【目次】
「パンの紙」の開発までの背景
ペーパルは1890年(明治23年)に奈良県で創業し、135年にわたって紙や紙製品の開発・販売を手掛けてきた企業です。2020年からは「フードロスペーパー」を開発するプロジェクトを立ち上げ、これまでにも「kome-kami」や「クラフトビールペーパー」など、さまざまな素材をアップサイクルした紙を生み出してきました。今回の「パンの紙」の開発は、2023年11月に敷島製パンの研究開発の担当者が、食パンの製造の際に生じるパンの粉の新たな活用法についてペーパルに相談したことから始まっています。そのパンの粉は通常は飼料などにリサイクルされる素材ですが、それを紙としてアップサイクルすることを目指し、共同開発がスタートしました。

さまざまな課題に直面しながらの開発
パンの主成分は小麦で、水分を含むと強い粘性を持つため、紙にアップサイクルするのは技術的に難しい素材であったそうです。開発の初期段階では食パンの粉は製紙機械に付着してしまい、安定した生産が困難な状況が続きました。しかし、ペーパルの米を接着剤にして紙の原料にした独自のノウハウを活用しながら、調整を重ねてその課題が克服されています。さらに、当初は3つの層を重ねて抄く「三層抄き」の手法で試作が進められましたが、パンならではの素朴な風合いが失われてしまったため、多層抄きより難易度の高い「一層抄き」での開発に挑戦することになりました。これにより、荒々しい表面を残してパンの痕跡を残した紙となり、同時に試行錯誤を重ねて印刷加工も可能な「パンの紙」が完成しています。

完成した温かみのある紙を食パン型の名刺に採用
最終的に「パンの紙」は、パンのような素朴な風合いが再現され、触ると柔らかさを感じさせる紙に仕上がりました。敷島製パンの主力商品である「超熟」などをカットした際の食パンの粉が用いられており、印刷適性を考慮して2~3%の配合とされています。「一層抄き」の手法を採用したため、表層にしっかりとミミが見られることが特徴です。この「パンの紙」は、2025年9月から、敷島製パンが製作する「食パン型名刺」に用いられています。

「パンの紙」の開発には、約1年半の歳月が費やされました。試行錯誤の末の工夫によって、意図的にパンの痕跡を残した荒々しい表面と、しっかりと印刷適性のある紙という相反する課題がクリアされています。ペーパルは、引き続きさまざまな未利用資源を活用した新たな価値の創造を目指しており、今後も新しい発想の紙の登場に期待したいところです。
株式会社ペーパル/敷島製パン株式会社
URL:http://www.pepal.co.jp/
URL:https://www.pasconet.co.jp/
2025/09/25
