人気の海外旅行先の一つである台湾。その魅力は、ご飯がおいしくて治安がよく、日本から近いなど多数あります。
数ある観光スポットの中でも、デザイン好きの方におすすめなのが、台湾で唯一活版印刷の活字を鋳造・販売している「日星鑄字行(リーシンヂューズハン)」です。日本語の活字もあり、活字や活字で組んだスタンプを購入することができます。また、すぐ近くにある活版印刷工房「一間印刷行(イージェンインシュァーハン)」ではポータブル活版印刷機など活版印刷を楽しむアイテムが販売されています。今回は、活字の購入と活版印刷を楽しむ台湾旅を紹介します。
※2025年11月に両店を訪れたレポートです

もくじ

台湾唯一の活字工房「日星鑄字行」へ

活字と呼ばれる金属製の文字や記号を並べて版をつくり、インキをつけて紙をのせ、圧をかけて印刷する活版印刷。凹凸の出る質感や少し滲みや掠れが出る風合いが魅力で、DTP入稿が主流の現在においても活版印刷ファンは多くいます。そうした方々におすすめの台湾観光スポットが、活版印刷の活字を鋳造・販売する「日星鑄字行」です。

「日星鑄字行」は、台湾の首都である台北市の中心、台北駅から地下鉄レッドライン(紅線/淡水信義線)で1つ隣の中山(ヂョンシャン)駅から徒歩5~6分のところにあります。駅前はデパートや近代的なビルが立ち並んでいますが、創業1969年の「日星鑄字行」は下町情緒を感じる裏道沿いにあります。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
デパートやビルが立ち並ぶ中山駅も裏道にはレトロな風情がある
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
「日星鑄字行」外観日本でも活版印刷の活字を扱う会社は数社ありますが、残念ながら活字を鋳造する型である母型をつくれる職人はもう国内にいません。「日星鑄字行」は母型をつくる技術を持っていて、日本の活字工房も新たなフォントの母型をつくる際は同店に製造を依頼しています。

活字の鋳造所というとBtoB企業のイメージですが、「日星鑄字行」には、世界各地から観光客が訪れています。筆者が行ったときには、スペイン語圏のグループの方々で混雑していました。
店内に入る際は、まず掲示してある注意事項を確認してください。中国語、英語のほか日本語でも記載されています。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
日本語で記載された注意事項。入店時に必ず確認したい台湾では、電車内に喫煙や飲食が禁止されていて違反したら罰金が課される旨が書いてあったり、飲食店に一人当たりの注文数や滞在時間の上限が書いてあったりと、ルールを明文化して掲示されていることが多いです。「日星鑄字行」が特別神経質というわけではないのでご安心ください。

では、さっそく入店します。まずは一つ目の注意事項にあるように、棚にぶつからないよう大きな荷物を入り口の右手側にある棚に置きます。店内は自由に見られますが、二つ目の注意事項の通り決して買うつもりのない活字を触らないようにします。一度でも触ってしまった場合、棚に戻すことは禁止され、購入必須となります。もちろん買うのであれば触っても構いませんが、膨大な活字の中から必要な文字、書体、級数のものを見つけ出すのはかなり大変です。活字の入った箱も勝手に触ってはいけません。また、活字は鉛でできているため、口などから体内に入ると身体に害を及ぼします。
そのため、注意書きにあるように触ったらすぐ手を洗うようにしましょう。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
大きな荷物は写真左奥にある棚に置く。店内にはこのような活字が並んだ棚が何列もある店内には、台湾で使われる繁体字はもちろん、日本語の漢字、ひらがな、カタカナ、英数字、記号や絵などの活字があります。活字に囲まれた空間にいるだけでとてもワクワクします。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
繁体字の活字。世界で「日星鑄字行」だけがつくっている
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
日本語の活字。「フケマヤクオノ…」と基準が判然としない順番で並んでいる
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
英数字の活字
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
干支の絵の活字

