Appleが、日本時間で2024年9月10日(火)に開催した「Apple Event」で、数々の新製品を発表しました。新バージョンとなる「
iPhone 17」や極薄ボディのまったく新しいコンセプトの製品「iPhone Air」が登場し、待望の「AirPods Pro 3」なども発売されます。
この記事では、今回のイベントで明かされた内容を発表の時系列に沿って振り返っていきましょう。
【目次】
心拍数センサーが搭載された「AirPods Pro 3」
まず最初に発表されたのは、3年ぶりの新モデルとして登場した完全ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro 3」です。9月19日(金)から販売が開始されます。価格は従来モデルと変わらず39,800円(税込)です。
独自設計のマルチポートの音響設計により、耳に音を運ぶ空気の流れが正確にコントロールされ、音質が高められています。アクティブノイズキャンセリング(ANC)は、新しいファーム材のイヤーチップの効果で、前モデルの「AirPods Pro 2」から約2倍に強化されました。これは初代モデルとの比較では約4倍に相当し、「世界最高レベル」の性能と謳われています。
Apple Intelligenceを活用したライブ翻訳の機能を利用できることも大きな魅力です。海外などで異なる言語の人と会話をする際に、外国語で話しかけられた声がリアルタイムに自動で翻訳されます。対応言語は英語/フランス語/ドイツ語/ポルトガル語/スペイン語で、2025年末までに日本語/イタリア語/韓国語/中国語(簡体字)にも追加で対応する予定です。
本体はさらに小型化され、着用時の安定度がさらに高められました。耳の穴の自然な形に合うように、デザインに工夫がされています。新設計のイヤーチップはXXSを含む5種のサイズ展開で、ユーザーに合わせたフィット感を得られやすいことも特徴です。
初めてIP57準拠の耐水性能も備え、大量の汗をかく屋外でのランニングやワークアウト中にも使いやすいモデルとなりました。
さらに最大の進化は独自に開発された心拍数センサーです。加速度センサーなどからのデータと結合され、正確な測定値が算出されます。新しいオンデバイスAIモデルとの組み合わせで、フィットネスアプリで最大50種のワークアウトを開始したり、活動量と消費カロリーを記録したりといった新たなフィットネス体験が可能です。
非常に嬉しいポイントとして、バッテリー性能も従来モデルから向上しています。ANC使用時では最大8時間、外部音取り込みモードでヒアリング補助機能を使用した場合は最大10時間の連続再生に対応しました。
AirPods Pro(初代)AirPods Pro 2AirPods Pro 3本体サイズ(片耳)21.8×30.9×24.0mm21.8×30.9×24.0mm19.2×30.9×27.0mm重量(片耳)5.4g5.3g5.55gケースサイズ60.6×45.2×21.7mm60.6×45.2×21.7mm62.2×47.2×21.8mmケース重量45.6g50.8g43.99g1回の充電での再生最大5時間最大6時間最大10時間
着実な強化が好印象の「Apple Watch」シリーズ
続いて、Apple Watchの各グレードでの新モデルのラインナップが発表されました。バッテリーの強化をはじめ、全体的に「ユーザーが本当に求めている堅実な強化」が実施されている印象です。セルラー対応モデルは新たに5G通信にも対応しています。
「Apple Watch Series 11」は、引き続き42mmと46mmのサイズで提供されます。アルミニウムケースでは、ジェットブラック/シルバー/ローズゴールドのほか、新色のスペースグレイも追加されました。鏡面仕上げのチタニウムケースには、ナチュラル/ゴールド/スレートが用意されています。2025年秋にはバンドのラインナップ全体にさまざまな新色が加わる予定です。
本体のディスプレイの耐擦傷性能は2倍になり、より頑丈な製品になりました。近年のApple Watchが最も力を入れているヘルスケア機能も引き続き搭載され、慢性的な高血圧の可能性をアラートで知らせる機能(ただし日本国内では未発表)や、睡眠の質をスコア化する機能が新たに追加されています。さらに、注目のポイントはバッテリー性能の向上です。最大24時間駆動に対応し、昼夜を通してバッテリー切れの心配がありません。高速充電の性能も強化され、15分の充電で最大8時間使えます。
エントリーモデルの「Apple Watch SE 3」は、引き続き40mmと44mmのサイズです。新たにS10チップを採用し、より多くの機能を使えるようになりました。Apple Watch SEシリーズでは初めて常時表示ディスプレイが実装され、カバーガラスは耐亀裂性能が前モデルの4倍となっています。バッテリー駆動時間は最大18時間で、高速充電にも今回から新たに対応しました。
上位モデルの「Apple Watch Ultra 3」は、スポーツやアドベンチャー向けにさらに進化しています。ディスプレイ領域が広がり、画面の視認性が高められました。緊急SOSなどに用いる衛星通信機能も、無線機能とアンテナの再設計で信号強度が2倍に強化されています。
バッテリー駆動時間は最大42時間で、高速充電では15分間の充電で最大12時間の使用が可能です。
価格はApple Watch Series 11が64,800円~(税込)、Apple Watch SE 3が37,800円~(税込)、Apple Watch Ultra 3が129,800円~(税込)となります。いずれも発売日は9月19日(金)です。
