能が揃っています。
テキスト編集には「縦書きのテキスト」という編集機能があり、日本語の縦書き文書にも対応しています。また、日本でのユーザーも増えていく中で、日本語環境向けのテンプレートも数多く提供されるようになってきており、その中には縦書きにレイアウトされたテンプレートも数多く提供されています。
年賀状のテンプレートなど、縦書きに対応したものが増えているさらに、SNS投稿などではCanvaのカーニング調整機能が十分ではないという意見もいくつか見受けられましたが、現在のバージョンでは「スペース」という機能で、文字間隔や行間隔の微調整ができるようになっています。
Canvaでも文字間隔や行間隔の調整は可能【Adobe Expressのテキスト編集機能】
Adobe Expressは、Adobe Creative CloudのDTPソフト(Photoshop、Illustrator、InDesign)とかなり近いテキスト編集機能を搭載しています。フォントはAdobeの提供するフォントや、フリーフォントを利用することが可能で選択肢が豊富にあります。
日本語編集に強いAdobe Expressまた、Adobe Expressでも、文字間隔、行間隔、段落間隔などデザイナーがこだわるポイントでもあるカーニングの微調整が可能です。加えて、Adobe Expressの大きな強みは、フォントライブラリの豊富さです。Canvaもカーニング調整機能が強化・改善されていますので、テキスト編集においてAdobe Expressとの差は埋まりつつありますが、フォントの選択肢の豊富さに関しては、Adobeフォントが利用可能なAdobe Expressに軍配が上がるでしょう。
Adobe Expressでも文字間隔、行間隔、段落間隔などが調整可能▶印刷への出力やPDF作成
【Canvaの出力】
Canvaで印刷物を作成する場合は、基本的に印刷用のフォーマットを選択してデザインを作成することが推奨されます。作成したデザインは、画面上部にある「Canvaで印刷する」というボタンをクリックすることで、Canvaが提供する印刷サービスを利用して印刷ができます。
また、Canvaが提供する印刷サービスを利用する以外にも、作成したデータをダウンロードして印刷出力する方法もあります。Canvaでは、作成したファイルをダウンロードする際に、「PDF(標準)」「PDF(印刷)」「PNG」「JPG」「Microsoft PowerPoint(PPTX)」「Microsoft Word(DOCX)」などのファイル形式を選択できます。印刷用途のファイルとしてダウンロードしたい場合は「PDF(印刷)」を選択します。この「PDF(印刷)」では、より高品質な解像度で出力され、トリムマーク(裁ち落とし)と塗り足しを含む設定も可能です。
ただし、無料プランでは、CMYKカラープロファイルに対応しておらず、RGBカラーモードで出力されるため色の再現性に問題が生じる可能性があります。社内用のプリンターで印刷する場合や、非商業的な用途での利用には特に問題はありませんが、外部の印刷所やプリントサービスで利用するデータ作成には制約があるという点は留意しておきましょう。印刷向けのデータを作成するためには、有料プランに加入することをお勧めします。
Canvaが提供する印刷サービスを利用して印刷が可能【Adobe Expressの出力】
続いて、Adobe Expressでは作成したファイルをダウンロードする際に、ファイル形式をPDFに設定することができます。PDFには「PDF規格(ドキュメント向け)」と「PDF印刷(印刷向け)」という形式から選択できるようになっており、「PDF印刷(印刷向け)」が印刷用途で用いられるファイル形式になります。「PDF印刷(印刷向け)」では、印刷後にトリミングしやすいように「内トンボを追加」「裁ち落としを表示」といった設定を追加することも可能です。
これらの機能は無料プランでも利用可能で、社内のコピー機や家庭用プリンタを使用した出力においては問題のないデータが作成できます。ただし、「PDF印刷(印刷向け)」については、印刷所やプリントサービスに提出可能なPDFの形式かどうかまでは、私が調べた限りAdobe公式ドキュメント等に明確な記載が確認できませんでした。そのため、入稿に使用する際は、事前に印刷所の対応可能なファイル仕様であるかを確認することをお勧めします。
また、「PDF印刷(印刷向け)」で出力したデータは、完全データとして入稿に必要な条件(例えばフォントの埋め込み、カラープロファイルの適切な設定、オーバープリントの確認など)のすべてを満たしていない可能性があります。ただし、Adobeのツールで作成したデータであるため、一部の印刷所ではAdobeのDTPソフトを使用して調整し、印刷対応が可能な場合もあるかと思われますので、印刷所に直接問い合わせ等で確認してみましょう。
「PDF印刷(印刷向け)」という形式で印刷用データを出力できるAdobe Express▶小まとめ
