冨田伊織 新世界「透明標本」展少しずつ昼間は暖かく感じられる日も増え、春の訪れを感じさせる季節になりました。春休みは、新しいアートとの出会いを楽しむ絶好のチャンスです。
【目次】【1】<Event Area>東京都・台東区 ほか
「変わる廃墟展」は、廃墟をアート作品へと昇華した合同写真展&物販展です。廃墟の持つ従来のイメージを大きく覆して好評を博し、2025年で開催から10周年を迎えました。ネガティブな朽ち果てた印象や心霊的な怖さではなく、廃墟の静寂の中にある美しさにスポットを当てた作品が集まります。
本展では毎年新作が発表され、今回も16組のアーティストが参加しています。Instagramで3万人のフォロワー数を超える「啝(@neji_maki_dori)」、Xで独創的な作品を発表している「toshibo(@JIYUKENKYU_jp)」など、SNSを主な舞台に活躍しているクリエイターが中心です。
会場では「啝」が手掛けた壮大な映像作品も初公開されます。ベルギーやフランスの歴史的な廃墟、日本全国の有名な廃墟、さらには世界遺産の軍艦島まで、ドローンを駆使して撮影された映像です。数々の廃墟が短編動画の中に凝縮されており、独特な物語を垣間見ることができます。
10周年を記念して、最新作を収録した特装版の公式図録も限定販売されることが決まりました。過去最大のページ数の1冊に仕上げられています。東京での会期終了後には、名古屋のTODAYS GALLERY STUDIO. NAGOYAへと巡回予定です。
期間(東京)2025年2月28日(金)~3月30日(日)開催場所(東京)TODAYS GALLERY STUDIO.
東京都台東区浅草橋5-27-6 5F 期間(名古屋)2025年4月5日(土)~4月27日(日)開催場所(名古屋)TODAYS GALLERY STUDIO. NAGOYA
愛知県名古屋市中区新栄1-17-12 URLhttp://tgs.jp.net/event/haikyo【2】<Event Area>東京都・千代田区
デビュー25周年を迎えた宇多田ヒカルさんの写真集「NINE STORIES」が、3月21日(金)に発売されます。6年ぶりの全国ツアー「SCIENCE FICTION TOUR 2024」を9人の写真家がそれぞれの視点で撮影した1冊です。その写真集の刊行を記念して、神保町のNew Galleryで写真展が開催されます。
写真集と写真展に参加している9人の写真家は、木村和平氏(福岡公演/「覗見」の視点)、鈴木親氏(愛知公演/「断片」の視点)、細倉真弓氏(埼玉公演/「身体性」の視点)、川内倫子氏(宮城公演/「溢光」の視点)、森山大道氏(東京公演/「関係性」の視点)、John Yuyi氏(台北公演/「自己投射」の視点)、Wing Shya氏(香港公演/「カレイドスコープ」の視点)、ホンマタカシ氏(大阪公演/「同時性」の視点)、野口里佳氏(神奈川公演/「存在」の視点)です。「NINE STORIES」という名前は「ライ麦畑でつかまえて」などで知られるJ.D.サリンジャー(1919~2010年)の短編小説のタイトルから命名されました。
写真集や写真展のプロジェクトは、宇多田ヒカルさんの存在やライブをかたちとして残すことで、後世に語り継ぐことを企図しています。写真展では、一部作品のオリジナルプリントも販売予定です。
期間2025年3月7日(金)~3月30日(日)開催場所New Gallery
東京都千代田区神田神保町1-28-1 mirio神保町 1FURLhttps://newgallery-tokyo.com/ninestories_exhibition【3】<Event Area>東京都・港区
展覧会キービジュアル ©Tezuka Productions手塚治虫氏(1928~1989年)の名作「火の鳥」に注目した初の大型展覧会が、六本木ヒルズ森タワー 52Fの東京シティビューで開催されます。「火の鳥」は、手塚治虫氏が自らのライフワークであると宣言し、漫画家としての初期から晩年まで描き続けた長編のシリーズ漫画です。血を飲むと永遠の命を得られるという伝説の「火の鳥」を追い求める人々のドラマが、哲学的なテーマを散りばめながら描かれています。
本展では、生物学者の福岡伸一氏が企画に携わり、新たな生命論の視点から壮大な物語の構造が読み解かれています。手塚治虫氏が生涯をかけて表現した「生命とはなにか」という問いの答えを探し求める内容です。展覧会のサブタイトルは「火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡(どうてきへいこう)=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴」と名付けられています。
会場では、原画を中心に、映像/関連資料/グラフィックなど計800点以上が展示される予定です。
※手塚治虫氏の「塚」は旧字体が正式表記
「プロローグ 火の鳥・輪廻シアター」イメージパース期間2025年3月7日(金)~5月25日(日)開催場所東京シティビュー
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 52FURLhttps://hinotori-ex.roppongihills.com/【4】<Event Area>東京都・港区
本展は、西ドイツにおけるグラフィックデザインの世界を楽しめる企画です。グラフィックデザイナーのイェンス・ミュラー氏とカタリーナ・ズセック氏が収集した「A5コレクション デュッセルドルフ」の中から、ポスターを中心に冊子や雑誌なども含めた多彩な作品が紹介されます。展示作品は、幾何学的抽象/イラストレーション/写真/タイポグラフィという4つの観点から選ばれました。
ドイツのグラフィックデザインの歴史を振り返ると、モダンデザインを世界に広めることになる学校・バウハウスが1919年に創設されました。バウハウスは1933年に廃校となり、その後の第二次世界大戦での敗戦でドイツはベルリンの壁によって東西に分断されます。1990年に再び統一されるまでは、ドイツ民主共和国(東ドイツ)とドイツ連邦共和国(西ドイツ)という2つの国に分かれた状態でした。
