ここまでのところ、日本国内での法整備は遅れている面はあるものの、状況は少しずつ変わり始めています。
こうした変化の中で、クリエイターが自らの手で作品を守るための画期的な手法やツールも次々と登場しています。そこで本記事では、大切な作品を不当な利用から守るために、まずは無料で手軽に導入できる「自衛ツール」を中心に詳しく紹介していきます。
目次
デジタル時代の「描いた後」の自衛策
生成AIを悪用するユーザーの増加によって、クリエイターの作品が無断転載や生成AIへの学習リスクに晒される可能性も高まっています。法規制の強化や企業のコンプライアンスの中に生成AIに関するルール作りを整備されていくことが望ましいですが、現状は過渡期であり、そうした整備が追いつく間も刻々とクリエイターの権利侵害が進んでいます。現在、クリエイター自身ができることは限られていますが、ツールを使って「見つける」と「防ぐ」をセットで考えることが自分の作品を守ることにつながります。ここでは、主にイラストや写真、漫画といった静止画コンテンツに関する自衛ツールの3つのカテゴリの概略を説明します。▶逆画像検索(Reverse Image Search)
通常の検索は、テキストを入力して対象のコンテンツを検索しますが、逆画像検索といわれる検索は、画像ファイルやURLを入力し、インターネット上にある類似画像、その画像に関連する情報、写真などに写っている対象物(人、建築物、場所、商品など)を検索する技術です。近年のAI技術の進歩により、元の画像にトリミングや色調変更などの改変を加えているようなコンテンツであっても、高い精度で元画像を特定できるようになってきています。
▶ウォーターマーク作業効率化ツール
自身の作品にウォーターマークと呼ばれる「透かし」加工を入れることは、従来からも権利主張や無断転載防止のために行われてきました。しかし、これまで対策をしていなかったクリエイターが、過去の膨大な作品群すべてに手作業で処理加工を施すのは、かなりの作業コストがかかってしまいます。
そこで活用したいのが、これらを一括で処理できる「ウォーターマーク作業効率化ツール」です。
近年のAI技術は、画像上の透かしを自動で検知し、周囲の画素から補完して消去してしまうほど進化していますので、こうした「消去AI」に対抗するためには、透かしの濃度や配置を工夫し、AIにパターンを読み取らせないような、より戦略的な保護が求められます。効率化ツールを導入することは、単なる作業効率化だけでなく、こうした「より強固な自衛策」をサポートするツールの選択肢の一つなのです。
▶生成AI学習ブロッカー
生成AIの不正学習を防止するために、AIが画像の特徴を正しく抽出できなくなるような特殊な「ノイズ」を画像に施すことで作品を守る技術です。こうした技術が開発された当初は、人間の目にもノイズがはっきりと見えてしまう課題がありましたが、バージョンアップを重ねるごとに、人間の目には認識しにくい微細な加工へと進化しています。これにより、作品のイメージや世界観を壊すことなく、AIによるスタイルの模倣や学習を効果的にブロックできるようになってきています。
こうした技術を用いたツールを、目的や用途に応じて上手に使い分けて活用することで、著作権侵害などの対抗策にかかる時間やコストを効率化し、クリエイターが本来の活動である作品制作に集中することが可能になります。
今すぐ導入したい!無料で使える自衛ツール5選
ここからは、今すぐに導入できる無料で使える自衛ツールを紹介します。▶1. TinEye
独自のインデックスにより、TinEyeのクローラーが「その画像を最初に発見した日時とサイト」を確認できるため、掲載時期の目安や不正利用の疑いがある掲載先をチェックする際の材料になります(ただし、Web上での「最初の使用」そのものを保証するものではありません)。
TinEyeTinEye公式サイト
開発・運営元:Idée Inc
参照元1:公式ヘルプ(ブログ)
「アップロード画像は保存しない/インデックスに追加しない」と記載
参照元2:プライバシーポリシー
「インデックスに追加しない」「一時的に保持」と記載
▶2.ASCII2D
ASCII2DASCII2D公式サイト
ASCII2D X(旧Twitterアカウント)
▶3.Watermarkly
近年は生成AIを用いた「ウォーターマーク消去技術」も進化しており、通常の単純な透かしは無効化されるリスクに晒されていますが、これに対し、Watermarklyでは、単に透かしを入れるだけでなく、AIによる除去を困難にするための推奨設定や機能を提供しています。例えば、不透明度の微調整や、画像全体を覆うタイル配置、AIが背景との境界を判別しにくくするような配置の工夫といった推奨設定や機能を活用することでより除去しにくいウォータマークの実現が可能になっているのです。