印刷に関しては、印刷所やプリントサービスといった入稿受け入れ側の環境に依存します。そのため、印刷用途に関してはAdobeのサービスのほうがメリットが多いと考えられます。編集ツール機能等も、Adobe Expressのほうが、よりプロユースに近いデザインを実現できるツールであると言えるでしょう。ただし、Canvaも日本のユーザーが一気に増加したことで、思った以上に日本語編集向けの機能が強化されています。今後も機能改善が図られていく可能性も高く、印刷出力以外で両者の違いは少なくなってきていると認識を改める必要があるでしょう。
▶画像・動画編集機能
【Canvaの画像・動画編集】
Webサイト用のテンプレートや素材、SNS投稿用のテンプレートや素材などが数多く提供されています。Webサイト用には、ボタン、アイコンなどWeb用のグラフィック素材も多数提供されています。
様々な画像編集機能に加え豊富な素材も提供されている【Adobe Expressの画像・動画編集】
Webサイト用のテンプレートや素材、SNS投稿用のテンプレートや素材などが数多く提供されています。また、Instagramの画像投稿、ストーリーズやリール向けの画像・動画制作などSNS向けのコンテンツ制作にも対応しています。その他にも、キャラクターアニメーションを作成する機能などが搭載されています。
Adobe Stockの画像素材も利用できるAdobe Express▶テキスト編集機能
【Canvaのテキスト編集】
CanvaのWebページ制作は、テンプレートの利用だけでなく、白紙からも制作可能です。テキスト編集のパネルは、印刷向けのフォーマットと同様の機能です。フォントもCanvaの提供する豊富なフォントライブラリの中から選択できます。フリーフォントを中心に、日本語フォントも数多く提供されており、幅広いデザインに対応可能になっています。
CanvaのWebページ用のテキスト編集は印刷向けのフォーマットと同様【Adobe Expressのテキスト編集】
Adobe ExpressのWebページの制作では、テキスト編集は非常に簡易的な内容となっており「見出しレベルの設定」「引用」「リスト」「太字」「斜体」「リンク」「揃え」のみが変更可能な文字ツールパネルとなっています。私が使ってみた限りでは、オプション等でフォントの種類が変更もできないようでした。Webページに関しては、フォントの種類を選択できる印刷向けの編集に比べて自由度が低くなっているので、Adobe Expressのテキスト編集に優位性はないように感じます。
Adobe ExpressのWebページフォーマットのテキスト編集▶Webへの実装機能
【Canvaの実装】
無料プランの場合、Canvaで作成したWebページをウェブサイトに公開するには「.my.canva.site」というCanvaの提供するドメインサーバー上にアップすることしかできないため、実装機能としては不十分です。自身の保有しているカスタムドメインに、Webページを公開するには、有料プランに加入する必要があります。作成したファイルをHTMLやCSSとして書き出しすることもできないので、実装機能という側面では難があるといって差し支えないでしょう。
CanvaでWebサイトに公開する方法【Adobe Expressの実装】
Adobe Creative Cloudのアカウントを保有していれば、作成したファイルをWebに公開して共有することも簡単です。また、Canvaと同様にファイルを直接カスタムドメインにアップロードするといった機能は搭載されていませんが、プレビュー機能でWebページをブラウザに表示させ、ブラウザのディベロッパーツールからHTMLやCSSのコードを取得することは可能です。
簡単に公開リンクを作成可能なAdobe Express▶小まとめ
Webページに関しては、Canvaのほうが、自由度が高いデザインが可能であると個人的に感じました。Adobe Expressに関しては、AdobeがWebデザインツールに関する開発が事実上ストップしている事情もあってか、簡易的な機能のみに対応しているといった印象を受けました。しかし、Figmaを使っている方にとっては、CanvaでわざわざWebページをする必要があるのかといった疑問は残ります。Figmaも比較的導入しやすく、一般ユーザーにとっても使いやすいツールですので、Webページ編集に関するCanvaのライバルはAdobe ExpressではなくFigmaであると考えた方が良いかもしれません。
▶Canvaのメリット・デメリット
【メリット】
1.普及率が急速に高まりつつある
Canvaは世界中で広く利用されており、日本国内でも、ノンデザイナーを中心にビジネスツールとして普及が進んでいます。このため、クライアントや他のチームメンバーと共有して作業する環境が整いつつあります。また、Canvaを活用したデザイン依頼、クリエイティブ制作依頼も増加傾向にあり、特にこれからクリエイティブ業界に新規参入していく若手のクリエイターにとっては重要なツールであると言えるでしょう。
2.豊富なテンプレートを利用できる
Canvaには豊富なテンプレートが提供されており、それらを活用することで、デザインの専門知識のない人でも、比較的容易に高品質な制作物を作成することが可能です。
【デメリット】
1.無料プランでは機能が制限されている
無料プランでは、Adobe Expressに比べて高度な機能が制限されています。特に商業用途ややプロユースでの利用は、有料プランへの加入が必須です。また、商業印刷において機能面で不足している部分や制限があり、プロフェッショナルな用途には向かない場合があります。