西ドイツでは、1953年にバウハウスの理念の継承を目指してウルム造形大学が開設されます。閉校までの15年間という短い期間でデザインの理論と実践を大きく発展させた学校です。さらに戦後の西ドイツでは、バウハウスやウルム造形大学のデザイン教育をベースとしたモダニズムを基盤としながらも、新しい時代の表現が追求され続けました。
今回の展覧会では、貴重なコレクションを通じて、その西ドイツのデザインの斬新なアイデアや工夫などに触れることができます。
会期中には「ゆったり鑑賞日」や「ベビーアワー」などの「フラットデー」も実施期間2025年3月8日(土)~5月18日(日)開催場所東京都庭園美術館
東京都港区白金台5-21-9URLhttps://www.teien-art-museum.ne.jp/【5】<Event Area>東京都・板橋区
狩野了承「二十六夜待図」個人蔵「エド・イン・ブラック」は、“黒” という “何にも染まらない色” に焦点を当てた展覧会です。黒は日本の絵画においても、古くから欠かすことのできない要素として用いられてきました。本展では、江戸絵画における黒の表現が紹介されます。
展示の見どころの1つは、夜を描いた作品から黒の表現を探っていることです。江戸時代になると夜の時間を楽しむ人が増え、絵画でも多様な描写が繰り広げられるようになりました。展示作品からは、影や暗闇なども含め、夜という特別な時間を表現した絵師たちの創意工夫が感じられます。
さらに本展では、人々にさまざまなイメージを抱かせる “黒” の表現から、江戸時代の文化や価値観を深掘りしていることも特徴です。背景を黒く塗り込んだ作品や、黒を基調とした「墨彩色」「紅嫌い」と呼ばれる浮世絵などから、それらが何を象徴しているのかを検証しています。
特別演出として、暗がりの中で作品を見せる独特な展示もあります。江戸時代には電気がなかったため、時間帯や天候などによっても作品の見え方が変化していました。本展では蝋燭のような灯りの中で展示した金屏風が用意されており、実際に暗がりの中で絵画がどのように見えていたのかを体験できます。
亜欧堂田善「品川月夜図」神戸市立博物館期間2025年3月8日(土)~4月13日(日)開催場所板橋区立美術館
東京都板橋区赤塚5-34-27URLhttps://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/index.html【6】<Event Area>愛知県・名古屋市
アメリカの絵本作家であるエドワード・ゴーリー氏(1925~2000年)の生誕100周年を記念した展覧会が、全国を巡回中です。3月からは名古屋の松阪屋美術館で開催され、春休み期間を含む4月6日(日)まで楽しむことができます。
ゴーリー氏は、独特の韻を踏んだ文章やモノクロの線画で、今もなお多くのファンに熱狂的に支持されている作家です。2024年10月には、初期の名作「ウィローデールの手漕ぎ車」が河出書房新社から発売されました。同社は2000年にゴーリー作品の第1弾として「ギャシュリークラムのちびっ子たち」を刊行し、その後は25年間で40点ものゴーリー氏の作品を刊行しています。
ゴーリー氏の代表作は「ギャシュリークラムのちびっ子たち」「うろんな客」「優雅に叱責する自転車」「不幸な子供」「華々しき鼻血」「キャッテゴーリー」「おぞましい二人」などです。シュールな内容で、子どもが次々と死んでいく残酷な物語や倫理・モラルを逸脱しているような作品も数多くありますが、その独特な世界観は「大人のための絵本」として親しまれています。
本展は、ケープコッドの記念館・ゴーリーハウスで開催されてきた企画展を再構成した内容です。子ども/不思議な生き物/舞台芸術などのテーマを軸として、約250点の作品が紹介されます。
3月下旬に「エドワード・ゴーリー 生誕100年特製BOXセット」(河出書房新社)も発売予定期間2025年3月1日(土)~4月6日(日)開催場所松阪屋美術館
愛知県名古屋市中区栄3-16-1URLhttps://www.matsuzakaya.co.jp/nagoya/【7】<Event Area>東京都・港区
本展は、京都を拠点として活動しているインディペンデント・キュレーターの渡邊賢太郎氏と、エイベックス・クリエイター・エージェンシーが運営するオルタナティヴ・スペース「WALL_alternative」との共同企画です。2024年に開催された「和を以て美を見出す」を深化させるかたちで開催されます。
本展に出品している5名(兼子真一氏/野田ジャスミン氏/ハシグチリンタロウ氏/長谷川寛示氏/森夕香氏)は、日本の伝統的な美意識や精神を根底に置いて作品を制作している現代アーティストです。展覧会では、彼らの視点を通じて、日本の美意識がどのように変化しているかを探っています。作品のジャンルは、絵画/書/彫刻/陶芸などさまざまです。
「WALL_alternative」は、3月14日(金)から3月16日(日)まで開催される回遊型アートイベント「GAIEN-NISHI ART WEEKEND」の拠点会場にもなっています。
期間2025年3月14日(金)~4月5日(土)開催場所WALL_alternative
東京都港区西麻布4-2-4 1FURLhttps://avex.jp/wall/【8】<Event Area>福岡県・北九州市
本展は、2008年から「透明標本作家」として活動している冨田伊織氏に注目した特別企画展です。冨田氏は、北里大学水産学部水産生物科学科に在学中に、研究用の透明骨格標本に魅せられて独自に制作を開始しました。卒業後は、岩手県で漁師見習いをしながら作品制作を続けています。
「透明標本」は、魚や爬虫類などの生き物の肉質が透明になり、柔らかい骨は青く、硬い骨は赤く染色されている標本です。特殊な酵素に長期間にわたって浸すことで、タンパク質が分解されています。