活字を組み合わせてオリジナルのスタンプを作成

「日星鑄字行」では、個人客でも1文字から活字を購入することができます。活字のサイズは初(42ポイント)~六(7.875ポイント)の7つあり、1文字20元(約100円)~180元(約900円)です。1,000元(約5,000円)以上購入すると10%割引になります。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
購入できる活字のサイズは初~六の7種類あり、料金は税抜20元(約100円)~180元(約900円)書体は楷書、宋體(明朝)、黑體(ゴシック)の3種類から選べます。購入する活字が決まったら、注意書きの3つ目にあるように、文字、サイズ、書体などを店頭にあるメモ用紙に書いてスタッフの方に渡すと、大量の活字の中からすぐに見つけてきてくれます。例えば一(27.5ポイント)のサイズで宋體の書体にする場合は、購入する文字に「一宋」と書き添えます。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
3種類の書体から選べる
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
店頭に掲示してあった、活字を注文する際の書き方見本同行した家族は、名前の活字を1つ購入していました。
このままスタンプとして使用することもできます。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
活字は1文字から購入可能活字だけを購入する人もいますが、来店客の多くの目当ては、活字を組み合わせたスタンプの作成です。スタンプの場合は、メモ用紙にサイズや書体とあわせてレイアウトを書く必要があります。組み合わせが可能なレイアウトパターン例が掲示してありますが、ちょうどよい文字の大きさや数で構成しないといけないのが少し難しいところです。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
スタンプの組み合わせのパターン例。初の縦横半分が二、さらに半分が五となっている。ちょうどよい文字数やサイズの組み合わせに収める必要がある筆者は陶芸をやっており、陶芸活動時の屋号でスタンプをつくることにしました。屋号のひらがな4文字に、デザイン的に漢字を入れたいと思い「陶」を大きく入れた構成を考えましたが、小さい文字をあと4文字入れないとちょうどよく収まらないとスタッフの方にアドバイスをいただき、名前も追加しました。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
店頭に掲示してあった、スタンプを注文する際の書き方見本。文字とレイアウト、サイズ、書体を記入する
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
筆者は、初を1文字と五を8文字組み合わせたレイアウトに、黑體の書体を指定したスタンプにするには、100元(約500円)のスタンプケースも必要となり、持ち手のデザインを3種類から選べます。モアイもおもしろいですが、筆者は陶芸と親和性の高い急須デザインを選びました。そして、レイアウトを書いたメモをスタッフの方に渡すと、すぐに活字を拾ってきてくれます。
自身で活字を拾う場合にも、スタンプの構成に問題がないかあらかじめスタッフの方に確認を取ると安心でしょう。この日は、「陶」だけ黑體の書体がないとのことで宋體に変えてもらいました。最後にスタンプの試し押しを見せてくれるので、間違いがないか確認します。 

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
スタンプケースの持ち手は3種類から選べる
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
文選後、スタンプの試し押しを見せてくれるので間違いがないか確認する店頭で油性のスタンプパッドが売っていたので、こちらも一緒に購入しました。「日星鑄字行」のロゴ入りきんちゃく袋付きで100元です。総額は活字180元×1文字+20元×8文字+スタンプケース100元+スタンプパッド(きんちゃく袋付き)100元+消費税5%=567元(約2,800円)でした。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
スタンプとスタンプパッド、きんちゃく袋で約2,800円帰宅後、購入したスタンプパッドでスタンプを押してみました。捺印マットを敷いてかなり力を入れて押しても凹凸はそこまで出ませんでしたが、滲みや掠れの味わいが素敵です。重ねてになりますが、持ち帰った後も、鉛の活字を触った後は必ず手を洗うのを忘れないようにしましょう。小さな子どもやペットと暮らしている方は、特に注意してください。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
活字を組んで制作された印面
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
名刺用紙にスタンプを押した