▶Adobe Expressのメリット・デメリット
【メリット】
1.クライアント企業における互換性
Adobe ExpressはAdobe Creative Cloudと互換性があるため、Adobeツールを使用してきた制作物を活用したい企業にとって便利である点がメリットです。また、クリエイターや制作会社がAdobeツールを主に利用しているため、それらと連携が取りやすいという点も強みの一つです。特に外部のクリエイターに依頼する可能性が高い企業では、Adobe Expressを採用することで、スムーズなデータ受け渡しが可能になります。
2.コストパフォーマンスの高さ
Adobe Creative Cloudの値上げもあり、一部で「Adobe税」と揶揄されていますが、Adobe Expressは、無料プランでも多くの機能が利用でき、有料プランも比較的良心的な価格設定です。特に、背景の削除やオブジェクトの除去といった画像編集機能をはじめとして、多くの高性能・高品質な機能が搭載されているため、ビジネス用途にも十分に対応可能です。
3.充実したフォントライブラリとストック素材
Adobeが提供する充実したフォントライブラリを利用できるため、フォントの選択肢が豊富で、幅広いデザインに対応できます。また、Adobe Stockで提供されているハイクオリティな素材やテンプレートを利用できるのも魅力の一つです。
【デメリット】
1.普及率の低さ
Canvaと比較するとAdobe Expressのユーザー数は少なく、特に日本国内での普及率が伸び悩んでいます。そのため、クライアントや他のチームメンバーとデータの共有を行う際などに不便を感じる可能性があります。
2.ストレージ容量の少なさ
有料プランのストレージ容量がCanvaと比較して少ないため、大量のデータをクラウドで管理したい場合には不向きです。
今回改めて比較・検証してみてた結果、CanvaとAdobeの間で良い方向での競争原理が機能し始めていることを実感しました。Canvaは頻繁な機能アップデートにより、迅速にユーザーのニーズに対応しています。一方、Adobeは、Creative Cloudで最新機能を提供しつつ、Adobe Expressのような幅広い層向けのツールでは、蓄積されたノウハウと豊富なリソースを活かし、高い完成度のデザインを容易に作成できる環境を提供することで、その優位性を保つよう努めているように見受けられます。
印刷用途においは、Adobeの優位性は依然として高いものの、Canvaの普及に伴い、印刷関連業者もCanvaで作成したデータに柔軟に対応できる体制を整える必要が出てきたように思います。また、デザイナーにとっても、クライアントの要望に応じてCanvaで印刷データを作成できるようにするスキルも求められるようになってくるでしょう。
加えて、Canvaの利用拡大は、デザインツールに慣れたノンデザイナーのユーザー数の増加にも貢献していると考えられ、より高性能な機能を無料で利用できるAdobe Expressに関しても追い風が吹いているとも捉えることができると思います。
発注者と受注者の関係性によって、CanvaとAdobe Expressのどちらを選択すべきかは異なりますが、受注者であるクリエイターは両者を使い分けられるようになっておくことが今後のクリエイティブワークにおいて重要なスキルになっていくかもしれません。両者の違いや特徴を明確にするうえで、本記事を参考にしていただければ幸いです。
これによりAdobeが長年君臨してきたクリエイティブツール業界一強の牙城が揺らぎ始めています。
しかし、Canvaの存在感が増す中で、Adobeがプロユースのクリエイティブツールとして蓄積してきた高度な機能や豊富なリソースに改めて価値を見出すクリエイターも少なくありません。特にSNSでは、Adobeツールの優位性を再評価する意見も多く見られます。また、誰もが手軽に利用できるクリエイティブツールとしてCanvaではなくAdobe Expressを推奨する声も増加しています。そこで本記事では、CanvaとAdobe Expressの違いについてクリエイター視点で比較・検証し、それぞれの特徴や違いを徹底解説します。
目次
CanvaとAdobe Expressの基本的な特徴と違い
最初に、CanvaとAdobe Expressについて、ユーザー層の違い、料金プランの違いといった基本情報をおさらいしておきましょう。▶ユーザーのターゲット層や用途の違い
【Canvaの特徴】
Canvaは、主に初心者から中級者まで幅広いユーザーを対象としたオンラインのデザインツールです。ドラック&ドロップ操作などにより、直感的な操作が可能で手軽に利用できるため、専門知識がないノンデザイナーの方でもプロフェッショナルな見た目の作品を簡単に制作することが可能です。また、動画編集、プレゼン資料の制作、ホワイトボード機能、SNS向けのコンテンツ制作など、DTPやWebデザイン以外の領域も広くカバーしています。さらに、複数人での共同編集機能や、豊富なテンプレート・素材ライブラリを提供し、デザイン経験の少ない人にとっても使い勝手が良いので、ビジネスシーンにおける簡易的なクリエイティブツールとして急速に普及率が高まっています。