本展で展示される生物標本は、生物でありながらもまるで芸術作品のような神秘的な美しさを備えています。学術標本としてだけではなく「芸術やアートへの興味を深める入り口」としての意義もあり、奥深い生物の美を体感できる展覧会です。「透明標本」はもともとは骨格研究の手法で、構造がはっきりと分かる本展での展示標本からは生物の造形の多様性も学べます。
単純に「標本の展覧会」と言うと地味なイメージがあるかもしれませんが、本展は会場の演出にも工夫があり、幻想的な空間を楽しむことが可能です。会場内は撮影OKとされているため、インパクトのある美しい光景を写真に収めて共有する楽しみ方もできます。
期間2025年3月15日(土)~5月18日(日)開催場所北九州市科学館 1F 企画展示室 スペースLABO
福岡県北九州市八幡東区東田4-1-1URLhttps://www.kitakyushuspacelabo.jp/【9】<Event Area>東京都・台東区 ほか
「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 ~追憶展~」の東京凱旋展が「終章」として開催されます。水木しげる氏(1922~2015年)の生誕100周年を記念して2023年に公開された映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」のストーリーや世界観を追体験できる展示イベントです。本展は2024年6月の池袋PARCOでの開催を皮切りに5つの会場を巡回し、各地で好評を博してきました。
「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」では、国民的アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」のTVアニメ第6期をベースに、鬼太郎の誕生にまつわるシリーズ原点の物語が描かれています。第47回日本アカデミー賞では優秀アニメーション作品賞を受賞しました。映像と音響をブラッシュアップした特別版として、327カットものリテイクを行った「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版」も2024年10月から上映されています。
展覧会は、既に会場を訪れた人にも楽しめるように、今回の開催ではさらにパワーアップした内容となっています。初公開となる原画(総作画監督修正)などが用意され、音声ガイドも「終章」バージョンとして再収録されました。関俊彦さんが演じる鬼太郎の父と、木内秀信さんが演じる水木の音声で、会場限定の特別な展示案内を楽しむことができます。
池袋開催時の会場の様子
期間2025年3月28日(金)~4月20日(日)開催場所渋谷PARCO 6F 特設会場
東京都渋谷区宇田川町15-1URLhttps://art.parco.jp/【10】<Event Area>東京都・中央区
©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会
©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会2025年1月から第2期が放送されて人気を博しているTVアニメ「薬屋のひとりごと」の展示イベントです。日向夏氏によるライトノベルが原作のアニメで、架空の国の後宮を舞台に、毒見役として仕えることになった猫猫(マオマオ)と謎多き美形の宦官の壬氏(ジンシ)を中心とした謎解きの要素を含むストーリーが展開されています。
展覧会は、TVアニメ作品の魅力が凝縮された内容です。劇中の名シーンが立体造作で再現されていたり、貴重な原画/画コンテ/美術設定が初公開されていたりします。作品の世界に入り込んだような写真を撮影できる「毒見フォトスポット」も設置されました。
本展では、スマホを利用して楽しめる有料の音声ガイドも用意されています。悠木碧さんが演じる猫猫や、大塚剛央さんが演じる王氏による本展のための完全録り下ろしです。オリジナルストーリーとボイスとともに会場を見て回ることができます。
会場ではバラエティに富んだオリジナルグッズも販売されます。各キャラクターのアクリルスタンドをはじめとするコレクターズアイテムのほか、原画を用いたポストカードにも注目です。アイマスクや箔押しトランプなどのユニークなアイテムも登場します。
東京での会期終了後は、全国各地への巡回も予定されています。4月25日(金)~5月19日(月)には福岡県の博多阪急、5月23日(金)~6月15日(日)には新潟県の新潟市マンガ・アニメ情報館にて開催予定です。
©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会期間2025年3月26日(水)~4月14日(月)開催場所松屋銀座 8F イベントスクエア
東京都中央区銀座3-6-1URLhttps://kusuriya-exhibition.jp/* * * * * * * * * *
今回の記事では、2025年の春休みに楽しめる注目の展覧会やアートイベントを紹介しました。人気作品の世界観にどっぷりと浸れる展覧会や、SNSでも話題になりそうな美しい展示など、多彩なラインナップが揃っています。新たな作品との出会いは、春の思い出をより鮮やかに彩ってくれるはずです。しっかりと予定を組んで、ぜひ気になるイベントを訪れてみてください。春休みのアート巡りを存分に楽しみましょう!
本記事では、2025年の春に楽しめる展覧会やアートイベントをピックアップしてご紹介します。名作漫画や人気アニメの大型展覧会、西ドイツのグラフィックデザインの魅力を紹介する企画、廃墟や生物標本をアートにまで昇華させた展示など、幅広いジャンルのイベントが揃っています。春のお出かけの参考に、ぜひ気になる展覧会をチェックしてみてください!
【目次】
【1】<Event Area>東京都・台東区 ほか
「変わる廃墟展 2025」
~廃墟をアートにした10周年を迎える展覧会~