前面カメラが大幅に刷新された「iPhone 17」
iPhoneでも最新の「iPhone 17」が登場しました。本体カラーはブラック/ホワイト/ミストブルー/セージ/ラベンダーの5色です。ベゼルを細めた新デザインが採用され、ディスプレイは6.3インチに広がりました。本体にはA19チップを搭載し、Neuralエンジンもさらに強化されています。5コアのGPUはNeural Acceleratorを搭載し、GPUパフォーマンスはiPhone 16から約20%、iPhone 15から約80%の高速化が実現されました。
ディスプレイの強化も著しく、Proモデルと同じ最大120Hzのアダプティブリフレッシュレートを持つProMotionが採用されています。ユーザーが見ているコンテンツにダイナミックに反応し、未使用時には常時表示ディスプレイのリフレッシュレートが1Hzまで下がります。iPhone史上で最高の3,000ニトの屋外ピーク輝度で、屋外でもさらに画面を見やすくなりました。また、新たに導入されたCeramic Shield 2によって、耐擦傷性能は3倍にまで引き上げられています。
カメラシステムも強化され、背面カメラは48MP Fusionメインカメラ+48MP Fusion超広角カメラの構成となりました。
超広角カメラはiPhone 16では12MPの仕様であったため、4倍の解像度です。精細なマクロ写真から個性的なアングルの表現まで幅広く活躍します。
さらに大きく変更されたのがフロントカメラです。まったく新しい「18MPセンターフレームフロントカメラ」に刷新され、iPhoneでは初めて正方形のカメラセンサーが採用されています。これにより、横向きの自撮り撮影でも、ユーザーがiPhone本体を横向きに持ち直す必要がなくなりました。AIを活用したセンターフレーム機能で、たとえば後から人が加わるグループ写真などでは自動的に写真の視野角が広がり、本体が縦向きのままでも全員がフレーム内に収まるように縦位置から横位置の構図へと変わります。
気になるバッテリー性能は、前モデルよりも8時間長い最大30時間のビデオ再生が可能となりました。充電器によっては、20分で最大50%の高速充電もできます。
iPhone 17の日本国内での発売日は9月19日(金)です。ストレージ容量は512GBと256GBから選択でき、129,800円~(税込)または月額3,605円~(税込)で購入できます。iPhone 17では128GBモデルがラインナップから姿を消したことには注意が必要です。また、物理的なSIMカードには非対応で、デュアルeSIMにのみ対応しています。
iPhone 16iPhone 17画面サイズ6.1インチ6.3インチチップA18チップA19チップCPU6コア6コアGPU5コア5コアNeural Engine16コア16コアストレージ128GB/256GB/512GB256GB/512GBバッテリー最大22時間のビデオ再生最大30時間のビデオ再生前面カメラ12MP TrueDepth18MPセンターフレーム背面カメラ48MP Fusionメイン
+12MP超広角48MP Fusionメイン
+48MP Fusion超広角本体サイズ71.6×147.6×7.8mm71.5×149.6×7.95mm重量170g177g
新コンセプトで極薄ボディの「iPhone Air」
今回のApple Eventで、唯一の「まったく新しい製品」として登場して注目を集めたのが「iPhone Air」です。
厚さ約5.6mmの極薄ボディで、本体カラーはスペースブラック/クラウドホワイト/ライトゴールド/スカイブルーの4色がラインナップされています。画面サイズは6.5インチです。ディスプレイには、iPhone 17と同じくProMotionテクノロジーが導入されています。
これだけ薄いと強度が心配ですが、グレード5のチタニウムフレームや、iPhoneとしては初めて背面にもCeramic Shieldを採用することなどで対策されています。耐亀裂性能は、以前の背面ガラスの4倍です。本体にはA19 Proチップを搭載しており、見た目からは想像できないパワフルな製品となりました。
背面には48MPのFusionメインカメラが実装され、前面カメラは「18MPセンターフレームフロントカメラ」です。iPhone 17が48MP Fusion超広角カメラを搭載しているのに対し、iPhone Airはマクロ写真撮影や空間ビデオ撮影に対応しないといった違いがあります。光学ズームオプションは1倍/2倍のみです。一方で、ストレージ容量は256GBモデルと512GBモデルに加え、1TBモデルも用意されています。
また、ボディの薄型化の影響を受け、内部スペースを確保するための必然的な工夫として物理的なSIMカードのスロットは廃止されています。iPhone 17と同じくデュアルeSIMのみの対応です。
2つのアクティブなeSIMを利用でき、8つ以上のeSIMを保存できます。これによりバッテリーの大型化のための空間が生まれ、最大27時間のビデオ再生に対応しました。
さらに、新しい周辺機器として、薄型のMagSafeバッテリーも開発されました。iPhone Airのボディにぴったりマッチし、重ね合わせてもズボンのポケットに収まるサイズ感です。この「iPhone Air MagSafeバッテリー」を使った場合には、ビデオ再生は最大40時間まで延長されます。
