山口道宏[ジャーナリスト]

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「備蓄米 GPSの タグ付けろ」(西宮・サバ)

これは、仲畑流万能川柳の入選作だ(2025.6.5毎日新聞)。令和の米騒動だという。
米価5キロが4000円台から5000円は前年比の2倍。家計を圧迫している。慌てた政府は、備蓄米はどうか、輸入米はどうか、と弥縫策(びほうさく)を叫ぶ。

「減反」という言葉がにわかに浮上している。「減反」とは、国策として1969年から全国市町村農家へ米の作付制限と転作で生産調整を求めるというもの。この国から「田んぼ」をなくそうという狙いだ。

自然が相手の農作業はきつい。若者は都市へ転出し、残った年配農家が主流だから農業それ自体の継続が難しい。国はそんな事情を利用した。原発や基地の誘致と同様の手口だ。「交付金」をちらつかせ、国は地域の農家に離農を迫った結果、休耕、離農など農業現場へ深い傷跡を残した。先祖伝来の農地は、もう、若者が帰ることのない荒地と化していく。


食料自給率37%の国だ。なんでもかんでも輸入品に頼るしかない、食料に関する自立放棄の国ニッポン。いよいよ主食である米も危ない。半世紀に亘る国が仕掛けた「減反」、その農業政策の失敗が今回の米騒動を呼んでいた。

文春砲は早くから「減反」に切り込んでいた。

「減反交付金」に着目すると、130億円超の『減反交付⾦』は『不適切』会計検査院が指摘、専⾨家は『ずさんな運⽤を続けてきた』と報じた。(2025.3.17)「需要に応じた供給」「減反政策は終了」は建前か、農家への通達⽂書から判明した農⽔省の嘘。現物⼊⼿、農家に届いた農⽔省の⽭盾を⽰す「通達⽂書」の存在と続く。

会計検査院と言えば税金が適切に使用されているかをチェックする機関だ。そこが2023年に、JA(農業協同組合)関連の「転作(減反)交付⾦」を「不適切」と指摘していた。 「週刊⽂春」はこれまで JA関連団体から⾃⺠党の農林族に約1.4億円が流れていることや、 農⽔官僚28⼈がJA関連団体に『天下り』してきたことなどを報じている。会計検査院によって「不適切」と指摘された交付⾦額は約134億円に上っている、という。


では、JAは悪者なのか!?

そんなJAにした「減反」政策が悪かった。いまやJAは金融機関と化しているが「一人は万民のため、万民は一人のために」、「相互扶助」「安心」「満足」の農協の精神は様変わりした。

「交付金」の誘い水に米作りからの撤退に順応するしかなかったか。この国から米作農家を離農に誘導し、農業人口も激減、担い手のない農地は荒れ、やがて太陽光パネルの畑へと変貌している。「減反」のツケはあまりに大きい。

「米あって あたり前だと 思ってた」(藤沢・松竹梅)
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