【Adobe Expressの特徴】
一方、Adobe Expressは、Adobeが提供するオンラインデザインツールです。ライトユーザー向けであると認識されることが多いツールですが、Adobeのフォントやストック素材が利用できるほか、PhotoshopやIllustratorなどのAdobe製品との連携がスムーズで、プロのクリエイターにも適した設計となっているツールです。
また、有料プランは主に高度なオプション機能、プレミアムのテンプレート、手厚いカスタマーサポートが追加された上位プランであり、無料プランでも商業用途の制作をサポートする基本機能が十分に揃っている使い勝手の良いサービスです。

【Canvaの料金プラン】
Canvaのプランは「個人およびチーム」と「教育版」に分かれており、「個人およびチーム」には、無料で利用できる「Canva無料」、一人あたり年額11,800円(3人以上は年額45,000円)で利用できる「Canvaチームス」、価格については問い合わせが必要な大規模企業向けの「Canvaエンタープライズ」が提供されています。
無料プランでも基本的な機能や一部のテンプレート・素材は利用できますが、高度な編集機能の多くは有料プランに加入することで利用可能になります。

Canva無料CanvaプロCanvaチームスCanvaエンタープライズ価格0円/年間11,800円/年間、1人あたり15,000円/年間、1人あたり(3人以上は45,000円/年間)料金は問い合わせテンプレート200万以上450万以上450万以上450万以上素材300万以上1.3億以上1.3億以上1.3億以上生成AI一部を利用可能すべてを利用可能すべてを利用可能すべてを利用可能印刷デザインをCMYKとしてエクスポート✕◯◯◯ストレージ5GB1TB1TB1TBサポートAIアシスタント、
チャットボットオンラインカスタ
マーサポートあり オンラインカスタ
マーサポートあり優先的なカスタマーサポート・デザインサポート・専属のCSマネージャー※料金プランの内容については変更の可能性もあります。詳細については公式サイトにあるCanvaの料金プランページもご自身でご確認ください。上記のプランの他に、教育機関向けに教育版のプランが提供されています。
【Adobe Expressの料金プラン】
Adobe Expressの「個人およびグループ向け」のプランには「無料プラン」、月額1,180円の「プレミアムプラン」、一人あたり月額700円(初年度のみ月額400円)の「グループ版」の3つのプランが提供されています。「法人向け」には一人あたり月額700円(初年度のみ月額400円)の「グループ版」と、価格については問い合わせが必要な大規模企業向けの「エンタープライズ」版が提供されています。
年額のCanvaと異なり、Adobe Expressの料金プランは月額になりますので、比較する場合は年間料金に換算する必要があります。単純比較はできませんが、Adobeのプレミアムプランが1,180円✕12で年額14,160円となることを考えると、同等のプランと思われるCanvaプロの料金11,800円よりもやや高いランニングコストがかかることになると思われます。後述しますが、利用可能なフォントの種類やストレージの容量などに大きな違いがあります。Adobe Expressのほうが割高に感じるユーザーもいると思いますが、利用目的・環境によっては、大きな価格差ではなくAdobe Expressのサービス内容にお得感を感じるユーザーも多いかもしれません。