専用ケースも、背面パネルの薄さが1mm未満の半透明ケース(フロスト仕上げ/シャドウ仕上げ)や、iPhone Airのボディとお揃いの4つのカラーの強化ポリカーボネート製バンパーが登場します。いずれのケースも、iPhone Air本体を体にかけて持ち運べる新しいクロスボディストラップとの併用が可能です。クロスボディストラップは、ブラック/ライトグレイ/ブルー/ライトブルー/パープル/シエナ/グリーン/ネオンイエロー/タン/オレンジの10色で展開されます。
iPhone Airの日本国内での発売日は9月19日(金)で、価格は159,800円~(税込)または月額4,438円~(税込)です。iPhone Air MagSafeバッテリーは、15,800円(税込)で購入できます。
iPhone 17iPhone Air画面サイズ6.3インチ6.5インチチップA19チップA19 ProチップCPU6コア6コアGPU5コア5コアNeural Engine16コア16コアストレージ256GB/512GB256GB/512GB/1TBバッテリー最大30時間のビデオ再生最大27時間のビデオ再生前面カメラ18MPセンターフレーム18MPセンターフレーム背面カメラ48MP Fusionメイン
+48MP Fusion超広角48MP Fusionメイン本体サイズ71.5×149.6×7.95mm74.7×156.2×5.64mm重量177g165g
大胆に背面デザインが変わった「iPhone 17 Pro」
今回のApple Eventで最後に紹介された「iPhone 17 Pro / Pro Max」は、「iPhone Air」とはまた違った意味でデザインに大きなインパクトのある製品でした。本体カラーバリエーションはシルバー/ディープブルー/コズミックオレンジの3色で展開されます。発売日は9月19日(金)です。Proモデルの価格は179,800円~(税込)または月額4,994円~(税込)、Pro Maxモデルの価格は194,800円~(税込)または月額5,411円~(税込)となります。
画面サイズは17 Proが6.3インチで、Pro Maxが6.9インチです。本体にはアルミ製のユニボディが採用されており、物理SIMスロットの廃止をはじめ、バッテリーの最大化などのために大胆に再設計されています。また、iPhone Airと同じく背面側もCeramic Shieldで保護されました。スペック面ではA19 Proチップを搭載し、最上位機種にふさわしいパワフルさを備えています。ストレージ容量の選択肢は、256GB/512GB/1TB/2TB(Pro Maxのみ)です。
背面カメラは、48MP Fusionメインカメラ+48MP Fusion超広角カメラ+48MP Fusion望遠カメラの構成です。前面カメラには、iPhone 17やiPhone Airと同じく18MPセンターフレームカメラが採用されています。
iPhone 17 ProiPhone 17 Pro Max画面サイズ6.3インチ6.9インチチップA19 ProチップCPU6コアGPU6コアNeural Engine16コアストレージ256GB/512GB/1TB256GB/512GB/1TB/2TBバッテリー最大33時間のビデオ再生最大39時間のビデオ再生前面カメラ18MPセンターフレーム背面カメラ48MP Fusionメイン
+48MP Fusion超広角
+48MP Fusion望遠本体サイズ71.9×150×8.75mm78×163.4×8.75mm重量206g233g衝撃的だったのはこの背面カメラ周りのデザインで、本体背面の上部の凸部が大きく広がっています。筆者は個人的にこの新しいデザインは「これまでのAppleらしさを感じない “野暮” なデザインである」という印象を受けました。これまでApple製品のデザインはシンプルさや遊び心を大きな魅力としてきたため、この一見ゴテゴテとしたデザインの部分にはかなりの賛否両論がありそうです。
一方で、パフォーマンスを支えるための排熱構造の独特な工夫も注目のポイントです。排熱の構造が一新され、脱イオン水を内部に密閉したベイパーチャンバーがアルミシャーシにレーザーで溶接されており、効率的に熱を分散・放出します。
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今回の発表でポジティブな一番の目玉となったのは「iPhone Air」です。Appleは折りたたみ型のiPhoneを2026年をメドに発売することも予想されており、薄型の「iPhone Air」の登場や物理SIMカードのスロット廃止はその布石であるとも考えられます。
また、筆者が個人的に特に気になったのは「iPhone 17 Pro」のデザイン方針です。今回の発表では冒頭で故スティーブ・ジョブズの言葉を引用するなど、たびたび「デザイン」というキーワードが強調されています。しかし、厳しい見方をすれば、それらは全て「iPhone 17 Pro」のデザインに賛否両輪があることを見越しての「予防線・逃げ口上」のように感じてしまいました。
見た目ばかりにとらわれない機能面を重視した設計はもちろん大事ですが、見た目との「両立」こそがデザインの真髄です。機能面で革新的な製品を、さらに想像もできなかったような美しくワクワクする見た目に妥協なく落とし込んできたのがAppleの最大の魅力ではないでしょうか。今後も多くのファンに支持されてきたAppleらしさを感じさせる製品の展開を期待します。
Apple
URL:https://www.apple.com/jp/
2025/09/11