本展では毎年新作が発表され、今回も16組のアーティストが参加しています。Instagramで3万人のフォロワー数を超える「啝(@neji_maki_dori)」、Xで独創的な作品を発表している「toshibo(@JIYUKENKYU_jp)」など、SNSを主な舞台に活躍しているクリエイターが中心です。
会場では「啝」が手掛けた壮大な映像作品も初公開されます。ベルギーやフランスの歴史的な廃墟、日本全国の有名な廃墟、さらには世界遺産の軍艦島まで、ドローンを駆使して撮影された映像です。数々の廃墟が短編動画の中に凝縮されており、独特な物語を垣間見ることができます。
10周年を記念して、最新作を収録した特装版の公式図録も限定販売されることが決まりました。過去最大のページ数の1冊に仕上げられています。東京での会期終了後には、名古屋のTODAYS GALLERY STUDIO. NAGOYAへと巡回予定です。

東京都台東区浅草橋5-27-6 5F 期間(名古屋)2025年4月5日(土)~4月27日(日)開催場所(名古屋)TODAYS GALLERY STUDIO. NAGOYA
愛知県名古屋市中区新栄1-17-12 URLhttp://tgs.jp.net/event/haikyo
【2】<Event Area>東京都・千代田区
「HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024 NINE STORIES」
~宇多田ヒカルさんの全国ツアーを9人の写真家が撮影~