運営・開発は、ポーランド・ワルシャワを拠点に活動するエンジニアのJulia Nikitina氏であり、クリエイターのニーズに寄り添った継続的なアップデートが行われている点も信頼できるポイントです。
WatermarklyWatermarkly公式サイト
開発・運営元:Julia Nikitina氏
アプリダウンロード先:
デスクトップ版(Mac / Windows) モバイル版(iOS / Android)
▶4.Glaze(グレイズ)
Glazeはアメリカ合衆国・シカゴ大学のSAND Labという研究開発チームによって開発・運営されています。いくつかの画像生成AI学習防止ツールが登場していますが、その多くは収益化という点で課題があり「Glaze」と前述の記事でともに紹介した「emamori」はサービスを終了しています。そんな中、「Glaze」は大学研究チームによる非営利なサービスとして提供されており、現在も画像生成AI学習防止ツールを代表するサービスの一つです。
また、Glazeと同じシカゴ大学SAND Labが開発した「Nightshade」という姉妹ツールがあります。このツールは画像に「毒」を混ぜ込み、AIが学習した場合に出力品質を著しく劣化させる防御方式を採用したサービスです。Glazeと併用することで、より強固なAI対策が可能になります。
GlazeGlaze公式サイト(日本語版)
クリエイター向けSNS「Cara」
▶5.Google レンズ / Google 画像検索
また、Chromeブラウザ上で画像をクリックして「Google で画像を検索」を選択するだけで、瞬時にその画像の拡散状況を確認できる手軽さも魅力です。発見した無断転載先がGoogleの検索結果から削除されるようリクエストを送るなど、プラットフォーム側の権利保護機能と連携させることで、パトロールから対策までをスムーズに行うことができます。
Google レンズ / Google 画像検索Google画像検索
Googleレンズ(Android)※ iOSの場合はGoogleアプリやGoogleフォト経由で利用可能
有料の監視・権利保護サービス一覧
本記事では、これから起こる可能性がある無断使用や著作権侵害のリスクに対して、無料で使える自衛ツールをメインに紹介しましたが、今まさに無断使用や著作権侵害に悩むクリエイターにとっては、それだけでは不十分だと感じる方もいるかもしれません。以下の表は、主な有料の監視・権利保護サービスの一覧になりますので、これらのツールなども参考にしてみてください。主な有料監視・権利保護ツール一覧
サービス名概要・主な特徴Pixsy世界で20万人以上が利用。画像の自動監視から、弁護士を通じた損害賠償請求の代行まで一気通貫でサポートCOPYTRACKドイツ発のサービス。無断使用の発見後、後付けのライセンス料を請求する交渉に強く、成功報酬型で利用可能ImageRights米国著作権局への一括登録代行サービスが充実しており、法廷での戦いを見据えた強固な保護を求めるプロ向けDMCA.com世界で最も有名な削除申請支援サービス。独自の保護バッジをサイトに貼ることで、無断転載に対する強い抑止力を発揮Binded旧称Blockai。画像をブロックチェーンに記録して権利証明を行い、登録後の無断使用を自動でモニターする
まとめ:ツールを味方につけて創作に集中しよう
本連載で何度もお伝えしている通り、生成AIというテクノロジーがもたらす脅威には、それに対抗しうるテクノロジーを賢く活用して立ち向かうほかありません。新たな対抗技術が開発されても、それを巧妙に潜り抜けて悪用する者は今後も現れるでしょう。しかし、無防備なまま作品をリスクに晒し続けるわけにもいきません。大切なのは、こうした自衛策をいかに効率化・自動化し、クリエイターが本来全精力を注ぐべき「創作活動」に集中できる環境を自ら作り上げていくかです。
今回は、逆画像検索、ウォーターマークの効率化、そして生成AI学習ブロッカーといった自衛ツールを中心に紹介しましたが、今後もクリエイターの権利侵害に対抗するための具体的なTIPSやツールの紹介を続けていく予定です。今回取り上げたツールは、どれも手軽に導入できるものばかりですので、ぜひ活用してみてください。











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