無料プランプレミアムプラングループ版価格0円/月1,180円/月 (税込)700円(→初年度のみ400円)1人当たり、月額 (税別)テンプレート10万点以上の画像・動画用テンプレートを利用可能無料プランで提供されているテンプレートに加え画像・動画用のプレミアムテンプレートをすべて利用可能無料プランで提供されているテンプレートに加え画像・動画用のプレミアムテンプレートをすべて利用可能アセット100万点以上の限定コレクションを利用可能 2億点以上ものロイヤリティフリー素材を利用可能 2億点以上ものロイヤリティフリー素材を利用可能フォント1,000種類以上のカスタムフォントへのアクセス25,000種類以上のカスタムフォントへのアクセス25,000種類以上のカスタムフォントへのアクセス編集ツール写真、動画、ドキュメントを編集動画の背景削除ツール、高度なアニメーションツールなども利用可能動画の背景削除ツール、高度なアニメーションツールなども利用可能バージョン履歴10日30日180日ストレージ5GB100GB1ユーザーあたり1TB(組織用に容量をプール)生成AI機能なしありあり
※料金プランの内容については変更の可能性もあります。詳細については公式サイトにあるAdobe Expressの料金プランページもご自身でご確認ください。上記のプランの他に、法人向け、学生向け、教育機関向け、非営利団体向けのプランが提供されています。
印刷系の基本機能の比較(画像・テキスト・PDF・出力関連)
ここからは基本機能について両者を比較します。すべてを網羅することは難しいので、本記事では印刷関連の基本機能と、Web関連の基本機能について詳しく比較・検証します。まずは、印刷関連について以下に説明します。※筆者が無料プランを実際に使ってみた比較・検証記事となっていますので、有料プランの機能やツールの存在なども含めて十分にカバーできていない可能性もあります。本記事をもとに、実際にご自身でも使い勝手を検証されることをお勧めします。
▶画像編集機能
【Canvaの画像編集機能】
印刷に関する画像編集は、フィルター機能、エフェクト機能、透明度調整機能などが搭載されています。また、画像素材も豊富で、例えば「いらすとや」のイラスト素材が無料で使い放題で利用できます。さらに、有料プランには、生成AIを使った機能が充実しているので、一般ユーザーであっても人物の切り抜きなど、専門性を要する編集にも対応できるようになります。ただし、生成AIイラストに関しては、不正なトレーニングによるものである可能性もあり、現時点では企業ブランディングにおいてマイナスになるリスクもあるので、注意して利用することが大切です。

Adobe Expressの無料プランでは背景を削除した切り抜き画像を作成する編集機能が利用可能です。
また、消しゴムで一部を透過したり、オブジェクトを削除・挿入したりすることもできます。生成AI機能を利用するためには有料プランに加入する必要がありますが、人物の切り抜きや不要なオブジェクトの削除がワンクリックで実現できる機能を無料プランで提供しているのは、さすがAdobeといったところでしょうか。これらの機能が利用できるといった点だけでも、Adobe Expressを利用する価値があると言えます。