写真集と写真展に参加している9人の写真家は、木村和平氏(福岡公演/「覗見」の視点)、鈴木親氏(愛知公演/「断片」の視点)、細倉真弓氏(埼玉公演/「身体性」の視点)、川内倫子氏(宮城公演/「溢光」の視点)、森山大道氏(東京公演/「関係性」の視点)、John Yuyi氏(台北公演/「自己投射」の視点)、Wing Shya氏(香港公演/「カレイドスコープ」の視点)、ホンマタカシ氏(大阪公演/「同時性」の視点)、野口里佳氏(神奈川公演/「存在」の視点)です。「NINE STORIES」という名前は「ライ麦畑でつかまえて」などで知られるJ.D.サリンジャー(1919~2010年)の短編小説のタイトルから命名されました。
写真集や写真展のプロジェクトは、宇多田ヒカルさんの存在やライブをかたちとして残すことで、後世に語り継ぐことを企図しています。写真展では、一部作品のオリジナルプリントも販売予定です。

東京都千代田区神田神保町1-28-1 mirio神保町 1FURLhttps://newgallery-tokyo.com/ninestories_exhibition
【3】<Event Area>東京都・港区
「手塚治虫『火の鳥』展」
~“漫画の神様” のライフワーク作品の初の大型展覧会~

本展では、生物学者の福岡伸一氏が企画に携わり、新たな生命論の視点から壮大な物語の構造が読み解かれています。手塚治虫氏が生涯をかけて表現した「生命とはなにか」という問いの答えを探し求める内容です。展覧会のサブタイトルは「火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡(どうてきへいこう)=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴」と名付けられています。
会場では、原画を中心に、映像/関連資料/グラフィックなど計800点以上が展示される予定です。
エントランスでは、空間全体を用いたダイナミックな映像で「火の鳥」の作品世界が再現されています。フロアのプロデュースと映像制作は、デザイナーの中村勇吾氏が担当しました。また、展覧会のキービジュアルは佐藤卓氏がデザインしています。
※手塚治虫氏の「塚」は旧字体が正式表記

東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 52FURLhttps://hinotori-ex.roppongihills.com/
【4】<Event Area>東京都・港区
「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」
~日本初公開のコレクションで西独デザインの魅力を紹介~

ドイツのグラフィックデザインの歴史を振り返ると、モダンデザインを世界に広めることになる学校・バウハウスが1919年に創設されました。バウハウスは1933年に廃校となり、その後の第二次世界大戦での敗戦でドイツはベルリンの壁によって東西に分断されます。1990年に再び統一されるまでは、ドイツ民主共和国(東ドイツ)とドイツ連邦共和国(西ドイツ)という2つの国に分かれた状態でした。
西ドイツでは、1953年にバウハウスの理念の継承を目指してウルム造形大学が開設されます。閉校までの15年間という短い期間でデザインの理論と実践を大きく発展させた学校です。さらに戦後の西ドイツでは、バウハウスやウルム造形大学のデザイン教育をベースとしたモダニズムを基盤としながらも、新しい時代の表現が追求され続けました。
今回の展覧会では、貴重なコレクションを通じて、その西ドイツのデザインの斬新なアイデアや工夫などに触れることができます。
「A5コレクション デュッセルドルフ」の作品は日本では初公開です。

