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日本テレビ「花咲舞が黙ってない」は池井戸潤さんの原作を上手にテレビドラマ化したものだと感心する。最近見た第4話、5話は、二人のベテラン男優の放った台詞がついつい、気になってしまった。
第4話。渡辺いっけいが、悪事がばれて悪いのは銀行だと逆ギレして、
「俺はいつ支店長になれるんだ!?」
と絶叫するシーン。
第5話で、上川隆也が、
「それでもあいつは俺の友達なんだよ!!」
と舞に話すでもなく相馬が自分自身に言い聞かせるシーン。
この二つの台詞は、銀行員を40年勤めてきた筆者のような人間からすると、リアルに身につまされてならない。まず、
「俺はいつ支店長になれるんだ!?」
この台詞は筆者が40年前に地方銀行に入ってから、先輩、同期、後輩達から何十回となく聞かされてきた言葉だ。支店長職と言えば、10~50人程度の組織の長で大手メーカーの係長か課長といった役どころである。
責任重大、薄給、ストレス過多、過労死リスク大、「死の四重奏」と揶揄される指定職だ。「薄給」と言うのは明治時代の太政官布告に習い、役人の世界では管理職に時間外手当てを付けなかった事から、銀行業界でも管理職に残業手当を付与しなくなったことに由来するらしい。
それでも銀行員達は支店長に憧れる。支店長と言う地位に憧れる。支店長個人はたいてい100%部下に嫌われている。筆者は嫌われるのは嫌だから、ついぞ支店長職になりたいと考えたことはない。
次に、
「それでもあいつは俺の友達なんだよ!!」
と言う言葉。これは銀行員同士では聞いたことはない。銀行の同期と言うものは出世競争のライバルだから、こんな言葉は言わない。どんなに小さな組織でも同期に友人はいないし、友情は死語だ。
劇中、相馬が発した台詞はかつてのクラスメートに対しての言葉である。どうやら、副主人公の相馬さんですら、銀行内に親友はいないらしい。
今回も花咲舞(杏)は、「お言葉を返すようですが。」と悪人相手に遠慮なく突っ込みを入れていた。ストーカーも詐欺師も形なしである。ひょっとしたら、演技じゃなく、杏は素で花咲舞をやっているんじゃないか。そんなふうに錯覚してしまう。
「うちの銀行にも『臨店』して悪い支店長を懲らしめて欲しい。」
視聴者の中には、そう思った銀行員もいるに違いない。
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