オリジナル名刺をつくれるポータブル活版印刷機

「日星鑄字行」へ行った際は、斜め向かいにある「一間印刷行」にも立ち寄ることをおすすめします。活版印刷の文化を守るために集まったデザイナーの方々による活版印刷工房で、ワークショップを開催したり活版関連グッズを販売したりしています。


デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
「一間印刷行」の外観
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
「一間印刷行」で制作した名刺が展示されている取り扱い商品の中でも特筆すべきが、ポータブル活版印刷機「一張名片(一枚の名刺)」です。「日星鑄字行」で買った活字を任意のレイアウトで並べてオリジナルの名刺を印刷することが可能です。日本でもグッドデザイン賞を受賞し、クラウドファンディングを実施した際には目標の7倍以上の購入金額となりました。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
ポータブル活版印刷機「一張名片」。価格は3,800~7,800元(約19,000~39,000円)「一張名片」の価格はヒノキ製が7,800元(約39,000円)、クスノキ製が6,800元(約34,000円)、マツ製が3,800元(約19,000円)となっていて、公式サイトから購入することもできます。

店頭では、「一張名片」の印刷体験をさせてもらいました。一度印刷機に活字をセットしてしまえば、インキをつけて、紙をのせて、刷るだけととても簡単です。名刺だけでなく、カードや商品タグ作成などにも活用できます。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
①活版部分にインキをつける
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
②名刺用紙を下の位置に合わせて置く
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
③金属の蓋を手前から上に向かってスライドすると紙が活版に押し付けられる
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
④台湾とパイナップルの絵が入ったカードが刷り上がったほかにもSNSアイコンの活字、気軽に買いやすいプラスチック製の活字セットなどが販売されていて、活字を指輪にするサービスもありました。ポータブル活版印刷機を買う予定がなくても、お店をのぞいてみると楽しいでしょう。

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
SNSアイコンなどの活字が販売されている。1つ90元(約450円)、2つで150元(約750円)
デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
この土台に活字を接着して指輪にすることができる台湾は日本語を話す方がわりと多いのですが、「日星鑄字行」や「一間印刷行」も、タイミングが合えば日本語を話すスタッフの方がいらっしゃいます。
もし日本語が通じなくても英語が上手な方が多いので、中国語がまったくできない筆者でもコミュニケーション面の不便が少なかったのはありがたかったです。

注意点として、「日星鑄字行」は水曜日、金曜日、土曜日と週3日のみの営業です。「一間印刷行」はその曜日も含む週5日営業となります。該当の曜日でも台湾の祭日など臨時休業となる可能性があるため、特に短期間での旅行の場合は、あらかじめ両店の公式情報を確認して旅程を組むとよいでしょう。

台湾は週末にさくっと行けますし、夜市のグルメや美味しいお茶、「千と千尋の神隠し」の舞台とされる九份、パンダのいる動物園、さまざまな野鳥、そして美術館などたくさんの見所があります。次の休日は、活版印刷を楽しみつつ台湾旅行へ行ってみるのはいかがでしょうか。

※本記事に記載している価格および日本円換算レートは、2025年11月時点のものです。

DATA店舗名:日星鑄字行(リーシンヂューズハン)
営業日:水曜日、金曜日、土曜日
営業時間:10:00~17:00
住所:臺北市大同區太原路97巷13號
電話番号:02-2556-4626
公式サイト:https://www.letterpress.org.tw/

 

店舗名:一間印刷行(イージェンインシュァーハン)
営業日:火曜日~土曜日
営業時間:10:30~18:00
住所:臺北市大同區太原路97巷12號1樓 103 
電話番号:02-2559-2334
公式サイト:https://www.aletterpress.com/

 

※店舗情報は2026年1月時点のものです。また、営業曜日であっても現地の祭日など休みになる可能性があります。お店へ行かれる際は、公式情報をご確認ください。

 

デザイン好きにおすすめの台湾旅。台湾唯一の活字工房で「活字」を買って活版印刷を楽しむ
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