東京都港区白金台5-21-9URLhttps://www.teien-art-museum.ne.jp/
【5】<Event Area>東京都・板橋区
「エド・イン・ブラック 黒からみる江戸絵画」
~江戸絵画における “黒” の魅力に迫る展覧会~

展示の見どころの1つは、夜を描いた作品から黒の表現を探っていることです。江戸時代になると夜の時間を楽しむ人が増え、絵画でも多様な描写が繰り広げられるようになりました。展示作品からは、影や暗闇なども含め、夜という特別な時間を表現した絵師たちの創意工夫が感じられます。
さらに本展では、人々にさまざまなイメージを抱かせる “黒” の表現から、江戸時代の文化や価値観を深掘りしていることも特徴です。背景を黒く塗り込んだ作品や、黒を基調とした「墨彩色」「紅嫌い」と呼ばれる浮世絵などから、それらが何を象徴しているのかを検証しています。
特別演出として、暗がりの中で作品を見せる独特な展示もあります。江戸時代には電気がなかったため、時間帯や天候などによっても作品の見え方が変化していました。本展では蝋燭のような灯りの中で展示した金屏風が用意されており、実際に暗がりの中で絵画がどのように見えていたのかを体験できます。

東京都板橋区赤塚5-34-27URLhttps://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/index.html
【6】<Event Area>愛知県・名古屋市
「エドワード・ゴーリーを巡る旅(名古屋展)」
~シュールな作風の絵本作家の生誕100周年の記念展~

ゴーリー氏は、独特の韻を踏んだ文章やモノクロの線画で、今もなお多くのファンに熱狂的に支持されている作家です。2024年10月には、初期の名作「ウィローデールの手漕ぎ車」が河出書房新社から発売されました。同社は2000年にゴーリー作品の第1弾として「ギャシュリークラムのちびっ子たち」を刊行し、その後は25年間で40点ものゴーリー氏の作品を刊行しています。
ゴーリー氏の代表作は「ギャシュリークラムのちびっ子たち」「うろんな客」「優雅に叱責する自転車」「不幸な子供」「華々しき鼻血」「キャッテゴーリー」「おぞましい二人」などです。シュールな内容で、子どもが次々と死んでいく残酷な物語や倫理・モラルを逸脱しているような作品も数多くありますが、その独特な世界観は「大人のための絵本」として親しまれています。
本展は、ケープコッドの記念館・ゴーリーハウスで開催されてきた企画展を再構成した内容です。子ども/不思議な生き物/舞台芸術などのテーマを軸として、約250点の作品が紹介されます。

愛知県名古屋市中区栄3-16-1URLhttps://www.matsuzakaya.co.jp/nagoya/
【7】<Event Area>東京都・港区
「和を以て景を綴る」
~5名の現代美術家の視点から日本の美意識の変化を探る~

本展に出品している5名(兼子真一氏/野田ジャスミン氏/ハシグチリンタロウ氏/長谷川寛示氏/森夕香氏)は、日本の伝統的な美意識や精神を根底に置いて作品を制作している現代アーティストです。展覧会では、彼らの視点を通じて、日本の美意識がどのように変化しているかを探っています。作品のジャンルは、絵画/書/彫刻/陶芸などさまざまです。
「WALL_alternative」は、3月14日(金)から3月16日(日)まで開催される回遊型アートイベント「GAIEN-NISHI ART WEEKEND」の拠点会場にもなっています。
初日の3月14日(金)にはオープニングパーティが実施され、翌日の3月15日(土)には出展アーティストとのトークセッションも繰り広げられる予定です。さらに3月16日(日)には、14組のアーティストが映像作品を披露する「ART FILM PROGRAM」も開催されます。会期中に併設されるバーでは、本展にあわせて開発されたコラボメニューも提供されます。
期間2025年3月14日(金)~4月5日(土)開催場所WALL_alternative
東京都港区西麻布4-2-4 1FURLhttps://avex.jp/wall/
【8】<Event Area>福岡県・北九州市
「冨田伊織 新世界『透明標本』展」
~まるで芸術作品のような幻想的な生物標本の展示~