【Canvaのテキスト編集機能】
Canvaの印刷向けフォーマットでのテキスト編集パネルには「フォントの種類」「文字サイズの調整」「テキストカラー」「太字」「斜体」「下線」「取り消し線」「大文字・小文字の切り替え」「配置(揃え)」「箇条書き」「スペース」「縦書きのテキスト」「透明度」「エフェクト」「アニメート」といった機能が揃っています。
テキスト編集には「縦書きのテキスト」という編集機能があり、日本語の縦書き文書にも対応しています。また、日本でのユーザーも増えていく中で、日本語環境向けのテンプレートも数多く提供されるようになってきており、その中には縦書きにレイアウトされたテンプレートも数多く提供されています。


Adobe Expressは、Adobe Creative CloudのDTPソフト(Photoshop、Illustrator、InDesign)とかなり近いテキスト編集機能を搭載しています。フォントはAdobeの提供するフォントや、フリーフォントを利用することが可能で選択肢が豊富にあります。


【Canvaの出力】
Canvaで印刷物を作成する場合は、基本的に印刷用のフォーマットを選択してデザインを作成することが推奨されます。作成したデザインは、画面上部にある「Canvaで印刷する」というボタンをクリックすることで、Canvaが提供する印刷サービスを利用して印刷ができます。
また、Canvaが提供する印刷サービスを利用する以外にも、作成したデータをダウンロードして印刷出力する方法もあります。Canvaでは、作成したファイルをダウンロードする際に、「PDF(標準)」「PDF(印刷)」「PNG」「JPG」「Microsoft PowerPoint(PPTX)」「Microsoft Word(DOCX)」などのファイル形式を選択できます。印刷用途のファイルとしてダウンロードしたい場合は「PDF(印刷)」を選択します。この「PDF(印刷)」では、より高品質な解像度で出力され、トリムマーク(裁ち落とし)と塗り足しを含む設定も可能です。
ただし、無料プランでは、CMYKカラープロファイルに対応しておらず、RGBカラーモードで出力されるため色の再現性に問題が生じる可能性があります。社内用のプリンターで印刷する場合や、非商業的な用途での利用には特に問題はありませんが、外部の印刷所やプリントサービスで利用するデータ作成には制約があるという点は留意しておきましょう。印刷向けのデータを作成するためには、有料プランに加入することをお勧めします。

続いて、Adobe Expressでは作成したファイルをダウンロードする際に、ファイル形式をPDFに設定することができます。PDFには「PDF規格(ドキュメント向け)」と「PDF印刷(印刷向け)」という形式から選択できるようになっており、「PDF印刷(印刷向け)」が印刷用途で用いられるファイル形式になります。「PDF印刷(印刷向け)」では、印刷後にトリミングしやすいように「内トンボを追加」「裁ち落としを表示」といった設定を追加することも可能です。
これらの機能は無料プランでも利用可能で、社内のコピー機や家庭用プリンタを使用した出力においては問題のないデータが作成できます。ただし、「PDF印刷(印刷向け)」については、印刷所やプリントサービスに提出可能なPDFの形式かどうかまでは、私が調べた限りAdobe公式ドキュメント等に明確な記載が確認できませんでした。そのため、入稿に使用する際は、事前に印刷所の対応可能なファイル仕様であるかを確認することをお勧めします。
また、「PDF印刷(印刷向け)」で出力したデータは、完全データとして入稿に必要な条件(例えばフォントの埋め込み、カラープロファイルの適切な設定、オーバープリントの確認など)のすべてを満たしていない可能性があります。ただし、Adobeのツールで作成したデータであるため、一部の印刷所ではAdobeのDTPソフトを使用して調整し、印刷対応が可能な場合もあるかと思われますので、印刷所に直接問い合わせ等で確認してみましょう。