「透明標本」は、魚や爬虫類などの生き物の肉質が透明になり、柔らかい骨は青く、硬い骨は赤く染色されている標本です。特殊な酵素に長期間にわたって浸すことで、タンパク質が分解されています。
本展で展示される生物標本は、生物でありながらもまるで芸術作品のような神秘的な美しさを備えています。学術標本としてだけではなく「芸術やアートへの興味を深める入り口」としての意義もあり、奥深い生物の美を体感できる展覧会です。「透明標本」はもともとは骨格研究の手法で、構造がはっきりと分かる本展での展示標本からは生物の造形の多様性も学べます。
単純に「標本の展覧会」と言うと地味なイメージがあるかもしれませんが、本展は会場の演出にも工夫があり、幻想的な空間を楽しむことが可能です。会場内は撮影OKとされているため、インパクトのある美しい光景を写真に収めて共有する楽しみ方もできます。


福岡県北九州市八幡東区東田4-1-1URLhttps://www.kitakyushuspacelabo.jp/
【9】<Event Area>東京都・台東区 ほか
「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 ~追憶展~ 終章」
~新たに多数の展示を追加した東京凱旋の展覧会~

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」では、国民的アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」のTVアニメ第6期をベースに、鬼太郎の誕生にまつわるシリーズ原点の物語が描かれています。第47回日本アカデミー賞では優秀アニメーション作品賞を受賞しました。映像と音響をブラッシュアップした特別版として、327カットものリテイクを行った「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版」も2024年10月から上映されています。
展覧会は、既に会場を訪れた人にも楽しめるように、今回の開催ではさらにパワーアップした内容となっています。初公開となる原画(総作画監督修正)などが用意され、音声ガイドも「終章」バージョンとして再収録されました。関俊彦さんが演じる鬼太郎の父と、木内秀信さんが演じる水木の音声で、会場限定の特別な展示案内を楽しむことができます。


東京都渋谷区宇田川町15-1URLhttps://art.parco.jp/
【10】<Event Area>東京都・中央区
「TV アニメ『薬屋のひとりごと』展 東京会場」
~猫猫と壬氏の完全録り下ろしの音声ガイドも魅力~


展覧会は、TVアニメ作品の魅力が凝縮された内容です。劇中の名シーンが立体造作で再現されていたり、貴重な原画/画コンテ/美術設定が初公開されていたりします。作品の世界に入り込んだような写真を撮影できる「毒見フォトスポット」も設置されました。
本展では、スマホを利用して楽しめる有料の音声ガイドも用意されています。悠木碧さんが演じる猫猫や、大塚剛央さんが演じる王氏による本展のための完全録り下ろしです。オリジナルストーリーとボイスとともに会場を見て回ることができます。
会場ではバラエティに富んだオリジナルグッズも販売されます。各キャラクターのアクリルスタンドをはじめとするコレクターズアイテムのほか、原画を用いたポストカードにも注目です。アイマスクや箔押しトランプなどのユニークなアイテムも登場します。
東京での会期終了後は、全国各地への巡回も予定されています。4月25日(金)~5月19日(月)には福岡県の博多阪急、5月23日(金)~6月15日(日)には新潟県の新潟市マンガ・アニメ情報館にて開催予定です。

東京都中央区銀座3-6-1URLhttps://kusuriya-exhibition.jp/* * * * * * * * * *
今回の記事では、2025年の春休みに楽しめる注目の展覧会やアートイベントを紹介しました。人気作品の世界観にどっぷりと浸れる展覧会や、SNSでも話題になりそうな美しい展示など、多彩なラインナップが揃っています。新たな作品との出会いは、春の思い出をより鮮やかに彩ってくれるはずです。しっかりと予定を組んで、ぜひ気になるイベントを訪れてみてください。春休みのアート巡りを存分に楽しみましょう!

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