印刷に関しては、印刷所やプリントサービスといった入稿受け入れ側の環境に依存します。そのため、印刷用途に関してはAdobeのサービスのほうがメリットが多いと考えられます。編集ツール機能等も、Adobe Expressのほうが、よりプロユースに近いデザインを実現できるツールであると言えるでしょう。ただし、Canvaも日本のユーザーが一気に増加したことで、思った以上に日本語編集向けの機能が強化されています。今後も機能改善が図られていく可能性も高く、印刷出力以外で両者の違いは少なくなってきていると認識を改める必要があるでしょう。
Web系の基本機能の比較(画像・動画・テキスト・実装関連)
次にWeb関連の基本機能について詳しく比較・検証します。▶画像・動画編集機能
【Canvaの画像・動画編集】
Webサイト用のテンプレートや素材、SNS投稿用のテンプレートや素材などが数多く提供されています。Webサイト用には、ボタン、アイコンなどWeb用のグラフィック素材も多数提供されています。
また、無料プランでもアニメーションで動きを追加できるアニメート機能を利用できるなど、高度な画像編集機能が多数搭載されています。

Webサイト用のテンプレートや素材、SNS投稿用のテンプレートや素材などが数多く提供されています。また、Instagramの画像投稿、ストーリーズやリール向けの画像・動画制作などSNS向けのコンテンツ制作にも対応しています。その他にも、キャラクターアニメーションを作成する機能などが搭載されています。

【Canvaのテキスト編集】
CanvaのWebページ制作は、テンプレートの利用だけでなく、白紙からも制作可能です。テキスト編集のパネルは、印刷向けのフォーマットと同様の機能です。フォントもCanvaの提供する豊富なフォントライブラリの中から選択できます。フリーフォントを中心に、日本語フォントも数多く提供されており、幅広いデザインに対応可能になっています。

Adobe ExpressのWebページの制作では、テキスト編集は非常に簡易的な内容となっており「見出しレベルの設定」「引用」「リスト」「太字」「斜体」「リンク」「揃え」のみが変更可能な文字ツールパネルとなっています。私が使ってみた限りでは、オプション等でフォントの種類が変更もできないようでした。Webページに関しては、フォントの種類を選択できる印刷向けの編集に比べて自由度が低くなっているので、Adobe Expressのテキスト編集に優位性はないように感じます。

【Canvaの実装】
無料プランの場合、Canvaで作成したWebページをウェブサイトに公開するには「.my.canva.site」というCanvaの提供するドメインサーバー上にアップすることしかできないため、実装機能としては不十分です。自身の保有しているカスタムドメインに、Webページを公開するには、有料プランに加入する必要があります。作成したファイルをHTMLやCSSとして書き出しすることもできないので、実装機能という側面では難があるといって差し支えないでしょう。

Adobe Creative Cloudのアカウントを保有していれば、作成したファイルをWebに公開して共有することも簡単です。また、Canvaと同様にファイルを直接カスタムドメインにアップロードするといった機能は搭載されていませんが、プレビュー機能でWebページをブラウザに表示させ、ブラウザのディベロッパーツールからHTMLやCSSのコードを取得することは可能です。

Webページに関しては、Canvaのほうが、自由度が高いデザインが可能であると個人的に感じました。Adobe Expressに関しては、AdobeがWebデザインツールに関する開発が事実上ストップしている事情もあってか、簡易的な機能のみに対応しているといった印象を受けました。しかし、Figmaを使っている方にとっては、CanvaでわざわざWebページをする必要があるのかといった疑問は残ります。Figmaも比較的導入しやすく、一般ユーザーにとっても使いやすいツールですので、Webページ編集に関するCanvaのライバルはAdobe ExpressではなくFigmaであると考えた方が良いかもしれません。
CanvaとAdobe Expressのメリット・デメリット
両者の違いや特徴がわかったところで、それぞれのメリット・デメリットについても検証しておきましょう。▶Canvaのメリット・デメリット
【メリット】
1.普及率が急速に高まりつつある
Canvaは世界中で広く利用されており、日本国内でも、ノンデザイナーを中心にビジネスツールとして普及が進んでいます。このため、クライアントや他のチームメンバーと共有して作業する環境が整いつつあります。また、Canvaを活用したデザイン依頼、クリエイティブ制作依頼も増加傾向にあり、特にこれからクリエイティブ業界に新規参入していく若手のクリエイターにとっては重要なツールであると言えるでしょう。
2.豊富なテンプレートを利用できる
Canvaには豊富なテンプレートが提供されており、それらを活用することで、デザインの専門知識のない人でも、比較的容易に高品質な制作物を作成することが可能です。
【デメリット】
1.無料プランでは機能が制限されている
無料プランでは、Adobe Expressに比べて高度な機能が制限されています。特に商業用途ややプロユースでの利用は、有料プランへの加入が必須です。また、商業印刷において機能面で不足している部分や制限があり、プロフェッショナルな用途には向かない場合があります。
▶Adobe Expressのメリット・デメリット
【メリット】
1.クライアント企業における互換性
Adobe ExpressはAdobe Creative Cloudと互換性があるため、Adobeツールを使用してきた制作物を活用したい企業にとって便利である点がメリットです。また、クリエイターや制作会社がAdobeツールを主に利用しているため、それらと連携が取りやすいという点も強みの一つです。特に外部のクリエイターに依頼する可能性が高い企業では、Adobe Expressを採用することで、スムーズなデータ受け渡しが可能になります。
2.コストパフォーマンスの高さ
Adobe Creative Cloudの値上げもあり、一部で「Adobe税」と揶揄されていますが、Adobe Expressは、無料プランでも多くの機能が利用でき、有料プランも比較的良心的な価格設定です。特に、背景の削除やオブジェクトの除去といった画像編集機能をはじめとして、多くの高性能・高品質な機能が搭載されているため、ビジネス用途にも十分に対応可能です。
3.充実したフォントライブラリとストック素材
Adobeが提供する充実したフォントライブラリを利用できるため、フォントの選択肢が豊富で、幅広いデザインに対応できます。また、Adobe Stockで提供されているハイクオリティな素材やテンプレートを利用できるのも魅力の一つです。
【デメリット】
1.普及率の低さ
Canvaと比較するとAdobe Expressのユーザー数は少なく、特に日本国内での普及率が伸び悩んでいます。そのため、クライアントや他のチームメンバーとデータの共有を行う際などに不便を感じる可能性があります。
2.ストレージ容量の少なさ
有料プランのストレージ容量がCanvaと比較して少ないため、大量のデータをクラウドで管理したい場合には不向きです。
まとめ
Canvaをメインツールとするデザイナーの増加に伴い、SNS上での議論が活発化し、賛否両論が巻き起こっています。一方で、企業においてもCanvaの導入が急速に増えていることで、ベテランのクリエイターも含め、多くのクリエイターがCanvaに対応せざるを得ない状況が生まれつつあります。今回改めて比較・検証してみてた結果、CanvaとAdobeの間で良い方向での競争原理が機能し始めていることを実感しました。Canvaは頻繁な機能アップデートにより、迅速にユーザーのニーズに対応しています。一方、Adobeは、Creative Cloudで最新機能を提供しつつ、Adobe Expressのような幅広い層向けのツールでは、蓄積されたノウハウと豊富なリソースを活かし、高い完成度のデザインを容易に作成できる環境を提供することで、その優位性を保つよう努めているように見受けられます。
印刷用途においは、Adobeの優位性は依然として高いものの、Canvaの普及に伴い、印刷関連業者もCanvaで作成したデータに柔軟に対応できる体制を整える必要が出てきたように思います。また、デザイナーにとっても、クライアントの要望に応じてCanvaで印刷データを作成できるようにするスキルも求められるようになってくるでしょう。
加えて、Canvaの利用拡大は、デザインツールに慣れたノンデザイナーのユーザー数の増加にも貢献していると考えられ、より高性能な機能を無料で利用できるAdobe Expressに関しても追い風が吹いているとも捉えることができると思います。
発注者と受注者の関係性によって、CanvaとAdobe Expressのどちらを選択すべきかは異なりますが、受注者であるクリエイターは両者を使い分けられるようになっておくことが今後のクリエイティブワークにおいて重要なスキルになっていくかもしれません。両者の違いや特徴を明確にするうえで、本記事を参考にしていただければ幸いです。

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